SEO Bookのアーロン・ウォールがSEOに関する人気No.1の掲示板フォーラム「ウェブマスターフォーラム」の管理者テッドスターに行ったインタビュー(近日中に翻訳記事配信予定)の中で、テッドスターがコンテンツミルについて話していた。
コンテンツミルとはチープなコンテンツを配信するサイトのことだ。コンテンツは、ユーザーによって投稿されたものもあれば、お金を払って作られたものもあれば、この2つを組み合わせたものもある。ミル(製造工場)という用語は明らかに蔑んだ言葉であり、コンテンツが検索エンジンに供給されているに過ぎない点、そして、通常は質が低い点を示唆している。
チープなコンテンツを配信しているサイトの中には、価値を与えているサイトもあるが、それは読む人に左右される。例えば、フォーラムをコンテンツミルと考えることが出来る。チープ且つユーザーが生成したコンテンツは、関心を持たないビジターにとっては何の価値もない。しかし、コミュニティの熱心なメンバーによって定期的に情報源が更新される点を考慮すると、まったく価値がないと言い切ることも出来ない。
尋ねる相手によって答えは変わってくるだろう。
アーロン・ウォールも言っているように、2010年、コンテンツミルが大流行している。それではもう少し詳しく見ていこう。
コンテンツミルが注目されているとは言え、アイデア自体は特に新しいものではない。実は正当なSEOの戦略であり、何年も前から利用されている。
広告収益よりも低い価格でページを配信することが出来るなら、そのプロセスを何度も何度も繰り返そう。それで充分だ。また、アドセンス、アフィリエイト、同様のページを収益化する手段を考慮しよう。ディマンド・メディア(註:eHowというユーザーが作成したハウツービデオを何万本も集めたサイトを運営)は多額の収益を上げている。
コンテンツミルの問題点は、コンテンツの生産コストを予測される収益よりも低くするために、劣悪なコンテンツを作成するサイトのオーナーがいることだ。通常、彼らはユーザーからの無償の投稿を呼び掛ける。
劣悪な例で言えば、Q&Aサイトで、質問を投げかけ、意見を持った人々や情報通の人々のコミュニティが2円足らずの価値の答えを提供するケースが続出している。不幸にも、多くの答えは2円の価値もなく、その結果、読者に対する価値のほとんどないページ、または全くないページが作成される。皆さんもこのようなページを見たことがあるだろう。なぜなら、この類のページは、充分なオーソリティレベルを持つドメインで投稿されている場合、上位にランクインすることが多いためだ。
マハロのようなサイト(註:様々なトピックのページを大量作成し、大半の情報を外部サイトから流用しているサイト。日本でもお馴染みのエンガジェット等を運営していたブログネットワークの会社をAOLに25億円で売却したジェイソン・カラカニスが起業。)は、ページの生成を自動化しているだけにとどまらず、関連する質問のページを自動的に作成している。一体どこまで行けば気が済むのだろうか。
反対に、コストが高く、プロのライターがお金をもらって作成する、調査が行き届いた内容が充実したコンテンツを投稿するサイトもある。要するに、従来型の投稿モデルだ。一般的には、この類のページはエンドユーザーに対して高い価値を与えると言われているが、検索エンジンはこの質の高いページとゴミのようなページの違いを判読することが出来ない。そのため、コンテンツミルが充分なオーソリティを得ているなら、ゴミのようなページが昇格していくだろう。
当然ながら、その中間も存在する。
テッドスターも述べているよう。
「問題はフリーランスのコンテンツの提供者が必ずしもジャンクを与えているわけではないことだ。私の知る限り、両者を分類することが出来るセマンティックな処理技術はない。少なくともアルゴリズムに頼らず、これがどれだけ早く、そして、どれだけ効果的に抑制されるかを予測するのは難しい。この種のスペースを埋めるためのコンテンツはユーザーの役に立つのだろうか? 少なくとも間違いなく私の役には立たない。そのため、グーグルのレーダーには映っているはずである。」
テッドスターの意見は的を射ていると私は思う – このようなサイトはグーグルのレーダーに引っ掛かっているはずだ。なぜなら、ジャンクな、質の低いコンテンツはエンドユーザーの役に立たないからだ。
この問題を解決するのは至難の業だ。簡単ならばとっくにグーグルが解決しているはずだ。しかし、グーグルは低い価値のコンテンツの中でも最低のコンテンツをある時点で追放するのではないだろうか。コンテンツミル戦略を採用しているなら、もしくは今後利用するつもりなら、このような結末に対する準備を整えておくべきだろう。
