スタートアップの成長を加速させるプロセスで学んだ7つの教訓

公開日:2011/06/21

最終更新日:2024/03/18

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自らもシリアルアントレプレナーの筆者がカナダのモントリオールで昨年設立した最近流行りのリーン(小規模)スタートアップ支援会社での経験を元に、スタートアップの成長プロセスを加速化させるための教訓を7つ。シリコンバレー程スタートアップが盛んじゃないエリアだけに日本でも参考になる点が多いかもしれません。それ以上に、エリア関係なく全てのスタートアップ、そしてそれを支援する人にも大いに参考になる記事です。 — SEO Japan

Year One Labsは、リーンスタートアップの加速器である。私は、それは顧客育成とリーンスタートアップの綿密なプロセスに重きを置いた、その種で初めてのものであると思っている。私は3人のパートナー(Raymond LukAlistair CrollIan Rae) と一緒に2010年4月、Year One Labsを共同設立し、その年の9月に本格的に開始した。

共同設立以来、私達は、5つのスタートアップに投資をした(それは私達の目標数だった)。今も私達は、日々それらのスタートアップと共に仕事をしている。彼らには、プロダクト・マーケットをフィットさせたり(出来る限り近づける)、さらなる資金調達を進めたりして、自足できるようになるか、もしかすると失敗するか、Year One Labsで12ヶ月の猶予がある。

私達はスタートアップの加速器を始めて多くのことを学んできた。特に、リーンスタートアップの方法論に焦点を合わせたものだ。Year One Labsは、それ自体がスタートアップであり、多くの顧客育成とリーンスタートアップのサイクルを経験している。

私たち自身のモデルを繰り返し適用すること

Year One Labsの最初のアイディアをまとめている時、私達には、何が機能し何が機能しないのかについて自分達自身の仮説があって、自分達が取り組もうとしていたモデルに自分達の方法を繰り返し適用した。私達の最終的なゴール(と仮説)は、意義のある財務利益を投資家(私たち自身も含む)に提供することができることだった。しかし、そのプロセスには多くのステップと仮説がある。ここにその例をいくつか挙げる:

  • 仮説1: 私達は、かなり若い経験の浅い起業家を引き付けることになるだろう(例えば、大学を出たばかりの人)。私達はそうなると仮定した。なぜなら、私達のモデル(Year One Labsの中で12ヶ月50,000ドル)は、キャリアを始めたばかりで予算が最低限の人たちに適するからだ。
  • 結果1: 私達は、募集の取り組みをこのターゲット層に制限しなかったが、できるだけ彼らに接触する努力をした。最終的には、このターゲット層がYear One Labsに最も引き付けられたわけではないことが分かった。私が思うには、これはカナダの大学で育てられている起業家精神がないことによるところが大きい。
  • 仮説2: スタートアップがYear One Labから“卒業する”のには最大12ヶ月を要するだろう。この場合の“卒業”とは、彼らが自足できる(収益を得ながら)か、さらなる資金調達をしてビジネスを拡大していることを意味する。
  • 結果2: どのスタートアップもまだ卒業していないが、私達が求めているけん引力のレベルに達するまでに12ヶ月は必要としないことが明らかになっている。それは、6カ月近くである。これは、私達がYear One Labsで新しい企業をどう進めていくかに影響を与えるため、私達にとって素晴らしいデータ点である。
  • 仮説3: スタートアップは、完全に出来上がったチームと完全に出来上がったアイディアを持ってYear One Labsにやって来るだろう。
  • 結果3: 私達が投資したスタートアップは、アイディアが“固まる前”の段階がほとんどだった。いくつかのケースでは、私達が気に入った人材を見つけて彼らと合わせたりしてチームを作ることもした。Year One Labsはできるだけ早い段階で投資をするのに適していて、もっぱら人に焦点を合わせているという認識である(アイディアとマーケットは、評価からとてもとても離れたところにある)。私達のモデルは、チームが曖昧なアイディアを持ってYear One Labsにやって来て、顧客育成プロセスを始め、その分野の中の何かの正当性を立証するか、全く新しい関心領域に移るかを可能にするのだ。

私達のリーンスタートアップ方法論

この状況において私達のモデルが実際にどのように機能するかを理解することが大切である。先述の通り、私達は50,000ドルの資金を提供する。この金額は、3つのステージに分割される:

  1. 10,000ドルが、調査ステージのために即時に提供される。
  2. 20,000ドルが、MVP(最低限の機能を持った製品)を作るために提供される。
  3. 20,000ドルが、けん引力を築くために提供される。

調査ステージの間、起業家は顧客育成と検証に完全に焦点を合わせる。関心の問題を特定したら仮説をまとめて、できるだけたくさんプロブレム・インタビューに出掛ける。価値のあることを見つけたら、アンケートと同様にソリューション・インタビューに移る(定量データを集めるため)。もし計画通りに進まなかったら、全く違うことをすることに目を向けるか、自分達の関心領域の中で価値のあることを見つけて方向転換するかだ。そして、人々へのインタービューをして出来る限り学ぶことにまた戻っていく。

