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前回の「SEOだけじゃない詐欺師とスパマーと業界基準の複雑な関係
」(日本語)というエントリで、私は米国政府が、誠意の欠片もない製薬会社の一部の重役に対して、費用対効果の計算を変えざるを得ない状況を作ろうとした経緯を説明した。製薬会社は、犯罪を顧みず営業を行い、繰り返し請求される罰金を、事業を行う上での推定可能なコストと見ているためだ。
グーグルのパンダアップデートの最大の効果は、多くのオンラインパブリッシングのビジネスモデルにおける費用対効果分析を大幅に変えたことだ。恐怖で怯えるサイトもあれば、解決策を持っているかもしれない業者に必死にお金をつぎ込むサイトもあれば、お買い得価格でマーケットシェアを拡大する、このアップデートで利益を得たサイトもある。
「グーグルは実は次のような分類子を考案しました。例えば、国税庁やウィキペディアやニューヨークタイムズはこっちで、質の低いサイトはあっちに振り分けるのです。」 – マット・カッツ氏
グーグルは勝者と敗者を選び、勝者と敗者の間の溝は、勝者が再投資を行うことで、急速に広まりつつある。
投資と言う用語はこのエコシステムを理解する上で鍵を握る用語である。
ディマンドメディア等の企業がサービスを成長させるために数百万ドルを投じるものの、グーグルのたった1回のアップデートにより、市場価値が40%も消えてしまう状況を目の当たりにすると、検索でいまだに成果を上げていない場合、戦略を立案するために多額の資金をつぎ込む行為はよりリスキーに映る。パンダアップデートの後に、文字通り数千人規模の激こうしたウェブマスター達がDMCAレポートをグーグルに提出している。なぜなら、グーグルが、スクレイパー(盗用者)のサイトに掲載されている場合は、質は問題ないものの、オリジナルのサイトに掲載されている場合は質が低いと判断したためだ。
そして、パンダの影響を受けなかったサイト(その中には大量の被リンクを持つサイトもあった)は、瓜二つのスクレイパーサイトにランキングの面で劣っている。生涯続く顧客価値を高める方法をアドバイスするジョーディーと名乗る人物がいる。ジョーディーの努力もむなしく、グーグルは複数のスクレイパーサイトをオリジナルのソースとして上位にランクインさせ、スクレイパーの一人はソースサイトにリンクを張っているにも関わらず、ジョーディーのサイトを重複するコンテンツとして追放していた。
素晴らしい成果だ。キラーアルゴリズムと呼ぼう 😀
考え方は見当違いであり、ヘッドラインは背景とは無関係だが、このロイターのエントリ「SEOはコアのマーケティング戦略としては役立たずか?」は、検索チャンネルへの大規模な投資を行う自信を喪失させる効果がある。安上がりさせようとする人達をけしかけるだけである。すると、SEOは複雑化するため、作業が難しくなる。つまり、レモン市場の効果(購入しなければ質が分からない市場)を後押しするだけである。
反対に、現在、次のような検索結果が表示されることがある:
色付けした部分は全て同じ企業のリスティングである。多様な検索結果を見るにはかなり大きなモニターが必要である。右側の会社は投資を続け、難攻不落な塀を築くことが出来る一方、その他の苦戦している会社は、投資に見合う価値を見出すことが出来なくなるだろう。収益が下がり、成功する見込みもなくなりつつある状態で、コストを増やそうとする人はいるだろうか?ほとんどいないはずだ。しかし、その一方で、結果でトップ3(もしくはトップ6)の企業は、データを収集し、宣伝文句を改善し、そして、マーケットを牛耳るために再投資を行っている。
米国内の富裕層の固定化を示すジニ係数のように、勝者と敗者が検索エンジンによって決められる検索結果は、xを行うことが、企業Aには利益をもたらすものの、企業Bには赤字をもたらすギャップを作っている。
Googleに信頼されているサイトは検索結果の上位にドアウェイページや再利用したツイートを容易にランクインさせることが出来るため、SEOとスパムの間の境界線がぼやけている。信頼されていることが分かれば、終わりのないコンテンツ生産への青信号が灯ったと考えることが出来るのだ。
多くの大手メディアのウェブサイトは、トピックのサブドメインを持ち、“コンテンツページ”をほぼ際限なく自動生産するため、DayLife(デイライフ)やTruveo(トゥルーベオ)等のサービス(註:簡単にいうと外部コンテンツを元に独自のコンテンツページを自動で生成するアグリゲーションサービス)利用している。以下の点を考慮してもらえば、どのように循環しているかが見えてくるだろう:
このループのある時点で、ループがループ自身にフィードバックし始め、無限に近いサイクルを作り出すはずだ 😀
オンライン・パブリッシャーズ協会は、10億ドルもの収益の流れが大規模な新聞サイトに向いていると述べていた。しかし、このような“純粋”な保守派メディアのウェブサイトは、現在、デイライフやトゥルーエボ等のサービスを使って、コンテンツページを自動生成している。それ自体、特に問題があるわけではない。
…しかし…
新聞は、上位にランクインしたいために(オリジナルのコンテンツをペイウォールで隠しているにも関わらず)、同じことを遥かに安価に行っているサイトを、海賊行為に及ぶ詐欺集団や著作権の侵害者と呼び、そして、非難していたスクレイプ行為と全く同じ行為に乗り出しているのだ。これは、ページを1つ加えるコストが1セント以下で、誰もが注目を求めてファーミングを行う、無限なウェブで展開されるよくありがちな悲劇である。
そして、ファーミングの対象の注目のサイズは小さくなりつつある。なぜなら:
メディアを広告収入で支えるのではなく、ブランドがメディア化しつつある:
自動車産業は、消費者がディーラーに連絡するまで、8時間から10時間かけて車をリサーチしていることを知り、自動車メーカーとディーラーは、マーケティングの予算をオンラインで消費者をつかまえるための取り組みにさらに投じている。
例えば、フォードは、購入意欲に欠ける人達を魅了することに真剣に取り組んでいる。同社のウェイブサイトでは、フォードのフィエスタと競合するブランドとの対象比較を行っている。フォードのサイトにアクセスすると、憧れの車に値段を設定し、ローンの選択肢を調べ、支払い額の見積もりを行い、地域のディーラーの在庫を確認し、ディーラーに見積もりを要請することが出来る。
アドワーズは、大きなブランドをプッシュすることで、バリューチェーンをさらに吸収している:
アスク.comやヤフー!検索等のその他の検索サービスは、さらに身内びいきのプロモーションを積極的に行っている。
大きなブランドは、大規模な広告ユニットを介して支えられるだけでなく(そして、オーガニックな検索結果でアルゴリズムによってプッシュされるだけでなく)、グーグルの結果が不安定であるため、以下の仕組みを介して、小規模な事業を犠牲にして、さらに利益を増やしている:
オーガニック検索に運営を委ねているなら、大きなブランド、強烈なエゴ、そして、並々ならぬ度胸を持つか、あるいは、常識を一切無視して行動しなければ、今後マーケットにとどまるのは難しいだろう。なぜなら、マーケットの統合化は今後もますます進んでいくからだ。 😉
この記事は、SEO Bookに掲載された「Increasing SEO Complexity Lowers Result Diversity」を翻訳した内容です。
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