全米トップのIT投資家が会社を売る判断基準を教えます

公開日:2012/09/03

最終更新日:2024/02/27

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スタートアップ起業が成功し、より大きくなビジネスに成長していった際に創業者が考えることの1つが会社の売却。自分が経営を続けて永遠に会社が成長し続けるならその必要もないかもしれませんが、自分自身が経営者を務めるより会社を売却して第三者の手に委ねた方が成長しうるという判断もいつか来るかもしれません。そして売るなら売るで、成長を始めた時に会社の価値をできるだけ大きく見せて売リ抜けるべきか、より大きな市場を取るまで勝負してその上で高い評価で売るべきか、常にリスクが伴うベンチャー企業にとっては頭の悩みどころです。今回は全米を代表するテク系投資会社アンドリーセン・ホロウィッツの創業者ベン・ホロウィッツが(自ら創業した会社を1300億円で売却した経験あり)会社売却の判断基準について考えた記事を。 — SEO Japan

Sittin’ up drunk shuffling thoughts
Got paper but I’m lost
Losing focus what a n#%$a still hustin’ for?
My seed is straight the family’s settled
Idle time get the man in trouble
—Nas, Suicide Bounce

CEOがする最も難しい決断の1つが、自分の会社を売るか売らないかである。論理的に、会社を売ることが長期的に見て自分で経営し続けるよりも良いかどうか判断することは、ほとんどが推測もしくは不明のたくさんの要因が絡む。そして、もしあなたが創業者なら、論理的な部分は簡単な部分だ。

実際、そのタスクは、感情が絡まなければずっとシンプルになるだろう。しかし、自分の会社を売ることは、常に感情的でとても個人的なのだ。

買収の種類

この議論の目的のために、テクノロジー買収について3つのカテゴリーに分けて考える:

  1. 人材または技術—会社が純粋にその技術もしくはそこにいる人を目的として買収される時。これらの契約は一般的に、500万ドルから5000万ドルの範囲にわたる。
  2. 製品—会社がそのビジネスではなくその商品を目的として買収される時。買収側はその製品をほぼそのまま販売するつもりだが、独自の販売とマーケティング能力を主に使ってそうする。このような種類の契約は一般的に、2500万ドルから2億5000万ドルの範囲にわたる。
  3. ビジネス—会社が実際のビジネス(収益と利益)を目的として買収される時。買収側は、人や技術や製品だけでなく、全体的なオペレーション(製品、販売、マーケティング)に価値を置く。これらの契約は一般的に、財政的な測定基準によって価値がつけられ(少なくとも部分的には)、極端に大きくなることもある(例:MicrosoftのYahoo!に対する数兆円のオファー)。

この記事は、製品買収に関連するビジネス買収に最も当てはまるため、人や技術を売る場合にはあまり役に立たないことを先に伝えておく。

論理

会社を売るべきかどうか分析する時には、基本的なやり方がある:

a) かなり大きな市場でかなり初期にある
そして、
b) その市場でナンバー1になるチャンスがある

このような場合は、独立したままでいるべきだ。その理由は、長期的な未来まであなたを信じることが誰にとっても極めて難しいため、あなたの価値に見合う額を誰も払うことが出来ないからだ。簡単な例が、Googleである。かなり初期の頃、Googleは1000億円近い複数の買収オファーを受けたと言われている。これらはその当時にはかなりぜいたくなオファーと見なされていて、当時のGoogleには評価額以上のオファーだった。しかしながら、最終的な市場のサイズを考えると、Googleにとっては売ることは理にかなっていなかった。実際、Googleにとって購入側が支払うことができる価格で売ることは理にかなっていなかったのだ。なぜか?Googleが追及していた市場は、実際には購入しようとしていた側が持っていた市場よりも大きく、Googleはナンバー1になることが出来るほぼ無敵の製品を築いていたからだ。

この状況をPointcastと比較してみよう。Pointcast(註:90年代に「未来を担う技術」として注目されたプッシュ型のコンテンツ配信プラットフォーム)は、最初に人気が出たインターネットアプリケーションの1つだった。彼らは、シリコンバレーと一般的なテクノロジー業界で騒がれ、1000億円近い買収オファーを受けたが辞退した。その後、製品構造の欠陥が原因で、顧客は彼らのアプリケーションを嫌いになり始めた。一晩で彼らの市場は破壊し、二度と戻って来なかった。そして、最終的にかなり少ない金額で売却された。

