原題は「Do Not Track & Search Marketing」。
SEO Japanでもお馴染みサーチエンジンランドのクリス・シャーマンがモデレーター。Antezeta Web Marketingのシーン・カルロス、Looper Reed & McGrawの弁護士トラビス・クラブツリー、Vincodoのティム・デイリー、そしてDidit.comのケビン・リー。弁護士事務所+検索マーケ会社の面々。
まずはクリスがセッションの趣旨を紹介。最近プライバシー問題が世界的に注目されている。昨日もヨーロッパでECサイト以外はユーザーのクッキーをトラッキングしている場合は、サイト訪問時にユーザーにそれを伝えなければいけない法律が可決された。現実的にユーザーがサイトを訪問した時にポップアップでクッキーであなたの情報をトラッキングしていると告知しなければいけない状況を想像できるか?このような動きが世界的に出ている。今日のセッションではそれにまつわる様々な話題を話し合いたい、とのこと。
まずはSEO会社Didit.comのケビン・リー。業界の超ベテランですね。
全体的な話をするとメディアのマーケットプレース化によりサーチと関係なく、広告主はより望んでいるターゲットユーザーにメッセージを伝えることができるようになった。ただその分、ユーザーの行動履歴を追っているのも事実。
行動履歴に関する規制が進むと、広告の関連性は下がらざるえない。一般的に消費者は、個人を特定しているわけではなくとも、自分の行動がトラッキングされているといわれると嫌がるだろう。業界側が啓蒙する必要が多分にある。
サードパーティクッキーが絶滅したらどうなる?
検索という意味ではリファラーデータがなくなるわけではないし、致命的ではない。他の広告システム(アドネットワーク、キャンペーン管理、アフィリエイトなど)の方が致命的だろう。
ブラウザーの設定でクッキーをブロックするユーザーも増えていく。同じく啓蒙活動がいる。
最近流行のリターゲティング広告、ユーザーにとってはどこまでが許容範囲か?離婚の弁護士を進められ続けたらどう思うか?行きすぎなパーソナライゼーションも同じ。
行動履歴問題に関しては、業界全体の啓蒙が必要。正しい技術と戦略を持つことも重要。
次はAntezeta Web Marketingのシーン・カルロス。歴史的にこの問題を見てみたい。
広告業界の有名な台詞。
広告費の半分は無駄になっている。問題はその半分がどこにあるのか分からないことだ。
ウェブが普及してきた頃(1996年~1997年)から、ウェブで可能となった行動履歴のトラッキング技術に関しては懸念の声はあった。2006年でもWall Street Journalは「クッキーはスパイウェア」と言い切った。2009年、ドイツではプライバシー問題からGoogle Analyticsの利用は禁止すべき、との声が上がった。
トラッキング技術はクッキーだけじゃない:
1. クッキー(ブラウザーテキストファイル)
2. Flash LEO(ブラウザークッキーと似ている)
3. リファラー(URLリファラー)
4. クリック(ウェブマスターツール)
5. ビーコン(画像やサーバーコール)
トラッキングの活用法:
・ユーザーの行動履歴を取得
・ユーザー毎に最適なコンテンツを表示
FTC(米連邦取引委員会)も、かなりの懸念をしている。
SEOの観点からのプライバシー問題。最大はキーワードのリファラー。クッキーも場合によっては関係してくる。
まだパニックになる必要はないが、マーケッターであれば、最低限の技術を理解し、議会の動向も確認しておきたい。
次にVincodoのティム・デイリー。
1998年頃からページのカテゴリーに基づいたバナー広告が表示されるようになった。ネットバブル崩壊の後、もっと高いROIを要求する声が広告主から上がった。バナー広告は衰退し、他のチャンネルに手法が移った。もちろん最大のチャンネルは検索、そしてGoogleだった。
Googleのアドワーズ広告は最もレベルの高いターゲティング機能を搭載して広告主にアピールした。同時期に電子メール広告がCAN SPAM法により、大打撃をくらった。
行動ターゲティング広告の人気が徐々に高まりつつある。行動ターゲティング広告のCPMは現在平均$4.25。広告価値があると思われている。
同時にプライバシー問題が起こりつつある。例えば普通のメディアサイトに訪問するだけで18のクッキーを付けられる。
ファーストクッキー以上にサードパーティクッキーが問題視されている。
Personal Identifiable Information (PII)
PIIは特定の個人を認識するための情報。名前、住所、メールアドレス、電話番号、カード番号など。現在、これらの情報をオンラインのユーザー行動と結び付ける流れがあり、これが最も懸念されている。
