怖いなら、教会へ行けよ
―Ice Cube, Go to Church
ヒーローと意気地なしは何が違うのか、私は子どもに教える。臆病になることとヒーローと臆病者の違いは何か、私は子どもに教える。臆病になることと勇敢であることの違いは何なのか?違いはないのだ。何をするかだけだ。両方とも同じことを感じる。両方とも死ぬのや傷つくのが怖い。臆病な人間は、自分が直面するはずのことに果敢に立ち向かうことを拒否する。ヒーローは、もっと訓練されていて、そういった感情を撃退して、自分がすべきことをする。しかし、ヒーローも臆病者も、共に同じことを感じているのだ。あなたのことを見ている人々は、あなたがどのように感じるかではなく、あなたがすることに基づいてあなたをジャッジする。
―伝説のボクシングトレーナー、Cus D’amato
起業家に会う時に、私達が期待する2つの重要な特性は、才能と勇気だ。CEOとしての経験の中で私は、最も重要な決断は、私の知性よりもはるかに私の勇気を試すということを知った。
適切な決断は時に明白であるが、間違った決断をすることに対するプレッシャーが上回ることがある。それは小さなことから始まる。
創設者たち―1人はCEOとして、もう1人は代表取締役として―が私達の会社に売り込むためにやって来る時、こんな会話になることがよくある:
“誰がこの会社を経営しているのですか?”
“私達です。” と、2人とも言う。
“最終決断をするのは誰ですか?”
“私達です。”
“いつまでそのやり方で経営をするつもりですか?”
“永遠に。”
“では、あなたは全ての従業員が仕事をやり遂げるのをより困難にすることに決めたので、誰が責任者なのか決める必要がない、そういうことですね?”
通常、それは沈黙に終わる。
頭では、従業員にとって意思決定者は2人よりも1人の方が楽だということは明らかなはずだ。それは全くもって複雑なことではない。残念ながら、露骨な現在のソーシャルプレッシャーが、会社を適切に体系化することの長期的な利益を上回ることがよくある。創設者たちが責任者は誰なのかを決める勇気を持つ必要がないばかりに、全ての従業員は二重の承認の不便さに苦しむのだ。
もっと重要なことに、会社が成長するにしたがって決断はもっと怖くなる。私達がLoudcloudをたった200万ドルの利益で上場することを決めた時、それは頭では難しい選択ではなかった―その代替案は倒産することだったのだ。とはいえ、大部分の従業員、全ての報道陣、多くの投資家がバカだと思うことをするのは恐ろしかった。
正しい選択をする時には、知性と勇気がいる
時には、決断自体が複雑で、勇気ある挑戦をもっと難しくする。CEOは、社内の他の人とは異なる一連のデータと知識と予測を持っている。しばしば、CEOよりも経験豊富でより知性がある従業員と委員会のメンバーがいる。CEOがより良い決断ができるたった1つの理由は、その優れた知識なのだ。
さらに悪いことに、CEOが特に難しい決断に直面する時、1つの選択肢をもう一方よりもほんのわずかに好むだけかもしれない―例えば、54%が製品ラインを打ち切る、46%がそのままにする、だとしよう。委員会やスタッフの本当に賢い人達が別の側についた場合には、CEOの勇気が厳しく試される。自分が適切な決断をしていることに確信が持てず、みんなが自分に反対している時、どうやってその製品を打ち切ることができるだろうか?もし間違っていたら、トップアドバイザーからのアドバイスを目の前にして間違っていたことになる。もし正しいとしても、誰にそれが分かるのだろうか?
