9月になり、Googleは広告レポートについて、「クリックが発生したキーワードが重要でない場合、そのキーワードが確認できなくなる」旨を発表しました。
つまり、クリック課金が発生したのにもかかわらず、その内訳がわからなくなるということになりますが、これは衝撃的な変更に思えます。
自然検索のSEOとは毛色が違うものの、重要な変更と言えそうですので、Googleの動向を把握するためにも押さえておきたい内容となっています。
今朝、私は先週の「ブランドキャンペーンによるワンクリックに対して、キャンペーンに3ドル以上かかる」という提案を受け入れなかった。
そして私は、幅広いクエリを追加するのではなく、ブランドキーワードをトリガーとする無関係な単語をひとつだけ追加した。
今後、Google広告において、そのようなスモールキーワードが表示されなくなったり、複数の少量のクエリで表示されるかどうかがわからなくなったりする可能性がある。
先日ご報告したように、Googleは広告主に対し、「検索語句レポートには多くのユーザーが検索した重要なキーワードのみを含めることにした」と通知した。「重要」の定義については述べていない。
Googleは、変更の理由を「プライバシーポリシーを維持し、ユーザーデータに関する保護を強化するためである」と語った。
当然ながら、この動きは広告主の怒りを買うことになった。
Is it too much to ask that they define "significant" and give some sort of acknowledgement to what this does to the people who work in the platform daily?
I may not make a huge impact, but I can direct spend off their platform.
— Amalia Fowler (she/her) (@AmaliaEFowler) September 3, 2020
Googleの端的なコミュニケーションはいつもどおりのことだが、いつもどおりガッカリした。「重要」とは何か、まったく触れられていない。数百万ドル、数十億ドルの広告費用の使い道が、広告主にわからない可能性がある。
Googleが「重要」と定義するものについて、それをプラットフォームで毎日働いている人達に何をもたらすのかを何らかの形で認めてもらうことを求めるのは行き過ぎた要望だろうか?
私はこの件に対し、大きなインパクトを与えられないかもしれないが、Googleのプラットフォームからの支出を誘導することはできるだろう。
※Googleの方針に反対し、「Googleを使うのはやめた方がいい」と周囲に働きかけるという意味かと思われる(異なる場合はご連絡いただけますと助かります)。
まず明らかにしておきたいのは、ユーザーのプライバシーの維持と尊重は、マーケティング担当者ではなく、GoogleなどのIT企業にとっても優先事項となるはずだ。
Googleは個人を特定できる情報(PII)や、その他の機密クエリを保持する必要がある。これらのクエリは、検索語句レポートやその他のプラットフォームから外れる可能性がある(アナリティクスに渡される個人を特定できる情報については、また別の機会に話そうと思う)。
しかし、この変更についてのGoogleの斜に構えたコミュニケーションは、その理由について懐疑論の扉を開いたままにしてしまっている。
目次
今年の秋は、”not provided”が実装されて10周年になる。
Googleは2011年に、プライバシーの件に触れ、Googleにログインしたユーザーが検索したキーワードの表示を制限し始めた。
それ以来、いわゆる「not provided問題」はサイト運営者にストレスを与えている。
Googleはその問題について明確な回答を示さなかったが、検索語句レポートにてそのデータを広告主に表示し続けている。
プライバシーがこの意思決定の背景にあるのなら、このデータを広告主に提供することは偽善的、もしくは利己的だろうか? これを否定するのは難しいことだ。
キーワードデータを制限すると、間違いなくGoogleの広告ビジネスに悪影響が及ぶことになるが、広告主はクリックに対して料金を支払っているため、「無駄な広告支出を排除してキャンペーンを最適化するためのアクセス権を持っているべきだ」という見方もある。
“not provided”である場合、キーワードへの入札が検索広告を購入する唯一の方法であり、キーワードを検索クエリに一致させる方法は比較的容易であった。
なぜこのタイミングなのか。明確な答えはない。Googleは言及していない。
Googleの発言をそのまま受けることもできるだろう。
このデータに関して、突然プライバシーの保護に目覚めたのか、注意を引くのに十分な出来事があったのか、またはデータのプライバシー規制と独占禁止法の調査の増加に対する反応なのか。
具体的なトリガーがあったかどうかはわからない。2018年に発効されたCCPA執行は7月に開始し、GDPRは今年の1月1日に施行された。
※CCPA:カリフォルニア州 消費者プライバシー法
※GDPR:EU一般データ保護規則
GoogleがCCPAをレーダーに載せていたのは、昨年11月に広告主向けのソリューションを導入したからだ(7月まで待っていたFacebookとは違い)。
また、より懐疑的な見方をすることもできる。
Googleは、我々の追加の質問に対する回答を提供していない。
Googleの意図に関係なく、このロングテールデータに費やされる広告費は数十億ドルとは行かずとも、数百万ドルになることだろう。
広告主がGoogleに対し、より明確な回答とコミュニケーションを求めているのは不思議なことでもない。
前の四半期において、Googleの検索ビジネスは、パンデミックの中で広告主が撤退したことで大きな打撃を受けた。
Googleは、検索や地図などから213億ドルを生み出した。しかし、これは前年比10%の減少である。総収益は8%減で、これは初の減収となった。
今回の意思決定は収益云々ではなく、自動化の傾向を反映しているのだと思われる。しかし、この全体があったとしても、少なくともこの決定について、これ以上語らないということは不可能だろう。
これらすべてのデータは、広告主にとって大きな収益と重要な気づきに繋がる。
一部の広告主が目にしていることに基づき、広告主は広告費の1/4以上を占める検索語句の可視性を失う可能性がある。
(以下、Googleがロングテールデータを不可視にしたことへの怒りのツイート)
I'm going to flip what @sengineland's @GinnyMarvin suggested in the email this morning. Don't look at search terms with CLICKS <5. Look at IMPRESSIONS <5. I filtered impressions <2 for the past 14 days; 35.44% of my spend came from those terms. #ppcchat
— Eric Heiken = @ericheiken@mastodon.social (@EricHeiken) September 3, 2020
It is entirely possible that we're losing data for at least 51% of ad spend. At a minimum it's going to be at least 30% of ad spend.
