インターネットでオーディエンスを説得し、自分の思い通りの結果を得る方法を知りたいだろうか?
通常、成功する人物とその他大勢を分ける最大の要因となるのは、影響力である。今回は、心理学の研究を経て発見した戦略を幾つか紹介していく。恐らく、聞いたことがないものばかりだろうが、全て、説得力を高めるポテンシャルを持っている。
この投稿では、相互関係、欠乏、社会的証明等、よく知られている説得の原則を取り上げるつもりはない。このような要素については、既に良くご存知のはずである(あまり良く知らない方は、ロバート・チアルディーニ著のこの本を読んで勉強しておこう)。
目次
同意することに消極的なオーディエンスを説得したいなら、早く話す戦法が最も効果的である。早口は、聞き手を迷わせ、議論の欠点を見つけにくくする効果がある。同意してくれそうなオーディエンスに話しかける際は、(当たり前だが)スピードを落とし、さらに同意してもらえるように時間を与えると良い。
また、説得力を高めたいなら、自信を持って話すべきだ。
カーネギーメロン大学の行動決定リサーチセンターに所属するドン・ムーアが発表した研究結果では、自信は、他者の信頼を勝ち取る上で、正確性に勝ることが判明している。
私達は、自信に満ちた人物からアドバイスを得ることを好み、過去の実績が惨めであっても許容してしまうこともある。ムーアは、競争において、この好みが原因で、アドバイスを送る側が、自信について大袈裟に表現することがあると指摘している。
通常、自信は専門知識と関連付けられる。製品、そして、そのメリットを熟知し、その効果を確信しよう — 真の自信は、自らの発言を知り、信じることから生まれる。説得するために、自信を聞き手に伝える必要がある。
と言っても、軽く罵る程度に留める必要はある(やり過ぎると、信頼を完全に失ってしまう)。
88名の参加者を3つの若干異なる話し方に分割した研究が行われた。違いは、出だしで刺激の少ない不快な言葉を用いることのみであった:
「…学費の値下げは、勿論良い案だが、それだけでなく、いい加減にしろ!と言いたいくらい、全ての関係者において、最も合理的なアイデアだと言える。」
2つ目の話しでは、「いい加減にしろ!」を最後に置き、3つ目の話では、どこにも使わなかった。そして、参加者の態度を調べた。その結果、最初、もしくは、最後に罵る言葉が使われた話し方に、オーディエンスは影響を受けることが判明した。
「いい加減にしろ!」と言うワードにより、話し手の激しさがオーディエンスに伝わり、説得力がアップする。オーディエンス側の話し手に対する信頼は、変化しなかった。
この手法は、ゲイリー・ヴェイナチャックとデイブ・マクルーアの成功を支えている。単純に優れた人物だと思っていたが、刺激の少ない罵るワードを使って、とても効果的に説得していることに私は気づいた。
メッセージを支持してもらいたいなら、オーディエンスが同意できることを最初に言おう。
ジン・シューとロバート・ワイラーが行った研究で、同意するメッセージの影響は長続きすることが判明した。あるテストの中で、参加者に、ジョン・マケイン、または、バラク・オバマのスピーチを聞かせ、その後、トヨタのテレビCMを見せた。
共和党の支持者は、ジョン・マケインのスピーチの影響を受け、反対に、民主党の支持者は、オバマのスピーチを聞いた後、CMに説得力を見出していた。
つまり、何かを売りたい時は、最初に顧客が納得することが可能な意見を出す、または、世論を反映させれば良い — たとえ、それが販売する製品とは全く関係がなくても構わない。
自分の取り組みが、批判を呼び起こす(または、呼び起こすきっかけを与える)なら、弱みを隠そうとする本能に逆らうべきだ。弱みについて話をすると、主張を弱めてしまうと恐れがちだが、説得する際にはプラスに働く。
Psyblogは次のように指摘している:
長年、心理学者達は、偏りのある主張と二面性のある主張を比較し、様々な状況において、どちらが説得する力が強いのかを確認する研究を行ってきた。イリノイ大学のダニエル・オキーフは、偏りと説得に関する107点の調査の結果をまとめた。実に過去50年を振り返り、2万111名の参加者のデータを集めた(オキーフ 1999年 Communication Yearbook 22 pp. 209 – 249)。
このメタ分析の結果自体、説得力のある内容であった。各種の説得力のあるメッセージにおいて、そして、様々なオーディエンスにおいて、二面性のある主張は、一方に偏った主張よりも、説得力が強いことが判明したのだ。
人は知性を持つ生き物である。説得する方法を知るには、まずは、聞き手が、考えることが出来る点を認めなければならない。主張の裏側に言及しないなら、信じてもらえる可能性は低くなる。
ウェブサイトで、製品の欠点に触れると良いかもしれない。
イエ・リー、エリック・ジョンソン、そして、リサ・ザヴァルが実施した調査研究は、温暖化、そして、現在の天候の維持に関する考えを検証するものであった。
