著者紹介: デニス・デュヴォシェルは、オンラインコラボレーションツール、TwoodoのCEO & 共同創設者である。
私達が立ち止ったところで、変化は収まらない。外部の力により、ランダムな出来事がシャッフルされ、その結果、不安になり、異なる状況へと私達は向かっていく。混乱を特定し、その結果に応じた行動を取る能力が、困難を乗り切る原動力となる。
IT、SaaS等、イノベーションのレベルの高い業界で、仕事をしたことがある方には、私の言いたいことが分かってもらえるはずである。あるいは、様々な方向に引っ張られた経験がある方も、理解してくれるのではないだろうか。
変化を受け入れるのではなく、変化に逆らう行為は、破滅をもたらすと「分かっている」ものの、時間を割いて、様々なソリューションを試そうとする人は全く見当たらない。私達は、変化する、または、変化させないため、制御することが出来ると確信するモノ — つまり、自分達の考え方、そして、取り組み方 — にしがみつく傾向が見られる。
「領域、または、目的地を把握していない状態で、理性的に動くのは、理性的とは言えない。」
エドワード・ウェバー: ウィンスコンシン大学 1984年E
起業家が、対処する必要がある不安は2つに分けられる: 戦略上の決定を下す際の不安、そして、チームを管理する上での不安である。
実用的なアドバイスと余計なアドバイスにも分けることが出来るが — 両者は持ちつ持たれつの関係である。そこで、この記事では、双方のタイプの不安について、考察していく。
スタートアップでは、問題を解決し、イノベーションを追求することが至上命題である。そのため、不安があって当然である。持っている知識を活かすことで、この不安を軽減することが出来る。その上で鍵を握るポイントを挙げていく:
チーム内の知識の格差を解消する取り組みも、不安に打ち勝つ上で効果がある。そのための条件を挙げていく:
問題は毎日のように起業家の前に現れる: バグが出現し、ゲスト投稿の要請が断られ、デザイナーに子供が産まれたため、仕事が出来なくなることもある。この手の問題には、2通りのアプローチが考えられる(ミランのボッコーニ商業大学 アンジェロ・ディティジョ教授が指摘):
1) ゴミ箱アプローチ
ゴミ箱にすべて投げ込み、その後、ゴミ箱に手を突っ込み、たまたま手が触れた問題を解決する。
これは、思いがけない発見をもたらす効果があり、想像以上に素晴らしいアイデアが生まれることもある。また、四六時中、問題に飛び付き、真正面からぶつかっていくため、問題が溜まることはない。確かに忙しくなるが、生産的だと言えるだろうか?
2) コアの問題を調査するアプローチ
ゴミ箱アプローチを採用して、ランダムに問題を解決するのではなく、根本的な問題を特定する努力をして、他の問題は捨てる。
根深い構造上の問題がある場合、このアプローチは役に立つものの、問題が完全にランダムな類のものであったら、時間の無駄になる。しかし、長期的な視点で考えると、このアプローチの方が確実に優れており、一回で解決することが可能な、繰り返し発生する軽率な問題を廃絶することで、生産性を高める効果が見込める。
「業界内の変化する要素を確認し、当該の要素の状況を特定することで、マネージャーは状況を判断することが出来る。」
科学的なメソッドを用いる手もある: a) 観察する b) 質問をする c) 仮説を立てる d) 実験を行う e) 仮説を受け入れる もしくは、f) 仮説を否定し、新しい仮説を試す。
これから紹介する手順は、ウィスコンシン大学のエドワード・ウェバーが考案した手法からアイデアを得ている(1984年に発表された論文):
ステップ 1:不確定要素を特定する
1) 経験、そして、業界において妥当な不確定要素を選ぶ。
例: ユーザー維持率
2) この不確定要素は、論理的に裏付けられている必要がある(ソートリーダー、業界の専門家、学術論文等、業界において妥当な存在に支持されている)。
例: デイブ・マクルーア氏の顧客維持に対する効率的なアプローチ
3) 不確定要素のデータを集めることが出来る ? これはツールやその他の利用可能なリソースに左右される。
例: グーグルアナリティクスを使って、ビジターが去るページを特定する。
4) 選んだ不確定要素を、他の不確定要素と組み合わせて、優れた不確定要素としてまとめ、要素の数を減らすことが出来るかどうか検討する…こうすることで、状況に対する根本的なパターン、および、関連性の見解を得ることが出来る可能性がある — そして、最終的にこの見解からソリューションが導かれる。
例: Mixpanelでイベントのファンネルを作成する。
5) 不確定要素は、自分だけでなく、他の従業員も分かるようにしておく。さもなければ、不確定要素の妥当性や重要性を伝えることが出来なくなる。
ステップ 2: 目標を特定する
不確定要素を選択したら、会社の目標の観点から、不確定要素を考察する必要がある。不確定要素の理解は、上述した知識のリソースに左右される。目標の観点で結果を考え、ギャップを特定する — ギャップには、次の条件が課される:
a) 解決することが可能であること
b) チーム/マネージャーが解決する意思を持っていること
要するに、上の例では、維持率を改善するためのリソースを持っているか、そして、維持率の改善は、ビジネスにとって優先課題かどうかを考える必要がある。
ステップ 3: 条件は適切か?適切ではないなら、条件を無効にする条件を作り出すことは可能か?
