エンタープライズSEOは高度な技術が要求されるわけではない。事実、遥かに多くの繊細なSEOのタスクを実行する必要がある(また、自分達だけで作業しなければならないことも多い)その他の多くのSEOのセクターよりも単純である。
それでは、なぜエンタープライズSEOは恵まれず、また、なぜ適切に採用している大企業はほとんど存在しないのだろうか?
それは、エンタープライズSEOはマーケティングよりもサプライチェーンマネージメントによく似ているためだ。
皆さんがエンタープライズSEOのイニシアチブへの投資を検討している経営陣の一員なら、この入門書、そして、大規模な組織をSEOに導いてきた過去10年間の私の経験から教訓を得てもらいたい。
1. 信条を見つける。
私は多くの大企業が多額の資金をエンタープライズSEOのイニシアチブに投入する光景を目にしてきた。そして大半の結果では、自然検索が期待したよりもビジネスに良い影響を与えていないことが明白になった。
私達は現在、そして、お金の話をしている。自然検索が実際にオーディエンスや顧客獲得の流れのモデルを動かしている状況に対して、徹底的な実現可能性調査を行う理由は十分にあると言えるだろう。“無料”の検索結果は無料ではないのだ。
2. C-レベルの重役の承認は絶対に欠かせない。
会社の文化の変化を行う力を持つのは重役である。そして、エンタープライズSEOは決して安くはない。6桁、あるいは7桁のコストがかかるため、クライアントと昼食を共にした際の費用の差額を利用する方法も、裏金を何とか作り出して当てる方法も役に立たない。
3. 社内?外部のコンサルタント?
コンサルタントとして雇ってもらえるのであれば嬉しい。コンサルタントなら誰もこんなことは言わないが、敢えて言わせてもらおう。外部のコンサルタントが必ずしも最善のルートだとは限らない。
外部のコンサルタントは、専門の経験に加え、広範な経験をもたらしてくれるが、リーダーシップに優れ、全体を見渡すことが出来る社内の既存のSEOマネージャーが素晴らしい成果を残すケースも多いにある。
理想は、外部の会社を雇って社内のSEOを評価し、戦略的なビジョンをもたらしつつ、社内スタッフが組織とプロセスを導く能力をフル活用するシナリオである。
4. エンタープライズSEOは時間がかかる点を理解する。
エンタープライズSEOの取り組みの効果が表れるまでには少なくとも半年かかることはあまり知られていない。私達は巨大な貨物船、つまり、大きな組織を動かそうとしている。企業は既にスケジュールを事細かく決めている点、そして、プロジェクトにおける法的な承認等のプロセスにより、動きが止められてしまう可能性がある。
5. 「なんでこの“グーグル頼みの戦略”に会社全体を合わせなければならないんだ?」と言う疑問が生じる。
検索エンジンはインターネットの得点表である。最新の検索エンジンは、インターネットの隅々から、そして、全てのソースからデータを拾い上げている。PR部門が新しい店舗を立ち上げる際に行う取り組み、もしくは重役が母校で発表するスピーチに至るまで – このようなアクティビティに関連するウェブシグナルが存在する。
この全体像、そして、ウェブシグナルがまとめられている仕組みを理解している企業は、組織の利益を最大化するエンタープライズSEOのプログラムを策定することが出来るだろう。より多くのキーワードをテンプレートに加えることが最も重要だと考えているなら、ここで読むのを止めて、リンクトインの履歴書を更新した方がよい。
6. エンタープライズSEOを所有するのは誰?
