原題「”Content Farms” Or The Smartest SEOs In the World?」。モデレーターはサーチエンジンランドのマイク・マッギー。パネリストは今回初?!のYahoo!からルーク・ビーティ、AudienceWiseのマシュー・ブラウン、Blue Fountain Mediaのバーン・ホバート、PerfectMarketのティム・ルーダー。
マイク・マッギーから冒頭のコメント。最近何かと問題視されているコンテンツファームだが、人によって定義がかなり異なる。広告が多い、検索キーワードをターゲットにしている、質が低い、など。むしろ明確な定義はまだ無いといっていい。様々なコンテンツファームがあれば比較的役に立つコンテンツを作り出しているファームもあれば、全体的に質の低いファームもある。
今回のGoogleのパンダ・アップデートは多くのコンテンツファームに打撃を与えたのが事実。Yahoo!やEzineArticlesが代表的。ただeHowなどは特に影響を受けていないようだ。
まさに旬のこの話題、パネリストの発表内容に期待したい。
まずは今回のGoogleアップデートで大打撃をくらったYahoo!からルーク・ビーティ。
Yahoo!のコンテンツネットワークでは40万人以上をネットワーク化している。大半のコンテンツはアソシエイティドコンテンツ.comにホスティングされ、またそこからシンディケーション配信される。
今回のGoogleアップデートでどれ位打撃をくらったかと良く聞かれるが、
AssociatedContent.comへのGoogle経由のアクセスは1/3上がって2/3下がった
という印象。インデックス自体は93%が残ってされている。
いずれにしても今回の件で色々と考えるべき課題はより明確になった:
・コントリビューターへの影響は?
・Yahoo!へのトラフィックの影響は?
・品質への影響は?
・マーケッターへの影響は?
Associatedcontent.comをYahoo!買収前の歴史をさかのぼって考えたい。
2005年にコンテキスト = コンテンツ広告という概念を考えた
その後、
コンテキスト = ハイパーターゲットなディスプレイ広告
に進化していった。
さらにYahoo!買収によってさらに
コンテキスト = 消費者のアクティベーション(Consumer Activation)
をいかに喚起できるか?というレベルに進化している。
クラウドソーシングによって編集された記事であり広告だ。コンテンツファームと呼ばれることは心外。
ちなみに今日現在、
70%のコンテンツはクラウドソーシングによって作られている。
30%のコンテンツはあなたが知っている人によって作られている。
次にPerfectMarketのティム・ルーダー。何故かプレゼン資料無し。
既存メディアが持っていた価値。現状のネットにおいても既存メディアが提供する品質の高いコンテンツは重要だ。ただウェブの進化に伴い様々なことが変わっている。
30年前、サタデーナイトライブ(註:人気のコメディショー)でこんなシーンがあった。カダフィ大佐のスペルが新聞や雑誌によって、全て違ったというニュース番組を紹介した。ちなみに今もメディアによってスペリングが違い100種類以上あるという話もある。
コンテンツファームとは何か?コンテンツファームは、人々が何に興味があるかということを自動で認識し、そこから低価格で大量のコンテンツを産みだす仕組みを持っている。
1. 大量コンテンツ生成
元々新聞がやっていたことでもある。コンテンツファームはそれをさらに効率化した。
2. 消費者のニーズ特定
元々従来メディアではアンケート等でデータを取っていた。また同時にどういう情報が今後求められているかという未来に対する意識も持っていた。コンテンツファームのニーズ特定プロセスは検索キーワードに大半が基づいており、ポリシーも何もない。例えば同じサイトであってもカダフィのニュースにしても全く統一性が無い。
3. 宣伝広告のアトリビューション
従来メディアでは広告とコンテンツでセクションが分けられていた。ネットメディアのディスプレイ広告が該当する。
4. コンテンツファームのエコノミクス
コンテンツ生成コストは限りなく低い。それは中長期的に利用に耐えうるコンテンツなのか?従来メディア、特にニュースメディアは毎日奇跡のニュースを探し求めているが、時に時間を超えて利用に耐えうるものとなる。コンテンツファームの質の低いコンテンツはGoogleのアルゴリズム変更一発で存在価値が無くなる可能性もある。今後品質を上げていくことで時間を超えて耐えうるコンテンツに成りうるかが重要になってくる。
コンテンツファームは多くの課題を持っているが、さらに良くなっていける。
Blue Fountain Mediaのバーン・ホバート。コンテンツファームのエコノミクスについて。
何故、水をどうやってグラスに注ぐかという記事を1つ書くだけで$15もらえるのか?
