SEOの効果・影響をシミュレーションするのは不可能。

公開日:2013/02/19

最終更新日:2024/02/16

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SEOの最も難しい要素の一つが効果を事前に予測することの難易度の高さ。リスティング広告と比べても順位からトラフィックまで不確定要素が多く、事前想定することは何百というサイトにSEOを導入してきた私でさえも限りなく不可能な作業に思えます。とはいえ、SEOを本格的に導入しようとすると、企業規模が大きければ大きいほど、効果の予測値も求められるわけで。。。今回はそんなSEOの効果予測に関するお話を。 — SEO Japan

世界が白と黒、そして、原因と結果の原理で出来ていると確信している人達が意外と多い。Xを行うと、ただちに、そして、確実に結果Yに導かれると信じているのだ。

世界は、区切られており、それぞれの区画は他の区画からの干渉を受けないと考えているようだ。原因と結果が全てである。一生懸命働けば、お金持ちになる。行儀が良ければ、成功する。このような考えを持つ人達は、毎晩ぐっすり眠ることが出来るのではないだろうか。毎日の生活に平穏なハーモニーと喜びが溢れ、自分が信じる行動を起こすことが常に求められている。必ず素晴らしい結果につながるからだ。羨ましい。

残念ながら、SEO業界はこのような世界とは程遠い。在庫の製品を売りさばくためには、XとYだけ実施してればいいと言う考えは受け入れられない。そして、ある程度のレベルのブログの記事を作成すれば、ピューリッツァー賞を受賞することが出来ると考えているわけではない。

また、ウェブサイトを出来るだけ(それが何を意味するにせよ)最適化すれば、他に作業を行う必要はなく、ビジターは全てコンバートし、ページは全てSERPで1位を獲得すると期待しているわけでもない。つまり、SEOには完成形がないのだ。だからこそ、私はよく眠れないのだろう。

今回は優秀なSEOの友達の話をする。この人物から、大規模なオンラインビジネスを展開する重要な、新しいクライアントとの会議に関する話を聞いた。

私の友達が会った人物はクライアントのオンラインマーケティングマネージャーであった。まず私の友達は、クライアントの上位50ページの初回の評価を終え、ページ全体の一般的な問題を幾つか指摘し、検索からのビジターを増やすために必要な推奨される取り組みをリストアップした(ターゲットのメトリクス)。

クライアントは慎重に推奨リストを見直し、SEOに対する予算は限られていると明言した(あらゆる会社に共通する)。その後、重要な問いを私の友人に尋ねたのであった – 推奨#2ではなく、推奨#1だけ実行したら、どれだけ多くのユニークユーザーを獲得することが出来るのか?

クライアントは一ヶ月に獲得する必要のあるユニークユーザー数を社内で決めており(経営陣が決定)、推奨されたそれぞれの取り組みがユニークユーザーを何人もたらし、それぞれ幾ら必要なのかを尋ねることで、最小限の投資で求められている人数を獲得するために最適な取り組みを知りたがっていたのだ。クライアントは具体的な数字を求めていた。まるで具体的な数字があるかのように。

この会話には聞き覚えがあるだろうか?全く同じではなくても、同様のテーマの話し合いを耳にしたことがあるだろうか?SEOとして、私達は確信した状態でXを実施すると結果Yが導かれると言えるだろうか?私がこの質問に対する完璧な答えを知っていたなら、今よりも遥かに高い料金を要求しているはずだ。

100%がSEOに存在しない理由

SEOのプロは、特定の最適化のタスクによって何名の新しいユーザーを獲得することが出来ると確証を持って言葉に出すことは出来ない(具体的な数字を喜んで提供するSEOコンサルタントも存在するが、このような主張の信頼度はネッシーの写真と同程度である)。通常は、確実な数値を提供することは、様々な要素が関連しているため、達成することが出来ない:

  • グーグルが、とりわけここ最近、そして、今後、アルゴリズムにおいてを何を求めているのかを100%の精度で把握することは不可能である。試行錯誤を繰り返し、ある程度目星をつけることは出来るが(希望的観測)、金融業界でよく言われているように、過去のパフォーマンスが今後の見返りを保証するわけではない。
  • グーグルが次にどのような新しい、黒と白の動物の名前が与えられたペナルティーではないアルゴリズムのアップデートを行うのか、そして、そのアップデートが何をターゲットにしているのかを、100%の精度で把握することは出来ない。
  • 同じ分野の競合者が、ウェブサイト、リンク、ソーシャルメディキャンペーンやコンテンツを最適化するために何をしているのかを、100%の精度で知ることは出来ない。
  • 次にターゲットのマーケットや業界に影響を与えるどのような大きなイベント、外部のイベント、地域のイベント、地方のイベント、国のイベント、世界的なイベントが起きるのか、あるいは、ターゲットのマーケットが、会社が提供する製品やサービスをどれだけ求めているのかを、100%の精度で把握することは出来ない。エコ製品(もしくはエコ製品の管理サービス)に底なしのマーケットが必ず存在するわけではない。

