私達は、技術系の報道陣に効果的に自分のスタートアップを売り込む方法について取り上げたことがある。そして、今月ロンドンで開催されたFuture of Web Appsカンファレンスに、起業家でありエンジェル投資家のDave McClureが、ベンチャーキャピタリストに売り込む最適な方法についてアドバイスをするために出席した。お金のための売り込みと報道のための売り込みにあるいくつかの類似点を述べたのは興味深いことだった。
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「ウェブアプリの成功と収益性のための10の秘訣」とされていたカンファレンスプログラムにおけるトピックから逸れて、Daveはこう始めた:“私はそれについて何も知らない。だから、その代わりにこれについて話すつもりだ。利益を出したいなら、何かを売るべきだと私は思う。最近はそれをしようとしている人があまりに少なすぎるのだ。”
つまり、その時間のテーマは、VCのお金のためにプレゼンテーションとピッチを作る方法だった。“もしあなたが自分のストーリーを提示する手段を組み立てているなら、大部分の投資家は集中力の持続する時間が短いということを知るべきだ”と、McClureは言う。“彼らは会議に遅刻するかもしれないし、iPhoneで他のものを読んでいるかもしれない。だから、あなたは、より効率的に話を進めることを可能にする方法で情報を整理しておくべきだ。”
一般的な経験則として、あなたの話す時間が長ければ長いほど、彼らが聞いている時間は短くなる。これは、自分の情報を優先順位によって体系化しなければならないことを意味する。“彼らに覚えていて欲しいことが1つあるとしたら、必ずそれが前半に来るようにするのだ”と、McClureは言う。“あなたが話していることを伝えて素早く彼らの記憶に残すような画像や参考文献も良い。それから、もしあなたに彼らとの時間がそれ以上ないとしても、少なくとも彼らにはそれだけの時間があるということなのだ。”
形式的なことは取り払って、McClureは真っすぐに10の秘訣を開始した。
エレベーター・ピッチは、短く簡潔で記憶に残るものでなければならない。‘何を’、‘どうやって’、‘なぜ’が解決されていなければならない。“そして、専門用語が入らないようにするのを忘れないこと”と、McClureは言う。“つまり、投資家に予備知識があることをあなたが知っているのでない限りは、技術的な背景や業界特有の文脈を使わないということだ。”
McClureはさらに、‘YのためのX’は、それらがよく似ている場合にはエレベーター・ピッチには優れたアプローチであると述べた。“つまり、Slideshareは、PowerPointプレゼンテーションのためのYouTubeである、となるかもしれない。両方ともよく知られているため、妥当な主張だ。しかし、基準点があまりに無名だと、分かってもらえないかもしれない。”
楽しむという観念は、VCというマネードラゴンの前に立った時には少し難しいように思えるかもしれないが、これこそがMcMlureが言うあなたが目指すべきことなのだ。“楽しいことは伝染する。だから、自分自身が楽しむようにするのだ。”
数週間前に、私達がInstagramの創業者Kevin Sytromをインタビューした時、彼もこの点について触れていた。“アプリストアは、90%がソリューションベースのアプリだ”とKevinは言った。“でも、それらは問題を解決するのだろうか?”Instagramの構成要素の懸念はこれだった。Instagrameは前身製品Burbnの焼け跡から生まれたため、“ソリューションではなく問題に焦点を合わせよう”というのが信念だった。“Burbnでは、私達はソリューションから始めて遡って作業していた”とKevinは言う。“それは間違ったやり方だ。あなたは問題から始めて、そこから前に進めていかなければならない。”
Dave McClureは、FOWAカンファレンスでそれと同じ立場を取っていた。“多くの場合、人々は、ソリューションは何かと言うことから始める”と、McClureは言う。“しかし、私は、問題は何かについてもっと話すことをお勧めする。これが、あなたが聞いている人と感情的な関係を確立するのを助ける。”
“およそ20年前、私の友人がローラブレードをしていいて手首を骨折した”と、McClureは言った。不自然な角度に腕が曲がった状態の友人との病院までの痛いドライブなど詳しい話で楽しませた後、彼はこの話しのポイントを明らかにした。“私はあなたと問題を共有したのだ。私は、あなたに感情的な経験をさせた。恐らくあなたも個人的に知っている経験だ。”彼は続ける。“あなたの頭の中にはこれらの考えが巡っている。そして、私はまだソリューションについてあなたに話していない。でも、恐らく私はあなたの注意を引き付けただろう。そして今、私達は感情的な状況を共有したのだ。”
つまり、もし問題がひどい骨折をした手首であるなら、McClureのポイントは、今こそ鎮痛剤や手首用の保護サポーターなどその問題を解決するソリューションについて話す時だということだ。投資家に関与するピッチの状況に転換すると、あなたは自分が対面している人と繋がることを助けるシナリオを検討すべきで、これには彼らのバックグラウンドを少しリサーチする必要があるかもしれない。“子どもがいるのか?異性愛者か?同性愛者か?年配か?若いのか?”そして、McClureは言った。“あなたがうまく利用して彼らと共有できるようなコンテクストはあるだろうか?”
