SEOは、グロース戦略の一部として、ユーザー獲得のフェーズで使用できる最も大きな仕掛けの内の1つであろう。
AARRR (Acquisition:ユーザー獲得, Activation:利用開始, Retention:利用継続, Referral:紹介, Revenue:収益)のような他のフレームワークを好む方もいるだろうが、こうしたフレームワークは、すべからく、「Acquisition:ユーザー獲得」から始まっている。Webサイトやアプリに訪問してもらうことで、自身の製品を顧客に知ってもらうのだ。そして、自然検索からのトラフィックは、Webサイトやアプリへの訪問を促すチャネルの中で、最大規模のものである。過去数年間、様々なマーケティングやグロース(SEO)のチームと仕事を行い、自然検索からのトラフィックを可能な限り最大化させることに注力してきた。この記事では、そのような経験から私が学んだことを披露したいと思う。
グロースチームがある”新しい”会社では、SEOチームは複数あるチームの1つとして存在する。もしくは、他のマーケティングチャネル(PaidやReferrals)か、他のファネル(リテンションやライフサイクル)の一部として存在しているだろう。こうしたグロースチームが共通して注力していることが1つある。より多くのデータと新しい機会を駆使することで、可能な限りの速さでビジネスを加速させる助力となることだ。
人々はインターネット上のあらゆる場所で検索を行う。そのため、SEO担当者も、Google・Bing・Yahooのような検索エンジンの領域外にも注意を向けている。Quora・Instagram・Facebookはもちろん、YouTubeでの露出を高めるためにできることはなにか?ということまで思いを馳せるのだ。SEOチームは、会社が構築してきたプロダクトやサービスについて、今まで一度も検索したことのないユーザーを可能な限り追いかけている。
AppleやAirbnbなどのように、ブランド認知度が非常に高い企業もある。ユーザーはその製品やサービスについて詳しく、アカウントも既に保有している場合も多い。そのため、こうした企業は、自身の業界内でのユーザーに注視しており、彼らに自身の製品を再発見させることで、ブランド認知やライフタイムバリュー(CLTV)を向上させようとしている。
こうしたチームは、ビジネスの成長にどのように貢献しているのだろうか?そのプロセスはどういったものなのだろうか?
SEOのプロセス
1.キーワード調査
2.Webサイトの技術的監査
3.分析とレポート
4.競合・リンク調査
5.コンテンツ作成
SEOの施策が進めば進むほど、SEO自体が製品の中に組み込まれるため、より多くの時間を自身の指標に影響を及ぼす領域に費やすことになるだろう。多くのトラフィックが発生している大規模なサイトの場合、SEOの実験を行い、何が効果的で何が効果的でないかを発見することは比較的容易だろう(しっかりとした環境設定とデイリーで5,000以上の流入が必要となる)。しかし、新規ビジネスの場合、時間をかけていくことで、どの施策が有効でどの施策が有効でないのかを発見できるようになっていくのだ。
これまでの話は、いわゆる通常のSEOについての話と言えるだろう。多くの場合、(そして、このことが事態を複雑化させることになるのであるが)、状況が目まぐるしく変わる環境に身をおいているだろうし、業界自体の変化も激しいはずだ。こうした流れに食らいつきながら、リソースを規模化させ、チームをグロースさせ、自身の指標を上昇させなければならない。成長を示す何らかの指標が必要であるし、可能な限りの速度でSEOが成長しているという実感を持たなければならないのだ。
SEOチームをどのように作り、成長させていけばよいのか?SEOチーム、また、組織自体が、その目標を達成するために何が必要であるかを見ていこう。
SEOチームについてのディスカッションを行う場合、彼らが組織内のどこに位置づけられるのか、というトピックがよく持ち上がる。その答えは、組織によって変わるものだ。純粋なWeb業界とハードウェアの製造会社では、組織内の位置づけもかわるだろう。最近のトレンドでは、SEOチームはグロースチームの一部として見られることが多いようだ。ブランドにおけるユーザー獲得に大きく貢献することが、その理由だ。横断的な組織の場合、主体的に動く能力と、SEOの成長(もちろん、スパム的な手法ではなく)を達成するために必要なあらゆる領域の責任と権利を有しているはずだ。
これについては、会社ごとに異なるだろう。有益な答えではないのだが、事実なのだ。The Next Web社では、SEOチームはマーケティングにかかわるさまざまな取り組みを行っているが、技術的な課題に向き合うことが多い。コンテンツに関しては、編集チームが細心の注意のもと、作成を手がけている。我々は、サイトやプラットフォームの技術的なセットアップを中心に取り組んでいるのだ。アーキテクチャの修正や、すべての施策がそうあるべき状態を保つことができているかを確認している。
一言で表すと、横断的機能、と言えるだろう。私が見てきた中で最高のチームは、SEOスペシャリスト、エンジニア、コンテンツ作成者、デザイナーによって構成されたチームだった。彼らが一堂に会すことで、驚くべき製品やコンテンツを生み出し、多くの自然検索経由によるトラフィックを獲得していたのだ。それぞれの担当を下記に記載しよう。