調査ステージを通過することは、全ての人に公平に一致している。彼らは、問題(解決する価値のあるもの)、ソリューション(実行可能なもの)、市場(規模、機会、アクセスに基き興味深いもの)、自分達のMVPの定義を明確に決める必要がある。MVPの定義には、実験的デザインの説明を含む必要がある。起業家がどうやってMVPの成功を認証または無効とするのか全ての人にとって明確でなければならない。その後で私達は、2回目の分割資金を提供する。

スタートアップがMVPステージに入ると、専門知識のスイートスポットに入る。Year One Labsでは全ての人が製品を技術的に作る方法を知っている。一番難しいのは、最初のMVPのローンチからけん引力を築く第三ステージに移行することだ。

私達は、MVPをローンチもしくは1つの製品リリースとして考えることはできないということを学んできた。MVPはプロセスにすぎないのだ。つまり、私達は、スタートアップが最初のMVPをリリースした直後に3回目の20,000ドルを提供しない。その会社は今、リーンスタートップの測定とリーンのステージに集中しているのだ。だから、彼らは自分達のMVPを人々の手に持たせ、反応を測定し(質的、量的に)できるだけ早く繰り返し適用するのだ。

3回目の分割資金は、スタートアップがユーザー獲得を拡大することが理にかなっていると認証した時点で提供される。これには数カ月かかることもあるが、製品を繰り返し適用し、自分達の仮説の正当性を認証したり無効にしたりして、適切な市場に適切な製品を探す十分な時間を持ち、できるだけ多くのサイクルを通過することが彼らにとっては大切なことなのだ。MVPとけん引力の構築の間の入り口に統計にもとづいたマイルストーンを置くのは難しい。それはケースバイケースで変わってくるのだ。

Localmindの例

Localmindは、位置情報をもとにしたQ&Aのモバイル(およびWeb)プラットフォームである。最初のMVPは2010年12月にローンチされた。最初はWebベースだけだった。私達はすぐに興味深いパターンと数字を目にし始めた。驚くほどに、人々が質問に答える意思を強く持っていたのだ。しかし、Webのみのサービスだったため、質問の量が少なかった。同じようにユーザーの数も少なかった。その時点で、私達はすでにいくつかの仮説を証明していたが、全てではなく、MVPプロセスのステージからけん引力ステージに移行する準備ができていないことに同意した。

2011年3月、SXSWでiPhone版をローンチした。それがすぐさま信じられないほどのけん引力を得た。数千ものユーザーが登録してそのアプリを使い始めたのだ。

4月20日、Localmindは、Where 2.0でより多くの噂を呼び、Startup Showcaseのイベントで優勝している。さらにこれが大量の新しいユーザーとアクティビティを誘引した。噂と注目は偉大で、より多くのユーザーを獲得してアクティビティが増えることによって、私達はより多くの自分達の仮説を検証するだけのデータを集めることができた。それは、私達が全ての答えを手にしてLocalmindが一瞬のうちに数百万のユーザーを急増しているということではないが、このプロセスの加速が、私達に何が機能していて何が機能していないかを素早く判断することを可能にした。さらには、Year One Labsが最後の分割資金を提供してLocalmindがけん引力構築に焦点を合わせる力を与えるに十分な裏付けを与えたのだ。

Localmindの共同設立者、Lenny Rachitskyは、Localmindはまだプロダクト-マーケットのフィットに辿り着いていないと、あなたにおおっぴらに言うだろう。しかし、それはMVPプロセスのゴールではない。ゴールは、製品の価値に関する仮説を証明するか無効とするかするところまで辿り着くことなのだ。けん引力のステージは、ユーザー基盤とビジネスを成長させるためのものだが、継続して繰り返し適用してプロダクト・マーケットのフィットに向けて学ぶためでもあるのだ。

リーンスタートアップの加速器を運営することで学んだ7つの教訓

私達は、Year One Labsのローンチと運営で多くを学んだ。そしてこれからも学び続ける。ここに7つの教訓を紹介するので、あなたにも役立ってくれることを願う。