事業の特徴に応じて、99%の確率でエンタープライズSEOはマーケティング、編集、もしくはIT部門に置かれる。
残念ながら、大企業では、予算を持っている人物、もしくは事業の効果を最もうまく説明することが出来る人物にエンタープライズSEOが委ねられることが多い。双方が担当するのが理想である。
7. 最高のSEOエキスパートの雇用、もしくは任命を避ける。
矛盾した発言のように思えるかもしれない。SEOの専門家としては優秀でも、最悪の状態からチームを導き出すことが出来ない人間は存在する。
他者を導くことが出来るSEOエキスパートを雇用するべきだ。おばあちゃんのお花屋さんや趣味レベルのブログとは異なる。大きな企業に付き物の任務を指揮し、ビジョンを表現し、そして、重役、MBA保持者、そして、その他の分野のエキスパート達から認めてもらわなければならないのだ。
8. 技術的なリソースがなければ戦略は即死する。
エンタープライズSEOの戦略に技術的なリソースが割り当てられていないなら、時間とお金の無駄と化す可能性が高い。エンジニアリングのリソースは高く、見つけるのが困難な点は百も承知だ。
主要な検索エンジンのマーケットシェアに対する事業の効果、そして、エンタープライズSEOのイニシアチブから生まれる全てのウェブに基づく付属的なメリットを説明することが出来るなら、愚痴を言わず、リソースを見つけて解決しよう。私の経験上、自然な検索が戦術的なチャンネルとして据えている企業は、エンタープライズSEOの予算を割り出すことが出来る(# 1を参照)。
9. プロセスを磨き上げる。
アップルが最高の電話を作っているかどうかは分からないが、優れたスマートフォンを作っている点に関しては誰もが同意するところだ。一方、アンドロイドは電話を構築する最高のプラットフォームかどうかは分からないが、質が高く、どんなメーカーでもスマートフォンを販売することが出来る点は納得してもらえるだろう。しかし、スマートフォンの市場で利益の大半を得ているのはどの企業だろうか?アップルである。
最も高価な電話機、そして、有標商品を持つ企業が、携帯電話部門の利益の大半を獲得しているのだ。それはなぜだろうか?サプライチェーンおよび製造プロセスが鍵を握っている。ほぼ全てのプロセスで、アップルは他のどの企業よりも多くの利鞘を得ているのだ。
エンタープライズSEOも原理は同じである。ウェブに面する全てのアクティビティが検索エンジンの純利益をもたらすように管理することで、“チェーン”の総合的な利益が発生し、やがて競合者をパフォーマンスの上で凌ぐのだ。
勝者が決まるまでに時間のかかるプロセスではあるが、勢いを得ることが出来れば、オーディエンスや顧客の獲得において非常に防御に優れた戦術的な利点が生まれるだろう。
10. その他の“ウェブ関係”の取り組み。
グーグルやその他の現代の検索エンジンは、様々なデータに注目し、中核となるウェブシグナル(コンテクストおよびウェブリンク)を確認している。ソーシャルメディアは、シグナルのリストで注目を浴びており、ツイートや共有は間違いなく検索結果に影響を与える。しかし、登録機関のデータ、クロール可能なeメールから得たシグナル、ウェブ分析、共引用等…全てが積み重なっていく。
先程挙げた新しいお店のオープニングの例で、PRチームがプレスリリース、ソーシャルメディアでの配信、当該の地区での印刷媒体による宣伝、動画コンテンツ、そして、イベントのイメージによってさらに多くの効果を得られる点を考慮してもらいたい。
エンジンに対してオーソリティを確認する機会は溢れており…フォーチュン 500に載る企業なら、同じ計画を大量の店舗に対して実施しなければならなくなる。
11. 評価を恐れるべきではない。
エンタープライズSEOは明確な副作用を持つ…評価だ。
コンテンツ生成を支えるテクノロジーだけでなく、ウェブに面する事業のプロセスに対する総体的な評価は、取り組み全体の計画または中間地点の成績をもたらす。組織全体への早い段階での前進命令とも言えるだろう。
12. 簡単に達成することが可能な目標。
評価には、簡単に達成可能な成果が幾つか現れているはずだ。この機会にすぐに投資を行い、さらに組織的な承認を得て、追い風を作り出そう。
その後、既にスタッフ全員がプロセスの成果をある程度実感するようになるため、遥かに難しい問題と事業の決断に向き合わなければならなくなる。