SEOはあなた一人で行うものではない。大きな組織の中、あなた一人でSEOに取り組んだところで、失敗することは目に見えているだろう。理由は単純で、ボトムラインに影響を与えるほどの十分な施策をこなせないからだ。組織が大きくなればなるほど、組織間を横断する取り組みが必要となるだろう。加えて、SEO施策を前進させるために、SEOの知識、ツールの活用、他のチームの協力などが重要となる。
別のチームの協力を得ることで、幅広い領域の知識を得ることができる。このことが、コンテンツの作成やキャンペーンの実行などを可能にするのだ(グロースのSEOチームではよく見られるが、ブランドのマーケティングチームでは当てはまらないこともある)。
自然検索での露出を高めながら、事業の目標達成を加速させることが成功と言える。最終的には、事業の成功につながるような、事業と関連したトラフィックの獲得を目指すことになるはずだ。さまざまなプラットフォームでの上位表示を目指すだろう。YouTube、Facebook、Googleなどが対象になるが、事業の利益を発生させることが最終的な目的となる。そして、それはあなたの上司が最も興味をもつものでもある。事業に対し、あなたはどれほどの利益をもたらすことができるのか?これを達成することが、あなたの成功を意味することになるだろう。
SEO担当者にとっての主要なゴールは、事業に関連したより多くの自然結果からのトラフィックを獲得することだ。しかし、このゴールに到達するまでに多くのKPIが存在する。そして、これらのKPIは直接事業に影響を与えるものではない。私が関わってきたSEOチームも、多くのKPI(クロール数、リンク数、ページの品質、エラー数など)モニタリングしていた。SEOチームのゴールにおいて、障害となるものがないかを確認するためだ。
昨年、SEOにおける適切な指標の選び方、また、SEOのパフォーマンスを測るための適切な指標についての記事を書いているので、そちらも参考にして欲しい。
取り組むべき事項は多々あるが、大きく3つに分類することが可能だ。もちろん、事業によってはさらに考えるべき項目も存在する。しかし、多くの場合は、下記の3つの領域でカバーできるはずだ。
詳細な調査を行うことで、どのような機能やコンテンツが不足しているかが明らかになるだろう。しかし、多くの場合、自社の事業領域においてどのようなキーワードが必要かを明らかにすることが重要だ。Google Search ConsoleやBing Webmaster Toolsを使用し、ターゲットキーワードのボリュームはどのくらいであるか、また、現在のパフォーマンスはどの程度のものなのか、などのデータを集める必要がある。
*左から:平均の検索ボリューム、現状のCTR、順位ごとの最も高いCTR
また、逆を言えば、現在は上位表示されていない領域における、将来的な機会を把握することでもある。そして、ターゲットキーワードのグループを再編成し、どの領域にリソースを注力すべきかを、判断するのだ。
しかし、これだけでは、まだ手を付けていない領域における機会を特定したにすぎない。最終的には、現在保有するアセット(プロダクトやコンテンツ)を最適化しなければならない。ここでは、どの領域を注力すべきか、優先度を設ける必要がでてくる。既存リソースの活用、すでに取り組んでいる領域における新しいリソースの構築、まだ取り組んでいない領域における新しいリソースの構築(つまりは、実験)の3軸をもとに、優先度をつけるべきだろう。
可能な限り、事業に関係する指標に注視すべきだ。それらが、あなたが一員として参加しているグロースチムにおける、また、事業における価値となるはずだ。未だに、獲得したリンク数を指標にしているSEO担当者をよく見かける。しかし、リンク数自体は、利益を生み出すものではない。結局の所、事業に貢献している指標をベースとすべきなのだ。
そうであれば、結果をどのように分析すればいいのか?どのくらいの流入を獲得し、どのくらいのコンバージョンを達成したか、を見るべきだろう。これらが事業における利益に直結することになるからだ。NPOの場合は、寄付の金額や寄付をしてくれた人数を見ればいいだろう。こうした数値が、組織のメンバー(CEO、SVP、VP、ディレクター、マネージャーなど)が気にかけている数値なのだ。
この記事では、グロース戦略におけるSEOの役割、また、グロースチームにおいてSEOはどうあるべきか、について説明してきた。
皆さんは自身の組織で、どのようにしてSEOチームを構築するだろうか?どのようなメンバーを割り当て、どのようにして組織の全体的な成長戦略に貢献できるだろうか?このテーマに対するあなたの意見をぜひ聞かせて欲しい
この記事は、CXLに掲載された「The Role of SEO in Growth」を翻訳した内容です。
組織の規模、ビジネスの領域、リソースの量などによって、SEOチームの役割や担当領域は様々です。
しかし記事内でも指摘されていたように、最終的には「どの程度事業へ貢献しているか?」が求められるということは共通しているはずです。
不確定要素や外的要因などが多く含まれるSEOだからこそ、その重要性や役割を組織全体に対して発信共有することが重要です。
他チームからの支援や理解を得るための努力は、継続して行っていきたいものです。
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