この調査では、米国およびオーストラリアの参加者に、地球温暖化を信じているレベルを評価してもらった。また、当日、調査が行われた時期にしては、気温が高い、低い、あるいは、相応かどうかを尋ねた。気温が高いと考えた参加者は、低いと考えた参加者と比べて、温暖化を強く信じている傾向が見られた。
関連する調査において、研究グループは、同じ質問を尋ね、さらに、温暖化と闘うNPOへの寄付を求めた。例年よりも大幅に暑い日は、低い日と比較して、寄付の合計が4倍も高いことが分かった。
メッセージを信じてもらいたいなら、主張を裏付ける状況で、購入を求めるべきである。インターネットでは、エモーショナルデザイン、ストーリーテリング & ストーリーのお膳立てをするイメージの利用が、説得の鍵を握る。
製品を購入する地点に達したら、信頼し、お金を支払っても良いと納得したに等しい。ここまで来たら、さらに多くの製品を売ることが出来る。
例えば、Tシャツを買おうとしている人には、スーツではなく、ネクタイを薦めるべきだ。
60%の確率で、もともとの買い物の価格の60%の価格の製品を売ることが出来る、60 x 60ルールの実績は申し分がない。提案するアップセルは、もともとの購入価格と調和していなければならない。
アップセルは、収益を手っ取り早く増やす効果があるため、利用したことがないなら、試してみよう(ご一緒にポテトフライはいかがですか?)。
短所を指摘するのではなく、長所を強調すると説得力が増す。
ある分析が行われ、他の29回の調査に通じる結果が得られた — 合計で6378名が調査に参加した。この分析により、前向きなメッセージは、説得する際に、若干のアドバンテージがあることが分かった。
この調査は、日焼け止めの利用や健康的な食事の推奨等、病気の予防をテーマに掲げているが、その他の領域にも応用することが出来る。研究グループは、習慣を変えなければいけないことは、参加者にとっては受け入れ難い点を理由として挙げていた。
ポジティブな宣伝文句を心掛け(「時間を無断に過ごすべきではありません」ではなく、「毎日1時間浮きます」)、効果があるか確かめてみよう。
この調査によると、選択肢が多ければ多いほど、選んでもらえる確率は下がってしまうようだ。
この調査では、カリフォルニア州の高級スーパーマーケットで、ジャムの試食コーナーを設け、時間に応じて、6種類のジャム、あるいは、24種類のジャムを提供した。その後、ジャムを試食した人達に、ジャムをお買い得価格で購入することが可能なクーポンを手渡した。
選択肢が多いと、注目する買い物客は多くなったものの、実際にジャムを購入した人は遥かに少なかった。選択肢を少なくしたディスプレイの方が、売り上げは多かった — 事実、24種類のジャムを用意すると、試食した人の3%のみがジャムを購入し、一方、6種類のジャムを用意したケースでは、30%の買い物客がクーポンを利用していた。
多数の製品を提供しているなら、決定を下しやすくなるフィルターを構築する取り組みに力を入れるべきだ。この点に関しては、この良質な本、または、優れたTEDのプレゼンを参考にすると良いだろう。
繰り返しは、明らかに影響を与える。繰り返し同じ広告に遭遇していると、実際の製品を見にすると、頭の中に再び登場する。
ワードや視覚的なパターンの繰り返しは、覚えてもらうだけでなく(このポイントも説得につながる)、繰り返し発生するものを事実として受け入れさせる効果がある。
ChangingMindsは、ヒュー・ランクの説得に関する研究について(世論の説得に関する情報を伝える 1976年)、次のように説明していた:
人間の脳は、パターンをマッチさせる力を持ち、この有益なスキルを使うことに対して、見返りを与える。繰り返しは、パターンを作り出し、その結果、そして、自然に注目を掴みとる。
繰り返しは、親しみをもたらすが、この親しみは、軽蔑を生み出すのだろうか?その可能性はゼロではないが、現実の世界では、親しみやすさは、軽蔑よりも、好印象をもたらす方が遥かに多い。スーパーマーケットに足を運ぶと、たとえ実際に試したことがなくても、知らない会社の製品よりも、よく知っている会社の製品を買う確率は高い。
前回、靴を買った時のことを振り返ってもらいたい。何足か選び、試し履きする前に、元の位置に戻しただろうか?その後、再び履いてみただろうか?この行動を取る人達がほとんどのはずだ。納得するまでに、数足靴を履く人は多い。平均で3回履いてから、購入に踏み切るようだ。
主要なメリット、または、キャッチコピーや広告キャンペーンが提案する長所を繰り返しアピールしてみよう。効果的な宣伝や選挙活動は、この手法を用いている(例: Geicoなら、15%以上お得です…)。親しみ、そして、その結果得られる好意を生み出すため、フレンドリーに繰り返すと良い。
