SEOとPPC広告、同じWebマーケティングという分野に属することもあり、「SEOとPPCのどちらが有益か」という議論はよく見かけます。
ただし、その方法や目的、得られる結果などは異なるため、最終的には、「それぞれ適切なバランスを取る」ということが理想といえます。
しかし、どちらか一方の事情しか知らなければ、その判断に至ることが難しいかもしれません。
今回は、そんなSEOとPPCの”論争”についてわかりやすく解説した記事を、Search Engine Journalよりお届けします。
ペイド広告と自然検索マーケティングのそれぞれのメリットについて、この業界では長い間議論されてきた。
どちらのほうが優れているのか。
どちらにリソースを注ぐべきか。
個人的には、この議論はずいぶん前に決着がついたと考えている。
結論としては、SEO施策とPPC広告の両方を行うべきであり、両方に注力すべきである。
しかし、近年になり、私のクライアント周辺で再び議論が活発してきている。
理由はわかる。もともとこの議論をしてこなかった場合、上記の結論には納得がいかないこともあるからだ。
それゆえ、SEOとPPCの議論における忘れられたいくつかの事実を解説する機会を与えていただきたい。
目次
ペイド広告と検索エンジンマーケティングは、それぞれ別の生き物だ。
片方が片方の代替となることはない。それぞれが強みと弱みを持っている。
例えば、ペイド広告は非ブランド系のトラフィックを発生させるには良い手段だ。
PPCの典型的なシナリオはこうだ。
こうすることで、ユーザーはあなたのブランドとの距離を縮め、コンバージョンへの道のりを進んでいくことになる。
自然検索でもこうしたことは可能なのか。おそらく、可能だ。
しかし、自然検索結果の最上位に位置していても、ページの上部に表示されるとは限らない。※参考:Google検索結果の変化から読み解く「SEOの未来」
せいぜい、ページの中ほどに表示されることだろう。最悪の場合、非常に深い位置に表示されてしまう。
ただし、自然検索結果はブランド系のトラフィックを発生させることができる。
典型的なSEOのシナリオはこうだ。
PPCでもこうしたことは可能なのか。可能だ。そして、それがブランド名でもPPCの入札を行うべき理由となる。
しかし、PPC広告が唯一、検索結果に表示されるものだとしたらどうだろう。つまりは、「自然検索結果には何も表示されない」という状況だ。そのような場合、ユーザーはブランドの信憑性を疑ってしまうかもしれない。そのため、理想を言えば、両方において表示させることが最適と言える。
広告と自然検索の両方を表示させることで、あなたのブランドはより強固なものになるだろう。これを目指さない手はない。
PPCに対しては、「PPCは高価である」という議論がよくされる。誰かがあなたの広告をクリックするたびに、あなたはお金を支払わなければならない。もし、プロにアカウントの管理を依頼しているのであれば、彼らに対する費用も発生する。
しかし、多くのSEOのエキスパートは、「SEOも時間がかかり、費用と専門知識が必要となる」と述べるだろう。
SEOを成功に導きたければ、インハウスで行うにしても、外部のコンサルティングを受けるにしても、それなりの対価を支払わなければならない。
SEOとPPCの議論においてよくある誤解は、それをゼロサムゲームと認識してしまうことだ。片方への投資を止めれば、もう片方が不足を補う。逆もまた然り、と考えてしまう。
しかし、そのような状況が起こることはめったにない。一般的に、SEOとPPCは互いを食い合う仲ではないのだ。むしろ、「それぞれの領域からそれぞれの結果が生まれる」といったことになる。
これは、私が実際にクライアントへ指摘したことだ。
このクライアントはSEOの代理店と契約を結んでいた。これ自体は別に珍しいことではない。実際、私達はこの取り組みを望んでいた。なぜなら、SEOの成功はPPCの結果にも良い影響を与えること(逆もまた然り)を我々は理解しているからだ。
しかし、このケースでは、SEO担当者が特定のマーケットではPPCを完全に止めることを勧めてきた。彼が言うには、「PPC広告で良いパフォーマンスを出していない領域がある。そこへの広告出稿は不要である」とのことだ。
もし、このクライアントが彼の考えを受け入れた場合、どうなるか。
2018年、全体の29%のセッションを自然検索が獲得し、22%のリードを獲得した。
