シリコンバレーに参詣しそこに住むためにヨーロッパのテック・シーンを応援することをあきらめた1人の英国人が、テクノロジースタートアップイノベーションの世界一のハブのことで頭がいっぱいの時、私はこの地のスタートアップのクオリティに全く無感動でありがっかりもしていた。
1月からサンフランシスコに住み、私は200近くのスタートアップにインタビューしたが、私が大変革をもたらす企業だと思ったのは200のうちわずか2つだけである。ここで勘違いしないで欲しいが、シリコンバレーはものすごく刺激を与えてくれる場所ではあるのだ。全ての人がすごい事をしていて、世界を変えようとしているが、現実にはここで築かれているテクノロジーの多くは世界を全く変えていないし、それは短絡的で、スケーラビリティと多額のエグジットと多額の利益のためにデザインされている。
グルーポンのクローンの後にまたグルーポンのクローン。あーあ、また別のソーシャルメディアダッシュボードや、クラウドベースの企業向けソリューション、さらにひどいことに、またもや別の写真共有アプリか・・・私は、同じテクノロジーの売り込みを次から次へと耳にしてきて、非常に頭が良く、教養があり、その多くが世界最高の大学(スタンフォード、イェール、ハーバード)を出ているこれらの若者達がなぜ現実世界の問題を解決することにその頭を利用しないのかずっと疑問に思い続けている。それよりむしろ、彼らは、あなたに一番近い豆腐カップケーキ店を示してそれを友人と共有するアプリのような取るに足りない問題を解決するためのテクノロジーを築いている。
Y Combinatorのような組織が本質的にリスキーなプロセスを過小評価したり、商品化や製造を試みるのだから、シリコンバレーにある起業家精神は、商品化することにあるのだという結論に私は行き着いた。スタートアップがアクセラレータプログラムへの参加に対して150,000ドルを獲得するというYCモデルは、ロシア人の投資家ユリ・ミルナー(註:Facebook、Zynga、Grouponに投資した投資会社DSTのファウンダー)とその他のベンチャーキャピタリスト達がこのプログラムを実施する全ての会社にかなりの出資金を出すことを意味する。このプログラムはお金が全てだ。Y Combinatorのスタートアップは、すぐにエグジットやIPOをすることに重点を置いているのだ。
先週末のY Combinator卒業生のグループとのバーベキューで、会話は予想通りこんなかんじで行ったり来たりした:
君はどのバッチにいた?何回ピボットした?(註:ビジネスモデルや戦略を変えること)いくら資金を集めた?誰から?今はどれ位ユーザーがいる?誰があなたを買収する予定?
それは決してテクノロジーに関することでも、それが持っているインパクトのことでもない。ユーザーを獲得すること、できる限り資金を集めてエグジットすることを目的とした起業家精神というゲームが全てなのだ。
投資家の視点から見ると、それは賢いモデルである。あなたは、極めて才能のあるグループと努力家の卒業生を一緒にし、彼らにシード・ファンディングを提供し、彼らを無駄のない状態に保つ。そして、彼らがあなたにヒットを持ってきてあなたが利益を得るまで彼らはピボットする。しかし、正しい手順に従えば才能の買収やエグジットと言う形で成功が保証されたようなものであるリスクを嫌った起業家を作り出しているこのモデルが非生産的ではないのかと私は思う。これが起業家精神のあるべき姿なのだろうか?不敬、既成概念にとらわれずに物事を考えること、長い目で見て違いを生むことはどこに行ってしまったのだ?
私は文句を言ってはいるが、Y Combinatorはゲームチェンジャーもいくつか作りだしている。Airbnb(註:空き部屋をレンタルしあうマッチングサービス)もその中の1つだ。今ある彼らの姿ではなく、貸し借りのeBayを作るという創設者のBrian Cheskyのビジョンが所以だ。もしそれがうまくいけば、新しい製品を生産することを中断し、地球の限られたリソースを略奪することを止めることができる。
Udemy(誰でも学べるバーチャル学習サイト)もまた別の本命馬だ。彼らは、機関を取り除くことによって教育を民主化し、人々がGoogle検索よりも深く切り込んでいく系統だった方法で学ぶことを助け、誰もがスタンフォードレベルの教育にスマートフォンからアクセスできるようにしている。
しかし、あらゆるAirbnbやUdemyにとって、Netflix、Evernote、Spotifyのクローンでは終わらない。
Founders Fundの社長であるVCのBrian Singermanが、ゴールドラッシュ精神についての私の考えを支持した。‘多くの起業家が間違った理由のためにそれをしている。彼らは、世界にとって大きくて優れたことをすることにもっと焦点を合わせるべきだし、お金はその後に付いてくるということを理解すべきである。’
私達2人は、シリコンバレーには取るに足りないテックが多数あることだけでなく、ヘルスケア関連のスタートアップには変革が起きていることにも同意した。だから私は、自分が最近インタビューしたスタートアップ―永続性があると私が思った数少ないスタートアップの1つ―を急いで彼に見せた。ちょうど彼はその会社に投資したばかりだと私に言った。それが私達を、いくつかのVCは早く金持ちになるためにスタートアップに投資して宝くじを買っているというVCの景観について話題にするに至らせた。Brainが私の考えをシェアするのを聞くこと、そして彼が資金を上手く活用していることを聞くのはワクワクした:
彼は、自分が着ているHalcyon Molecular (彼が最近投資したDNAシークエンシングの会社)のTシャツを指しながら、“私は、臨床試験と何億ものキャピタルを必要としないバイオロジーとテクノロジーに関することなら何でも投資する”と言った。
不十分な現実世界の問題