別のリサーチでは、たとえグループの一人が意見を繰り返しているだけでも、グループの全体の意見と見られる可能性が高いことが明らかになっている。
グァダグノ & チャルディーニによる研究(2002年)では、男性はEメールに良く反応することが明らかになった。競争心を回避することが出来るためだ。 一方の女性は、面と向かっての会話に良い反応を示す。なぜなら、女性は男性と比べて「関係を大事」にするためだ。
この研究は、Eメールは、男性の競争心をかわす手段を提供する、と示唆している。しかし、これは、あくまでも、知らない相手とのコミュニケーションにのみ当てはまる。身近な人間との間では、面と向かっての会話を好む。
よく知らない男性を説得したいなら、Eメールから始めると良いだろう。
ブライアン・ワンシンク著の傑作「Mindless Eating: Why We Eat More Than We Think」(見境のない食欲: なぜ思っている以上に食べてしまうのか)の一節を紹介する:
以前、2名の教授の友人 – スティーブ・ホックとボブ・ケント – とチームを結成し、制限が、食料品店で購入する量に影響を与えるかどうか調査した。「お一人様につき12個まで」等、数字を含む看板を見た買い物客は、「お好きなだけお買い求め下さい」等の看板を見た買い物客よりも、多くの量を購入すると推測していた。
この心理を見極めるため、私達は、異なるスーパーマーケットとコンビニで、異なる数字、そして、異なる宣伝(例えば、「1個で1ドル」に対して「2個で2ドル」)を使って、異なる形式で、この調査を続けた。この調査を終える頃には、数字を含む宣伝を行うと、買い物客は、通常よりも30 – 100%多く購入することが明らかになった。
要するに、顧客が購入することが可能な量を数で制限、または、固定すると良い。
2007年に行われたカーネギーメロン大学の調査で、デボラ・スモール、ジョージ・ロウェンスタイン、そして、ポール・スロビッチは、ストーリーとデータの影響を比較した。
このテストでは、アフリカの危機的な状況に対して、寄付を募った。まず、マラウイで食糧不足が深刻化し、ザンビアでは雨が降らない日が続き、そして、アンゴラでは数百万人が住み慣れた場所を追われている等の状況を、具体的なデータで証明し、寄付を呼び掛けた。
2つ目のテストでは、ザンビアに住むロキアと言う名の飢えに苦しむ少女を取り上げた。写真を見せて、ロキアに直接寄付するよう求めた。
平均で、Save the Childrenのデータ主導の要請を受けた学生は、1.14ドルを寄付していた。一方、ロキアのストーリーを呼んだ学生は、約2倍の2.38ドルを寄付した。
3つ目のテストでは、ロキアのストーリーに加えて、持続的な日照り、農作物の欠乏、そして、食糧不足に悩む大勢のアフリカ人に関するスタッツを紹介した。ロキアのストーリーンのみを呼んだ学生は、平均で、2.38ドル寄付していたものの、ストーリーを読み、さらに、データを与えられた学生が寄付した金額の平均は、1.43ドルであった。
アフリカの窮状、貧困との闘いは、あまりにもスケールが大きく、寄付したところで、あまり意味がないと感じる。その結果、助けたいと願う気持ちが弱くなるようだ。
マザー・テレサも、「大勢の人達を目の当たりにしたら、行動を起こす気は起きません。でも、一人だけを見れば、やる気が起きます」と言っていた。
消費者信用業界における実地調査が行われ、女性の写真が、金利の低さと同じぐらい効果があることが判明した。
南アフリカの金融業者が、現在のクライアントに対して、適当に金利を選んで、多額の短期のローンを紹介する手紙を送った。この手紙には、無作為な心理的な「アイテム」が含まれていた。想像した通り、金利はローンの利用に大きな影響を与えていた。通常の経済論とは矛盾するものの、一部の心理的なアイテムもまた利用に大きな影響を及ぼしていた。
男性の顧客には、手紙に掲載した男性の写真を女性の写真に換えると、統計的な観点で、利用が大きく増えた。金利を4.5%低くするアプローチと同じ効果があった。女性の顧客については、女性の写真を利用しても、統計的に有意なパターンは見られなかった。
総じて、女性の写真を提案の手紙に乗せると、大きな効果があると言える。標準誤差により、この効果に対する単一の特定のメカニズムを分離することは出来ない。女性の写真には前向きなインパクトがあったことが、あるいは、男性の写真にはネガティブなインパクトがあったことが、男性の顧客に影響を与えたと考えられる。
このテストでは、割と大きな金利の変化 – 3.25%から11.75%を採用していた。女性の写真の効果は、ローンの金利の4.5%に等しかった。
従って、次回、何かを提案する際は、女性の写真を追加しよう。コンバージョン率が改善されるかもしれない。
因みに、この調査では、セクシーな女性の写真を用いたわけではない。ビキニを着たセクシーな写真は、効果があるのだろうか?