そこで、あなたがしなければならない判断は、a)この市場は、今まで開拓されてきたよりも本当に大きいのか(桁違いに)、b)私たちはナンバー1になるのか?、ということだ。もしa)かb)のどちらかの答えがノーなら、あなたは売ることを検討するべきだ。もし両方の答えがイエスなら、売ることは、文字通り、あなた自身と従業員を軽視していることを意味する。

残念ながら、これらの質問は私が言うほどに簡単に答えられることではない。正しい答えを出すためには、この質問に答えなければならない:“その市場とは何か?誰が競合相手になるのか?”Googleは検索市場にいたのか、ポータル市場にいたのか?明らかに、今にして思えば、彼らは検索市場にいたのだ。Yahooはポータル市場では強敵だったが、検索市場ではそうでもなかった。もしGoogleがポータル市場にいたのなら、売ることは良い考えだったかもしれない。Pointcastは、自分たちの市場はもっと大きいと思っていた。面白いことに、Pointcastの独自の製品戦略(もしくはそれがないこと)が彼らの市場を縮小する原因となったのだ。

Opswareのケースを見てみよう。なぜ私はOpswareを売ったのか?もう一つの良い質問は、なぜ私はその時までOpswareを売らなかったのか?

Opswareは、サーバー・オートメーション市場で事業を始めた。私たちがそのサーバー・オートメーション企業への最初の問い合わせ/オファーを受けた時には、顧客は50人以下だった。私は、少なくとも10,000人以上のターゲット客がいるし、ナンバー1になる可能性がかなりあると信じていた。それに加えて、私は市場が再定義されることを知っていて、私たちが、競合相手よりも早くネットワークとストレージ(データ・センター・オートメーション)を拡大してその市場を勝ち取ることができると思っていた。そのため、30%のマーケットシェアを仮定すると、私たちの将来のポテンシャルを購入するためには、誰かがその時の私たちの価値の60倍を支払わなければならなかったのだ。誰もそんなお金を支払うつもりがなかったと分かっても驚きはしないだろう。

私たちが数百人の顧客に成長し、データ・センター・オートメーションに拡大しても、私たちはまだナンバー1だったし、以前の買収オファーのどれよりも価値のある独立起業だった。その時点でOpswareと主な競合相手Bladelogicは共に、本格的な会社(ワールドワイドなセールスフォース、プロフェッショナルサービスの構築など)に成長していた。それは大企業が私たちのどちらかを購入してうまく実行することができることを意味するため(大きなエンタープライズ企業は一般的に小さな買収では成功することができない。なぜなら、重要な知識財産のあまりに多くが販売手法であり、大企業はそれを築くことができないためだ。)、これは重要なことだった。

この時点で、BMCがOpswareかBladelogicのどちらかを購入することになることは明らかだった。その結果、Opswareがその市場でナンバー1になるかどうかの算出は、以下のように再定義される必要があった:

  1. 私たちは、データ・センター・オートメーション市場よりもシステム&ネットワーク・マネージメント市場でナンバー1にならなければならなかった。なぜなら、ワードプロセッサ市場のように、データ・センター・オートメーション市場はそれを含むより大きな市場に組み込まれることになっていたからだ。
  2. ナンバー1になるためには、私たちは、どちらかの企業だけよりもずっと困難な対戦相手であるBMC + Blandegicに勝たなければならなかった。

最後に、市場自体が、根本的な技術的変化、つまり仮想化が原因で変化していた。仮想化は、市場全体が一新される必要があることを意味していたため、私たちは、仮想環境のための最高のマネージメントを築くために新しいR&D競争に乗り出していたのだ。これは、かなり長期間の利益の先延ばしを意味した。

これらの要因全てを基にすると、私たちにとっては、少なくとも買収の可能性を検討し、M&A市場への興味を理解する短いプロセスを実行することは理にかなっていた。そのプロセスを通して、11の会社が何らかの形で買収のオファーをした。このことは、私たちがOpswareの市場価格という観点から極大値にあるのだと教えてくれた。結局、多くのの分析と内省に基づいて、私は現在の極大値は今後3~5年に達成することを予測できるものよりも高いと判断し、会社をHewlett Packardに16億5000万ドル(約1300億円)で売却したのだ。私はそれが正しい決断だったと思っている。

感情

決断の感情の部分で面白いことは、それが統合失調症にも感じることだ。

自分が個人的に全ての従業員を採用し、好調な独立ビジネスの壮大なビジョンを彼らに受け入れさせた後に、一体どうして会社を売ることが出来るのだろう?一体どうして自分の夢を売ることが出来るのだろう?

