ChatGPTの登場以来、AIについて語られている機会をSEOや検索の界隈でも多く目にするようになりました。Google検索、Bing検索ともに、AIの技術を活用した検索をバックグランドだけではなく、ユーザーが使うことのできる実際の機能として提供し始めています。こうした新時代の検索技術は、今までの検索体験を大きく変える可能性を秘めています。まだまだ未知数な箇所も多いですが、我々が現在行うべきことを提言している、Search Engine Journalの記事を紹介します。
目次
Search Generative Experience (SGE)の意味を理解し、現在のあなたのSEO戦略を守ることが重要だ。まずは、この記事で紹介する5つのヒントを参考にしてほしい。
Open AIがChatGPTをローンチし、AIの新しい時代が始まりを告げてからすでに半年が経過している。
それ以降、
非常に多くの人々がAIについて語っているため、あなたがうんざりしてしまうのも無理はない。
しかし、AIには大きな可能性があり、すでに実用性も示されているからこそ、多くの人々が語っているのだ。
とはいえ、ここ最近、AIについての議論が落ちつているように感じる。
完全に「凍りついた」のではなく、「熱が冷めた」といったところだろう。なぜなら、導入初期の過大な主張が一通り完了し、AIの能力をより良く理解できるようになったからだ。我々は、現段階における、AIツールの有用性をより良く位置づけることができているのである。
5月は、「chat gpt」の検索数が初めて減少した月(-14.2%。Similarwebのデータより)であるが、chat.openai.comへの累計のトラフィックは依然として増加している。モバイルのトラフィックは減少しているようだが、ChatGPTがモバイル版をローンチしたことを忘れないでほしい。
Similarwebより。2023年6月。
多くのSEOの専門家は、AIが作成したコンテンツをCNETが公開し、間違った情報が含まれていたことを覚えているだろう。
しかし、creditcard.comとBankrateもAIが作成したコンテンツを公開している。
そして、これら3つのAIが作成したコンテンツは、人間が作成したコンテンツと同じようなパフォーマンスを見せている。CNETは記事を公開する前のファクトチェックを怠ったため、PRにおける大打撃を受けることになった。
しかし、これこそが重要な点なのである。我々は、まだ、AIが作成したコンテンツをなんの懸念もなしに公開できる状況には至っていない、ということに気づいているのだ。AIができることは、乱雑なドラフトを作成し、刺激的な角度を示し、ライターの作業を軽減(文法の訂正等の編集作業は必要かもしれない)するといったことだ。今のところは。
我々は、この道がどこへ向かっているのかを見ることができる。つまり、AIを使った、指数関数的に増える新しいモデルを、いたるところで見ることができる。
ourworldindata.orgより。2023年6月。
対数に注目してほしい。あらゆる形式のコンテンツを編集し、要約し、作成するAIツールの波が押し寄せているのだ。
AIがあらゆるソフトウェアに組み込まれ、マーケティングを根本から変えるという未来へ向かうことは避けられない。
AIの批評家でさえ、AIが鍵となる未来に向かっているということを認めている。
テック業界にいる誰もが、下記の3つの疑問を抱いている。
SEOに関連する事項について、これら3つの疑問に答えてみよう。
Search Generative Experience (SGE)を理解せずに、将来を見据えたビジネスを語ることはできない。
SGEは、まだベータ版であることを忘れないでほしい。12月にローンチされる予定のパブリックバージョンは、まったく別物になる可能性もある。また、SGEからのトラフィックについてのデータもまだない。
この記事の内容は、私がベータ版を使用した経験に基づく仮説である。とはいえ、私は多くの時間をSGEに費やしており、13年もの間、「検索」をウォッチし続けている。
SGEは、現状の検索と比べ、検索結果に表示されているWebサイトへのトラフィックを減らすことになろだろう。なぜなら、SGEはクエリに対する回答を与えず、Webサイトではなく、Bardとの深い会話に検索者を導くからである。
「best mattress for back pain」のGoogleの検索結果。2023年6月。
SGEは強調スニペットの強化版のようなものであり、オーガニックトラフィックを得る余地は多くない。トラフィックがどのようになるかを算出したいのであれば、現在のオーガニックトラフィックから、質問形式のクエリとPAAで表示されているクエリからのトラフィックを差し引けば良い。例えば、「what|why|where|when|how」のクエリを、Search Consoleの正規表現の機能を使用してフィルタリングし、非ブランドクエリのトラフィックを算出するのだ。これが、あなたが失う可能性のあるトラフィックとなる。
