イギリスでは、新聞に対する蔑称がある。chip wrappers(チップの包み紙) だ。どんなに良いものでも、今日の一面が明日のフィッシュ・アンド・チップスの包み紙になってしまうという意味である。
ブロガーもそれに通じるものがある。ほんの数日か数時間だけ脚光を浴びるような1つの素晴らしい記事を書くのに何時間も働く。今週あなたを見つけた読者は、あなたが先週書いたものは知らない。ましてや去年のものなんて。
自分の一番出来の仕事さえもチップの包み紙以外の何物にもならない運命だと感じるのは嫌なものだ。
あなたは、芸術家が傑作を作り出すための時間がたくさんあって、聴衆もそれを味わう時間を持っていた古き良き時代を夢見ている自分に気が付くかもしれない。優れた交響曲や小説やソネット集を書けば、それのおかげでその先何年も有名になれたのだ。せめてこの現代社会がこんなにも果てしなく忙しくなかったら良かったのに。
それをヨハン・セバスチャン・バッハに伝えたい。
私たちにとって、バッハはクラシック音楽の巨匠の1人であり、彼はファンが決して飽きることなく聞き続ける多数の素晴らしい作品を生み出した。彼の音楽はこれまでに数え切れないほど演奏され記録されてきた。
そのため、彼が作曲に時間をかけ、作品に対して当然の悠長な敬意をもって接していることは簡単に想像できる。そして彼がそれを完成させた時には、ファンが“ヨハン、もう一度それを演奏して!”と懇願するような、ファンの称賛を気持ちよく浴びる多くのチャンスがあったに違いない。
しかし、実際は少し違っていた。
今日の“古い”音楽に対する聴衆の興味は、比較的新しい現象なのだ。17~18世紀には、聴衆は新しい音楽にしか興味がなく、作曲家は次の演奏会のために新しい曲を作るのに忙しかった。
~ ロバート・ワイズバーグ, Creativity: Beyond the Myth of Genius
バッハは、過酷なスケジュールで注文された音楽を作曲する従業員として働いていた。そういう任務の1つが、ライプツィヒにある聖トマス教会での職だった。それは一流ではあるが大変にきつい役職で、彼はそこで毎週1つのカンタータ(聖句のための音楽作品)と祝日のためのものを加えた年間60曲を作った。彼はこの役職に5年間就いていたのだ。
バッハは数十年もの間、一日平均20ページの音楽を書いていた。テイラー・コーウェンは、この割合で創作するのは経験豊富なコピーライターにも至難の業だろうと言っている。言葉を変えると、それだけの五線譜を正確に書き写すだけでも大変だろうから、それを作り出すなんてとんでもない話だ。
それにもかかわらず、それが偉大な作曲家の妨げになるとは言い難く、この種の生産性は実際には有利だった。Creativity: Beyond the Myth of Genius の中で、ロバート・ワイズバーグは偉大な作曲家とそうでもない作曲家の間の最高傑作と二流作品の比率の統計調査について検討している。
研究者は、ヒットと失敗の比率は一流作曲家と2流作曲家の間でほぼ一貫していたという結論を出した。本当に優れた作曲家は他の人よりも多くの傑作を生み出しているが、それは基本的に彼らの全体の作品量が多いからなのだ。
彼らを有名にしたのは、努力を要しないたぐいまれな才能でも悠長な完璧主義でもなく、容赦ない生産性なのだ。
バッハは生涯で1000以上の楽曲を書いた。私たちはそれらに全く同じだけの敬意を持つことはないが、彼が書いた1つ1つの曲に感謝すべきである。なぜなら、もし彼がもっと少ない熟練の作品しか量産していなかったら、私たちが楽しめる傑作も少なくなっていたからだ。
さらには、傑作を作り出すための重要なヒントをいくつか集めることができる模範となる人も近くにいなかっただろう。
では、あなたのコンテンツマーケティングが使用済みのチップの包み紙のようにポイと投げ捨てられないようにするために、バッハから学ぶことができる7つの教訓をここに紹介しよう。
目次
バッハは雇われの音楽家だったが、彼は自分の作品に対してアーティストとして取り組んでいた。彼はそれが最高度の水準を持つことによってもたらされる一番の職務保証、そして不朽の名声のチャンスだということを知っていた。
自分自身を“ブロガー”だと思わないことだ。自分はライターだと思うこと。そしてアーティストだと思うこと。
ブログ投稿ではなく、記事を書くこと。“私は今まで数年間、良いものを出し続けてきたのだから、読者も今週は私を寛大に見てくれるに違いない。”と決して思わないこと。
常に自分の精いっぱいの力で書くのだ。
1日20ページの音楽は勝手に生まれたものではない。バッハは、Getting Things Doneや37 Signals、Remember the Milkのような作業効率化ツールの助けも当然借りていなかった。しかし、明らかに彼は生産性への豊かな取り組みを行っていた。
一貫してうまく書くことには、書く時間の質が要求される。一日のうち最も生産性の高い時間を確実に書くことに費やすようにすることだ。
それは、これを維持する一日、一週間のルーチンを身に付けることを意味する。さらには、日々のタスクを全て管理する場所に生産性システムを備えて、書いている時間にはそれらのことを忘れて自分の作品に100%集中できるようにすることを意味する。