その一方、PPCは全体の43%のセッションを獲得し、55%のリードも獲得している。
2019年の中期はどうなったか。この頃から、クライアントはSEOへの投資を強めている。
2019年、全体の28%のセッションを自然検索が獲得し、22%のリードを獲得した。
その一方、PPCの数字は大きく変わっていない。全体の46%のセッションを獲得し、55%のリードも獲得している。
ご覧の通り、傾向は2018年と2019年でほぼ同じになっている。
つまり、我々が突然、これらの地域で広告掲載を取りやめていたらどうなっていただろうか。SEOへ再投資していたとしてもだ。
SEOがそのマイナス分を埋め、PPCが獲得していたリードと同程度のリードを獲得していただろうか。おそらく、そうはならなかっただろう。
SEOとPPC広告を”競合”と捉える場合、片方を信じるものが自身の見解を裏付ける情報を提案することがある。
しかし、すぐに結論に至るのではなく、そうした統計的な情報を注意深く見る必要がある。
例えば、上記とは別のクライアントの場合、PPC広告を完全にストップしようとするSEOコンサルタントがついていた。
彼は、SEOと比べ、「PPCからのトラフィックがサイトへのエンゲージメントを悪くしているという”発見”」に基づいた意見を論じていた。それゆえ、広告につぎ込むマーケティング予算をストップすることをクライアントに求めていたのだ。
我々は、そのSEO担当者が根拠としている情報について懐疑的であった。なぜなら、我々のサイドからは全く異なる見解を得ていたからだ。
最終的に我々は、「PPCのトラフィックの多くが電話キャンペーンによってもたらされている事実を彼が見落としているのでは」と考えた。
言うまでもなく、こうしたキャンペーンで発生したトラフィックはWebサイトへの直接の訪問は発生しない。彼はこの事実をもって、PPCの場合はエンゲージメントが悪いと結論づけていたのだ。
彼の提案はただの善意であった可能性もある。しかし、それは不十分な情報にも基づいた提案にすぎない。
皮肉にも、彼が無視していた重要な指標が別にあった。新規訪問者数だ。
このクライアントの場合、PPCが過去1年間で2,958の新規訪問者を獲得していた。
これに対し、SEOが獲得した新規訪問者は、たったの1,246であった。
もし広告を止めていた場合、PPCが獲得した新規訪問者数はどうなっていただろうか。
おそらく、その数の獲得には至らなかっただろう。
PPCとSEOの議論に対する意見を誰かが論じてきた場合、その人自身はPPCとSEOに関連する全ての情報を見ているか、確認すべきなのだ。
数字の指標について多く語ってきたが、インターネットに溢れている数多くの統計について、詳細な分析を行えば有益な情報となることを指摘しておきたい。
例えば、2014年にSEO会社のConductorが行った調査を見てみよう。この調査によれば、サイト全体の64%が自然検索によるもので、ペイド広告は6%しか占めていないということだ。
この調査結果から推測されることはなにか。SEOはPPC広告よりも効果的であると言えるのだろうか。その可能性はある。
しかし、問題が2つあることを指摘したい。
仮に、世界中の全てのトラフィックを獲得できたとしても、そこにリードやコンバージョンが発生しないのであれば、そのトラフィックは何に役立つのだろうか。
SEOとPPC広告のどちらを選ぶべきかという議論がされた場合、「どちらか一方を選択する」という意見を持つべきではない。
なぜなら、それらは互いに代替となるものではないからだ。
もし、両者に力をいれることができれば、両社の長所を活用してより良い効果を得ることができるだろう。
「SEOとPPC、どちらが優れているか」という議論に、一つの見解を出した記事でした。
SEOもPPCもWebマーケティングの一施策にすぎず(もっというと、Webマーケティングもマーケティングの中の一部にすぎませんが)、「どちらのほうが優れている」といった判断はそもそも不可能だと思います。
サイトの性格、目的、運営状況によって取るべきマーケティング戦略は異なるため、「SEOとPPC、どちらの施策を行うべきか」も状況によって異なるはずです。その時々に応じた最適なバランスを見つけるよう、努めていきましょう。
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