最近、ある大企業が私達のポートフォリオカンパニーの1つを買いたいと言ってきた。そのポートフォリオカンパニーのこれまでの経過と収益レベルを考えると、その取引は金になる魅力的なものだった。その創設者/CEO(彼をハムレット(仮名)と呼ぶことにする)は、自分が追いかけていた巨大な市場機会が理由で売却は理にかなわないと考えたが、彼は自分が投資家や従業員にとって一番の選択をしていることを確信したかった。ハムレットはそのオファーを断りたかったが、それは辛うじてそうしたかっただけだった。さらに問題を複雑にしたのは、マネージメントチームの大部分と理事会は反対の意見だったことだ。理事会とマネージメントチームがハムレットよりもずっと経験豊富だったことは役に立たなかった。その結果、ハムレットは自分が正しいのかどうかを悩んで何日も眠れない夜を過ごしたのだ。さらに悪いことに、彼は自分が正しいかどうかを知るのは不可能だと知った。このことが彼の睡眠を助けることはなかった。結局、ハムレットは自分にできる最大限の勇気ある決断をし、会社を売らなかった。それは彼のキャリアの決定的瞬間となるのだと思う。
面白いことに、ハムレットがこの決断をするとすぐに、理事全体と幹部チームは直ちにこの選択を受け入れた。なぜか?もし彼らがCEOに夢をあきらめるようにアドバイスするほど会社を売りたかったなら、彼らはどうやってそんなに早く考えを翻すことができたのだろうか?会社を売るという彼らの初期の選択を駆り立てる最も重要なデータ点は、ハムレットの最初のためらいだったということが判明した。CEOがそうしたかったのだとチームは考えていたのだ。ハムレットは、これに気が付かず、彼らの売りたいという希望は分析の結果だと解釈していた。関係する全員にとって幸運なことに、彼は正しい決断をする勇気を持っていた。
一般的問題は、以下に示したソーシャルクレジット表の中に見られる。大衆に影響された決断に対する期待される社会的報酬は、自分が正しいと考えてした決断よりも良いように見える:
あなたが正しい場合 | あなたが間違っている場合 | |
集団に反して決断する | あなたがその決断したことを覚えている人は少ないが、会社は成功する | 全ての人がその決断を覚えていて、あなたの評価が下がるか、村八分にされるか、解雇される。 |
集団と一致して決断する | あなたにアドバイスしたみんながその決断を覚えていて、会社は成功する | 間違えたことに対してあなたが非難を受ける可能性は低いが、会社は苦しくなる |
表面上は、もし決断が危機一髪なら集団と同調するほうが安全なように見える。現実には、もしあなたがこのわなにはまると、集団があなたの考えに影響を与え、70対30の決断を51対49の決断のように思わせる。これが、勇気が決定的に重要な意味を持つ理由なのだ。
勇気は、性格のように成長させることができる
史上全てのファイターが怖れを持っていた。1人の少年が私の所にやって来て、自分は怖くないのだと言う。私が彼を信じたとしても、彼は嘘つきか彼には何か問題があるのだろうと思う。私は彼を医者に連れて行き彼の問題を見つけてもらうだろう。なぜなら、それは普通の反応ではないからだ。リングに上がったことがあるファイターで怖れを経験したことがない奴は、嘘つきか精神病質者のどちらかだ…
—Cus D’Amato
私がLoudcloudとOpswareを運営する中でしてきた全ての難しい決断において、私は勇気を感じたことは一度もない。実際、しばしば私は死ぬのが怖いと感じていた。私はそういった感情を逃れることは決してないが、たくさんの訓練の後、それらを無視することを学んだ。その学習プロセスは、勇気開発プロセスとでも呼べるかもしれない。
人生で、誰もが、みんなと一緒で簡単で間違ったことをすることと、一人ぼっちで困難で正しいことをすることの選択に直面する。あなたが会社を経営する時には、これらの決断は増大する。なぜなら、結果は1,000倍も誇張されるからだ。人生と同じように、CEOの間違った決断への言い訳は常にたくさんある。
人生の言い訳 | CEOの言い訳 |
他の賢い人たちも同じ間違いをした | それは危機一髪だった |
私の友人みんながそれをしたがった | チームが私に反対し、チームに逆らうことができなかった |
カッコいい奴らはみんなそれをしている | それは業界の最優良事例だった;私はそれが違法だとは認識していなかった |
それは完璧ではなかったので、立ち向かわないことを決めた | 私達は全体のプロダクトマーケットフィットを少しも達成しなかったので、自分達の製品を売ろうとは決してしなかった |
困難で正しい決断をするときにはいつも、あなたは少し勇敢になり、簡単で間違った決断をするときにはいつも、あなたは少し臆病になるのだ。もしあなたがCEOなら、これらの選択が勇敢な会社もしくは臆病な会社を生むことになるのだ。
最後に
過去10年間で、技術的進歩が、新しい会社を始めるための財政的な境界線を劇的に低くしたが、素晴らしい会社を築くための勇気の境界線はこれまでと同じ位に高いままである。
この記事は、ben’s blogに掲載された「The Fine Line Between Fear and Courage」を翻訳した内容です。
私の場合は、会社の規模もさほど大きくないですし(60人前後)、性格も含めて、ここに書かれている程、周りの意見や評価を気にすることはないのですが、決断に関しては常に迷いながら行っているのが実情です。これまでを振り返ると大きな決断だけを考えても多分半分位は失敗してきたような気が正直しますし。。。どうにか会社も紆余曲折ありながらも10年目を迎えましたが、これからの10年、会社を倒産させずに経営していくことはもちろん、さらにステップアップしていくためには最後の一文にあるように自らの勇気の境界線をもっと上げていく必要があるなと感じています。仕事もそうですが、プライベートでも決断力は求められる時は思いますし、常に勇気を持って決断していけるようになりたいですね。 — SEO Japan
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