例外は、サイドビューのカルーセル内に表示されているWebサイトである。懸念点は、そのWebサイトをユーザーがクリックするかどうか、であるが、私はイエスであると考えている。
検索者の質問に対し良い回答が提供されていたとしても、全体像、レビュー、より良い回答などを求め、ユーザーがクリックする可能性はあると考えている。そのキーワードで自然検索結果に表示されているWebサイトのトラフィックが減少し、カルーセル内で表示されているWebサイトのトラフィックは上昇する、といったことは起こりうる。
GoogleがAIによる回答の表示を開始した際、Googleを捨ててBingに移行しなかったように、何年もかけて、Googleはユーザーからの信頼と習慣を築いてきた。
つまり、検証が必要な仮説の1つとして、検索者がSGEの回答に満足するのか、あるいは、より多くの情報を求めてWebサイトをクリックするのか、ということが挙げられる。
AIによる回答の形式や詳細はキーワードによって異なる。これは、SGEによる影響が大きい業界はどこになるのか、という疑問につながる。
AI以前、Googleはロングテールのクエリに対する答えを提供することに苦労していた。Large Language Models (LLMs) と生成AIは、この問題を解決する可能性がある。
LLMは、ユーザーの混乱を減少させるために従来の検索結果とマッチングを行い、AIによる回答のファクトチェックを行う。これは、特に情報系のクエリで強く作用するはずだ。その結果、パブリッシャーやアフィリエイターなど、ユーザージャーニーの前段階におけるトラフィックから利益を得ている企業が、最も大きな打撃を受けるはずだ。
検索クエリに質問(「ベスト」以外)が含まれていない限り、Googleは商品やビジネスのリストに直接ジャンプさせるため、小売業、DTCのブランド、ローカルビジネスも大きな影響を受けるかもしれない。
Google Merchant Centerを会計に直接結びつけるGoogle Testと併せ、Amazonに対抗するマーケットプレイスをGoogleは構築しようとしているのかもしれない。
YMYL (your money or your life)の領域が他の領域よりもオーガニックトラフィックを獲得しやすくなる、といった状況が初めて生まれるかもしれない。なぜか?YMYLの領域は規制が厳しいため、AIによる回答は、ライセンスなしでは規制の対象になる可能性がある。
Googleがそのようなリスクを負うとは考えづらいため、完全に手放すか、より良い解決策が見られるまで手をつけない可能性がある。ベータ版では、YMYLの領域でSGEが回答している例を目撃したが、パブリック版でもそうなるとは思えない。
SGEは、その見た目も機能も、既存の検索とは大きく異なる。そのため、現在我々が使用しているSEOのデータが意味を持たなくなってしまうかもしれない。
Googleは、SGEに関連したデータを提供できるようにSearch Consoleを改良するか、全く新しいツールを提供してくれるかもしれない。しかし、そうでない場合、検索結果がどのような構成になっているかをリバースエンジニアリングすることに役立つ、大量のランキングデータを失うことになってしまうだろう。
SGEがベータ版を脱却し、最終版の内容とその影響力を理解する時間を我々が確保できれば、より良い解決策が生まれるはずだ。それまでは、今までに実際に目にしてきたものをベースに将来的な対策を練ることとしよう。
ダイレクトトラフィックはそのWebサイトの人気を測ることができる強力な指標だ。ダイレクトトラフィックは最もコンバージョンの高いトラフィックとなることもあり、また、オーガニックトラフィックが減少した際の救世主にもなりうる。
ダイレクトトラフィックを上げるための要素を挙げてみよう。
検索ボリュームは良くも悪くも魅力的である。長い間、検索ボリュームには重大な欠点があった。
特定のキーワードのコンバージョンを測定するために、ぺイドサーチを用いて実験を行うこともある。
ユーザーが何を求めており、SEOに有効な手段を探すためには、検索ボリュームのような需要をもとにした指標や、キーワードの順位のような可視性の指標を今後も使い続けることができるかは不透明であるため、顧客が求めているものを知るための新たなソースが必要とされている。
最適な方法の1つは、ユーザージャーニーと検索ジャーニーについて、顧客と会話をすることだ。