13. 社員の知識を向上させる。
アップルが、その全体的な生産の利点を活かして、スマートフォンマーケットの利益を独占しているように、米国の軍隊の全体的な教育および意思決定能力のおかげで、史上最高の国防力が実現していると主張する人は多い。
すべての兵士、水兵、海兵隊、空軍兵がそれぞれのフィールドで徹底的な教育およびトレーニング計画を受け、その後、自発的に、それでいて全体の国防ポリシーに一致する決断を下す方法を伝授される。
これは食堂から敵地の最前線に至るまであらゆる場所で行われる。エンタープライズSEOを成功に導くため、同じことを会社の中で行いたい。各従業員は、それぞれのタスクが、全体像 – つまり検索結果のランキングに影響を与えるクロール可能なウェブに及ぼすインパクトを理解しなければならない。
14. トレーナーをトレーニングする。
外部の組織を雇う場合も、内部のチームを育てる場合も、リーダーになってもらう必要がある点は既に申し上げた通りだ。数万人の社員を抱える国際的な企業全体を一度に教育することは不可能である。しかし、トレーナーを教育することは可能だ。
優れたエンタープライズSEOキャンペーンは、SEOの知識を既存のトレーニングプログラムに注入し、メッセージを幅広く伝える内部の支持者を特定する。
15. トレーニングに次ぐトレーニング。
イベントやスタッフの作品からSEOのメリットを抽出する取り組みを、マッスルメモリー化させる、またはウェブの世界のマッスルメモリーに値する作業に変える必要がある。トレーニングは総体的で、一貫性があり、そして、継続的に行う必要がある。
継続的にアルゴリズムのアップデート(グーグルパンダを知っているだろうか?)が行われ、そして、ウェブが進化する(数年前にはツイッターもフェイスブックも無名であった)状況下では、スタッフの出入りが激しい大企業においては、この取り組みが必要である。
16. 参戦する。
大規模なサイトのパフォーマンスにおける最大の障害は、コンテンツのインデックスである。大量のコンテンツページを持ち、その多くが内部リンクを意識せずホームページに向かう被リンクのみを掲載しているなら、関連する検索エンジンのクエリに対する競争におけるコンテンツの“旨み”はほとんど存在しないことになる(とりわけ古いコンテンツにおいては)。
サイトの構造を改善し、一方で既に得たリンクの価値を保護することで、それぞれのコンテンツのパフォーマンスを向上させる効果が見込める。
17. XML パイプライン。
幸いにも検索エンジンは全てのコンテンツの存在に気づくためのプロトコルを構築している…XMLのサイトマップだ。今回は、適切なXMLのサイトマップの入り組んだ構造を説明して皆さんを退屈させる行為は慎むが、大きなサイトに対するXMLのサイトマップの構造が非常に重要である点を強調しておきたい。これは検索エンジンへのルートである。
18. 巨大なeコマースサイトに欠ける固有のコンテンツ。
大きなeコマースサイトを運営しているなら、先程挙げた広範な構造の懸念を持つだけでなく、恐らくパートナーもしくはアフィリエイトと全く同じデータフィードを利用しているのではないだろうか。固有のコンテンツのコストは高い点は重々承知しているが、これは避けてもらいたい。
多くのカテゴリーにおいて、固有のコンテンツの作成問題を妥当な価格で解消しているeコマースサイトは成功する。売り上げ原価のその他の一部と同じようにコンテンツを取り扱う必要がある。
19. オーディエンスの島流し。
大半の編集コンテンツ管理システムには、不運な副作用がある。それは、新しいコンテンツが作成されると、最後尾のコンテンツがホームページ、セクションページ、もしくはその他のノードから蓄積した“旨み”を持って離れて行ってしまう点である。
「旨み」を一貫して、コンテンツの本文または関連するコンテンツのモジュールを使い、内部リンクを介して古いコンテンツもしくは常に新鮮なコンテンツに必ず渡すように心掛けよう。
20. 自動化は友達。
ある程度自動化に頼る必要がある。自力で大量のページを、場合によっては複数の言語で管理することは不可能である。コバリオ、ブライトエッジ、そして、コンダクター等のエンタープライズSEOのツールは、この大変な作業を支援してくれる。
21. 計測することが出来るものは管理することが出来る。
