検索エンジンが、ロボット & ドローン(自動操縦機器)を開発する会社の買収に走るのは、正常だろうか?
プロのマーケッターなら、Googleのここ数年の活動に首を傾げているはずだ。検索エンジンとして地位を確立した(そして、広告プラットフォームを最適化し、3500億ドルの時価総額を持つまでに成長させた)企業が、生まれたばかりの、未来志向のテクノロジーに資金を投入することを理解するのは容易ではない。広告、そして、ソフトウェアのライセンス事業から主に収益を得ているGoogleに対して、ロボットや自動操縦機器は、どのように関わってくるのだろうか?
Googleのイノベーション 第一期
Googleは、劇的なイノベーションを2度経験している(この2つのイノベーションの間には、多くの同様のイノベーション、そして、小規模なイノベーションが行われていた)。まずは、Googleが検索を極めた、第一期を理解することが重要である。「検索」は、決まった形を持たず、インターネット上で作られた、様々な相違するデータ、コンテンツ、そして、情報を整理する能力そのものである。これには、プログラムから記事に至るまで、あらゆるアイテムが含まれ、(数年の歳月を経て)Google検索なしでは、何かを探す(思い出す)ことなど想像出来なくなるほど進化していった。当然ながら、検索には、世界の情報を整理するだけでは、莫大な収益を得られないと言う問題がある。Googleは、キーワードベースの広告を発明したわけではないが、間違いなく、このアプローチを極めたのはGoogleである。パフォーマンスベースの広告の時代を導いたGoogleは、検索エンジンマーケティングを、最も効果が高い広告の形式に数えられるほどまでに成長させたのであった。つまり、コンテンツを検索するユーザーに、検索のUXを妨げない、コンテキストをベースとした広告が表示される仕組みである。さらに、消費者が広告をクリックした(つまり、興味を示した)場合のみ、料金が発生する入札ベースを採用し、広告をブランドやメディア企業に販売するようになった。数年を経て、Googleは、オファーを従来のバナー広告の代わりに、このタイプの広告の表示を望む個人のウェブサイトにまで、販売を拡大していった。その後、Googleは、GDN(Google Display Network)を構築するべく、戦略的な買収を行っていった。2006年のYouTubeの買収もまた、Googleの第一期イノベーションにおいて、大きな意味を持っていた。その数年後、TrueViewによって、消費者が視聴している広告(そして、スキップしている広告)を学習する試みが行われ、オンライン動画で有効なCMのタイプを理解することが可能になった。数年以内に、TrueViewは、キーワードと同じように、効果的なパフォーマンスベースのCM広告へと成長する可能性を秘めている。Googleがウェブを席巻した第一期を大局的に見るなら、comScore Media Metrixによる2014年2月のデスクトップのウェブサイト Top 50ランキングをチェックすると良いだろう — 2億2200万人を超えるユニークビジターのうち、Googleのウェブサイトは、1億8700万人以上のユニークビジターを占めていたのであった。
Googleのイノベーション 第二期
2006年、Googleは、Androidと呼ばれる、当時知名度が低かったモバイル OSを買収した。当時、メディアの専門家は、この買収に当惑していた。しかし、Androidの買収は、大胆な行動ながら、モバイルの分野で大きな勢力を得る原動力となった。現在、Googleは、モバイル対応のプラットフォームでアプリを構築するだけでなく、モバイルの接続が行われる実際のプラットフォームを運営するようになっている。 消費者がデスクトップのPCとラップトップから、スマートフォンとタブレットに移るにつれ、Googleは、モバイル業界にイノベーションを与え、手中に収めるようになった。Apple、そして、爆発的な成功を収めたiPhoneとiPadとの互角の戦いも忘れてはならない。それでも、Android(そして、Androidを支えるGoogleのアプリとモバイルウェブサイト)は、モバイルで一大勢力を形成している。事実、comScoreが2014年2月の米国のスマートフォン加入者シェアを調べた結果、Googleが占めるモバイルウェブの割合が明らかになった — スマートフォンメーカーとして1位に輝ているのはApple(41.3 %)だが、Androidは、スマートフォンプラットフォームにおいて、52%のシェアを獲得して、1位を獲得している。さらに衝撃的なのは、スマートフォンの閲覧およびアプリのオーディエンス全体の90%近くがGoogleのサイトで占められている点である。要するに、Googleはモバイルも制しているのだ。