戦略から有益な成果を得るには、適切な条件が必要になる。これは最も不安な要素だと言えるだろう。計画を成功に導く上で、どのような条件が妥当か特定してもらいたい。条件を無効にする条件を作ることが出来るまで、他の不安は忘れて構わない。
不確定要素が目標にどのように影響を与えるのかが分かると、ビジネスを成長させる最善の方法を特定しやすくなる。より相応しい製品/マーケットを見つけることが出来るようになり、また、目標を達成する上で効果のない行動を避けることが可能になる。
何もかも熟知しているわけではないなら、そして、出来事や物事がその他の出来事や物事とどのように収支、または、分岐するのか分からないなら、不安は存在する。不安の管理においては、不安な状況でチームに前向きな影響を与えることが最も重要であり、チームに対する統制の強化は解決策にはならない。
残念ながら、後者を重要視するスタートアップが後を絶たない。一番恐ろしい不安な状況は、オプションを選ぶ前に、オプションをテストすることが出来ない状況である — しかも、すぐに選択しなければならない。
ステップ 1: 目標の特定(「これからどこへ向かおうとしているのか?」)
会社がどのようなビジョンを持つのかを特定することは、重要な目標である。これは、サブの目標から、大きな目標を達成する上で必要な小さなタスクに分割することが出来る。
サブの目標への道が提示されると、「大きな目標」は現実的に見える。すると、不安に対するネガティブな感情を抑えることが可能になる(たとえ不安自体は残っていても)。
ステップ 2: 目標を達成するために取るべき手順を評価する(なぜこの道をたどるのか?)
リソースの認識、そして、制限、さらには、適切な条件を特定する力が、目標へ向かうステップを形成していく。それぞれの選択肢を守り、些細な要素や注意をそらす要素をプロセスから排除することが出来る。不確定要素の知識を提示することで、チーム内の不安を低下させる効果が見込める。
ステップ 3: 最も重要な目標への道に代わる、不測の事態の際に進む道を把握する(「高速道路が閉鎖された場合、どの道を代わりに走ればいいのか?」)
例を用いて考えてみよう。顧客の獲得は、スタートアップの主な目標の一つである。 これは避けることが出来ない道である。この目標を達成する上で、様々なルートが考えられる。そこで、基本の戦略から望む成果を得られない場合の最善の代案を策定しておくと良い。
このような重要な目標に対する勢いを失わないためにも、次善策を用意しておくべきである。代案を用意しておくと、不安を弱めることが出来る。たとえ一時的ではあっても、頼りになる不測の事態の計画によって、チームも勢いを保つことが可能になるためだ。
ステップ 4: ポジティブに正直な姿勢で不安を表現する(「確かに人生は予測することが出来ない。しかし、出来るだけ準備を整えることは出来るはずだ」)
ポジティブに不安を表現する — チームメンバーを絶望させるのではなく、希望を抱かせるように不安を伝えるべきである。不安は至る所に存在する。この世は混乱に支配されている。今までもそうだし、これからもこの傾向は変わることはないだろう。
しかし、混乱する状況への適応能力によって、人間は成功を収めてきたのだ。不安へのリアクションが、イノベーションやアイデアを毎日生んでいる。いずれにせよ、予想される不測の事態は、現実の出来事よりも遥かに深刻であることが多い。不安を受け入れることで、不安への恐怖心を弱めることが出来る。
ステップ 5: まとまりのあるステップに活動をまとめる(「次にどのタスクに着手すればよいのか?」)
とりわけタスクを管理可能なグループに分割している場合、タスクをコントロールすることが出来る(弊社の製品、Twoodoがここで役に立つ)。タスク Aが捗らなくなったら、その他のタスクに着手するべきである(必ず他のタスクが存在する — ただし、当面の目標に関連しているタスクを選ぶ必要がある)。
また、コントロール、または、管理を強めると、不確定要素に対処するチームの能力を低下させてしまうことを理解しなければならない。不安をコントロールするため、チームから決定する権限を排除してしまうと、士気が落ち、不安を高めるだけである。自由を与えるべきである。
ステップ 6: 仲間を頼りにする…ほどほどに
スタートアップのCEOは、皆、同じ状況に身を置くことになる。現在、大勢のスタートアップのCEOが存在する。そのフラストレーションを理解する人達に聞いてもらうと、ストレスを軽減することが出来る。また、難しい状況で、アドバイスを求めると良い。
ここでは、適度な量のアドバイスを得ることが重要である — 同じ課題に関するアドバイスを何度も求めるべきではない。他人に頼り過ぎると、過剰な量のソリューションが集まり、決定する能力にマイナスの影響を与えてしまう。反対に、あまりにも頼る人が少ない場合、限られた範囲のアイデアしか得られなくなる。
最終的に、様々なアドバイスがある中で、自分の会社にとって、正しい道を見極める直感に頼るべきである。適度な人数から、あるいは、時間を決めて、アドバイスをもらうように心掛けよう。決断力が重要である。間違えたとしても、どれだけの影響を受けるのだろうか?思っているよりも遥かにダメージは小さいかもしれない。
ステップ 7: 重要ではないなら、問題ではない
実現する目標を明確に特定したら、この目標以外は全て重要ではなく、頭から取り払うべきである。残しておいても、集中を妨げるだけである。無意味な推測は、架空の問題をもたらす。
目標達成に貢献しない、時間を浪費する心配事を排除すると、不安の軽減につながる。自ら問題を作るべきではない。
写真の提供元: Shutterstock/Alena Hovorkova
この記事は、The Next Webに掲載された「How to deal with uncertainty: The entrepreneur’s dilemma 」を翻訳した内容です。
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