印刷媒体やテレビとは異なり、ウェブ分析やその他のオンライン計測ツールを使って、作業の結果を割と正確に把握することが出来るはずだ。
22. 大量のデータ。
大規模な企業は大量のデータを生成する。サイトのトラフィックの分析であれ、有料検索のキーワードのレポートであれ、売り上げであれ、獲得したユーザーのレビューであれ、ソーシャルメディアでの言及であれ…エンタープライズSEOのイニシアチブに利用して、さらに競争力を強めるために使える大量のデータが蓄積されているはずだ。これは規模が大きければ、それだけ融通が利く分野である。
23. 少ないデータ。
メトリクスを簡単に理解することが可能な内部レポート形式で伝えていない場合、達成しようとする試みのインパクトは無駄に散ってしまう。その他のイニシアチブへのマインドシェアを失ってしまう可能性もある。各種のレベルおよび部門に対するレポートは異なるものの、利用することが出来る程度にシンプルな形式を採用する必要がある。
24. リンク。
10年以上前に私が作成した記事は、恐らく、「リンクのためなら母親も売る」と言う文言で始まっていただろう。今でも質の高いリンクは、他の何よりも自然な検索において変化をもたらす。異論がある人はいないはずだ。
事実、それ自体がSEOキャンペーンを導く能力があるかどうかを試すテストにもなる。以前のクライアントの仕事で、競争の激しいカテゴリーで、リンク構築を行うことなく優れたコンテンツだけで上位にランクインさせたと豪語するような人達は相手にするべきではない。
とは言っても、この記事の冒頭でも触れたが、エンタープライズSEOのキャンペーンでは本格的なリンク構築業者は必要ないだろう。企業自体が既にオーソリティを確立しているためだ。
最も重要なリンクの決定は、既に素晴らしいオーソリティをいかにサイトの構造全体に流通させ、全てのコンテンツの競争力を高めるかに集約されるだろう。
25. ソーシャルネットワークでの言及。
ツイート、フェイスブックのいいね!、スタンブル、もしくはその他のソーシャルメディアの言及は、最近の検索エンジンの結果でコンテンツに力を与える点においては、被リンクほどのパワーは見込めない。しかし、重要性が低いわけでもない。リンクデータに対する補完的なシグナルであり、日に日に信頼性は増している(とりわけ最新のニュースやその他の“新鮮”なコンテンツにおいては)。ソーシャルメディアでの言及の生成を組み込める大きなサイトは、自然な検索結果での位置を死守する力を強めることが出来るだろう。
エンタープライズSEOの僅かな利益を作り出すことが出来るツールはほとんど存在しないことを付け加えておこう。また、エンタープライズSEOでは目標を達成することが出来る可能性は高いものの、製品と言うよりも事業のプロセスの最適化にあたるため複雑である。それでは最後に、とても広い範囲に及ぶインターネットマーケティングの取り組みであるにも関わらず、ほとんど称えられることがないエンタープライズSEOに関わる全ての人達に敬意を表したいと思う。
この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「The Ultimate Guide To Enterprise SEO: 25 Things To Know Before You Take The Plunge」を翻訳した内容です。
もう少し理路整然とさせても良い気もしましたが、読み応えたっぷりの内容でした。1つ1つのトピックの説明が短いこともあり、ある程度の知識がある人でないと筆者の意図が伝わりきらない気もしましたが、それなりのエンタープライズSEOに取り組んでいる人であれば、大半が納得できる内容だったとは思います。日本ではこれまでSEOベンダーも外部リンク対策中心の会社が多かったこともあり(私もですが・・・)特に大規模のエンタープライズSEOは米国と比較しても取り組み自体かなり遅れていると思いますが、今後は確実に増えていくと思いますし、SEOの知識と経験はあるがエンタープライズレベルでの取り組みはこれから、、というSEOエキスパートにもSEO業者にも是非読んでもらいたい記事でした。 — SEO Japan
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