検索業界を10年支えてきた影の重鎮のメッセージ

公開日:2012/07/26

最終更新日:2024/02/18

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パンダアップデートのみならず、Googleによる大量警告メッセージ配信で先週は日本のSEO業界史上でも過去最大規模の激震の1週間でした。メッセージ対応、サイト見直し等、SEO業者&SEO担当者の作業は山積みと思いますが、今日はSEO Bookのアーロン・ウォールが英語圏のウェブマスター御用達のフォーラムWebmaster World&日本でも有名なウェブマーケ系イベントPubConの主催者ブレット・タブキに行ったディープなインタビュー記事を紹介します。SEO激動の今だからこそ読んで自分なりのSEO感を見直してみたい。 — SEO Japan

ブレット・タブキ氏は、SEO業界の重鎮であり、ウェブマスターワールド & パブコンカンファレンスの構築において重要な役割を担ってきた。先日、私は検索の最近の変化 & オンラインパブリッシングの今後の行方について、そのタブキ氏にインタビューを行った。

ここ数年、ウェブマスターワールドでは(もしくはSEO業界全体)では、「グーグルのみで1年でサイトを成功に導く: 1日15000を獲得するための26の手順」という私が2002年2月に投稿した内容が注目を集めています。この投稿がきっかけで私はSEO業界に入りました & 10年以上が経過した今でもこの記事は色褪せていません。検索が大きく変わっている点を考慮すると、ここまで持ちこたえていることに驚いていますか?また、今日この投稿を作成するなら、何を加えますか、もしくは何を変えますか?

当時は、SEOがここまで受け入れられるとは思いませんでした。私はこのエントリを始めから終りまで1時間前後で作成しました。コンテンツの作成を1番優先し、次にSEOを優先したため、この記事は長く持ちこたえているのでしょう。今書き直すとしたら、特定のタイミングや数字に参照情報を加えるでしょう。これらの数字は過去数年の進化によって流されてしまいました。

数ヶ月前に行われたSEOのカンファレンスで、ある参加者が、大きなブランドを代表している参加者、もしくは大きなブランドの仕事を請け負っている参加者の挙手を求めたところ、80%以上が手を挙げていました。私がSEO業界に足を踏み入れた頃、状況は正反対でした。多くの参加者は小規模なパブリッシャー & アフィリエイトだったのです。当時、一部のカンファレンスは若干企業を意識していましたが、パブコンは“内情に通じた”試行錯誤を積極に行う個人のアフィリエイトタイプの人達が集まっていました。パブコンは、この業界が変化する中、今でも新鮮さを保つためにどのように努力しているのでしょうか?

その一部は10年計画です。2001年当時、私はまさか10年計画を持っていたとは気づきませんでした。しかし、実際には計画を策定していたのです。この計画に、カンファレンスが行われる度に何か“さらに一つ”が加わっていきました。前回はさらに一つ素晴らしいことでした。私達はこの取り組みを10年間にわたって継続し、毎回、カンファレンスで“さらに一つ~”の色を出してきました。オーディエンスが知識を深めるにつれ、私達も同じように成長していかなければならないのです。

ルーツも重要な役割を担っています。私達は優秀な“個人”のウェブサイトのオーナーとの関係作りを最優先してきました。彼らをサポートすることで、当該のフィールドのエキスパートと接触してきたのです。パブコンは“特定のニッチ”に限定したカンファレンスではありません。8から10のバーティカルニッチを組み合わせたカンファレンスなのです。ニッチに絞ったカンファレスは有益ですが(ブログ、アフィリエイト、ウェブホスティング、ドメイン)、分野にまたがるニーズを持っている人達が大勢います。 これらのジャンルを網羅することで、彼らに接触する必要のある企業を集め、“内情を知る”エキスパートを維持することに成功しています。

大勢の人達が検索のオーソリティを話題に取り上げ & 一部のSEOは大きな企業へのシフト変更は自然であり、正当であり & 当然だと主張しています。この主張に同意しますか?それとも、虫のいい話だと思いますか?

SEOが“大きなビジネス”になったとは思いません。SEOはSEOだけでなく、一般的なマーケティングになりつつあると思います。これは微妙で、炎上する可能性のあるトピックです。このビジネスは勘だけではどうすることも出来ません。私達は1995年以来、SEOの現場を見てきました。SEOを通して、世界を見てきました。現実逃避をして、変化を見ようとしないのは、愚かな行為であり、私達の収益にも悪影響を与えます。

確かに、ここ数年でSEOは大きな変化を遂げてきました。当初は、ディレクトリまたは検索エンジンにリストアップしてもらうことだけを考えていました。その後、オンページの最適化を始めました。すると、グーグルが登場し、“とにかくリンク”時代が幕を開けたのです。そして、現在、鈍い時代に突入し、最適化のジャンルがマップ、ローカル、オーサーシップ、そして、ソーシャルネットワークの友達の言及にまで広がっていきました。その結果、大勢のSEOは労力を何に注げばいいのか分からなくなってしまったのです。

グーグルが価値を提供しなくなるのではと考え始めるようになったウェブサイトのオーナーも大勢います。グーグル以外の検索エンジンやソーシャルサイトからより多くのトラフィックを得ているのです。グーグルにトラフィックを送る意思があるのか疑問視している人達もいます。グーグルにとっての彼らのウェブサイトの価値は、自分達のSERPではなく、その他のSERPでマシンを訓練するための単なるデータに過ぎないと考えているのです。

フェイスブックは検索業界を混乱させることに失敗し、ビングとヤフーはグーグルを混乱させることに失敗しました。タブキさんの目には、検索の状況を変える何かは見えていますか?

