かつてほどではなくなりましたが、検索エンジンによる”ペナルティ”(あえて、こうした表現を使用しますが、Googleは”ペナルティ”という表現を用いません)は多くの議論を呼ぶトピックでした。特にSEOへの知識が乏しいWebマスターなどにとっては、大きな脅威であり、絶対に避けるべきものという認識があったと感じています。
しかし、ブラックハットの手法が蔓延していた時代は過ぎた今、”ペナルティ”はどう捉えられるべきなのでしょうか? 以前、GoogleのSearch Qualityチームにも属していた、カスパー・シマンスキー氏の記事を紹介します。
ペナルティは文字通り、応急処置として見られるべきだ。
検索業界で発生する討論において、検索エンジンのペナルティほど、反響を呼ぶ議題は他にない。
この繊細な話題に対する意見を一定の角度からしか持たず、少数のWebサイトを除き、全てのWebサイトがペナルティを受けているようだとする主観的な見解が強まっている。
しかし、情報が溢れているにも関わらず、確信よりも多くの誤解が蔓延しているようだ。
その結果、根拠のない恐れが、Webサイト運営者の間で拡大している状況を招いている。
Webサイトにペナルティを与えることを含め、Google検索に関わる仕事を経験してきた著者による個人的な見解に強く影響されている意見ではあるが、検索エンジンがペナルティをなぜ、そして、どのようにして与えるかを明らかにしたいと思う。
注視すべきは、検索市場の鍵となるプレイヤーである。今回の記事は、 DuckDuckGoやEcosiaなどを含めた全ての検索エンジンを対象とした内容の提供は目指していない。
彼らは皆、ともすれば無気力な競争や散発的なイノベーションにとどまるようなものに対し、勇敢な努力を持って貢献しているが、これらの検索エンジンによるWebサイトへのペナルティを与えるアプローチは、今回の記事の主題を変えうるものではない。
多くの場合、検索エンジンによるペナルティは大きく恐れるものではないのだ。
そもそも、検索エンジンは営利企業であり、彼らの主目的は、収益を作り出すことだ。
この目的を達成するためには、ユーザーの満足度を高く保ちつつ、運営費用は低く抑えなければならない。
同時に、製品としての検索は非常に複雑であると覚えておくことは重要だ。
ランキングをつけるための処理能力はもちろん、クローリングと処理の初期段階で求められるデータは大量であり、常に増加し続けている。
いかなる時も、全世界の利用可能なデータの約20%はすぐに消え去り、別の20%は変化の過程にあり、さらに別の20%は全く新しい、もしくは、誕生して間もないデータである。
逆説的には、変動は、検索におけるたった一つの定数要素である。それゆえ、拡張性のあるアルゴリズム的な解決が好まれることは、大きな驚きではない。ここで、検索エンジンのペナルティについてのよくある誤解の一つが生まれる。
検索エンジンの「アルゴリズムによるペナルティ」に影響を受けたサイトを紹介する実体験のレポートや数え切れない記事がある。どれもが、根本的に間違っている。
「アルゴリズムによるペナルティ」に影響を受けたWebサイトは、いまだかつて存在しない。アルゴリズムは、情報を計算し、結果を返すために設計された、純粋なインプット派生型の数学的公式なのである。
検索エンジンが理想通りに作用し、あらゆるインプットを十分に読み込めるほど完ぺきに近くなれば、この話は終わりである。こうした夢想的なシナリオでは、ペナルティなど存在しない。
しかし、そのようなことは起こり得ないことを我々は知っている。アルゴリズムは、常にテストを繰り返し、試行錯誤をしているにも関わらず、失敗することもあるからだ。
これが起こった場合、ペナルティは現実となる。アルゴリズムではなく、ルールの例外なのだ。
モチベーション、最も重要な目的、コスト意識などから、検索エンジンはペナルティを与えることに積極的ではない。
ペナルティを与えることはコストが掛かり、個別的で、限定的であり、再現が難しい(または不可能)。そして、最悪なことに、製品の改善に寄与しないのである。検索エンジンは、ペナルティを与えることを嫌う。