優れた製品および企業は次の3つのうち1つをする:あなたを抱く(セックス)、あなたに稼がせる(金)、あなたを導く(権力)。“あなたのソリューションは、私達人間が持っている感情的でパワフルで進化的な要求を出来る限り利用しているだろうか?”とMcClureは尋ねる。
それを念頭に置いて、全ての優れたピッチは、それが顧客をいかに満足させるか、それがいかにすでに世に出ている既存の製品/サービスとは違い、いかにより優れているのかの要点を述べるべきだ。そして、もしそれが違わないのなら、他の全てのものとは異なるようにコンテクストを変更するのだ。
“たぶんあなたは、全ての顧客にとってベストのシュノーケル・ソリューションではないだろう”とMcClureは言う。“でも、左利きのおばあさんには最適かもしれない。自分の製品/サービスが自分の分野で一番ではないとしたら、あなたは自分のニッチで自分が一番になるように基準枠を変更する必要がある。”
もちろん、世界中の全ての話題が正統なデモに勝てるわけではない。これは、あなたがマスコミ関係者に売り込んでいようと、投資家に売り込んでいようと同じだ。“あなたには、自分のソリューションを説明する何かが必要だ”とMcClureは言う。つまり、私達が話題にしていることが、生の製品デモ、スクリーンショット、ビデオやそういったものになるのだ。
理想的には、バックアップも持っていたい。つまり、もしあなたの製品デモがピッチの間に何らかの理由で失敗した―インターネット接続が切断されたとか、その他予期できない問題が発生した―場合には、あなたは他のことを袖口から取り出すことができるということだ。それは、印刷した紙かもしれないし、指人形のプレゼンテーションかもしれない。
McClureが先にほのめかしたように、投資家が最高に愛想の良い人ではないことはよくある。“中断されることを予期するのだ。もし中断されたら、あなたはどうすべきか?聞くことだ”と、McClureは言う。“彼らがあなたを遮る場合、それは通常、あなたの製品についてあなたに何かを聞きたいと思うほど彼らが注意を払っていることを意味する。だから、自分のプレゼンテーションにすぐに戻らず、彼らの質問に適切に回答するのだ―あなたは彼らの関心を得たのだ。台本はあなたのスライドではない、台本はあなたが話している相手の顔なのだ。”
“大部分の投資家はあなたのビジネスがどれほど大きいのかを知りたいため、市場規模は重要である。一般的には、大きければ大きいほど良い。市場規模に関しては2つの考え方がある。トップダウン、それは他の誰かがこの市場データを報告したことを意味する。ForresterやGartnerなどだ。もしくは、ボトムアップ。私はこっちを好む。ユーザー数、商取引数、頻度がある。”と、McClureは言う。
これをする別の手段は、オフラインにおける業界の価値を見て、現在のオンラインの状況と比べることだ。つまり、例えば、オフラインでは1000億ドルの商取引が発生しているが、オンラインではたったの1億ドルであるなら、それは毎年300%成長しているのだ。これが、この市場における規模とギャップの両方を示す。
“ビジネスモデルとは、つまり、‘どうやってお金を稼ぐのか’ということだ”と、McClureは言う。“私は、シンプルな収益モデル、通常は、トランザクションもしくはサブスクリプションのどちらかの直接モデルを好む。収益源をリストアップする際には、シンプルに1つか2つに留めておくことをお勧めする。たくさんの収入源をリストアップするということは、一般的に、自分がどれだけお金を稼いでいるのか分からないと私に伝えていることになるのだ。”
McClureはこれに関して異なる視点を持つ投資家もいることを認めているが、5も10も収入源を挙げることはどこからお金が来るのかについて明確な見通しが欠けていることを示すというのは理にかなっている。“もしあなたが大きなリストを持っているなら、少なくとも一番大きなものが最初に来るように優先付けをすることだ”とMcClureは続けた。
“大きく、不当な優位性を特定してみよう”と、5つのエースを持った手と、ナイフと戦う銃などの画像を背景にMcClueは言った。“もう1つの誤解は、VCがリスクを負うことを好むというものだ。それは全くもって真実ではない。VCは、リスクを負わずに確かなことに賭けたいと思っている。あなたの市場立場は、あなたのチーム、顧客数、収益、知的財産もしくは特許権に基づくことになる。ピッチにおけるあなたの仕事は、あなたの最大の資産が何であるかを言うこと、あなたの市場にいる他の者に勝るあなたの優位性が何であるかを強調することだ。
これは、技術系の報道陣にあなたのスタートアップやアプリをどのように売り込むかに似ている。投資家は、他にはどんなものが世に出ているのか、すでにあるものと比べてあなたがどれほど優れているのかを知りたいのだ。“あなたが自分の競合相手をリストアップすることが重要だ”とMcClureは言う。“あなたが投資家に競合他社について知って欲しくないからといって、ピッチの中に競合相手に関することを入れないのはお勧めしない。それは、彼らとの関係を始めるのに素晴らしい方法とは言えない。”
