この記事は、2025年 5月 6日に Search Engine Land で公開された Jason Tabeling氏の「What LLMs link to and why it matters for your brand」を翻訳したものです。
LLM(大規模言語モデル)の検索結果に含まれるリンクのうち、ブランドの公式ドメインに向けられているものは、わずか9%に過ぎません。本記事では、こうしたデータを分析し、それがWeb戦略にどのような影響を及ぼすのか、また企業としてどう対応すべきかを考察します。
LLMは、複雑な問いへの回答やクリエイティブなコンテンツの生成といった用途に対応しており、「ゼロクリック」な結果──すなわち、ユーザーがさらなる調査をせずに済む、簡潔で直接的な回答を提供するよう設計されています。
この変化は、ある重要な疑問を私たちに突きつけます。ユーザーが必要な情報を得るために、もはやWebサイトを訪れる必要がなくなったとしたら、ウェブトラフィックはどうなるのでしょうか?
ウェブサイトの将来的な役割についての議論はまた別の機会に譲るとして、今、検討すべきより差し迫った戦略的課題があります。それが「リンク」です。
具体的には、LLMはどのような種類のリンクを提示しているのか。そしてブランドは、そのリンクからどのようにトラフィックを生み出すことができるのか。
目次
LLMの出力に含まれるリンクは、情報の出典としての引用の役割を果たし、提示された情報の正当性を確認したり、ユーザーが元のソースにアクセスする手段となったりします。
特にセンシティブで複雑なトピックにおいては、このような仕組みが正確性と信頼性を保つために非常に重要です。
ブランドにとって、この引用リンクこそが、LLM経由でのインバウンドトラフィックを獲得するための、ほぼ唯一の実行可能なルートです。
良いニュース:LLM経由の紹介トラフィックは約400%増加しています。(英語記事:外部リンク)
つまり、LLMが生み出すトラフィックの規模が大きくなればなるほど、LLMがどのようなリンクを提供しているのかが、いっそう重要になってくるのです。
私は数百に及ぶプロンプトを分析し、LLMが提示するリンクを次の3種類に分類しました:
その結果、実際にブランドの公式ドメインへリンクしている割合は、全体のわずか9%にすぎないことが明らかになりました。
これは、ブランドにとって深刻な課題です。というのも、回答の中でブランド名が挙げられているにもかかわらず、自社サイトへは直接リンクされていないからです。
さらに詳しく:B2B SEOのためのLLMの最適化:概要(英語記事:外部リンク)
ここでは、小売業と金融サービス業界からの具体例をご紹介します。
小売業のケースでは、私はバンドン・デューンズ(アメリカ・オレゴン州にあるゴルフリゾート)での近々のゴルフ旅行に備えて、レインコートを探していました。
その検索結果はそこそこのものでしたが、Perplexityが提示したリンクのうち、パタゴニア公式サイトに繋がるものは1件のみで、残りはすべてサードパーティのサイトに誘導されました。
金融サービスと保険の質問でも、同様の傾向が見られました。
挙げられたブランドは、予想どおりの大手企業でしたが、リンク先はすべて、リード情報を集約するサードパーティのサイトでした。これらのサイトは通常、そのトラフィックを該当ブランドに再販売し、裁定取引的なビジネスモデル(情報を仲介し差益を得る)によって利益を得ています。
LLMの視点から見ると、サードパーティのサイトへのリンクは理にかなった選択です。
それは、実世界における人々の情報収集行動を反映しているからです。たとえば、どのレインコートを購入するかを決める際に、パタゴニア自身に偏りのないレビューを期待する人はまずいないでしょう。
同じように、LLMも「中立的」に見えるサードパーティの情報源を優先する傾向があるようです。
この中立性こそが、より良いユーザー体験を提供することを目的とした選択と言えます。
とはいえ、こうしたサードパーティのサイトの多くは、リンクされるブランドから何らかのかたちで利益を得ており、トラフィックを収益化しているという現実があります。
さらに深掘り:AIを活用した検索結果(SERP)とLLMに向けて、2025年のコンテンツ戦略をどう最適化すべきか(英語記事:外部リンク)
では、ブランドはこの状況にどう対処すべきなのでしょうか?現時点で有効と考えられるアクションは、以下の3つです。
まずは、自社ブランドが各種LLMでどのように表示されているかを調査しましょう。表示されているリンクがどのようなものかを把握することが不可欠です。
戦略的な意思決定を行うには、現状を正確に理解することから始めなければなりません。
提示されているリンクはサードパーティのサイトですか?
それらのサイトは、強力なインバウンドリンクプロファイルを有しているでしょうか?あるいは、ユーザー生成コンテンツに依存しているのでしょうか?
こうした分析から得られる洞察が、次のステップへのアプローチを左右します。
LLMは常に進化しており、依存している入力データも不透明な部分が残っています。そのため、仮説を立ててテストを始めることが重要です。
観察されたパターンに基づいて、コントロールグループとテストグループを設定し、それに応じてコンテンツやリンク戦略を調整してください。
その後、影響を測定し、再度ステップ1に戻って改善を重ねていきます。
さらに詳しく:GA4でLLMからのトラフィックをセグメント化する方法
リンクは長年にわたりWebの基盤であり続けてきましたが、今やLLMのトレーニングや情報の提示方法においても、その役割は非常に重要なものとなっています。
これらのモデルが私たちの日常にますます深く統合されていくなかで、リンクの価値はさらに高まっています。
LLMの出力内でリンクがどのように機能しているのかを理解することによって、ブランドはこの変化し続ける環境に柔軟に対応し、ユーザーとの対話の中で信頼され、注目され、アクセスしやすい存在であり続けることができるのです。
SEO Japan編集部より:現時点では生成AIからの流入は1%以下のサイトが多いでしょう。ただし、生成AIをリファラとする流入数は、当社の解析ツールを見る限り、直近昨月比約120%前後で増加しています。現時点での割合で見れば大したことはありませんが、そこに顧客がいることは確かです。1件、2件の良質なCVが事業にインパクトを与える領域では、無視できない数といえます。
生成AIは、Google・bing等のAPIを参照している(RAG)背景があり、結果として上位表示しているサイトは言及されやすい仕組みです。生成AIの特徴を踏まえると、①出典の信頼性(E-E–A–T)②一問一答(FAQ・冒頭要約) ③bingのAPI(BingのSEO) の3点を抑えておくと良いかもしれません。
SEO最新情報やセミナー開催のお知らせなど、お役立ち情報を無料でお届けします。