Appleの「残念なiPhone 4S」が過去最大の記録的なペースで売れている理由

公開日:2011/10/11

最終更新日:2024/03/06

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先週はiPhone 4Sの発表からジョブスの訃報までIT業界を飛び越えて世界はApple関連の話題が駆け巡りました。さてジョブスが亡き後もAppleの伝説は続くということで、iPhone 4Sの話題に戻ってみたいと思います。なんだかんだいってもiPhone 5ではなくiPhone 4S止まりだったこともあり、アナリストや業界の評価は高いとはいえなかったiPhone 4S。しかし実際に予約が受け付け開始になると、過去最大のペースで注文が殺到中ということなんです。その驚き?の実態にThe Next Webが迫ります。 — SEO Japan

アップルにとって先週はジェットコースターのような一週間であった。デュアルコア A5プロセッサー、8 メガピクセルのカメラ、デュアルアンテナ、Siri(シリ)ボイスアシスタントを備えたiPhone 4Sをローンチし、15ヶ月間に及ぶ待機期間にピリオドを打ったかと思えば、明確なビジョンを持つ共同設立者であり、守り神としてアップルをけん引してきたスティーブ・ジョブズ氏を膵臓癌で失っていた

ジョブズ氏の突然且つ予想外の死がヘッドラインを賑わせてきた一方で、多くの人々が大幅に本体のデザインが変更され、ティアドロップ型を採用したiPhone 5が発表されるものと思い込んでいた。そのため、ローコストでパワーアップしたiPhone 4のデビューに対して一部の人々が批判している。

アップルは、最新のスタンダードに合わせた機能を搭載することに焦点を絞り、iPhone 4と同じデザインを活用したスマートフォンをデビューさせた。アンドロイドのメーカーが最新で最高のアンドロイドスマートフォンを売り、アップルのスマートフォンの開発を出し抜いたため、アップルはハードウェアだけでなく、ソフトウェアの面でもイノベーションを提供する必要がある点を把握していた – アンドロイド、ブラックベリー、そして、ウィンドウズのモバイルデバイスと差別化するにはこの2つの面でのイノベーションが欠かせなかったのだろう。

火曜日のイベントで壇上に上がったアップルのマーケティングを統括するフィル・シラー氏は、「騙されないでください。なぜなら中身は全て新しいのです。」と言う点を強調する必要があった。シラー氏は、アップルの新しいスマートフォンが、iPad 2と同じA5 プロセッサーを搭載し、パワーが2倍になり、最大でグラフィックが7倍スピードアップする点、絞り値がf/2.4に上がり、イルミネーションセンサー、自動ホワイトバランスが改善され、高度な色精度、顔検出機能を持ち、動きによるぼけが減少した(1080ピクセルのフルHDでキャプチャ可能な動画機能に触れる)カスタムレンズを持つ8-メガピクセルのカメラが搭載される点を説明し、iPhone 4Sの内部の詳細をアピールすることに時間を割いた。

そして、アップルの“インテリジェント・パーソナル・アシスタント”ことシリだ。2010年4月にシリを買収したアップルのiPhoneは第三者のアプリを介して既にボイスアシスタント機能を提供していた。「近場の劇場でハリーポッターの映画は何時に始まる?」と尋ねると、映画の時間を教えてくれた。2億ドルとも言われる資金を投じて行った買収は、モバイル & テクノロジー業界の大勢の人々を喜ばせた。その一人がロバート・スコブル氏だ(以前同社を訪問し、買収される前にそのテクノロジーの世に広める上で手を貸していた):

シリは、非常に優れたパーソナルアシスタント機能において、世界中のAPIを接続するため、iPadに私は真っ先にダウンロードした。自分の声で話しかけ、タクシーを読んだり、映画のチケットを買ってくれるのだ。

このテクノロジーが解き放つ価値は非常に大きかった。アップルが新しいモバイルウェブおよび新しいAPIベースのウェブに参入する意思があることを示しているからだ。さらにグーグルとの競合における大きな基軸となる可能性を秘めている。

クパチーノのアップル本社で行われたイベントで、iPhone 4S内部の最新のテクノロジーのプレゼンを行うため1時間45分を費やしたものの、「iPhoneの話をしよう!」イベントの後、同社の株価は5%も下がった。アップルの株価はその後持ち直したが、最終的な株価は下がってしまった。

philip schiller apple s senior vice president of w 4e8b5887d4 520x362 Apples disappointing iPhone 4S is on track to be its fastest selling device ever