  1. 人々はリーンを語るが実際にはやらない。多くの人がリーンスタートアップと顧客育成について話すが、実際にそれをする人はとても少ない。これにはいくつか基本となる理由がある。初心者にとっては、それは人が思っている以上にずっと大変なことなのだ(詳しくは後で説明する)。さらに、多くの人(特に開発者)を安全地帯の外に追いやる。私達が、技術的な設立者に、あなたの最初のステップは営業電話を50件かけることだと提案する時、その恐怖は明白である。
  2. 人が思っている以上にずっと大変なことである。スタートアップを経営することは、信じられないほど大変だ。リーンスタートアップはもっと大変だ。この方法論は、多くの努力を必要とすること―知的誠実性、厳格なプロセス、自分の安全地帯外のスキル向上など―を強いる。人々が昔の悪い癖に戻り、コースを外れるのは簡単で当然なことだ。設立者としての自分自身に嘘をつくことも簡単だ。人々は、優れた実験的デザインや優れたメトリクスを本当は理解していない。私達がVanity Metricsの危険について話すたびに、それらはとても俗受けするのだ!それらを無視するのは難しい。
  3. DNAは早くにセットされるべきだ。Year One Labsが提供する重要な価値の1つが、設立者のDNAへのリーンと顧客育成の早期設定である。設立者が自分の取り組みの結果を目にすると(例えそれが痛みを伴うプロセスだったとしても)、通常は賛同して信じる者になる。その時までは、彼らは疑問を呈し、反論し、全く認めることをしない。
  4. 物事を書き出すことがとても重要。考えと行動を構成する手段として物事を書き出すことがどんなに価値を持っているかには驚かされる。私達は以前Lean Canvas を使っていたが、アイディアの検証の一番最初のステージに焦点を合わせた私達独自のProblem-Solution Canvas(まだ私達は学習と繰り返しの適用を続けている!)もデザインした。
  5. ビジネスモデルのハッカーソンは効果がある。私達は、スタートアップを作ることがどういうことかをシミュレートする手段としての開発者のワンデー・ハッカーソンを大変気に入っている。しかし、起業家に創造的に考えさせ、彼らが抱えている障害を取り除き、アイディアを探索するビジネスモデルのハッカーソンもたくさんやってきた。ビジネスモデルのハッカーソンは、ワンデーセッションかもしれないし、もっと長い期間にわたるものになるかもしれない。Year One Labsのスタートアップの1つを相手に、私達は5つの別々のアイディアに取り組ませ、それぞれに対して顧客育成と分析をやらせ、私達にそれらの売り込みをさせる。このエクササイズの目標は、スタートアップに5つの異なるものを作らせることではなく、どのようにアイディアを評価して問題とソリューションを特定し、好機について率直に創造的に真剣に考えるのか正しい心構えを取り入れることなのだ。
  6. 絶対的なものはほとんどない。それは人生にも言えることだし、スタートアップにも言えることだ。さらに、リーンスタートアップに関しても絶対的なものはほとんどないというのが真実だ。あなたは、全ての状況、人、スタートアップを同じように扱うことはできない。いくらかの妥協と、あなたの物事のやり方にいくらかの矛盾が出て来るだろう。それは、Year One Labsの全ての人にとって、実施されるプロセスが厳格ではないという意味ではないが、私達は、あなたが絶対的なことを強要したりそれを期待することはできないということを確実に認識している。Year One Labsのパートナーが賛成しないケースでは、私達は全く異なるフィードバックとアイディアを提供する傾向があることを知っている。それは時々暴走電車のように感じるかもしれないが、包括的なプロセスとガイドラインを持つことによって、私達は全ての人を集中させておくために必要ないかりを維持するのだ。
  7. 集中、集中、集中。 恐らく私達がYear One Labsで提供する最大の価値が、集中だ。スタートアップを経営している時には容易に注意散漫になる。絶えず続く高値と低値、追いかけたくなるような可愛くて光り輝く物、話しかけるパートナー、投資家、たくさんの製品アイディアなどなど。しかし、スタートアップマラソンに勝つことに集中するのだ。そこで私達はできるかぎり集中を維持するために日々起業家と共に取り組むのだ。

価値創造までの加速

私達が投資家に意義のあるお金を返せばYear One Labsの成功であると、私は先述した。早期エグジットに焦点を合わせたモデルを持ってしても、それはそうなのだが、私達は結果を目にするまでにはかなりの年月がかかることを予測している。その間に私達は自分達自身の進展を判断し、繰り返し適用して改善し、物事がどう進んでいるか理解しなければならない。私はこれを“価値創造までの加速”として見ている。各スタートアップに対する私達のゴールは、プロダクト・マーケットのフィットであり、私達はそのゴールに向けて彼らを出来るだけ早く加速している。しかし、価値創造は、他の基準―後続の資金調達、ユーザー獲得、収益など―によってある程度測定されることもできる。これらは全て、私達が評価している基準であり、私達のスタートアップの進歩としてプロセスと通して評価し続けるだろう。私達は、メトリクスを超越して、スタートアップと共にスタートアップのために価値を創造していること、一貫した加速ペースでそれをしていることを根本的に信じなければならないのだ。


この記事は、Instigator Blogに掲載された「Lessons Learned Launching a Lean Startup Accelerator」を翻訳した内容です。

単なるマイナー起業家の私ですが、想像以上に良い内容で驚きました。私自身、今後5年で1つは大きく当てたいと思っており、その中で様々な新規事業にチャレンジしていくと思いますが、ここに書かれている手法や実例はどれも具体的で参考になりますね。日本でもリーンスタートアップ支援の取り組みが増えていますが、ブームだけで終わらないことを願っています。どちらかというと雑草から這い上がってきた私ですが(まだ途中)、起業文化を根付かせていくためには、スタートアップや起業家を育てる環境や仕組みがとても大事なんだろうな、と改めて感じる記事でした。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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