実際にやり過ぎの会社もある。例えばNebuAd。ISPと提携し、パケットスニッファーにより消費者の全てのオンライン行動をユーザーの許可無しに収集した。現在、この会社が裁判で配布して機能していない。
Facebookのビーコンプログラムも2007年に登場した際、非難を浴びた。44のパートナーサイトがFacebook用にサードパーティクッキーを食わせた。
AT&Tのような大手電話会社もかなりグレーなことを行ってきた。
大手アドネットワークのSpecific Media。
RapLeaf。ユーザー行動データをソーシャルメディアのデータと連動させた。100万以上のユーザーデータをソーシャルメディアから収集。
InterClick。大手アドネットワーク。Flashクッキーが問題視された。
業界団体もあるが、上記の会社が参加していたりする。
上記のような会社の過激な手法がPPC・リスティング広告に影響を与える可能性もある。
次世代のブラウザー(2011年)ではサードパーティクッキーをオプトアウトできる機能がつく。アドネットワークも過激なデータ取得をしないよう努力する必要がある。
最後に弁護士事務所Looper Reed & McGrawの弁護士トラビス・クラブツリー。
弁護士の立場から、この問題について解説。
まず、プライバシーは憲法で守られている。
「心配するには早すぎる」という話もあるが、プライバシー問題は100年以上前からあった問題。当時から「写真を勝手に撮られることはプライバシーの侵害だ」という話題があった。
現代ではFTCがこの問題に取り組む存在。ツイッター、大手ペット用品店のPETCO、大手スーパーのシアーズなどオンラインの取り組みに対しFTCから様々な介入があった。
FTCによるプライバシーへの3アプローチ:
プライバシー by デザイン
企業は消費者のプライバシーを守る最大限の組織・運営プロセスを作るべき
プライバシー by ロケーション
ロケーションも考慮すべき。
高い透明性
当然重要。
FTC、そして議会ではプライバシー問題に関する「行動履歴を取ることは全て禁止」という極端な議論含め、様々な議論が行われている。
最後にQ&A。回答は弁護士&サーチ会社で。
クリス:ブラウザーでクッキーのブロックリストを使う話があるが、どうやって作るんだ?
サーチ会社:個別に作られ、自分が信頼する会社や人のリストを参考にするという流れではないか。まだまだ未成熟で今後の分野だが。
サーチ会社:何かをブロックすれば、それを回避する手法が現れる。最近ではHTML5を使った手法など。終わりはない。
クリス:PC単位のフィンガープリントについてもう少し教えてくれないか?
サーチ会社:PC単位でブラウザーのバージョンからOSの種類、スクリーンの解像度など50以上の様々な要素を組み合わせれば、ユーザーのPCを個別に特定することができる可能性が高い。
クリス:ウェブは益々グローバル化しているが、その影響はあるか?
弁護士:例えば常にヨーロッパ対策を常に考える必要がある。一般論でいえばヨーロッパの方がアメリカよりプライバシー問題に厳しい。もしもヨーロッパに顧客がいるなら無視できない問題になる。
クリス:アフィリエイトのパートナーが違法にデータを取得していたら責任はマーチャントにあるのか?
弁護士:ある。例えば不動産会社は不動産エージェントの行動に責任を持つ必要があるのと同じ。アフィリエイトのパートナーときちんとした契約を交わすことが重要。
クリス:この種の法規制が厳しくなっていった場合、検索マーケティングに何が起こるのか?
サーチ会社:クッキーが禁止された時の影響が大きいだろう。今は8%~10%のブラウザーがクッキーを排除しているだけであっても、これが50%以上になってくると、信頼性も含め、効果的なマーケティングを行うことが難しくなってくるだろう。
クリス:アトリビューションに対する影響はどうか?
サーチ会社:アトリビューションはクッキーが使えなくなれば、相当厳しいだろう。ユーザー毎に発行されるダイナミックURLで対応するなどの手法もあるかもしれないが、かなり大変なのは間違いない。
サーチ会社:ファーストクッキーは現状ほとんど問題になっていない。アトリビューションが自社サイトベースであれば特に問題ないと思う。
セッションを聞いても現時点で方向性が決まった話ではまだなさそうですが、ターゲティング技術の進化とターゲティング広告の人気に伴い、今後さらに大きくなりそうな問題ですね。流石にリファラーの特定まで禁止される日が来るとは思えないというか思いたくないですが。。。今後も注目していきたいトピックではありますね。 — SEO Japan
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