電子書籍リーダー上のファイルよりも本を好む多くの理由の1つ:本には歴史がある。時に、その歴史は明快で顕著である。本は、それに伴った思い出や感傷的な価値を持っているのかもしれない。しかしながら、時に、歴史は奇妙で、歪められ、隠される。特定の本には、ミステリアスな部分や、ワクワクするような謎の言葉や、正常な領域を超えた何かがある。
これは、そういった本、学者を悩ませ愛書家を興奮させてきた本のリストだ。電子書籍について心躍ることはたくさんあるが、本のそのミステリアスな原点は決して新しいフォーマットに置きかえられることはないのだ。
目次
イエール大学のバイネッキ図書館(Beinecke Rare Book and Manuscript Library)には、誰も読むことができない本が存在する。ヴィオニッチ手稿と呼ばれるその本は、1912年に古書商ウィルフィリッド・ヴィオニッチによって発見され、学者、暗号研究者、愛書家には解けない暗号であることが判明している。
この手稿のページの放射性炭素年代測定によって、15世紀ごろに作られた本であることが分かった。文章は知られている言語とは適合しないアルファベットで書かれており、もしそれが暗号だとすれば、過去100年間、暗号解読者と暗号研究者を悩ませている。この本は、一部は植物や薬草のイラストが入った薬局方に、一部は錬金術のテキストに、一部は宇宙論的論文であるように見える。でっち上げだと言う人もいるが、もし本当だとしたら、それはものすごい複合書物である。
ジョン・ディーは、名高いエリザベス女王時代の研究者であり、数学者、占星術師、オカルト信仰者、錬金術師であった。彼は、エリザベス朝の相談役でもあった。もっと印象的なことに、彼は3000冊を誇るイギリス最大の図書館を所有していた。
ディーは、Book of Soyga―魔術師にはAldaraia とも呼ばれていた―が、神の使いによってエデンの園のアダムに啓示されたと信じていた。本自体は16世紀に書かれた魔術に関する論文で、この記事と同じように神々しく導き出されたようである。実際には、この本のミステリーは、ディーの死後に始まる。ディーの見事な図書館は、彼がヨーロッパ大陸で過ごした数年間の間に荒らされ、彼は自分の残りの人生を支えるために残った本のほとんどを売らざるを得なかった。Book Of Soygaは、学者Deborah Harknessが2冊の本をあきれるほどに明らかな場所―ロンドンにある英国図書館とオックスフォードにあるボドリアン図書館―で見つけた1994年までなくなったものとされていた。
1701年、ドミニコ会修道士フランシスコ・ヒメネスが、かつてキチェ王国の領地だったグアテマラの小さな町チチカステナンゴにやって来た。そこで、ある教区民が彼に、口頭伝承されたものを文字にした写本を見せた。それはスペイン軍によるラテンアメリカ制服の後初めて作られたものだった。“ポポル・ブフ”とは、“人々の書”という意味で、乱暴な植民地化の後にそれが作られたと言うことが最初の行に証言されている。
この本自体は、世界創造を詳細に述べ、その他いくつかの神話を研究している。それは、Adrian Recinosによって再発見されて出版されるまで、長い間世に知られず埋もれていた。ヒメネスがどうやってこの写本を手に入れたのか、その元となったものがあったのか、そんなにも厳重に守られていた秘密であるとしたら彼はどうしてそれに接触することが許されたのか、について長い間議論になっている。
リプリ―・スクロールとは、15世紀に、錬金術師として活動していたヨークシャー出身のアウグスティノ会修道士、ジョージ・リプリ―の名前に由来する巻物である。彼は、変成転換と不死の秘密を探し求めて20年近くもヨーロッパを旅し、彼が1477年にイングランドに戻って来た時には、彼がそれを見つけたのだと信じた人もいた。トルコとの戦いの資金として彼がマルタとローデスの騎士に与えた多くのお金は、彼がベースメタルから変化させたゴールドによるものだったと言われている。
リプリ―・スクロールは、謎めいた一連の絵の中で、寓話として名高い賢者の石がどのように作られたのかを示している。錬金術を学んだことのない人(または、ハリーポッターの本を読んだことにない人)のために言っておくと、この賢者の石が、不老不死薬を作る重要な原料であり、鉛を金に変えるためにも必要だった。一連の絵には、“あなたは、地球の水、空気の地球、火の空気、地球の火を作らなければならない”というような不可解な言葉が添えられている。