どうして自分自身と近くて遠い家族の全てのメンバーのために完全な財政的独立から離れることができるだろう?お金を稼ぐためにビジネスに携わっているのではないのか?一人の人間が必要なお金はいくらなのか?

どうして ‘最後までやり遂げる博士’と‘物を売る先生’を和解させることができるだろう?明らかに彼らは和解できないが、大切なのは両方を弱めることだ。

感情を弱めるのにいくつか重要なこと:

  • 稼ぐ(給料)—ほとんどのベンチャーキャピタリストは、“全て突っ込む”起業家が好きだ。つまり、起業家は全てを会社に投資するため、もし会社が成功しなければ努力に対してこれといった成果を出していないことになる。これの一環として、彼らは創業者CEOの給料がとても少ないことを好む。一般的に、これは良い考えだ。なぜなら、物事がうまくいかない時に立ち去ろうという衝動が非常に強くなり、合計した財政的責任が他の責任を持つのに役立つからだ。しかしながら、会社がアイディアというよりは会社になり始めると、時価でCEOに支払うのは理にかなっている。もっと具体的に言うと、会社がビジネスを持ち(上で定義したように)、魅力的な買収ターゲットになれば、CEOに支払うのは理にかなっているのだ。そうすれば、会社を維持するか売るかの決断が、“会社を売るべきだとは思わないけど、850平方フットのアパートに夫と2人の子どもと住んでいるから、そうするか離婚するかだ”のようなCEOの個人的な財政状況に直接反応するものにはならない。
  • 会社の承認を得る—全てのスタートアップCEOが従業員からされる1つの質問は、“会社を売るつもりですか?”だ。これは、ものすごく難しい質問だ。もし何も言わなければ、その従業員はこれを会社を売るという意味に解釈するだろう。もし“適切な価格でね”と言えば、その従業員はその価格とは何なのか疑問に思い、聞いてくるかもしれない。もし会社がその価格に達したなら、その従業員は会社が売られると仮定するだろう。もし、“会社を売るつもりはない”という一般的な回答でその質問をかわせば、その従業員は、会社が売られた場合に騙されたと感じるかもしれない。もっと重要なことに、CEO自身が従業員を騙しているような気がして、その気持ちが意思決定プロセスに影響を与えるかもしれない。これらの落とし穴を避ける1つの方法は、前のセクションでの分析を説明することだ:もし会社がかなり大きな市場でプロダクトフィットもしくはマーケットフィットに到達し、ナンバー1になる素晴らしいチャンスがあるのなら、会社は独立したままでいる可能性が高い。そうでなければ、売られる可能性が高い。これは、従業員の利益と食い違わない方法で投資家の利益を説明する良い方法であり、真実だ。

最後に

会社を売るかどうかの決断に直面した時、簡単な答えなどない。しかしながら、知的におよび感情的に準備をすることが助けにはなる。

この記事は、ben’s blogに掲載された「Should You Sell Your Company?」を翻訳した内容です。

非常にシンプルでわかりやすい説明で、これから大きく伸びる製品サービスに取り組んでいると勝手に自負している私としては売却するかはともかく、色々な意味で参考になりました。最も、この判断基準が適用されるのは、そもそも一定のレベルに達している製品や会社を対象にしている話かなとは感じましたが。私如きの会社でも10年も経営していると何度かその手の話をいただいたことはありますが、ほぼ相手都合の話で真面目に考える気になった話は0でしたね、、、実際自分でも売リ抜ける価値があると思ったことは良くも悪くもありませんが 汗 これから頑張りたいと思います!

しかしベン・ホロウィッツの発想のスケールのデカさは流石ですね。「自分たちの製品が将来30%の市場を取ったと仮定すると、現在の価値の60倍の価格でないと売れない」。。。口のうまいペテン師セールスパーソン的な起業家がとりあえずいうならともかく、心の底からその可能性を信じて事業に取り組んでいたのでしょうし、だからこそ売れたのでしょうし。グローバル市場でないと通じないスケール感かもしれませんが、日本の起業家も見習いたいものです。

というか、日本で将来性を買われてその時点での評価額X何倍の値段で買われた会社って余りというかホトンド聞かないですけどね。日本は大企業がベンチャーの技術や製品を買って伸ばすという取り組みが余りないのでしょうか。米国ではAppleは余り買わない方と思いますがMicrosoftやCisco、Oracleに最近ではGoogleと名だたるトップIT企業が数百億円時に1000億円単位でスタートアップ・ベンチャー企業を買収していますし。最近、日本の大企業関連の良いニュースを余り聞かないですし、スタートアップが産み出す新しい技術や発想の活用が日本再生の鍵になるかもしれません? — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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