Google taking this data away from us will have an absolutely staggering impact on accounts big and small.
This is an absolutely outrageous.
— Collin Slattery (@CJSlattery) September 2, 2020
Webマーケティング代理店のSeerは、この変更による初期の影響を調べ、Google広告が「リスティング予算の約28%のキーワードを非表示にし、PPCクリックの20.4%のキーワードの可視性を削除する」と試算した。
Google検索に100,000ドルを費やすごとに、71,000ドル分のキーワードデータを取得できる。
100,000回のクリックごとに、77,900回のクリックのキーワードデータが表示される。
出典:Seer
今朝、私が受け入れなかった3ドルのキーワードに現れた無関係の単語は、他の多くのロングテールキーワード(基準は明確でない)に波及し、その企業のマーケティング予算に大きな打撃を与える可能性がある。
特に中小企業への影響は非常に大きい。
検索広告はキーワードターゲティングの上に成り立っていた。
その後、Facebookが来たが、それはピンポイントで人をベースにしたマーケティング機能を持ち、ユーザーへのターゲティング能力を備えている。
同時に、機械学習とAIにも大きな進歩があった。
その後、Googleはオーディエンスターゲティングとキーワードターゲティングから離れ、マッチタイプを希釈し、キーワードまったく使用しないキャンペーンタイプを導入した。
Googleが同じ意味の類似パターンをフレーズと部分一致の変更されたキーワードに拡張した際、以下のように述べた。
機械学習が引き継がれ、オーディエンスが搭乗するにつれ、ゼロキーワード検索広告の時代は長きにわたって予測されてきた。実際、ローカルキャンペーン・スマートキャンペーン・アプリキャンペーンなど、自動化されたキャンペーンタイプが存在する時代はすでに始まっている。
機械学習を利用したオーディエンスへと移行したより最近の例として、7月にGoogleがGoogleアナリティクスの予測オーディエンスを導入したことが挙げられる。
広告の観点からいえば、Googleは自動レスポンシブ検索広告のフォーマットをテストのデフォルトにしている。
自動化、機械学習、AIに関して、私はさほど詳しいわけではない。それがより良い結果や工数の削減に繋がるのであれば、良いことだろう。
一方で、マーケターがハンドルから完全に手を離すことはできない。
広告主はクリックに対してGoogleに費用を支払っていることから、広告主は(PII以外の)キーワードデータにアクセスできるべきだという主張を脇に置いたとしよう。
広告主がこの変更に納得するためには、クエリの意図をキーワードに一致させるアルゴリズムが、Googleが理想としているものと同じくらい優れていることを信頼しなければならない。
間違いなく、アルゴリズムは改善されている。しかし、それらが完全ではないという証拠は、これらの検索語句レポートにある。
Googleはそれに詳しく触れてはいないが、どのような返答をするかを予想してみよう。
「我々のデータは、ごくわずかな広告主が除外キーワードを設定していることを示している(裏を返すと、ほぼ除外設定の必要がないということ)」
その事実の裏付けとなる数字の多少がどうあれ、それ自体は問題ではないだろう。
Googleは、「我々は、広告主が重要なビジネス上の意思決定を行えるようにするインサイトを共有するための新しい効率的な方法に投資し続けている」と述べた。
これが何を意味するかを確認するまで、待つ必要がある。
それまでの間、広告主は虚無に対して声を発しているように感じるだろう。
また、このGoogleの動きはパンデミックによって影響を受けた企業に広告のクレジットを発行することで獲得した好印象をふいにする可能性もある。
※COVID-19(新型コロナウイルス感染症): 中小規模の企業向け Google 広告の広告クレジット
重要な第4四半期に向けて、パンデミックがかつてないほど深刻になっているため、広告主は多額の広告費の行方が不明瞭なまま進むことを余儀なくされるだろう。
Webマーケティングはユーザーの行動がデータとして把握しやすいのがメリットですが、今回のGoogleの変更は、そのメリットが消えてしまうような変更と言えます。
プライバシーの観点からの変更とのことですが、今まで見えていたものが急に見えなくなることへの不満は相応に発生することでしょう。
SEOに注力しているとついSEOの情報ばかり追いがちですが、1企業としてのGoogleの動向も可能な限り抑えておきたいと感じさせられる記事でした。
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