シリコンバレーに革新が欠けている理由の1つは、起業家が現実世界の問題に十分に触れていないことだ。もちろん相対的ではあるが、サンフランシスコの教養のある若者が直面する問題は、新興成長市場の起業家のそれとは確実に異なる。あまり起業家を責めることはできないが、それが需要と供給の従来のモデルなのだと思う;アフリカの国々の消費者が最も近いマラリア薬を入手できrクリニックを検索している傾向が高い中、メリカの消費者は明らかにAngry Birds(註:一応書くと世界中で大ヒットしたiPhoneのゲームアプリ)で遊びたがっているのだ。
世界の全ての政府は、シリコンバレーで起きていることが世界的な不況から抜け出し雇用を創出する手段であると考え、それを再現しようとしている。テクノロジーの拠点は、あなたが想像もしないような場所に世界中に現れている。そのことと多くの起業家がビザの問題でアメリカに入国できないという事実(Startup Visa Act【註:起業家向けの特別VISA】が下院と上院を通るにはあと数年はかかる)を組み合わせれば、シリコンバレーの外で現実世界の問題を解決しているスタートアップの作り方が分かる。
シリコンバレーの外に築くことには起業家にとって他にも誘因がある。Startup Chileは、シリコンバレーにはいない安い開発者を餌に起業家にスタートアップを築くことを奨励しているチリの政府支援機関である。Kundaviは、メキシコのCaboにスタートアップのためのコミュニティを作っている。それは、自力で事業を起こす起業家のために安い生活費を約束するだけでなく、地理的にもシリコンバレーと同じ位の時差(たったの一時間遅れ)にあるため、投資家との電話も容易なのだ。
だがしかし、シリコンバレーをこの惑星の他の全てのテクノロジーの拠点から区別し続けていることが1つある。それは、財源へのアクセスだ。ここでのファンディングの生態系は世界の他のどの場所とも似ていない。ヨーロッパのテックコミュニティは、私が2008年に毎晩3つか4つのテックイベントでその世界に口を出して以来、大きな発展を遂げたが、ファンディングの点ではシリコンバレーと張り合い始めてすらいない。しかし、ファンディングの展望は、急速に減少しているイノベーションの実現費用によって変化している。つまり、ノートパソコンとWifi接続のある人なら誰でも、ただ同然でアイディアを実現することができることを意味する。
シリコンバレーのVSは、このグローバルなトレンドに気付いていて、それに賢く対応している。エンジェル投資家のChris Saccaはヨーロッパのスタートアップに投資している。Dave McClureは、世界中にある自らの500のスタートアップアクセラレーターにGeeks on a Planeを説き、Paul Bragielのi/O venturesは今、東アフリカの有数の投資家の1つになっている。ジャーナリストのSarah Lacyの最新の書籍では、どうやって新興成長市場の起業家がその地のカオスと混乱をチャンスに変えて、何百万も稼ぎ、何千もの雇用を創出しているのかについてレポートしている。シリコンバレーの起業家は、困難を通り抜けたこれらのセルフスターター達が巨大なリスクを背負って成功していることに注目すべきである。
もしシリコンバレーがグローバルなスタートアップ・イノベーターとしてのそのナンバーワンの地位を維持したいのであれば、起業家とVCは共に、変化を取り入れそれを推し進め始めることができるように、バブルから脱して世界の本当の問題に目を向ける必要がある。オバマは、今すぐにStartup Visa Actをアメリカの法律に通す必要があるし、もっと多くのメディアがシリコンバレーの外のテクノロジーを取り上げるべきだし、このサンフランシスコの霧はすぐにでも晴れた方がよい―さもなければ、私はメキシコのCaboに移る。
この記事は、The Next Webに掲載された「The Problem With Silicon Valley Is Itself」を翻訳した内容です。
もうひとつ上げていた「シリコンバレーの起業家は現実世界の問題に十分に触れていない」という意見の方が注目すべき点ではあると感じました。起業が盛んなアメリカであってもさらに新しい文化を生み出す文化の土壌があるのがアメリカ西海岸。エンターテイメントではロサンゼルスかもしれませんが、ハイテク分野ではシリコンバレーがそれをリードしています。その結果、Google始め、Facebook、Twitterなど様々な世界中で人気のサービスが生まれてきたのでしょうし。こういう場所も必要ですよね。インターネットが普及し、人々のコミュニケーションの形が進化する過程でシリコンバレーの起業家から生まれたアイデアはその進化を促進するツールやサービスとして具現化され、幾つかが大成功を収めてきました。世界がネットでつながりより身近になった今、これからは、もっと世界が抱える問題点を改善するサービスが生まれてくるべきなのかもしれません。そしてそれがいわゆる西海岸・シリコンバレー的な発想から生まれてくるものなのかは筆者がいうように疑問に思う点もあります。もしかするとそれは実際に問題を抱えている国や地域の、切実な想いを持っていきている若者たちの中から生まれてくるのかもしれません。その意味では記事にもあるようなメキシコやチリ、アフリカでのスタートアップ支援の取り組みには非常に可能性がある気もします。
もちろん、日本もそのスタートアップブームに参加し、世界に新た革命を起こすサービスを産み出してほしいですよね。成熟した国であるだけに抱える課題はシリコンバレーに近い気もするのが若干怖い点でもありますが、ガラパゴス文化の日本ならではの発想で世界にインパクトを与えるサービスが作れるかもしれません。 — SEO Japan
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