なぜなら、純粋なビジネスの観点からすれば、報酬を得られないからである。一般的なイメージと異なり、法的な問題はペナルティがまばらに与えられ、全ての事実が考慮されている理由とならない。
結局の所、検索エンジンに対する訴訟に成功し、裁判所の命令に基づき順位が回復した個人や組織はいないのである。検索エンジンとインデックスは私的な所有財産なのである。
一言で言えば、ペナルティを与えることは、リソースの再設置を要する小規模なシステム障害の表れであり、あらゆる類の報酬が約束されない。
こう考えると、多くの検索エンジンが自身のリソースをペナルティの賦課に費やすことに積極的でないことがわかるだろう。
かつての巨大企業の中でも、検索の忘却へと徐々にスライドしていく前、別の時代の話として、Yahoo!は歴史的な例として挙げられる。
まだYahoo!がマーケットシェアを大きく獲得していた頃、完全にどちらか一方の戦略でなかったにせよ、厳格なアプローチを採用していた。
ガイドライン違反が発覚したWebサイトは、「ランキングの降格を受ける」、もしくは「違反内容が悪質であった場合は完全にインデックスから削除される」のどちらかであった。
これらの、いわゆる”判決”は、EDBと呼ばれるデータベースに、内部的には永久に格納された。”最悪なWeb”(WOW:worst of web)のロングテールのインデックスと同義ではないが、品質の低いコンテンツとして保存された。
EDBに格納されたWebサイトは、復活の期待もあった。「検索結果から消えたWebサイト」や「特定のキーワードで順位が改善されたWebサイト」などの状況を示す複数の熱心に作られたフォームがあり、悔い改めたWebサイトの運営者にとっての、救済を約束したものであった。後に、Yahoo! Site Explorerは、同様の双方向のコミュニケーションと解決機会を提供している。
より最近ではBing、特にGoogleは、よりニュアンスのあるアプローチを採用しているようだ。
BingのWebマスターガイドラインを違反したWebサイトに取るアクションは、ブラックハットSEOのテクニックがもたらす、望まれない影響を和らげるようにしている。それが実用的、もしくは、効果的でなかった場合、悪質なWebサイトのランキングは下げられ、もしくは、Bingの検索結果から完全に消去されてしまう。
しかしながら、Bing Webmaser Toolsからの事前の警告は期待できない。
究極的には、Bingのペナルティは永遠に残るようだが、自身の考えを後悔するWebサイト運営者に対しては、希望の光もある。
Bingは、Support Formを通して、双方向のコミュニケーションを提供している。返信までの期間は保証されていないが、個々のWebサイトのペナルティについて、Webサイト運営者が問い合わせることができるという事実は称賛に値する。
時間と努力は要するが、Bingによるペナルティは解消されうる。
Googleはきめ細かく、選択的で、違反内容によって固有の、より洗練されたアプローチを採用している。また、Google Search Console経由で、Webサイトの運営者へ積極的にアプローチしている。
ペナルティの影響に対する準備がないため、紛らわしいネーミングにも関わらず、メッセージは警告とは違うものとなっている。
Googleからのメッセージを受けとった時点で、そこに言及されているペナルティは、例えまだ実感できずにいようとも、すでに発動している。
公式には手動スパムアクションとして呼ばれる手動ペナルティに対し、Googleは一定の期間が経過した後の解除を容認している。
また、他の検索エンジンと異なり、Webマスター向けガイドラインに快く従う意志のあるWebサイト運営者に対し、良好な状態に戻すための、再審査リクエストと呼ばれる公式のプロセスを採用している。
ここで重要なことは、前述したドキュメントの中には、アルゴリズム的な実験の評価を行うエンジニアをアシストし、雇用された契約者によって排他的に使用される品質評価ガイドラインは何も関係していないということだ。
再審査リクエストには、より良く理解するだけの価値はあるが、公式な返答期間は存在しないと認識することが重要である。返信を受けるまでに、数ヶ月間かかる場合もある。それにも関わらず、Googleは送付されたリクエストの手動レビューを経験のある雇用者に委ねる方法を選んでいる。