オールドメディアの場合:
・ニュースやアートなど外部ソースに基づいたコンテンツ。
・大量のオーディエンスを得て広告を売る。
ニューメディア( = ディマンドメディア!)の場合:
・検索キーワードで人々に望むコンテンツを特定し与える
・コンテンツ単位で特定されたターゲット広告を配信する
・2010年のRPM = $13.45。26%のアップ。
↓
・バカらしい程スケールできる。
・オールドドメインをお金に変える最高の方法。
・特定のテーマ(レシピ、セレブリティなど)に関するサブサイトを作ってそこで稼ぐ方法もある。
・ファイナンステーマのサイトはまだない。多分そのうち出てくる。
勝者は誰か?
・時間よりお金がある者が勝ち
・ネット上の一種の不動産オーナー
・非伝統的なスタッフ(フリーランス、主婦など)
・検索ユーザー(超ロングテールワードで検索する場合、コンテンツファーム以外にそもそもコンテンツが無いケースもある)
・(コンテンツファーム/ディマンドメディアの)株主 🙂
敗者は誰か?
・お金より時間がある者
・既存メディア
・ブロガー
・今から参入しようとする人
・検索ユーザー(ビッグワード、ミドルワードで検索する人には質の低いコンテンツが増えて困る)
革命
・コンテンツファームからコンテンツファクトリーへ
・サイトのオーナーとコンテンツ生成プロセスを分離
・マーケティングプロセスからコンテンツクリエイターを分離
・中国の発見の次に大きな労働革命?!多くの人にとってeBayより稼げる
SEO
・品質で勝負
・ソーシャルメディアを活用
・メールマガジンも活用
・”Made- for- “Made- for AdSense””(次世代のMFAサイト)
最後にAudienceWiseのマシュー・ブラウン。パンダ・アップデートについて。
今回のGoogleのアルゴリズム更新は基本的に品質の低いコンテンツが多いサイトがターゲットになった。コンテンツファームという括りは正しくない。
まずはドメインオーソリティの問題。評価の高いドメインを持っていればそこに大量のコンテンツを置くことで品質を問わずGoogleで上位表示することができた。大手サイトは少なからずこのGoogleの特性を集客に活用していた。Googleはこの傾向を今回かなり改善したと考えている。ドメインオーソリティに対するサイト全体の「フィルター」的なものではないか。
パンダ・アップデートで悪影響を受けたサイト
・品質 vs 量 の比率で品質が低く量が多すぎるサイト
・ドメインオーソリティに依存しすぎた大型サイト
・少量の高品質のページしかない小規模サイト
・広告とリンクが多すぎるページ
逆に、
パンダ・アップデートを生き残ったサイト
・ブランドシグナルが高いページは生き残っている
・ソーシャルサイトで共有され、リンクが張られているサイト
・ホームページへのリンクと内部ページへのリンクのバランスが良いサイト
何故、eHowが生き残ったのか?
・他のコンテンツファームに比べ、広告がページ上部、アボブ・ザ・フォルドにほとんど表示されていない
順位が落ちたサイトは今後何をすべきか?