投資家の動きを受け、アナリスト達が割って入った。JMP セキュリティーズのアナリスト、アレックス・ガウナ氏はその他の大勢のアナリスト、さらには消費者の声を次のようにまとめた:

事前キャンペーン、ローンチフォーラム、そして、プレゼンには以前のアップルのイベントに見られた堂々とした姿勢が欠けていたと言う印象を持った。この印象は、明確なビジョンを持つリーダー、スティーブ・ジョブズ氏がいない状態で今後のアップルがどのように舵を取るのか、そして、アンドロイドに世界中のマーケットシェアを獲得し続ける機会を与えてしまうのではないかと言う投資家達の不安を募らせる 原因となっている。

一部のネガティブな反応とは反対に、火曜日にiPhone 4Sの事前予約が始まると、この新しいiPhoneの需要がとても大きいことが判明した – 世界中のオペレータのパートナー、特に米国内のオペレータでは反響が大きく、次から次へと顧客が押し寄せ、アップグレードの確保、または新しい契約でのiPhoneの注文が殺到していた(私はアップルのウェブサイトで1台のiPhone 4Sを予約したが、2回も確認のメールが送られてきた)。

「残念」なことばかりだったが、アップルのiPhone 4Sの予約販売数はすさまじい。米国でこの新しいスマートフォンを販売する3社のオペレータのうちの1社、AT&Tは予約販売の開始後12時間で20万台が売れたと発表した。歴代のiPhoneの中でも最高のスタートを切ったようだ。

A&Tの予約販売に注目し、すべてのオペレータおよびディストリビュータの60万台と言うiPhone 4の予約販売数と比較すると、アップルはその他の販売パートナー(およびアップル)が販売データをリリースする前の時点で予約販売数の過去の記録の3分の1の台数を売りさばいたことになる。

スプリントがiPhone 4Sに対してネットワークの無制限の利用をオファーし、今回が初めてのiPhoneの発売である点を考慮すると、米国のネットワークの販売数の合計は、その他の国々の売り上げを加算する以前の状態で、理論的にはiPhone 4の予約販売数を突破することになる。

同じ期間でのiPadの販売数は50万台に達していたと推測される。

アップルが旬のテクノロジープロバイダーである事実を除いても、iPhone 4Sが発売開始直後にここまで売れる理由は他にもある。以下にその理由を挙げていく。

15ヶ月間も待たせた

12ヶ月間のiPhoneの通常のリリースサイクルを離れ、アップルは15ヵ月待ってiPhone 4Sの告知を行った。その結果、メディア、そして、消費者が、最新のiPhone 5およびiPhone 4Sと名付けられた安価版のiPhone 4に関して、推測する機会が生まれた。

全てのアップル製品に共通することだが、新しいデバイスに対する関心が高まり、発売に関する全てのニュースがソースからメディアに流れ、そして、消費者に伝わっていった – 手掛かりを求め、デバイスに関する内部情報を探し回るベテランのアップル担当のライター並みに消費者の知識は向上している。

既存のiPhoneのオーナー達は、iPhoneの開発が行われている間、サムソン、HTC、モトローラ、そして、LGの高性能のアンドロイドスマートフォンが発売されていく光景を目の当たりにしていた。その結果、iOSのプラットフォームを離れたい欲求に駆られたが、同時に新しいiPhoneに対する欲求がますます高まっていくこととなった。

アップルの重役達がクパチーノのステージに立ち、iPhone 4Sの発表を行った際、アップルの新しいCEO、ティム・クック氏は、イベントの3日後の午後からデバイスの予約が始まり(複数の国々で同時期に予約の受け付けが始まる)、10日後に発売されると述べた。これは、新しいスマートフォンが売れ、10月14日までに多数の台数をオペレータパートナーに提供することが出来ると言う自信の表れである(既に届いている可能性もある)。

Screen Shot 2011 10 09 at 17.22.26 520x292 Apples disappointing iPhone 4S is on track to be its fastest selling device ever

10月はこのハイエンドのスマートフォンにとってこれまでも、そして、今後も多忙を極めるだろう。発表の3日後に注文のプロセスを始めると言う判断は慎重に行われたはずだ。アンドロイドの台頭により、アップルは開発の進展をチェックしていた。サムソン、HTC、RIM、そして、ノキア、さらにはグーグルの進歩を寄せ付けない自信はあったはずだが、アップルは同社の製品に関する噂と関心がライバルの新しい製品のリリースによってかき消されない点を確かめていた。