要するに、不確定要素が余りにも多いのだ。検索エンジンの結果ページから向けられた個別のインターネットユーザーの行動、そして、大量のランキングの要素を考慮する検索エンジンのアルゴリズム等、このような複数の多次元の枠組みの中で、SEOのタスクXが結果Yを寸分の狂いもなくもたらすと言う考えは、はっきり言って、浅はかである。

統計マニアの意志は固い

友達のクライアントの立場は分からないでもない。このマーケティングマネージャーは、SEOの取り組みを難しくするためだけに頑固な態度を取っていたわけではないはずだ。

むしろ、当該のマーケティングマネージャーは経営陣から同じことを質問されると予測し、経営陣を満足させる答えが欲しかったのか、あるいは、少なくとも自分が賢く、質問をすることが出来る点を証明したかったのだろう。確かに、重役、特に統計マニアの重役は、コンサルタントの料金に対するROIを立証したがる傾向がある。

しかし、「SEOのタスクXはきっちり5万人のユニークビジターをもたらし、タスクYはさらに25000人を追加し、そして、タスクZは10000人を加え、合計で1ヵ月間で85000人の新たなユニークユーザーが訪問することになる」に見られるように具体的な結果に対する要望が要求されると、誰かが数字を作り出していることに気づくようになるだろう。そして、最終的に真実が明らかになる。

これではセールスチームのノルマと同じである。ノルマを設定したところで、そのノルマが達成されるとは限らない。到達したいバーの高さを設定するだけである。そのバーの高さに達するためには、適切な量のリソースを投じなければならない。全力を尽くしているものの、マーケットが不況なら、セールスチームは年次評価で苦い思いをするかもしれない。しかし、予想に反してマーケットの景気が良いなら(あるいはメディアでバイラル化が起こり、無料で大幅に宣伝してもらえるなら)、ノルマのターゲットはそもそも現実的な意味を持たなくなる。

SEOキャンペーンにおける成功の見込みにおいて、不安定さが存在することを、辛いかもしれないが、正直にクライアントに伝える必要がある。当然ながら、SEOの問題を特定して、ソリューションを実装し、問題を解決することは可能である。また、創造力を駆使して、クライアントのメッセージを拡大して新たなマーケットに伝えたり、あるいは、マーケティングのメッセージをより強力で、より魅力的なトーンに変えたり、または、定着した製品やサービス向けの新しいアプリを宣伝することは可能である(また、そうするべきである)。

拡大は目標であり、大きなニュースの拡散は使命である。しかし、特定の最適化のメソッドによる予想される成功を数値化する行為には、確実さは存在しない。

実はクライアントが当てにすることが出来る確実な公式が一つある。マーケティングキャンペーンの取り組みに対して、愚かにもSEOへの投資を拒否する方針を採用すると、確実に失敗する。

クライアントが何もしないうちに競合者はウェブサイトの最適化を続け、新たなソーシャルメディアキャンペーンを始め、従来のマーケティングキャンペーンをオンラインのキャンペーンで補強していくだろう。SEOは一度きりの取り組みではない。問題の特定、是正措置の実施、実際の結果の調査を継続して行い、そして、この取り組みを繰り返し実施することで、強化を進める活動である。

辛い現実

「Xをすると、Yになる」ほど世界が単純だったなら、誰もが裕福になり、すべての製品は質が高く、あらゆるマーケティングの取り組みは成功を収めるはずであり、このコラムはピューリッツァー賞に輝くだろう。しかし、現実はそこまで単純ではない。つまり、皆、同じことをするなら、誰も裕福にならず、すべての製品は同じであり、マーケティングの取り組みは泣かず飛ばずで終わり、そして、ピューリッツァー賞も手に入らないのだ。

世界には思いがけない不確定要素や未知の深くて要素が存在し、成功と失敗をもたらす。その結果、何か、そして、誰かが、他の何か、または誰かをリードする構図が生まれるのだ。だからこそSEO業界が存在する。クライアントが平凡な集団から抜けられるように手を貸すためだ。「絶対」の欠如をクライアントに伝えるのは勇気がいるが、それは偽りのない真実である。最後に、この記事を投稿したからと言って、ピューリッツァー賞を置く場所を前もって掃除しておく必要はない。残念だ。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「This Post On SEO Will Win The Pulitzer Prize」を翻訳した内容です。

数多くSEOに取り組んできた人であればある程、納得できる記事だったのではないでしょうか。経験上、ざっくりとした数字を出すことはできるとは思いますが、検索広告のプランニング等に比べると、はるかに曖昧というか、稟議を通すための予測になりがちな点は否めなかったりもします。

予測の難しさが特に本格的なSEOの導入を妨げてきた面もあると思いますが、それをいってしまえばソーシャルも全く同じ(というかそれ以上?)。小規模でもまずは初めて見てそこで効果を見た上で次に進む、というような積極的かつ柔軟な姿勢でSEO含めたウェブマーケティングに取り組んだ方が(失敗してもそこで学ぶことは多そうですし)最終的にはより良い結果につながる気もする私です。 — SEO Japan

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編集者情報

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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