以下の記事は、Lisa Rosenによるゲスト投稿である。Twitterで彼女をフォローしたい人は@entreprenrswifeへ。
“床で寝る人はベッドから落ちることはない。” ~Robert Gronock
“今日仕事を辞めたよ”と、夫のSeth Rosenが、手提げカバンを何気なく下ろしてアパートの玄関を入ってきた時に、言った。あたかもそれが大したことではないかのように。あたかも仕事を辞めることがありふれた出来事であるかのように。公平のために言うと、Sethは、親友のMike Salgueroと一緒に、最近買ったばかりのウェブサイトCustomMade.comでのフルタイムの仕事をするために仕事を辞めることについて以前に話をしていた。さらに公平のために言うと、Sethは、その動きについて私がどう思うかを繰り返し尋ねてきた。
私は、彼を明確に支持するとはっきりと断言した―なぜなら私は彼が本当にそれをするとは思わなかったからだ。それに、新たに作られた起業家を見ているうちに、自分は腕を差し出して彼を抱きしめるべきなのか窒息させるべきなのか分からなかった。結局のところ、多くの人が会社を始めることについて話し始めるのは、自分が100万ドルのアイディアを持っていると思っているからであるが、おなじみの引き金を引くのはほんのわずかな人にすぎない。
ウィキペディアで手早く検索したところ、毎年アメリカでは200万もの新しいビジネスが始められていて、ベンチャー資金調達を受けているのは800以下、つまり0.04%であることが分かった。CustomMadeはすでに絶望的だった。さらに悪いことに、それは2009年の夏で、アメリカ経済は深刻な不況の真っただ中だったのだ。彼は気が狂っていたのだろうか?
一般に信じられているのとは反対に、SethとMikeは大不況の真っただ中は会社を始めるチャンスだと主張した。2009年には、才能ある人々が解雇され、投資家はより良い取引を求めていた。DisneyやHewlett-PackardやMicrosoftのような企業が、優れた会社が厳しい不況の時代に誕生したという十分な先例を提供した。Sethも、今後何十年で飛躍を遂げる可能性を持った若くて教養のある子供のいない夫婦にとってパーフェクトなタイミングなんだと私を説得した。それでも、6ケタの給料(それに、母が後に指摘したように健康保険も)を衰弱したスタートアップと交換することは、理不尽でものすごくリスキーであるように思えた、そう、他のみんなにとっては。
“何で彼にあなたの経済的安定を脅かさせるの?”というのが、友人と家族と同僚からの共通した叫びだった。もっと突っ込んで聞いてくる人もいた:
“Sethはいつから給料を稼ぎ始めるの?”
“あなたが家賃を払うの?”
“子供を産むのは先延ばしにするの?”
“CustomMadeって何してるんだっけ?”
“全てを失ったらどうするの?”
“ちょっと待って、私のウェディングに来る余裕がないってどういう意味?”
私は一斉射撃の矢面に立ち、できるだけ銃弾を素早くかわしていた。次第に疲れ果てて、SethとCostomMadeに対する私の確信をむしばみ始めた。
ある日の午後、私は仕事中のSethに電話をして、夕食を作るから家で食べるように言った。彼は、メニューがチキンパルミジャーノだと知ると、仕事を早く切り上げることに同意した。これは暗号だった―パン粉をまぶしてフライパンで焼くプロテインと電子レンジ用ポップコーンから成る私の限られた料理のレパートリーだ。ホームメイドのチキンパルミジャーノが夕食のメニューにある場合は、何かがRosen家に持ち上がっているということなのだ。
Sethがドアから入って来るとすぐに、私の不安は爆発した。“なぜ私たちは今会社を始めるの?”と、私は聞いた。“リスクが大きすぎるように思うの。”
“それは、君がリスクをどう定義するかによるね”と、彼は冷静に言った。彼はキッチンのテーブルに座り、ワインを注いだ。“君はリスクをどう定義するの?” 彼の物知り顔は、この質問が私の第一印象より多くの分析を必要とすることを私に物語っていた。しかし、答えは明らかのように思えた。私は考えもせずに、“リスク”とは何か悪いことが起こる可能性だと答えた。
Sethは首を横に振った。“リスクは単に悪い結果を避けることではない。それは、良いにしろ悪いにしろ予期しない結果の可能性なんだよ。”
“リスクというのは、トレードオフを評価することなんだ”と、彼は続けた。“そして、トレードオフを評価することは、機会費用の検討を必要とするんだ。もしこれをしたら、あれはできない、というようにね。私は、安定した仕事に留まって、給料を稼ぎ続けて、CustomMadeの失敗のリスクから自分を守ることはできる。でも、私の時間の機会費用はどうだろう?”