そうでしょうか。1000億ドルのIPOはその考えの誤りを立証するでしょう。フェイスブックは総利益の100倍のIPOをやってのけたのです。これはすごいことです。まずはこの点について話しましょう。あなたや私が会社を売却しようとしても、現状では運が良くても3倍から4倍の金額しか引き出せませんが、フェイスブックは年収の100倍の資金を引き出したのです。おとぎ話の世界ですよ。これはインスタグラムを10億ドルで売却した数名の起業家達に通じる夢のような話です。

フェイスブックはグーグルとビングフーを完全になぎ倒しました。考え方を変える必要があるのです。ウェブで欲しい情報を探す方法は誰もが知っています。適当にウェブを探しまわる時代は終わり、ソーシャル交流の愉快な時代が到来しているのです。

過去4年の間にグーグルが実施した変更に注目して下さい: ローカルのプッシュ、グーグルインスタント、グーグルプラス、そして、アンドロイドの一部に対する変更。これらの変更は、ソーシャルメディア – つまりフェイスブックとツイッターの台頭が原因で行われました。このような変化は“壮大な計画”には含まれていませんでした – 短期的であり、反動的な変化であったのです。

SEO業界では、嘘をつく人達が“ホワイトハット”として崇められ、最大級の機会を与えられる一方で、知識を持ち、堂々と公言する人達は“ブラックハット”扱いされることがあります。このトレンドはいつか逆転するのでしょうか?この呼び名の意味がなくなる前にどれだけ多くの人達がブラックハットの烙印を押されるのでしょうか?

自分のサイトに焦点を絞り、宣伝するだけなら、ハットの色は関係ありません – マーケティングを行っているだけなのです。自分のサイトでは何をしようが構わないのです。法律を違反しない限り、ホワイトハットもブラックハットもありません。


今でも堂々とまかり通っている低俗 & 誤ったSEOのアドバイスは何だと思いますか?

良い質問ですね。約2年前、サイトのページランクを“スカルプティング”するためにサイトからアウトバウンドリンクを全て削除するよう薦めている有名なSEOがいました。今年の春、同じSEOがリンクおよびサイトを“自然”に見せるようにリンクを外部に張っていく必要があると言っていました。「ページランクのスカルプチャリング戦略」の記事は、2001年のテーマ ピラミッドから生まれたものです。アウトバウンドリンクは、先程紹介した26ステップの記事から直接抜粋しましたが、その他のサイトにリンクを積極的に張るべきだと主張したところ、多くの批判を浴びました。当時、明らかに検索エンジンはアウトバウンドリンクを見て、サイトのテーマを特定すると言うのが私のセオリーでした。アウトバウンドリンクが検索アルゴリズムに対して、品質シグナルとして利用されている点を示すメトリクスは数多くあります。

トラフィックをもたらすリンクを手に入れるべきだと以前言っていましたね。トラフィックを多くもたらすリンクが、もたらさないリンクと比べて重要な理由は何ですか?

グーグルはあらゆるシグナルを利用します。グーグルは次のアイテムを所有しています:

  • グーグルアナリティクス
  • グーグルアドセンス
  • グーグルツールバー
  • グーグルクローム

また、ウェブの大半のトラフィックを追跡することも可能です。ユーザーが多くの時間を過ごしているのはどのサイトか、そして、多くクリックされているのはどのリンクなのかをグーグルは把握しています。トラフィックをもたらすリンクは、SERPのランキングを押し上げる傾向があります。

大勢の個人のSEOがエコシステムから追放され、大規模な企業の社内SEOの報酬に連鎖反応が起きる日はやって来るのでしょうか?

そうは思いません。そもそも大きな企業で「SEO」専門の従業員に遭遇することはとても稀です。大きなメディアサイトの有名なSEOのエキスパートであっても、その他のマーケティングの仕事も兼任しているようです。現在の一般的なSEOの知識は、数年前と比べて遥かに浸透しています。

2008年の金融危機により、同年の年末には広告代理店やマーケティング代理店の予算はゼロに削減されました。 影響を受けた業者はリストラを敢行し、社内マーケティングの担当者にSEOの仕事が与えられました。2008年、多くの企業が従業員にトレーニングを受けさせるため、“インハウス”パネルの参加者は、以前の数十名から数百面に激増しました。これが大きな転換期になりました。こういった企業は2009年に良質なSEOの価値を学んだのです。この傾向は今でも続いており、インハウス部門は質の高いSEOに今まで以上に資金を投じています。

贔屓が加速化するにつれ、小規模な個人のプレイヤーは、タブキさんがrobots.txtブログで実施したように、検索から一挙に退散することになるのでしょうか?広告ベースのモデルは、アルゴリズムが安定していない故に信頼出来ないと見られるようになるため、さらに多くの重要なコンテンツは有料性に切り替わっていくのでしょうか?