消費者は待ち時間を利用してライバルの製品をチェックし、既存のアンドロイド、iPhone、ブラックベリーのスマートフォンを手放さず、アップルがどんな製品を発売するのか窺っていたのだ。機能が改善されたことにより、iPhoneがライバル製品に追いつき、iOSの使いやすさとiPhone 4のユーザビリティに魅了されていたどっちつかずの人達が、15ヵ月前に発売されたスマートフォンを欲しいとは思わない現象が生じた。

iPhone 4が発売されたとき、消費者はアップルストアで予約を試み、トラフィックが急激に増え、既存の供給台数を需要が越える恐れが生じたため、予約が中止されると言う問題に直面した。どのように受け取られようとiPhone 4Sの需要が高くなる点は消費者側は把握しており、iPhone 4Sの供給が1日以内になくなってしまうのではないかと言う恐れが、新しい製品を買うかどうかの消費者の決断に影響を及ぼしていたはずだ。

170万台ものiPhone 4が発売後3日以内に売れた。オペレータの数が増え(米国ではiPhone 4の販売には関わっていないベライゾンとスプリントが参入している)、そして、消費者が1年前にはアップルの製品を購入することが出来なかった、またはそのような状況にはなかった中国のスマートフォン市場でアップルが大きく力を付けた点を考えると、スマートフォンマーケットのこの記録は今週末にも破られるはずだ。

シリについて

シリはライバルのスマートフォンに対するアップルの切り札的な存在である。アップルがシリを買収する前、シリはブラックベリーとアンドロイドのスマートフォンに向けてソフトウェアをリリースする準備を勧めていたが、クパチーノに本社を構えるアップルの一員になった途端にライバルのプラットフォームへの開発作業はキャンセルされた。

アップルはこのボイス反応型パーソナルアシスタント機能について公式サイトで次のように説明している:

iPhone 4Sに搭載されているシリは、自分の声を使って、メッセージを送信したり、会議の予定を設定したり、電話をかけたりすることが出来ます。普段の調子でシリに頼みごとをしてみましょう。シリはユーザーの話を理解し、意味を把握し、さらには返答までします。シリは利用方法がとても簡単であり、多くの作業をこなします。きっとさらに多くの用途を見つけることが出来るでしょう。

iPhone 4Sを立ち上げると、ユーザーはリマインダーを設定することも、天気や株価をチェックすることも、メッセージを送信することも、eメールやカレンダーのアポイントメントを管理することも出来る。また、このアプリはコンタクト管理、筆記機能、楽曲コントロール、ウェブ閲覧、そして、マップナビゲーションにおいても高性能を自負している。

実際には、グーグルがアンドロイドのプラットフォームでボイスコマンドシステムを1年以上前に提供しており、決して新しいアイデアと言うわけではない:

アンドロイド版は通話を開始し、メッセージを記録し、目的地に案内すること等が出来るが、このソフトウェアはコマンドベースであり、ユーザーが細かく説明し、リクエストを命じる必要があるアップルの機能とは異なり、状況に配慮しているわけでもない。かと言ってアンドロイドのボイス反応機能にマイナスのイメージを植え付けるわけではないが、アップルがシリをiOSのプラットフォームに実装したことで、iPhoneはユーザーから学び、結果に反映させるシステムを得た。

カルト・オブ・マックのライター、マイク・エルガン氏は、シリがアップルに大きなチャンスを与えると考えており、次のように説明している:

「事実上または逐語的には話している内容とは関係のないこと言っても、シリは多くの場合、状況、履歴、そして、通常の人間の話を理解する意図を持つ人工知能を基に言いたいことを理解する。例えば、昼寝をする際にアラームを設定したいなら、「20分後に起こしてくれ」と言えばよい。どんな会議が予定に入っているのか知りたいなら、「今日の残りのスケジュールを教えてくれ」と言えばよいのだ。

アップルは、iPhone 4とは異なるハードウェアの要件が存在しないにも関わらず、シリのiOSへの実装を賢明にiPhone 4Sに限っている。アップルの優れたマーケティングチームは、ボイス反応機能が数年前から存在していたにも関わらず、スマートフォンとコンピュータの間の隙間を埋めることで、アップルが電話機に再び革命をもたらすと大勢の人々に信じ込ませた。

まずは落ち着こう

意外にもiPhone 4Sに失望していた人々の大半は、仕様や通常のメディアに大きな関心を寄せていたアナリストであった。

先程も触れたように、アナリストとメディア(ザ・ネクスト・ウェブの記事も含め)は、iPhone 5に関する推測を抑えようとしなかった。そして、その推測は実現しなかった。消費者はiPhone 5のケースや世界中のオペレータのリストに関するレポートをこれでもかとばかりに与えられ、期待は膨れ上がる一方であったが、実際に発表されたのは次のiPhoneのリリースにおけるデザインの要素の基礎を構築するプロトタイプのハンドセットに過ぎなかった。