投資家があなたの知らない競合相手について知っているのも良くないことだ。だから、自分の競合相手についてよく理解するようにし、あなたがしていることがなぜ違うのかを明確にすることだ。“あなたの仕事は、競合相手を隠すことではない。どうすれば彼らより良くなり異なることができるのかを見つけることだ。”
例えば、あなたは、どのように異なるニッチをターゲットにするつもりなのか、もしくは、どのようにわずかに異なる購買層あるいは市場区分に対応するつもりなのかを明確にすることができるだろう。
世界最高のアイディアがあっても、あなたは自分のメッセージを効果的に広める必要がある。“これは大変だ。なぜなら、マーケティングは過去5年でかなり変わったからだ”とMcClureは言う。“これまで以上にチャンネルが増え、5年前には存在しなかったようなチャンネルに何億ものユーザーがいるのだ。ほら、Facebook、Twitter、YouTube、Apple、Andoroid、LinkedIn、Zynga…”
つまり、売り込むプラットフォームとチャンネルがたくさんあるということだ。検索、ソーシャル、モバイル、ローカル、テレビ…そのリストは続いていく。しかし、自分の言葉をそこでうまく広めるには課題もある。VCに自分の計画を伝えるという観点では、あなたが検討すべきことはたくさんある。“量、コスト、コンバージョンは、少なくともあなたに顧客や見込み客の数とそれを獲得するのにどれくらいコストがかかるのか、ターゲットに対するコンバージョン率すなわち収益はどれくらいかを考えさせる良い課題になり得る。”
簡単に言うと、投資家への売り込みをする時には、あなたが自分のメッセージをどう世の中に広めるつもりなのかを明確にするのが得策だ。あなたは、問題もしくはあなたが売ろうとしている製品を興味深いやり方で組み立てるべきなのだ。
“一般的に、あなたは製品を作って売ることができる人が欲しい。それは自分のチームを見る一番簡単な手段だ。深い技術経験のあるギークは素晴らしいし、最近ではビジュアルやユーザビリティの経験があるデザイナーも良い。でも、もしあなたが、以前に会社を売却したことがある起業家、あるいはセールスで成功した経験があるセールス・マーケティング分野の人間と接触することができるなら、それも大切な人材である。”と、McClureは言う。
McClureは、具体的に‘ハスラー、ハッカー、デザイナー’のスキルについて話した。顧客を獲得する方法を見つけ出すハスラー、エンジニアリングや技術面に深い知識のあるハッカー、そして魅力的なやり方で製品を組み立てるデザイナー。 これから得られる1つの重要なポイントは、スキルの幅が大切だということだ。
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“お金のために誰かに売り込もうとしているなら、あなたがどれだけの金額を必要としていて、それをどう使うつもりなのか何らかの枠組みを持つことだ”とMcClureは言う。McClureが述べた要点は、大中小の異なる投資チャンスに応じて頭の中に3つの予算を持つことの重要性だった。あなたは、それぞれの金額があなたを特定のマイルストーンに到達させることができることを示せるべきなのだ。
“資金調達について考える際、最善の方法は、会社の価値を上げるマイルストーンにあなたを楽に運ぶために十分な資金を求めることだ。そして、その後には、自分の会社のより高い評価を手にしてより多くの資金を集めることができる”と、McClureは言う。
そのお金であなたが何をするつもりなのかを売り込むということに関しては、McClureは、あなたがそれを使う方法は3つあると述べた。製品を作ることに役立つ採用、マーケティングキャンペーンを助け顧客を獲得するのに役立つ採用、そして経費だ。“一般的には、私は、あなたはこれら3つのカテゴリにお金を振り分けるべきだと考える。投資家と話している時には、‘経営のためにはこれだけの資金が必要で、これだけの額が社員に支払うために必要で、これだけの額が顧客獲得には必要かもしれない’と言えるようになりたいものだ”と、McClureは言う。
突き詰めれば、あなたは何のためにお金が必要なのか、それをどう使うつもりなのか、それを返すためにどうやってお金を稼ぐつもりなのかを明確に理解して、示す必要があるのだ。簡単なことだろう?
この記事は、The Next Webに掲載された「Dave McClure’s 10 tips for the perfect investment pitch」を翻訳した内容です。
書かれている内容も順番もまさに理想的なプレゼン通りの素晴らしい内容だったと思います。基本的といえば基本的ですが、結局基本ができていないプレゼンが多いですし、プレゼンテクニックが悪いというより良いプレゼンにそもそもなりえない、投資家に出資してもらう対象になりえないスタートアップが多いのも事実なんですけどね。市場規模やマーケティングプランはともかく、とりあえず1と2を徹底するだけでも大分話は変わる気がします。なんて偉そうなことをいう立場に私自身も全くないのですが、自分が手がけているサービスも良いプレゼンができるようなサービスに育てていかなければと改めて思いました。 — SEO Japan
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