一般的に、SEOとは、特定のキーワードの検索結果における順位上昇を目指す施策です(もちろん、他にも様々な目的がありますが)。そのため、SEOの担当者が測定する値として、ターゲットとなるキーワードの順位が該当するケースは多いでしょう。しかし、マーケティング自体の成功を考えると、自社製品やサービスのブランド名での検索数も非常に重要となります。今回は、そんなブランド検索に焦点をあてたSearch Engine Landの記事(https://searchengineland.com/share-of-search-seo-metric-433133)を紹介します。
「Share of search(検索のシェア)」という指標を用い、SEOのポテンシャルを解き放とう。この指標が重要である理由と、SEOの価値を提供するブランド検索の役割を理解しよう。
※以降、「Share of search(検索のシェア)」を「検索のシェア」と表記。
SEOは真剣に取り組まれるべきだ。
そして、検索のシェアが重要な指標となる。
その理由を見ていこう。
目次
検索のシェアとは、マーケティングのエキスパートである、レス・ビネット氏とジェームス・ハンキンス氏によって、数年前に開発されたSEOの指標である。
検索のシェアのコンセプトは非常にシンプルである。まずGoogle 検索で、その業界の競合サイトを特定する。そして、全ての競合ブランドの総検索数に対して、貴社ブランドが獲得したオーガニック検索数の割合を算出する。
「無料のトラフィックである」という理由で、ブランド検索自体を無視するよう教えられているSEO担当者も多いだろう。
しかし、これは真実ではない。ブランド検索は、いくつかの理由によりとても重要であり、積極的にブランド検索数を増やすことで多くのメリットを得ることができる。
検索のシェアとは、マーケットのシェアである。また、検索のシェアが高く、増加しているブランドは、将来的な売上も増加するとしているデータも存在する。
これには、明らかな理由がある。なぜなら、人々が購入したいと思うブランドは、彼らが検索したいと思うブランドであるためだ。
もしこれが事実だとしたら、より深く理解しない手はないだろう。
キャリアの初期の頃、私は同一の会社の2つのプロジェクトに関わっていた。
事実上、この2つのビジネスは同じ業界に属していたが、それぞれ異なるブランドであった。
1つ目のブランドは、広告と宣伝に全力を注いでいた。
ビルボード、スポンサーシップ、ディスプレイ広告、ニュース特集などだ。
2つ目のブランドは、逆の施策を採用し、SEOとPPCに全力を注いでいた。
つまり、1つ目のブランドのほうが予算は潤沢であり、ブランドトラフィック、バックリンク、売上をすぐに獲得することができた。
SEOとPPCの効果はほとんど見られなかった。
これには明らかな理由がある。リーチ数だ。
あらゆるビジネスに共通することではあるが、基本的に、そのビジネスが成長するためには、可能な限り多くの人にリーチし、その存在を伝えることが必要である。
人々がその存在を知らなければ、それらを購入することはできない。
そこで、検索が登場する。
キーワードのおかげで、ブランドはすべての人にリーチするために予算を投じる必要がなくなった。PPCやSEO、または、その両方を駆使することによって、オンラインの潜在的な購入者に出会うことができるのだ。
これが、ここ10年間、「ブランド」マーケティングが犠牲になっていた理由である。
しかし、この方法には問題がある。
検索は新しい「棚」」である。
マーケティングの教授であるバイロン・シャープス氏が述べており、これは正しい。
あなたが必要とするあらゆる商品が揃っているスーパーマーケットを想像してほしい。
その店内で、あなたは店員に対し、「自動車保険の棚はどこですか?」と尋ねる。
「かしこまりました。15番通路にございます。」
その15番通路というのはGoogle検索であり、検索結果画面はその棚に並んでいる商品である。
検索で重要なこと、また、PPCが高価である理由は、人々は購入するための準備ができていない、ということである。
人々は調査モードに入り、長期間に渡って、検索を繰り返す。
Googleによる調査はこの状態を、以下の2つとして定義している。
New Google research: What we now know about ‘decoding’ consumer decision-making、Think with Google
ブランドマーケティングの担当者は、これらをカテゴリー調査者や、購入準備者などと呼ぶ。
本質的には、どちらも同じである。
検索は過剰であり、購買サイクルは、そのカテゴリーによっては、長期間を要する。
B2Bのカテゴリーでは、12ヶ月かそれ以上の期間を必要とすることもあるし、もっと短い場合もある。
また、次のような要素が、購買サイクルのスピードを遅らせることもある。
簡単に言うと、わたしたちはスーパーマーケットに何度も足を運び、その度に、新しい選択肢を見ているのだ。
これが、PPCやSEOの効果を実感し、説明することが難しい理由である。
購買サイクルは長くなることはあるが、短くなることはない。
最終的に、私達は検討に値するブランドをいくつか選び、その中から1つのブランドを決定する。
しかし、購入する準備が整った場合のみ、私達はブランドを決定することができる。
多くのビジネスにとって、検索はオンライン上で発見される、唯一の手段である。
ブランドマーケティングはほとんど行われず、購入者の意図に関連した自然検索と有料検索が、検索される方法となる。
そして、ここで、検索のシェアが登場するのだ。
なんらかの商品を購入する意図のあるキーワードがGoogleで検索されると、あなたは多くの競合相手に立ち向かうことになる。
あらゆるオーガニック検索と広告がクリックを争っているのだ。非常に大変なことである。
