今朝、私は、オフィスに行くのでもなく、ジムに駆け込む時間を確保するのでもなく、普段とは少し異なる時間を過ごした。コーヒーを入れ、ソファーに座り、テレビのニュース番組にチャンネルを回した。普段はMSNBCのモーニング・ジョーを見るのだが、今朝はCNNのヘッドラインニュースを選び、朝一番のニュースを見ながらうとうとしていた。
その「ニュース」で報じられていたアイテムの中に、ダイヤモンドが散りばめられ、$19,999と言う値がつけられたアップルのiPadに関する情報が含まれていた。その時、“アップルがビクトリアズ・シークレット(註:アメリカで有名な派手目のランジェリーブランド)を真似している”のかと私は思ったが、どうやら、ダイヤモンドiPadを製造しているのはアップルではないようだ。また、公式のダイヤモンドiPadも存在しない。実は、メルビス・ダイヤモンド・インポーターズと言うDC/バージニア北部で営業する割と大きなダイヤモンド専門店が、プロトタイプのダイヤモンドiPadの告知を行い、6月から注文を受け付ける用意が整うと言う。これがニュースの真相であった。
私は宝飾店のキャンペーンを幾つか担当しており、ダイヤモンドのマーケットに関する知識を持ち、PRおよびオンラインの口コミ戦略を熟知している。その経験から私は“恐らくこの企業はダイヤモンドをiPadに埋め込み、広報部門のスタッフにこの情報を宣伝させたい…のが本音だと思った。そして、この情報がウェブ上でどのように報じられているのか、そして、同社のサイトにこの記事が掲載されているのか気になった。”
そこで、調査検索に私は乗り出した & 私の中のソーシャル分析家の本能がコーヒーを飲み干させ、ラップトップを起動させたのだ。私はまず“diamond ipad”で検索をかけた。すると、メービスのPRキャンペーンに関するオンラインの口コミや記事の数に、私は圧倒されてしまった。
結果ページに掲載されていたメービス社の告知に関する過去2日間のストーリーのすべてが、贅沢、アップル製品、もしくはガジェットに関するアルファブログによって取り上げられていただけでなく(ギズモード、エンガジェット、ラグジスト、マッシャブル等の本物のアルファブログ)、メービスのキャンペーンは「diamond ipad」の検索結果ページで、グーグルニュースの結果とリアルタイムで取り上げられ、グーグルにもキャンペーンが盛り上がっていることを認められているのだ。さらにテクノラティ・トップ 100の多くのブログから記事とリンクが届いていた。次にメービスのページへの被リンクの本数を見てもらいたい。この成績を上回ることは不可能だ。これこそソーシャルメディア・マーケッターの夢である!
ガジェットブログのマーケットの素晴らしい点は、エンガジェットやギズモードに一度取り上げられると … あらゆるブログに取り上げてもらえることだ!また、ガジェット系ではないが、ラグジストもこの流れに乗っていた。ラグジストもエンガジェットも元々はジェイソン・カラカニス氏のウェブログインクに在籍しており、現在はともにAOLの傘下に収まっている。メービスはバージニア州北部を拠点に営業しており、一方のAOLはバージニア州レストンに本社を置いている。そのため、メービスのスタッフもしくは広報を担当する企業がAOLとコネを持っているのではないかと勘繰りたくなる。そう言えば、CNNもターナー氏の企業だったよう気がする。これもコネだろうか?
メジャーなメディアの1つに取り上げてもらったため、メービスのキャンペーンはあらゆる場所で話題に上がっている。ジャーナリストは話すネタが必要であり、ブロガーも記事のトピックを求めている。今回のメービスのニュースはAOLの梯子を駆け下り、ブロゴスフィア全体に伝わったのだ。トリクルダウン・リンク経済が実現したと言えるだろう。
PRおよびブロガー(およびTV取材)の宣伝活動はさておき、私が本気で驚いたのは、メービスのページをクリックしてからだ:
私はてっきりダイヤモンドiPadの動画か、もしくはダイヤモンドiPadのプロトタイプを誇らしげに抱えるロニー・メービス氏のアップの写真が掲載されていると思っていた。しかし、実際には、どこかの高校生がフォトショップで作ったようなダイヤモンドiPadのイメージが掲載されていた。嘘ではない。この賢いキャンペーンの効果を低下させたいわけではないが、恐らくメービスはたった$5のコストで、10分程度でこのページを作ったはずだ。抜群に費用対効果が優れており、且つシンプルである。本当になんてことはないページであり、ダイヤモンドiPadが単なるコンセプトに過ぎない点も、もしくはメービスが売れない在庫のダイヤモンドを処分しようとしている点も見出すことは出来ない。賢い!! 多くの人々の話題に上っているメービスのダイヤモンドiPadとは、まさにアイデアそのものである。
100万ドルのブラジャーのように、メービスはダイヤモンドiPadのプロトタイプを製造し、DC地区のどこかの店舗に飾るはずだ。そして、地元のプレスに連絡を取るのだろう。しかし、しばらくの間は… フォトショップのコンセプトでしかない。素晴らしい戦略である。
メービスのダイヤモンドiPadキャンペーンの3つ目のポイントはランディングページである :
mervisdiamond.com/tacori-diamonds
Tacori-Diamonds
Tacori(タコリ)はダイヤモンドのデザイナーブランドであり、ダイヤモンドを販売しているわけではない。タコリと言う用語は、ブランドの知名度が高く、検索する人にはタコリの商品を購入しようとするの意志があるため、非常に競争が激しい。メービスは「tacori」 mervisdiamond.com/tacori-ringsで既にトップ10入りしており、数日が経過した現在、ダイヤモンドiPadのページは「tacori diamonds」(ショッピングおよびイメージに続いて)で3位にランクインしている。
今回はあまり詳細な部分に触れるつもりはないが、賢明なURL、サイトストラクチャー、関連するコンテンツ、そして、非常に賢く且つタイムリーなPRキャンペーンが一堂に会した結果、メービスは自然なパワーリンクを獲得し、$20,000のiPadを売る機会を得ただけでなく、競争の激しい用語を長期間にわたって独占することに成功した。その結果、長期におよぶ売り上げ、カスタマーロイヤルティ、そして、強固なブランド構築を実現することが出来るだろう。これはスゴイ。こんな素晴らしいSEO、ソーシャルメディア、そして、PRキャンペーンは、しばらくお目にかかっていない。メービス万歳 🙂
この記事は、Search Engine Journalに掲載されたLoren Bakerによる「Diamond iPad : A Smart Social PR Campaign with SEO Focus」を翻訳した内容です。
これぞ、「クリエイティブなリンク獲得手法:プレスリリース版実践編」のケーススタディですね。アイデア次第で、お金をかけることなく、自社のリソースを活用して、ソーシャルメディア&検索エンジン対策が同時にできるんです。有料リンク問題が最近話題になっていますが、お金で解決しようとする前にもっとできることはあるのかもしれません。と言うか、アイデア次第であるはずです。
ちなみに「ダイヤモンド ipad」で検索すると、日本語検索でもほぼ同様の状態ですね。しかしソーシャルメディアを活用すると、海外のみならず日本でもマーケティングできちゃうんですね。かつて無かったことですよ。。。エンガジェット、ギズモード、ラグジストも日本語版ありますしね。
ちなみに文中で出てきた「トリクルダウン・リンク経済」の記事は近日中に訳す予定です。 — SEO Japan
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