将来、軽蔑の言葉としてコンテンツミルが利用されることはなくなるだろう。コンテンツミルが質を重視するようになると私は思うからだ。
既に述べたように、質を独断で定義するのは難しい。客観的に計測することは出来ないだろう。なぜなら、ある人にとっては関連性があることも他の人にとっては関連性がない可能性があるからだ。IQ(information quality)の分野から、グーグルのアプローチに関する手掛かりを得ることが出来るかもしれない。IQは情報システムの管理におけるリサーチの形式であり、とりわけ情報の質に対応している。
彼らが利用するメトリクスを幾つか利用する:
知っている用語はあっただろうか?検索業界は専門用語で溢れているので、ある程度は知っておいてもらいたい。しかし、グーグルがすべての局面を見ていると言うわけではない。あくまでも、ページランクをはじめ、同様のコンセプトを採用してきたと言う意味だ。
ありきたりのSEOの理論では、グーグルはオーソリティに的を絞る戦略等を利用して、この関連性の問題を解決しようとしてきたと結論づけるだろう。信頼性の高いオーソリティサイトは信頼性の高いコンテンツを投稿しているに違いないと言う前提があるからだ。そのため、オーソリティが高いドメインは、オーソリティのレベルが低いサイトよりも有利になる。しかし、この状況は長くは続かないだろう。なぜなら、オーソリティを持つという点に関して、信頼性の高いソースの中には、自動生成されたゴミのようなコンテンツを配信しているサイトもあるためだ。グーグルは、恐らく構成のメトリクスにも注目するようになるだろう(まだ注目していないなら)。
当然ながら、これは推測である。
そのため、「このページは人間の検査をパスするか?」と言う経験則をしばらく利用すると良いだろう。組織に関して、人間の閲覧者にとってジャンクと映るならば、そして、構成に関してジャンクのように思えるなら、恐らくそれはジャンクであろう。そして、グーグルはこの類の情報をアルゴリズムに与える。2007年のグーグルの品質評価者の文書を読めば、グーグルの編集上の方針が何となく分かるだろう。
この記事は、SEO Bookに掲載された「Are Content Mills the Future of Online Publishing? What Comes Next?」を翻訳した内容です。
いかがでしたでしょうか?改めてコンテンツミルを簡単にまとめると:1. 効率的な方法で(一般ユーザーに無料で、または格安で一般ユーザーやフリーランスの方に)検索ニーズ、ユーザーニーズのあるコンテンツを数万単位で大量に生成する。
2. 1つのサイトに数万のコンテンツを集約して掲載。全コンテンツを徹底的にSEOを施し、検索エンジンでロングテールワードで検索時に上位表示させる。
3. サイトにコンテンツ連動型広告を掲載してそこから収益を得る。
と言う手法になります。書いてみると「それだけのことか」と思われるかもしれませんが、上にも少し出てきましたが、例えばハウツーもののビデオ映像を配信しているeHowはフリーランサーが格安価格(1本数千円とか)で毎月1,000本以上のビデオを投稿しており、数万本の様々な超ニッチ分野のビデオが掲載されており、細かなロングテールワードでGoogleで上位表示される結果、月間トラフィック数千万人、年間で数百億円の収益があるとかないとか言われています。この規模で無くともGoogle経由のロングテール重要にマッチしたQ&Aサイトや、特定ジャンルのニッチ情報集約サイトを格安で作成してコンテンツ連動型広告で収益を上げているサイトが増えているようです。本格的に取り組むにはそれなりの資本も必要そうですし、誰もが使える手法ではありませんが、「SEOの考え方や手法を、サイト構造のみならず収益構造やビジネスモデルから徹底的に活かしたサービスモデル」と言えるでしょう。
ここで問題になっているのは、より多くのトラフィックを得るために、コンテンツを検索ニーズに応じて細分化し、内容が薄いコンテンツを大量に作成し、掲載している点です。完全に「質より量の世界」なんですよね。量の分だけ、サイトのページ数が増え、ロングテールワードで検索時に上位表示される確率が増え、トラフィックが増える。ただし、余りに細分化されているため、必ずしもユーザーにとって望ましいコンテンツが無かったり、コンテンツを格安で大量生成する手法を取っているため、コンテンツの品質が低い場合も多い。検索エンジンも状況は理解していますが、コンテンツの品質を判断するアルゴリズムは非常に難しいのも事実ですし、また仮に大半が品質は必ずしも高くないコンテンツであっても、他に同種のコンテンツが無ければ何も無いよりは良いのでしょうし、当然中には質の高いコンテンツがあるケースもあり、完全に排除するのも支障があるでしょう。