例えば、マットレスの市場の場合、腰痛の軽減などの特定のニーズが存在しているかもしれない。そのため、「腰痛に最適なマットレス」や「腰痛と睡眠時無呼吸症候群に最適なマットレス」や「マットレスは腰痛に効く?」といったキーワードで検索が行われている可能性がある。
顧客や見込み客と直接会話することができない場合は、営業やサポートの電話の内容をAIで照会するといった方法も考えられる(Humataはこれを可能とするツールだ)。
経験と専門知識の2つは、AIが再現できない項目である。後者については、今後、AIでも作成できるようになるかもしれない。しかし、現状は無理だろう。
仮に、ある時点でAIが経験を再現できたとしても、実際に他の人間が体験したことのほうがユーザーは興味を持つだろう。
現時点では、どのようなキーワードやトピックが、経験に対するインテントが高いかどうかを考えることは可能だ。旅行ガイドはわかりやすい例だろう。しかし、製品レビューや課題を説明するときでも、経験を強調することは可能である。
そのコンテンツを書いたのは誰か、ということはすでに重要であるが、今後ますます重要になるかもしれない。一般的なツールでは代用できないほど、該当のトピックに精通している著者もいる。
例えば、アンドリュー・ヒューバーマン博士はサプリメントについて、ティム・フェリスは自己啓発について、ヘンリー・キッシンジャーは外交について、といった具合だ。
企業は、自身のビジネスに関連するトピックについて最適な著者をどのように探すか、そして、彼らをどう独占するかについて、検討する必要がある。今後、一部の専門家によるコンテンツを独占的に契約する企業が現れたとしても、私は驚かないだろう。
賛成と反対、類似のトピックとの差異、誰のためのトピックか、など、トピックには様々な角度がある。
SGEはトピックに関する特定の角度を強調するため(その理由は明らかではなく、その背後にあるロジックはさらに洗練されたものになあるかもしれない)、企業はあらゆる角度のコンテンツを作成するか、各キーワードでGoogleが好むものを効率的に発見し、それに併せてコンテンツを作成しなければならない。
トピックの角度は、サブトピックとは異なる。メイントピックがあり、そのメイントピックの入れ子となるサブトピックが存在する、という見方だ。今日、コンテンツには、その角度を含める必要があるのだ。
AIは双方向のものである。検索を変えるだけではなく、我々の仕事の仕方にも変化を与える。その最大の進歩は、今のところ、スピードである。
インテグレーター(オーガニックトラフィックを発生させるためのコンテンツを作成しなければならない企業)で働いている専門家は、草案をものの数十分で作成し、編集により多くの時間を割き、個人的なタッチと専門知識をそのコンテンツに与えることができるようになっている。
そして、新しい記事に挑戦し、新しい角度を見つけ、ギャップを取り除くと行った作業をAIによって行うことができるのだ。また、定期的にコンテンツを更新し、調整するといったことも行える。
アグリゲーター(UGCや商品の在庫などを活用してSEOの規模化を図る企業)で働く専門家は、自社データや公開されているデータをもとに、何千、何万ものページを作成するための優秀なプロンプトを開発することを可能としている。APIからのデータをコンテンツ化し、より良い方法でそれを提示させることができるのだ。
AIはゆっくりと台頭し、そして、急速に進んでいる。
現在、我々は「巡航高度」に達しており、AIが得意な部分と不得意な部分への理解を深めている。
私は、多くのインハウスのチームやエージェントのチームと話してきた。
彼らにAIの使用頻度を尋ねると、多くのメンバーがぽかんとした表情を浮かべた。つまり、多くのメンバーがAIを試したことがないのだ。これは大きな誤りである。
完全な禁欲は、うわさと見出しをもとに意見を構築する姿勢を築いてしまう。
AIと積極的に関わり、限界に挑み、新しい挑戦を行うことが、あなたのビジネスの将来性を担保するための最善の方法なのである。
この記事でも触れられている通り、Search Generative Experienceのパブリック版の登場が非常に気になります。どのようなUIになるのかはわかりませんが、大きな変更を加えると、一般のユーザーに受け入れられないかもしれません。テレビ番組などでもAIの話題を取り上げることが増えてきたと感じていますが、Googleがユーザー体験をどのように提供するか、非常に興味深いと感じました。
この記事は、Search Engine Joournalに掲載された「How To Build A Future-Proofed SEO Strategy When AI Is Changing SEO」を翻訳した内容です。
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