冒頭にも書いたように、私はウクライナに開発拠点がある関係でほぼ毎日ウクライナ人とメールかskypeでやりとりしています。もちろん話の中心は仕事ですが、最近のデモやロシア介入等の話題をすることもあり、下記はその一連のやりとりの中で彼が発言したウクライナの現状に関する内容です。私が「日本では東西問題でウクライナ問題が語られることが多いが、実際どうなのか?」という問いかけに対する返事になっています。今回のウクライナ問題が起こった背景なども書かれており、ここまでに至る一連の流れを理解するのに最適な内容になっているのではと:
今起こっているウクライナの問題を東西の違いで語ることは正しくない。元々デモは、ヤヌコビッチ(追放された前大統領)が行った外交ポリシーの急転換にある。半年以上に渡ってヤヌコビッチは、EUと関係構築の交渉をしていた。ちなみにそもそも、それ自体がウクライナに経済的なメリットをもたらすとは多くの国民は考えていなかった。ただ国民の多くは、それがEU参加につながる最初のステップになり得るとは考えていたし、最終的にそれが法制度の透明化や腐敗を排除するきっかけになればいいと思っていた。
しかしヤヌコビッチの真意は別の所にあることは誰もが知っていた。1,600億ユーロの無償援助をEUから得た後(その代償として外国企業に国内市場を独占させ)、最終的にはその大半を自分がかすめ取るつもりだった。実際、以前にも対外債権で同じことが起こった。
ヨーロッパの指導者たちは、ウクライナ政府の腐敗レベルの高さを理解しており、最終的にこの提案を断った。その途端、ヤヌコビッチはそれまでの方針を一転し、150億ユーロを支援してくれるというロシアに歩み寄った。
最初のデモは、この急な方針転換に対してだった。国民の誰もがヤヌコビッチが国ではなく自身の利益だけを追求していることを知っていた。
ヤヌコビッチが国民の意見を無視した結果、デモの規模は急速に拡大していった。デモの参加者の多くは「EU統合」を求めていたわけではない。大半の参加者は腐敗しきったヤヌコビッチ政権に反対していただけだ。デモの多くがウクライナ西部で行われていたことは事実だが、東部の人間も心情的には応援していた。東部でデモが起こっていないのは、ロシアに依存している企業が多く、デモに参加すると解雇されることを恐れる人が多いからにすぎない。
プーチンにとってウクライナは地理的にきわめて重要な土地であり、この時点でロシアがデモを鎮静化させようと介入してきた。デモの抑圧は警察だけなく、ロシアに報酬を支払われた傭兵や反逆者によって行われた。暴力的な鎮圧行動はロシアによって暗黙に認可され、結果として暴動と混乱に拍車がかかった。しかしデモ参加者の大量虐殺にも関わらず、ヤヌコビッチ政権は失脚し、大半の関係者は外国に脱出した。
今日現在、ロシア寄りの方針は、東ウクライナでさえ、少数の人々によって支持されているだけだ。支持派のグループの大半はロシアによって資金サポートを受けており、あたかもウクライナ東側民族固有の主張としてふるまってはいるが、皆が信じているわけではない。
プーチンは今回のデモでは負けたわけだが、その負けを認めず、国際法を無視してクレミアに軍事介入し、新たな紛争を興そうとしている。
複雑な状況下にあるのは事実だが、最新のウクライナの政府はコントロールされた状態にある。しかしプーチンは現政権を認めておらず、交渉する気が一切ない。米国やEUが外交レベルで介入しなければ、クレミア含めたウクライナ問題は解決しないだろう。クレミアは元々ロシアのメディアやTV放送が多く、過去半年以上に渡ってキエフのデモは全く違った形で報道されており、今後の行先が心配でもある。
— Slawa Gorobets
ウクライナ人だからといって彼のいうことが100%正しいと考えることも危険ですが、現地に生きる1ウクライナ人の考え方として今日のウクライナ問題を理解する上で参考にしていただければと思います。日本に住んでいるとそこまで意識することはないかもしれませんが(とりあえず何をしても何も変わらない、、とぼやいて済ませられるのはある意味幸せ?)、政治腐敗の問題は国の運命を左右する最大の問題でもあります。たまたまこの記事を読みましたが政治腐敗レベルでは世界トップクラスのウクライナだけに今回の問題は深刻だったようです。前政権が失脚したことが、少しでも良いきっかけにつながれば良いのですが、ロシア介入はまた面倒なことになってきましたね・・・。
全方位を他国に囲まれている(それもかなり考え方が違う)ウクライナ、常に各国の戦略拠点と見なされ、何度となく土地を他国に奪われ翻弄されてきた大変な歴史があるわけですが、仮に今回の紛争が一段落したとしても、EUとロシアの狭間でがんじがらめになった状態で様々な問題を抱える国であることに変わりはないのも事実です。とりあえずは政治腐敗が少しでも改善し、一歩でも前に進むことを願うばかりです。
私が昨夏、ウクライナを旅行した時、ガイドを務めてくれた女子大生が最後にチェルノブイリの復興記念コインと共に伝えてくれたコメントが今でも忘れられません:
「日本で起こっている放射能問題に心を痛めています。素晴らしい技術があり勤勉な日本の皆さんであれば、きっと今回の苦難を乗り越えられると信じています。同じ放射能問題を経験し、乗り越えてきたウクライナ人として日本の復興を心から願っています。」
ウクライナに1日も早く平和が訪れることを心より願っています。 — SEO Japan [G+]
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