・広告を減らすなどサイトをクリーンナップ
・ブランドシグナルを発信
・チャンネル/ドメイン
・コンテンツの質を改善
・スケールプロモーション
例えば中規模のサイトでリンクが1つしかない内部ページが、特定のフレーズで1位になったりしている。何かサイトを改善することで今回のアップデートに対抗できる可能性はあると考える。
以下、Q&A。回答者はパネリストで統一します。
マット:コンテンツファームってそもそも悪いことなのか?
パネリスト:コンテンツの品質に一定のケアを行っていれば、悪いことではないはず。検索結果の品質自体を低下させるかどうかが目安では。
マット:クラウドソーシングされたコンテンツを利用する場合、気をつけることは?
パネリスト:SEOを変に意識しすぎて内容自体に意味がないコンテンツにならないか気をつけるべきだろう。あくまでユーザーニーズがあることが基本。目的毎に、内容に応じたコンテンツを求めるべきだ。
マット:コンテンツのフォームは何が良いのか?ビデオはどうか?
パネリスト:ビデオはきちんと作れば有益でもあるし、Googleでも上位表示する傾向がある気がする。もちろん画像やコンテンツのタイトルでSEOを意識する必要がある。
マット:Googleの役割はどう考える?Google Trendやアドセンスがコンテンツファームを産み出している側面もあるのでは?
パネリスト:Googleはオフェンスとデフェンス両方の側面がある。検索エンジンでもあり広告会社でもある。どちらか一方の側面だけで考えることは危険だ。Googleにとっても必ず両方の側面から何をすべきか考えているはずだ。
パネリスト:Googleのビジネスモデルはユーザーの信頼性が極めて重要なモデル。仮に広告収入が多少下がったとしても、最終的にはユーザーの信頼性がより得られる方法を選ぶと思う。
マット:アップデート後のインタビューで、マット・カッツなどがサイトの信頼性について話していたが、デザインの側面からは実際どうなのか?
パネリスト:eHowの例でも述べたが、デザインによってサイトの信頼性が得られるという考え方もある。
マット:今回のアップデートでダメージがあったサイトの場合、コンテンツの品質を改善すれば順位は改善するのか?
パネリスト:おかしなリダイレクトが無いかチェックすることは基本だと思うが、例えばページのテンプレートを変えること(広告を減らすなど)でもしかすると改善する可能性もある。現時点では誰もまだ分からない質問だが、時間と共に答えも出てくるだろう。
マット:内容がほぼ同じだが、タイトルが全く違うコンテンツが2つある場合、どのような評価になるか?
パネリスト:ユーザーが1つのコンテンツしか見なければそれはそれで良い気もするが、Googleはどちらかのコンテンツをミラーコンテンツと判断する確率は十分にある。
各人のセッションとQ&A、それなりに聞きごたえのある内容でしたが、もう少し白熱した議論がほしかったですね。コンテンツファームサイトがもっと登壇してくれたらよかったのですが。元々はAnswers.comが参加する予定だったのですが、買収話がある?(聞き間違えならスミマセン)センシティブな時期とかでキャンセルになったみたいです。しかし見事にYahoo!のBing採用(海外)からYahoo!からのSMX登壇が減りました。今回もサーチではなくコンテンツファームとしてですからね。。。コンテンツファームと呼ばないでほしい、ってコンテンツファームは全員いうことなので、いまいち信頼性がないのですが、いっていること自体は正しいと思えることばかりでした。Googleのいじめ?に負けないで頑張ってほしいところです。
最後のAudienceWiseの分析はどうなんでしょう。ある程度納得もできるのですが、かなり主観的すぎる気もしますが。eHowが今回落ちなかった理由はそれだけなのでしょうか。ま、ここまで色々考えて試行錯誤する姿勢は素晴らしいですけどね。
日本では余りコンテンツファームビジネスを行っているサイトが少ないので直接的には参考にならないかもですが、Googleがコンテンツの品質を重視していく姿勢は今後ますます強化されていくことだけは間違いないと思いますので、その側面から学ぶべき点は多そうです。 — SEO Japan
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