有料性を採用しているサイトは何を封鎖しているのか気づきつつあります。ペイウォールを利用するには、とてつもなく大きな価値を持っていなければなりません。一部のサイトは有料性を採用して大きな成功を収めていますが、一部のサイトは失敗に終わっています。有料性の大きな問題は、ずっと壁の後ろに留めておくことが難しい点です。

今まで以上に多くの収益の機会を活用している人達がいます。広告、アフィリエイト、そして、リンクは有望な代案として活用されています。また、eコマースサイトが再び(もしくは三度)数多く作られています。前回との大きな違いは、コンバージョンへの依存度です。コンバートするサイトの構築に関して、ウェブマスター達は随分と賢くなっているようです。

ここ数年で作られた大きなアルゴリズムの穴 & 欠点の多くは、その他の問題を必要以上に穴埋めしようとして生まれています。ブランド(またはブランドタイプ)のシグナル & 利用に関するシグナルは、今後数年間、検索に大きな影響を与えていくと思いますか?

ええ、そう思います。こればかりは避けようがありません。ブランドのオーソリティが求められているためです。グーグルは、以前のように各種の分野で大きなブランドをオーソリティとして認めるまで、シグナルをとことん利用していくでしょう。

オーソリティの贔屓/ブランドの贔屓等は、関連度が低く、そして、あらゆるクエリに対して下半分は商業的な意図がプンプン匂う、通常の自然な検索結果に対して、十分なバーティカルの検索テクノロジーが展開されるようになるまでは、欠かすことは出来ないのでしょうか?検索業界はオープンなエコシステムから閉ざされたエコシステムへの向かっているのでしょうか?もしそうなら、このトレンドはいつか逆転するのでしょうか?

100%検索ベースのトラフィックエコノミーから、その他のトラフィックソースが台頭するエコノミーに移行しつつあると私は確信しています。ソーシャルメディアは、これからもより多くのトラフィックを獲得していくでしょう。

また、新しいタブレットおよびスマートフォンのトラフィックエコノミーは、検索よりもソーシャルに向いています。検索は積極的に頭を使うアクティビティであり、一方のソーシャルはクリックして、“何が起きるのか確かめる”スタンスです。検索は、製品およびリサーチ、そして、適切な情報を探し出すことが主な役割です。ソーシャルはネットフリックス TVで再放送を見ながら、フェイスブックの写真をサーフするような、くつろぎながらタブレットで遊ぶ行為が基本です。また、受動的なソーシャル経験よりも、積極的な検索経験向きの新しいスマートなTVが台頭しつつあります。このような新しいテクノロジーによって、検索エコノミーは大きく変化していくでしょう。

アマゾン等の企業が大規模な広告ネットワークを作成したら、最終的にグーグルはオーソリティの贔屓から撤回するようになるのでしょうか?

フェイスブック以外はグーグルによる広告の独占を阻止することは出来ないと思います。

大量の無料のカスタマーレビューがオーソリティサイト & バーティカル市場に存在しますが、細部にこだわったエキスパートによるレビューは、アルゴリズムの好みの変化によって市場から追放されているのでしょうか?

ある程度は私も同じ考えを持っています。この傾向に抵抗しているのはクオラのみです。クオラ以外ですと、バザールヴォイス(註:ソーシャルメディアをコマース化する米国の人気サービス)式のレビューモデルが、ライバルが存在しないために、成長を続けています。

他のカンファレンスにはないパブコンの魅力は何でしょうか?

専門性です。パブコンの参加者の55%は、自分自身をエキスパートだと考えており、30%は高度な技術を持っていると自負しています。そのため、私達はプレゼンターに最高クラスのプレゼンを要求し、実際に期待に応えてもらっています。内容のレベルは、セミナータイプのカンファレンスでは飛び抜けていると思います。そして、平均的な技術者のために合理的な価格を設定している点も魅力の一つです。


この記事は、SEO Bookに掲載された「Brett Tabke Interview」を翻訳した内容です。

内容についての感想は読む人のSEO歴や知識に多分に関係してくると思いますが、個人的には冒頭のエピソードは偶然私もSEO Japanを元々2002年2月に公開したのでシンパシーを感じてしまいました。ブレットもいうように、当時の内容が意外な程、今のSEOにも通用する内容なのは私も驚きます。(記事はこちら)。

激動のSEO業界、SEO業界、企業のSEO担当者、それぞれ大変な時期とは思いますが、この変革をどうにか乗り切っていきたいものです。SEOなんて10年前は無かったに等しい存在なのですし、今は10年前とは比較にならない程、価値ある情報(ゴミも多いですが)がインターネットに溢れています。天才じゃなくてもイイ、少しのアイデアと行動力があれば、きっと誰にもできるはず。
— SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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