レヒニッツ写本の記録に残っている歴史は、バッチャーニ・グスターフ伯爵がそれを蔵書の一部としてハンガリー科学アカデミーに寄贈した1838年にまで遡る。そこに書かれている言葉は、古いハンガリー語の綴りと偶然の類似性があるものの、それらは全く異なる言語であることが証明されている。ヴォイニッチ手稿と同じように、まだこの文字の解読に成功した者はいない。この写本はハンガリー人の贋作者であり国粋主義者のリテラーティ・ネメシュ・シャームエルによるねつ造であると広く信じられているが、いずれにせよ確かな証明はされていない。
1947年、2人のベドウィンの羊飼いがパレスチナの死海に沿う洞窟に入った。そこで彼らは思いがけない発見をした。クムランと呼ばれる古代集落の陶器や布や木と一緒に約2000年前の巻物の一片があったのだ。その巻物は、エネッセ派と呼ばれるユダヤ教宗派に属するものであると一般的には信じられているが、サドカイ派やファリサイ派やゼロテ派といった他の宗派に属する可能性を支持する人もいる。すぐ近くの洞窟では、さらに多くの巻物や羊皮紙やパピルスの一片などの貴重品が見つかっている。
この巻物は、ローマ軍がユダヤ文化と新生キリスト教の動きを破壊しようとしていた時には、陶器の瓶の中に隠されていた。クムランの遺跡は、西暦67年ローマ人によって徹底的に破壊され、そこで見つかった灰が遺跡の中に他にも巻物や書籍があったことを裏付けている。
コンラッド・リュコステネスによるProdigiorumは、このリストの中でもおかしな1冊である。ギリシャ時代やローマ時代から同時期の予言までヨーロッパの周知の歴史に及ぶ予言と前兆を集めたものだ。さらに、本物と空想の両方の様々な生物を説明および描写している。サイ、象、ラクダ、ムースの正確な木版画と同様、海獣や胴体の上に頭や顔のない人間に似たおかしな生物も含まれている。それは、ノストラダムスが予言書を書いたのと同じ時期に出版されており、彼の作品に影響されたことは明らかである。
カール・ユングは有名な20世紀の心理学者であり、分析心理学の運動の生みの親である。彼は、フロイドの弟子だったが、後にフロイドの理論からは分岐した。この間に彼は、正式にはLiber Novusと名付けられ、ユングの支持者や後継者の間では非公式に知られており、後に赤の書そして出版された本を書き始めた。
この本は、1913年に始まるユングの精神破綻であるかのような状態から始まる。ユング自身がこの時期を自分の無意識との対立として言及した。彼は、自分の心理学理論を発展させながらこの本に16年の歳月を費やした。本の中身は、彼が“積極的創造(アクティブ・イマジネーション)”と呼んでいるユング自身の成長のテクニックを使って生み出された。その中で彼は、後にイライジャとサロメであると認定した男性と女性の訪問を受け、集合的無意識を深く探求するプロセスの指導をされた。
ユングの後継者たちは、2001年まで80年近くの間、この赤の書に触れられることを避けてきた。それは、2009年についに発行されたのだった。
コデックス・セラフィニアヌスは、ある報告によれば、シュールレアリスムとファンタジーとの不安定な境界線にある本だ。イタリア人アーティスト、ルイージ・セラフィーニによって書かれたこの本は、別世界の百科事典とされている。セラフィーニ自身が作りだした言葉によって書かれ、カラーの奇妙なイラストがいたるところに描かれている。まつ毛を備えた人間の目玉に似た魚や、安全ピンでいっぱいの血を流したフルーツや、海に浮遊した巨大なオイスターの貝殻に包み込まれた都市などがある。Abe Booksに載っているページに従い、暗号理論者は番号付けシステムを解読することを試みたが、この言葉は判読できないことが証明された。
“本”の定義をさらに大きく広げると、ロンゴロンゴもこのリストに入るにふさわしい。これらの木片―中には物や小像の形をしているものもある―には、19世紀の発見以来、解読されることがなかった象形文字のシステムが含まれている。
チリ人とペルー人の軍隊の島への上陸が人口に破壊的な影響を与えた。侵略者が何回も襲ってきて、次第に先住民の人口のおよそ半分に当たる約1500人もの人を誘拐したり殺したりした。天然痘と結核の流行は、商人によってわざと持ち込まれることもあった。残った人達は、奴隷労働者として強制的にタヒチへと移住させられた。10年以内に、人口の97%がいなくなり、この象形文字を判読できる者はいなくなったのだ。
メンドーザ写本は、奇妙な歴史のある並外れた書物だ。それは、1616年に、アントニオ・デ・メンドーザ総督に依頼されてスペインの国王へと送られた。しかしながらその道中、それを運んでいた船隊がフランスの私掠船に攻撃され、写本は他の貴重品と共にフランスに持って行かれた。それは、オックスフォードのボドリアン図書館に姿を現すまで、数百年の間埋もれていた。