ある研究によると、興奮すると男性は理不尽になり、決定の精度が低下し、視野が狭くなる。この効果は、短期的なものであると考えられ、衝動買いを行う際にクライマックスを迎える。
ビキニを着た女性が、男性の目の前で、製品を販売する状況が理想だ。男性のみを対象とした製品では、インターネット上でも、同じ取り組みを行うことが出来るのではないだろうか。
セクシーな広告は、男性に製品を記憶させる効果はない点が調査によって明らかになっている。セクシーな女性に釘付けになり、製品のブランドにまで注意が行き届かないのだ。
上司が自分の地位の力を実感している際に、新しいアイデアを分かってもらおうとするのは、理にかなっていない。この調査は、このような状況では、上司は耳を傾けないと指摘している。
「権力を持つ人物は、自分の考えに自信を持っている。アイデアに対する考えがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、この見解を変えるのは容易ではない、と、この調査の実施に携わり、オハイオ州立大学で心理学を教えるリチャード・ペティーは指摘している。
この研究から、新しいアイデアをリーダーに検討してもらいたいなら、あまり力がないと感じる状況を作り出すと良いことが分かる。
リチャード・ペティー曰く、「我々の研究によると、力は、自分の考えに対してより大きな自信を持つきっかけを与えるが、自信に影響を与えるのは、この力のみである。そのため、上司が知らないもの、上司が確信を持てないもの、そして、上司の自信を軽減するものを持ち出す」と良いようだ。
さらにペティー教授は、「上司が自分の力について考えていないタイミングを見計らって、考えを述べ、良い主張を行った後に、権力を思い出させよう。すると、上司は、主張に関する自分自信の評価に自信を持つ。優れた主張を行っている限り、上司が納得する可能性は高い」と続けた。
まとめよう:
レストランのコンサルティングを行うジム・サリバンが考案した、サリバン式頷き術は、様々な選択肢を列挙するものの、買い手に購入してもらいたいアイテムを紹介する際に、首を縦に振るアプローチである。少しだけ、頷いていることが分かる程度で構わない。そして、リストアップするアイテムは、5個以内の場合、とりわけ効果が高い。ジム・サリバンによると、60%の確率で成功するようだ。
接客係が、飲み物を提案する際は、必ず笑顔で対応させ、軽く頷かせるべきだ。身振りは強力であり、60%以上の確率で、ゲストは頷き返し、提案を受け入れることが調査により判明している。
宣伝目的の動画の中で、この手法を活用することが出来るはずだ。契約や提案について話をする際に、購入してもらいたいアイテムを紹介するタイミングで頷こう。
Marketing Experimentsのドクター フリント・マクローリンは、「分かりやすさは、説得力を凌駕する」と指摘している。このフレーズを肝に銘じておこう。
説得は、それとなく、そして、巧みに実施すると抜群の効果を発揮する。やり過ぎると、買ってもらえなくなる。キャッチコピーを作る際、または、プレゼンを行う際は、分かりやすさを意識すると良いだろう。偽善者になることなく、そして、過大に宣伝することなく、十分な量の情報を与えて、オーディエンス自身に決めてもらうべきである。
…と、私は聞いたことがある。
この記事は、ConversionXLに掲載された「How To Persuade People Online – 17 Lesser Known Jedi Mind Tricks」を翻訳した内容です。
読み物として純粋に面白い内容でしたが、ウェブに限らず様々な局面で活躍しような心理操作術の数々でした。個人的には次のプレゼンで幾つか使ってみたいと思うテクニックがありましたね。。。オーソリティがなくとも心理操作でどこまでカバーできるか、試してみたいと思います。 — SEO Japan [G+]
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