発表が行われて数日が過ぎ、もともとiPhone 5の噂を出していたメディアと同じメディアから今度はデバイスを既に利用した記者による目撃談(アップルはイベントでの写真や動画の撮影を禁止しているため)が消費者にもたらされたのだった。

このデバイスのスピードは大勢のイベントの参加者の度肝を抜き(iPhone 4が遅かったわけではない)、カメラは衝撃的と表現された。現在、写真共有サービスのフリッカーで最も利用されているiPhone 4の5メガピクセルカメラが改善されたのだ。デザイン変更は行われず、アクセサリはiPhone 4とiPhone 4Sの双方で利用可能であり、アクセサリのアップグレードのコストが安価なため、アップグレードされるチャンスを高める原因となった。

結論

アップルが日曜日の終わりに注文を集計した際には、売れるか売れないかに関して初めて意見が分かれたiPhoneが今までの記録を打ち破る可能性が高い。

アンドロイドのデバイスのメーカーは、最新且つ最強のグーグルベースのスマートフォンを擁し、サムソンがギャラクシーでHTCがセンセーションで達成したようにiPhoneと同じようなブランドを構築するために今後も戦うだろう。リリースされてから数ヶ月が経過するアンドロイドのデバイスは、iPhoneに技術的には勝っているものの、アップルが直面する問題とは全く逆の問題に直面している。アンドロイドのメーカーは、マーケットで遅れをとることなく、ライバルに売り上げの面で負けないためには、より多くの製品をリリースする必要がある。

恐らく、アンドロイドのデバイスがコンスタントにリリースされる点は、アナリスト、メディア、そして、一部の消費者が落胆する大きな理由なのであろう。このような短期間では、新しいテクノロジーを搭載しない限りは(3Dに注目)、想像を超えるイノベーションは難しくなりつつある。

多くの消費者が、それが型の古いアンドロイドであれiPhone 3GS/4であれ、自分が所有するデバイスを見て、アップルがデザインを一新し、独特な機能を提供する翌年まで待てるかどうか悩むことになるだろう。アップルは滅多に新しいテクノロジーをデビューさせず(2007年のローンチ時にスマートフォンを巡る状況を大幅に変えたiPhone自体を除くと)、既存のサービスを採用し、自分のものにする傾向が見られる。

iOS 5を例にとって考えてみよう。このソフトウェアは(ブラックベリーによって刺激を受けた)iMessage、(既存のアンドロイドと酷似する)改善された通知機能、(アンドロイドのボイスコマンドを参考にして、大幅に改善し、完全に異なるサービスに変えた)スマートフォンのボイスコマンド機能、そして、(アンドロイドはユーザーのデータと好みの大半をグーグルのアカウントにシンクする)ワイヤレスのシンクを搭載している。

消費者は、アップルが50万を超えるアプリ、音楽、映画、TV番組のダウンロード、そして、作業を任せられる信頼できるソフトウェアを介して明確なエコシステムを構築している点に気づている。iPhone 4Sの発売およびiOS 5の展開によって既存のiPhoneのオーナーのスマートフォンの使い方が変化し、その結果、アップルが提供可能な最高のスマートフォンを購入するために大勢が苦労して稼いだお金に別れを告げているのだ。

ライター紹介:

マットはロンドン近郊を拠点に活動するザ・ネクスト・ウェブのモバイル担当エディターである。ツイッターでフォローすることも、フェイスブックのアップデートを購読することも、グーグル+で最新の情報を把握することも出来る。また、matt@thenextweb.comでeメールで連絡を取ることも可能だ。


この記事は、The Next Webに掲載された「Apple’s ‘disappointing’ iPhone 4S is on track to be its fastest selling device ever」を翻訳した内容です。

業界の先行しすぎた期待値や知識と裏腹に、実際のユーザーは4Sでも十分以上に満足、買い時と考えたということなのでしょうか。しかし12時間で20万台(しかも3社中、1社のデータ)とは驚異の数字ですね。1日で100万台突破の可能性もありそうです。同時期にiPadが50万台売れていたというデータもさらに驚異なのですが・・・。日本でもKDDIがiPhone 4Sを発売するとのことですし、日本でもどれ位売れるのか注目です。

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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