意味することは明らかだった。もし彼が投資銀行家として続ければ、CustomMadeを築くことも、人々が小売商品を消費する方法を変えようとすることも、エグジットの成功に手を伸ばすこともできない。“安定した”仕事をして過ごす毎日は、会社を築くことに費やすことが出来ない日だったのだ。
“最初それは直感に反しているように思えるけれど、今の仕事に留まることは、財政的にも職業的にもとても限られた上昇を表しているんだ。実際にはそれはよりリスクのある道だと思う。”
私は一瞬沈黙して、彼の言葉をゆっくりと飲み込んだ。彼は正しかった。初めから私は異なる眼鏡でCustomMadeを見ていたのだ。そして、私たちの生活に関わる他の多くの人たちも。
そんなわけで、上のRobert Gronockの引用句は、起業家やその家族にとって関係のあることだ。あなたの解釈は、あなたがいかにリスクを定義するかを示している。Sethと結婚する前の長い間、私の人生は予測可能だった。子供の頃、両親は私に、姿勢を正して座り、1日に2回歯を磨いてフロスをし、常に線の内側に色を塗るように教えた。高校卒業後は、大学からロースクールへと安全な道をたどって、安定した給料をくれるボストンの法律事務所という型にはまった空間へと進んだ。その当時に私がGronockの引用句を読んでいたなら、“なんて頭がいいのか!”と考えて、けがをしやすい四柱式ベッドと床の上に置いたマットレスをすぐに交換しただろう。
しかし、一人の起業家と結婚した後に面白いことが起きた。Sethは私に世界について違う風に考えることを教えた。あのGronockの引用句は、悪い結果を避けるための賢いアドバイスではない。それは、トレードオフに関することなのだ。床に寝ることによって、悪い結果(ベッドから落ちてけがをすること)の可能性を軽減するために良い結果(この上なく幸せな眠り)を潰している。トレードオフと機会費用の観点から起業家精神について考えることは、関連したリスクについて考えるための良い方法だ。
Sethとの議論に基づくと、この分析的フレームワークは、この決断が会社を始めることなのか、日々の運営上の問題を始めることなのかと同じだ。どちらの場合でも、あなたは自分の優先順位を考える必要がある。それは、少なくとも部分的には自分の内集団の意見によって形作られるものだ。もちろん、複数の第三者の意見は問題を複雑にすることがよくある。これは、あなたの決断について後からとやかく言う私のような配偶者を持っている場合には特にそうだ。例を挙げよう。
Sethの会社、CustomMade.comは、カスタム商品とサービスのためのオンラインマーケットプレイスを運営している。特別注文で作られる長持ちする商品(家具や、宝石や洋服など)を探している消費者をメーカーのネットワークとつなげるのだ。始めの頃、私は、個人開業者から複数の従業員を持つ大きなビジネスにまで及ぶ幅広いメーカーのために、会社が、ビジネス経営の仕方のワークショップやその他の教育プログラムのような能力強化をすべきだと断固主張した。私の考えは、追加プログラムを加えることがCustomMadeコミュニティを団結させるだろうというものだった。提案をすることは、私が会社に価値を追加しているようで気持ちが良かった。
“もちろん”と、Sethは言った。“それはいい考えだね”と。私はワクワクした。
しかし彼がそれに関して行動を起こすことはなかった。私が5回目に口うるさく文句を言った後でも。
“聞いて、それはいい考えだよ。でも、私のチームは小さいし、エンジンをかけるには、みんなが製品を築くことに焦点を合わせる必要があるんだ。もし私がチームの焦点をメーカー向けのワークショップに向けさせれば、そのことが彼らを重要な優先順位から離すことになって、製品開発を遅らせるリスクがあるんだ。ほら、トレードオフだよ?”
そうだ。彼は、従業員の時間の機会費用について言っているのだった。私はすぐに能力育成について言うのを止め、それ以来、出しゃばるのは必要最低限に抑えるようにしてきた。私がフィードバックを提供する時には、トレードオフの観点からそれを組み立てるようにしている。私たちの関係にもそのフレームワークを取り入れてきたが、結果は様々だった。正直なところ、あなたが私のように本質的に衝動的である時には、立ち止まってトレードオフを考えることは難しい。しかしながら、私と違ってSethは、決断をする前に全ての選択肢を注意深く比較検討する時間を常にさく。
しかし、恐らく私はその事実から慰めを得るべきだろう。少なくとも私たちが床で寝ることはないと知っているのだ。
この記事は、OnStartupsに掲載された「The Startup Spouse: On Risks, Trade-Offs And Never Sleeping On The Floor」を翻訳した内容です。
面白いながらも妙にかしこまった気持ちで読んでしまいました。結婚の際、女性が男性に求める条件の2番目が「経済力」ながらも1番は「性格」の日本(参照)とはいえ、中には結婚した相手がスタートアップ起業家の人もいるでしょうし、当事者の起業家が意外と気にせず仕事に没頭する中、精神的に辛い想いをするパートナーも多いことでしょう。最後に成功が約束されているわけではないですしね。まぁ、そこを苦労と思わず一緒に楽しめるとはいいませんが、乗り切れる位の人じゃないとスタートアップ起業家と生活することは難しいかもしれませんね。
この記事もなんだかんだで共に生きていく筆者の覚悟とそれを楽しもうとする意思は感じられました。是非いつか成功してほしいものです。。。 — SEO Japan [G+]
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