非常に難しい問題ではありますが、今後このようなサイトが多数出てくる中で、自然淘汰されていく気もしますが。。。もちろん圧倒的な勝ち組サイトが出てきてしまうかもしれませんが、それはそのサイトが勝ち組としてより魅力的なサイトやコンテンツ作りに力を入れていくかもしれませんし、ネットビジネスの進化の過程では許される自然な流れの気もします。
日本で言えば例えばユーザーがレシピを投稿するクックパッドにしても、あそこまで成功し、皆が頼りにするレシピサイトになると思っていた人はそこまで多く無いとは思いますし。他の大手食品メーカーのレシピサイトに比べれば質より量重視の側面はあるかもですが、あれだけ圧倒的なレシピが溜まるとその中で良いレシピコンテンツも数多く存在するわけで。実際の人気を見れば一目瞭然ですが。コンテンツミルの問題を突き詰めて考えると、UGC(ユーザー生成コンテンツ) vs マスメディア生成コンテンツの議論になってきますね。
日本で同種のサイトと言うと上記のクックパッドも近いと言えば近いのですが、最近のサイトで言えば、nanapiなども近いかもしれません。ただ記事の品質はかなり意識して高く保たれているようなので(投稿数も自社投稿含め1,000本強ですし)コンテンツミルサイトと呼ぶのは失礼な話かもしれません。逆にこのレベルのサイトならGoogleの意向問わず、中長期的に生き残っていくと思いますが。
Q&Aサイトも日本では大手がある程度マーケットを仕切っていますしね。そのサイトがコンテンツミルかはともかく(最近そうなりつつある気もしますが・・・)、SEO的にはQ&Aサイトにやらせ投稿をしてトラフィックを得ると言う使われ方が増えているとは思います。
こうして考えると、まさにコンテンツミル、と言うサイトは日本に存在しないとも思います。品質を無視すればオールアバウトは近い部分があるかもしれませんが。一般人、セミプロにコンテンツを作成してもらい、サイトの情報量を増やすことで検索エンジンのヒット率を高めて大量のトラフィックを集めて収益化しています。トラフィックのために作られた無駄なコンテンツが多すぎる、と言う批判も一部にあった気はします。ただそれ以上に有益な記事が多数掲載されていますし、長年に渡って多くの人に活用されているわけですから、コンテンツミルと呼んでは失礼すぎますかね。
後ははてなキーワードなどもそれに近い部分があるかもしれません。ページ大量生成と検索エンジンからのトラフィックをベースにした広告収益と言う意味では一緒ですし、コンテンツを自ら作っていた訳ではない点など、記事にあったマハロに近いですかね。以前に比べると検索結果の上位に表示される確率が落ちた気がするのですが、どうでしょうか。最も最近ははてなブックマークニュースで独自のまとめ記事を多数作られており、高品質の記事を多数配信しています。
話をコンテンツミルに戻しますが、記事でも紹介されていますが、そもそもSEOの手法であったロングテールや特定のユーザーを狙ったマイクロサイト構築の手法を大掛かりなレベルでビジネスに活用したモデルがコンテンツミルとも言えます。日本でも昔からアフィリエイターが特定のジャンルのマイクロサイトを立ち上げて収益化している例は数多くありますし、SEO会社がSEO目的でキーワードに特化したマイクロサイトを作ることも普通に行われてきました。最近は一部の大手サイトでも集客数アップの目的で行っているロングテールレベルでの大掛かりなマイクロサイト制作を行っています。規模は違えど、どれも考え方としてはコンテンツミル的発想(自らお金をかけてコンテンツを作成し、そこから得るトラフィックを収益に変える)ですよね。
米国でも様々な意見があるコンテンツミルですが、サイトのサービスモデル自体にSEO、特にユーザーニーズからキーワードリサーチ、ロングテール対応を導入し、ビジネスを0から作っていくチャレンジ精神と実行力は流石アメリカ。ネットビジネスに関わる者として見習いたい部分は多いですね。 — SEO Japan
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