しかし、検索者がすでに知っているブランドであり、理想的には、検索者が直接検索するようなブランドであるならば、物事はずっと簡単になる。
これが、ブランドマーケティングが重要な理由である。
探索の段階を含む、見込み顧客が購入に至る前の段階で彼らにアプローチすることで、彼らが購入を決断する際に、あなたのブランドを思い出してくれる可能性が高まる。
本来、SEOは需要を獲得するチャネルであり、ブランドマーケティングに影響を与えることはできない。
しかし、それができる可能性があると分かったのだ。
BrightonSEOは、Googleのジョン・ミュラー氏とのQ&Aセッションを10月に開催した。
ミュラー氏への質問の一つに、「デジタルPRはリンクスパムなのか?」という質問があった。
ミュラー氏の回答は下記である。
「私は、多くのデジタルPRは素晴らしいものであると考えています。あなたのWebサイトに関連し、幅広いオーディエンスにとって興味のある何かを作成する。これは素晴らしいことです。」
エリ・シュワツル氏は、自身の著書である「Product Led SEO」にて、こう述べている。
「私が知る最高のリンクビルダーの中で、PRの手法を用いてリンクを構築している者がいる。あなたの目標は、注目を集めることであるべきだ。バックリンクの構築においては、PRを第一に考え、リンクのことは第二に考えよう。」
幸運にも、私はSEOの部署を立ち上げたデジタルPRのエージェンシーで働いている。
そのため、リンクチームやPRチームと協同することができ、様々なデータを見ることができる。
私は、我々が立ち上げたあらゆるキャンペーンを確認し、デジタルPRが与えるブランド検索への影響を調べた。
まさに、その通りであった。
広報活動は、ブランド検索とリンク構築に寄与するのだ。
すべてのリンクやメンションが該当するのではない。重要なものは、文脈上の関連性である。
メディアのリンクを獲得することと、宣伝活動を成功させることは、全く別物なのだ。
デジタルPRの考え方は、リンクを獲得する際、そのトピックがブランドに関連していることを目指している。
言い換えれば、読者がブランド名を見た際、検索したいと思わせるような興味をもたせることを望んでいるのだ。
ここで、一つ明らかにしておこう。多くのSEO担当者は、このアプローチを否定的な目で見るだろう。
リンクの購入を勧めるSEO担当者もいるだろう。デジタルPRよりもリンクを購入することを好む者もいる。
しかし、どこまでいっても、我々はマーケティング担当者なのだ。
リンクを購入したいため、狭い範囲でのコンテンツを編集したいために、SEO担当者を雇う者はいない。
SEO担当者を雇う理由は、売上を獲得したいからである。検索のシェアを拡大させるため、その予算を最大限に活用することが、我の仕事なのだ。
しかし、検索のシェアを拡大することができなければ、我々はどうなるだろうか?
メンタル・アベイラビリティとは、あなたのブランドが、購入の段階で検討される可能性のことを指す。
そして、これは成長のための鍵となる。
なぜなら、ブランドのパワーによって、企業は以下のことが可能となるからだ。
長年、私は、検索結果画面には表示されるものの、ブランド力がないために、どの場面においても競争しなければならないビジネスを見てきた。
「我々はSEOの担当者だ。トラフィックとランキングに注目していればいいのでは?」と思ってしまうかもしれない。
しかし、今は2023年である。
より多くの予算を確保したいのであれば、より早く、より大きなインパクトを与える必要があるのだ。
ビジネスにおけるマーケティングの成功を確保することは、SEO部門の仕事ではない。
しかし、SEO部門がより多くの予算を確保したいのであれば、我々が提供できる価値を示す必要があるのだ。
そして、ブランド検索のシェアと購入の意図のある検索を測定することで、我々の価値を示すことができるのである。
では、購入の意図のある検索のシェアとは、どういったものだろうか?
一般的に、SEO担当者が注目するのがこれである。
ブランドが購入者にリーチするために支払うトラフィックである。
そして、「ブランド検索」のシェアと同様、大きなシェアを持つビジネスは、将来、多くの収益とトラフィックを獲得する可能性が高くなる。
そのため、SEO担当者として、ブランドの検索のシェアと購入意図のある検索ボリュームのシェアを積極的に計測する必要があるのだ。
My TelescopeやGoogle Trendsのようなツールも活用し、ブランド検索を追跡しよう。SemrushやAhrefsは、購入の意図のある検索のシェアを計測することに、役立つ。
そして、これはSEOの利点に関連する会話をも変えてしまうのだ。
需要の獲得から、ブランドの成長へと、SEOを変えてしまおう
しかし、これを最大化させるために、ブランド認知度を高め、購入の意図のあるキーワードでのランキングを上昇させる必要がある。
この二重のアプローチによって、SEOの価値を高め、より早い結果を提供する。
SEOには動きがある。
そして、セマンティック検索の時代においては、新しいアプローチが求められている。
マーケターからの尊敬を受け、適切な予算を割く必要がある、強力なマーケティングチャネルであると、SEO自身がそう主張するべきだ。
そのタイミングは、今である。
そのカテゴリの製品やサービスに興味のあるユーザーに対し、購入を検討する段階で自社の製品やサービスを思い起こしてもらうことは非常に重要と言えます。そのためには、購入に至るまでの段階での露出など、多くの施策が求められるでしょう。ブランド検索の場合、高順位を獲得することは比較的容易です。そのため、ブランド検索数自体を増加させることができれば、より多くのトラフィックの獲得も見込めます。SEO単体では難しい施策も含まれると思いますが、他部署と協力しながら進めていきたい施策であると感じました。
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