この本が並外れたものであるのは、それがアステカの書士と情報提供者によって書かれたアステカの人々に関する本だからだ。それを最初の“オートエスノグラフィー”―そのグループのメンバーによって書かれたそこにいる人達のバイオグラフィのこと―と呼ぶ学者もいる。
この名高い予言に触れずして完成する謎めいた超自然的な力に関する本のリストなどあるだろうか?この有名な予測と予言の本は、1555年に初版が出版されて以来、400年以上の間ベストセラーとなっている。当時、予知と予言の収集は大きな需要があった。ノストラダムス、本名ミシェル・ド・ノートルダムは、周知のように、薬剤師と伝染病の医師としての道から歩み始めた。恐らく、彼に未来の終末論的な視点に特別な関心を与えたのは、腺ペストの発生の真っただ中にあった彼の仕事だったのだろう。
集められた予言は、まさに韻を踏んだ4行詩の中で、様々な災害の予測を提示した。彼に関する都市伝説や神話はたくさんある。911、2つの世界大戦、ダイアナ王妃の死、広島と長崎への原爆投下、その全てを彼が予測したと主張されている。数週間以上の間ニュースになる出来事があると、誰かがどこかでノストラダムスの400年前の書物を持ち出して、彼はそれが起きることを知っていたのだと主張していることは確実であると思う。
グノーシス主義の聖書を含む書物群、ナグ・ハマディ写本の発見は、ビクトリア朝の冒険小説の始まりのようである。1945年、アラブの農夫ムハンマド・アリ・サマンが、上エジプトの砂漠で皮で綴じられた13冊の本が入った陶器の瓶を発見した。彼は兄弟と共に他の男に対する血の復讐をするために出掛ける間、その本を自宅に放って置いた。それらの本がエジプト当局に注目され、押収されてカイロのコプト博物館に所蔵されるまでに、何冊かは誤って料理の火で焼かれ、その後何冊かは闇市で売られた。
次第に、この写本が神聖なキリスト教文書であることが明らかになった。この本は、1500年以上前のキリスト教初期の頃に作成されたものだ。どんなキリスト教文学でも触れられたことのない本もあれば、異端信仰を主張して教会に禁止されたものもある。一般に認められた教会文学に反論する視点を提供し、その発見以来、論争を巻き起こしている。
ホープダイヤモンドと同じ位呪われている本があるとしたら、それはサンゴルスキー版のルバイヤートだ。この本は、それ自体が芸術品である。カバーは皮で装丁され、前面には宝石がちりばめられた孔雀が描かれ、金箔が鮮やかに施されている。デザイナーのフランシス・サンゴルスキーは、これをデザインするのに何ヶ月も費やし、作成までには2年がかかった。この本の高貴な芸術性とそれにまつわる悲劇的事件の両方の理由から、伝説的な本になっている。
サンゴルスキーの原本はタイタニック号と共に沈んだ。船と本が大西洋に沈没した6週間後、ランシス・サンゴルスキーは、それを作り直す前に、溺死した。サンゴルスキーのパートナーであるスタンリー・ブレイは、サンゴルスキーの原画から2冊目の本を作ることに6年間を費やした。その後、その本はロンドン大空襲で破壊された。ブレイは40年をかけて次の本を作り終え、彼の死後、大英図書館に寄贈された。
ヘンリー・ダーガーは典型的な都会の世捨て人だった。彼は、掃除人として働き、シカゴの小さなアパートに40年間住み、一度も結婚をせず、人付き合いを避けていた。しかしながら、彼の死後、1973年に、彼のかつての大家がダーガーが特殊な習慣を持つ世捨て人だったことを発見した。彼は長年にわたって小説を書いており、その1冊は彼が死んだ時には15,000ページにまで及んでいた。
『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコ・アンジェリニアン戦争の嵐の物語』という長すぎて手に負えないタイトルが付けられたこの壮大なファンタジーは、添付の水彩画によって華やかに飾られている。羽のついた少女が、武装した男に追われて奇妙なパステル調の世界を飛ぶのだ。この本は、豊かで心をかき乱すようなアウトサイダー・アートの代表例である。
この記事は、Business Punditに掲載された「15 Weird and Mysterious Books」を翻訳した内容です。
人間の想像力の可能性を感じずにはいられない幅広いジャンルの気になる本がありました。意外と電子書籍化したりしてくれると嬉しいかもしれません。特に最後のヴィヴィアン・ガールズの物語は映画化もされたりしたので日本でも知っている人もいるかと思いますが、長すぎて紙の書籍で出版できない本ですからね。電子書籍に最適とはこのことかも。ただ読み終わるには数年以上かかりそうですが・・・。– SEO Japan
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