バッハは起業家でもビジネスオーナーでもなかったが、芸術的であることと同様に自分のキャリア目標や財政的なことを達成することも重視していた。彼は、教会の座席で聞いている人と同じ位にパトロンのことや自分の評判のことを頭に入れて書いていた。彼は、自分の向かっている場所が分かっていたし、そこに到達するためには何をする必要があるかも分かっていた。
あなたが書く全ての記事があなたのブログの全体像に合っていて、あなたを長期的ゴールに一歩近づける時、その特定の記事が長い間は脚光を浴びないだろうということも簡単に受け入れられるのだ。
つまりそれは、自分のビジネスの戦略の方向性を評価(再評価)する時間をとり、自分がブログに書くもの全てがそれと一致するのを確実にすることなのだ。
マタイ受難曲とブランデンブルク協奏曲は、最高の土台となるコンテンツである。バッハは週のスケジュールに従って書いていたが、その目は不朽の名声に向けられていた。
話題性の高い時事的な記事のためのスペースも時間(短い)もあるが、もしあなたがそればかりを書いているのなら、あなたはデジタルのチップの包み紙を提供しているにすぎない。
今から5年後、10年後にも今日的な意味を帯びていて、検索可能で、役に立つ記事を書くのだ。そうすればあなたのブログは長い時間をかけて絶えず価値が上がるだろう。さらに、前の記事からリンクバックして読者に再度紹介し続けることができるため、それはあなたのライターとしての仕事も簡単にするのだ。
音楽学者ノーマン・キャレルはバッハの作曲の綿密な分析を実施し、200曲以上の歌のない作品には彼自身の古い作品からの借用が含まれていたこと、そして彼のカンタータの65%は彼の古い合唱作品から類似の借用が含まれていたという結論を下した。
明らかに、彼は変化を持たせて繰り返すことを気にしていなかったのである。
あなたがこれまで書いたこと全てを読者の全てが読んでいるわけではないという事実を開き直ることだ。しばらくブログを書き続けた後に、自分のアーカイブを見直してどのテーマが再訪に適しているか自分自身に問うのだ。
あなたが考えていることは、それを以前に書いた頃から少し変わっているだろう。あなたの考えを反復するのではなく、改訂し広げることになるのである。さらにそれらの投稿にリンクすることもでき、それがトラフィックを上昇させ、新しい読者にあなたの以前の仕事を楽しむチャンスを与えるのだ。
キャレルの分析により、バッハの歌のない曲80作品に他の作曲家からの借用が、200曲以上のカンタータにルーテルの讃美歌のメロディが発見された。
作曲家にとって過去や現在の作曲家の主題から変奏曲を作ることは慣例だったため、これが盗作と見なされることは絶対になかっただろう。
ブログはクロスリンクと意見の交流で成長する。それが1つの大きな会話ではないだろうか?あなたが他のブロガーの主題を選んでそれを反復して彼らを新しい方向に伸ばすような補足的な考え方を提供すれば、彼らはそれを気に入るだろう。さらに他の人達があなた自身の優れたブログ記事にリンクするという副効用も得られるだろう。
時々、フィードリーダーをあなたのミューズにすること。ただリンクするのを忘れないように!
バッハが羽ペンと紙を手に腰かけていた時代、彼は音楽ストアに積まれた贅沢なCDボックスのことも、人々が彼のソナタをiTunesにダウンロードして通勤中に聞くなんてことは夢にも思わなかったはずだ。
自分のブログ内に自分のコンテンツを再定義するための優れた方法は、土台となるページを作ることだ。しかしそこで止めてはだめだ。ブログ記事は電子ブック、書籍、ビデオ、ポッドキャスト、ライブセミナー、eラーニングプログラムの基盤となり得るのだ。
ブログでは無料のことを実際に会って教えることで私にそれなりのお金を払った人の数は数え切れない。あなたが自分の考えのフォーマットを変える時にはいつも、それらを新しい聴衆にとって新しく今日的な意味を帯びているものにすることだ。
歴史的文献によると、バッハはお金を稼ぐことと自分の評判を築くことをとても重要視していた。
しかし、彼の作品を聞いて、彼は音楽自体を愛していなかったとか、彼は書くために腰をおろしてその流れに入り込むと異次元に連れて行かれることはなかったと言う人を私は否定する。
ゴールは重要ではあるが、しばらく脇に置いておこう。収入の観点からの“自分がブログを書いている理由”については忘れ、自分がなぜゴールを達成する手段として書くことを選んだのかということに重点を置くのだ。
もちろんそれは、あなたが書くことが好きだからで、生きるために書くというのは夢の実現なのではないだろうか?もしそうならば、今自分が好きなことをする機会があるということがどんなに幸せかということを忘れないことだ。
その機会を最大限に生かして欲しい。
この記事は、CopyBloggerに掲載された「The 7 Essential Steps to Creating Your Content Masterpiece」を翻訳した内容です。
もちろんバッハが歴史の残る天才だったのは間違いないとは思いますが、成功したのは才能のおかげだけではなかったでしょう。実際の所、バッハ程の才能は無くともここに書いてあることを日常的に意識して実践するだけでも、それなりのレベルの結果は出せる気もします。そう思って日々努力したいものですね! — SEO Japan
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