Googleのイノベーション 第三期
Googleのような企業は、どのように業績を伸ばしていくのだろうか?事業の規模を拡大する機会は、減りつつある(3000万人が新たに特定のアプリを利用したところで、Googleが急激に成長するわけではない)。その答えは、現在、インターネットを利用していない人達をネットに結びつける取り組みである。珍しいことではない。デジタルの分裂は、ずっと前から議論の対象になっていたはずだ(持つものと持たざる者の間に存在する溝)。事実、Googleのエリック・シュミット会長は、ビジネス書「The New Digital Age – Reshaping the Future of People, Nations and Business」(新たなデジタルの時代 – 人、国、企業の未来の再建)(Googleの職員、ジョレッド・コーヘン氏と共同で執筆)の中でこのトピックを詳しく取り上げている。インターネットに接続していない人達が50億近く存在する。(現時点で)「スマート」もしくは「オンライン化」されていない機器は無数にある。Googleは、この規模に狙いを定めなければならない。そのため、イノベーションを無人操作機、ロボット、そして、人工知能に集中させているのだ。無人操作機(ドローン)は、この最後のネット非接続地域にインターネットを提供する力をGoogleに与える。ロボットは、機械が動き、考え、そして、人間の介入をある程度必要としない状態で、働くことが出来ると言うアイデアに基づいている。それには、機械学習機能をベースとする新しいタイプの演算コードと構造が必要になる(コンピュータをプログラミングして、別のコンピュータに対して、命令を下し、この作業を継続することで、改善され、さらに多くの命令を与えることが可能になる)。先日のドローンを開発するTitan Aerospaceの買収、あるいは、ここ数年の8社(あるいはもっと多く)のロボット開発を行う企業(あの有名なBoston Dynamicsもその一つ)に対する買収に大きな注目が集まっているものの、1月下旬にGoogleがDeepMindを買収した理由は十分にクローズアップされているとは言えない。
コンピュータを賢くする
Googleは、DeepMindの買収に5億ドル近い資金を投入したと報じられている(と言っても、割と最近、Nestの買収に30億ドル以上を投じていたため、あまり大きな金額には見えないかもしれない)。DeepMindは、買収時には、無名であったが、このロンドンを拠点に活動するテクノロジー企業は、コンピュータが、人間のように学習し、動くことが出来るように支援する人工知能を開発していたと言われている。この人工知能、ネットに接続するデバイスを増やす取り組み、そして、無人操縦機とロボットの買い取りを考慮すると、想像は膨らむ一方である。マーケッターの観点では、奇妙であり、Googleのイメージとはかけ離れているように見えるものの、視野を広げることを厭わない考えを持っているなら、Googleが、ビジネスモデルをメディアに依存するのではなく、テクノロジーと世界を結びつける取り組みに関心を寄せていることは、容易に想像がつくはずだ。企業にとっても、この点を理解することは重要である。もしかしたら、今後のマーケティングでは、単純に、投じる広告費を効率良く利用することではなく、Googleの後に続き、よりグローバルなレベルで、テクノロジーを通じて、より大勢の人達に接触する取り組みが、成功を左右する可能性がある。
筆者について:ミッチ・ジョエルは数々の受賞歴を誇るカナダ発のデジタルマーケティング/コミュニケーションエージェンシー、Twist Imageの代表です。2008年にはカナダで最もソーシャルメディア上で影響力のある人物、そして40歳以下で最も有名な40人の一人、さらに世界で最も影響力のあるオンラインマーケッター100人の一人に選ばれました。著書である「Six Pixels of Separation」(Grand Central Publishing – Hachette Book Group)は、ビジネス/マーケティング書として英語圏で大ベストセラーになっています。ミッチのブログはこちらから。
この記事は、Six Pixels of Separationに掲載された「Google’s Third Wave Of Innovation」を翻訳した内容です。
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