Google Search Consoleから送られる情報は乏しく、再審査リクエストを送付しても、ガイドライン違反が解消されている限り、Googleの手動ペナルティの全てを抹消することは可能である。
BingとGoogleはWebサイトのオーナーに対し、労働集約的で親切なアプローチを採っているが、一般の人々は検索エンジンの一部にある厳しいアクションのみを見ようとする。
フォーラムに投稿される「ペナルティを受けた」Webサイトの誇張された愚痴の99.9%が、SEOにおける不十分なシグナル(最適化されていないこと)が理由で生き残ることが難しくなっているという事実はほとんど知られていない。こうした議論の殆どのケースが、実際にはペナルティを受けていないサイトを指している。
一貫した悲観的な意見は、検索エンジンが個々のWebサイトを気にかけている可能性を、あらゆるオンライン業界について示唆している。気がつけば、検索エンジンを感情的に好いたり嫌ったりする意見が芽生えてきた。これは根本的に間違っている。
なぜなら、検索エンジンは個々のWebサイトや、それらの検索結果でのパフォーマンスに対して、全く関心が無いからである。
検索エンジンの興味は、ユーザーの満足度のみである。特定のクエリに対する個々のWebサイトのビジビリティは、結果には影響しない。これが、検索エンジンがWebサイトにペナルティを与えることや、過去に与えたペナルティを解除することに、一部のリソースしか割いていないことの理由となる。
この冷静な姿勢に対する裏返しが存在する。ペナルティの解除や回復のみならず、不正行為を防ぐこともできるのだ。
既知の不正行為との関連という理由でペナルティを与えられることはなく、こうしたWebサイトの検索結果におけるビジビリティは、過去の水準以上に達することもある。
ペナルティは文字通り、応急処置として見られるべきだ。
ペナルティは時折、ほぼ例外的な規模の場合がある。検索エンジンにとっては、反響を呼ぶ議論などではなく、痛い点であるのだ。迅速に対処すべきものではあるが、運営におけるメインステージでは決して無い。
検索エンジンが、オンラインマーケターのような小規模な特定のグループのために、ペナルティの問題へ僅かながらでもリソースを割り当てたことは、信用に値する。
しかし、発生頻度は稀であることから、ウェブマスターのコミュニティ内で不当な注目を集めていると言えるだろう。
検索エンジンのペナルティは、非常に恐ろしい恐怖ではなく、オンラインでの生活と商業における事実として見られるべきだろう。
ドライバーが車を運転するたびにタイヤがパンクしてしまうことなど無いように、例えタイヤがパンクしてしまったとしても、それがそのドライバーに永久的に影響することはないはずだ。
技術の優れたWebマスターやサイト運営者でも、どこかの時点で、検索エンジンのペナルティに対処した経験はあることだろう。プロとしてのキャリアの中で、複数のペナルティを経験したこともあるかもしれない。
そうだとしても、これらがキャリアにおける致命的な瞬間になることは考えにくい。それらは、わくわくする冒険の中で出会ったデコボコの道に過ぎない。
そして、ペナルティに対処する中で得られた経験が、今まで経験したことのないオンラインでの成長を導くことになるはずだ。
「検索エンジンはWebサイトにペナルティを与えることに積極的ではない。なぜなら彼らの注力はユーザーの満足度であるからだ。」という意見は非常に説得力があると思います。
検索エンジンは好んでペナルティを与えるのではなく、ガイドラインを違反したサイトに対し、それがユーザーの満足度に悪影響を与えるため、然るべき処置を行う、といった形でしょうか。
また、あくまでユーザーの満足度を第一としたアルゴリズムの作成に取り組んでおり、その結果として順位が下降するWebサイトも存在する、ということでもあると思います。
こうした背景を考えたところで、Webサイトに対する施策(より良いWebサイトを作る)が変わることはありませんが、その重要性をより実感できた記事でした。
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