TF-IDFは、特定の文書内で単語の頻度(TF)と、文書全体における単語の希少性(IDF)を考え、単語の重要度を数値化する手法です。この方法を知っておくことで、コンテンツ記事内で使う単語の選定や割合をコントロールでき、検索エンジンからの高評価を狙えます。しかし、TF-IDFについてよくわからないという方も多いでしょう。
今回は、TFとIDFの意味や計算方法、そしてTF-IDFの値がどのように単語の重要度を表しているのかについて解説します。また、SEO(検索エンジン最適化)やレコメンドシステム、迷惑メールの識別など、TF-IDFが活用されるいくつかの場面やOkapi BM25の比較についても触れるため、Webマーケティング担当の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
TF-IDF(Term Frequency-Inverse Document Frequency)は、文書中にある特定の単語がどれだけ重要かを数値化するための手法です。この手法は、テキストマイニングや情報検索などで広く用いられています。
TF-IDFは、「TF」と「IDF」それぞれに意味があり、個別に使用する場合もあります。それぞれの単語の意味について見ていきましょう。
TFは、Term Frequencyの略称です。直訳すると単語の出現頻度であり、各文書において「その単語がどのくらい出現したのか」を意味します。TFの計算式は以下の通りです。
単語の出現回数を文書内の全単語数で割って算出します。
IDF は、Inverse Document Frequencyの略です。 ある単語がどれだけ珍しい(または特定の文書に特有)か示す指標で、TF-IDFの値が高い単語は、その文書にとってレア(特徴的)な単語であるとみなされます。単語が「レア」なら高い値を、「いろいろな文書によく出現する単語」なら低い値を示します。
IDFの計算式は以下の通りです。
全文書数をその単語が出現する文書の数で割り、その後対数を取ることで計算されます。この方法により、一般的な単語(たとえば「とは」や「の」など)は重要性が低いと判断され、レアな単語が強調されます。
TF-IDFは、「TF」という概念と「IDF」という概念を組み合わせたものです。この値により文書内の単語が、どの程度重要なのかを判断できます。TF-IDFの計算式は以下の通りです。
計算して出た値により以下のように判断できます。
TF-IDFが高値 | 単語がその文書に特有で、他の多くの文書には珍しい場合、TF-IDFの値は高くなります。これはその単語が文書の要点をよく表している可能性が高いことを意味します。 |
TF-IDFが低値 | 単語が非常に一般的で多くの文書に現れる場合、または非常に稀で文書内でほとんど使われていない場合、TF-IDFの値は低くなります。これはその単語が文書のトピックを表すうえであまり重要ではないことを意味します。 |
TF-IDFの計算と考え方を見ていきましょう。たとえば、以下の5つの文書を例に解説します。
上記の文章においての「猫」のTF-IDFを計算します。
1の「猫はマットの上に座った」において、「猫」は1回出現し、文書全体の文字数は11です。したがって、TFは次のように計算されます。
【計算】1(出現数)÷11(文字数)=0.09
よってTFは、0.09(端数を切り捨て)となります。
5つの文書のうち「猫」が含まれるのは3つです。したがって、IDFは次のように計算します。
【計算】log(5(文書数)÷3(文書に出現する数))=0.22
よってIDFは、0.22(端数を切り捨て)となります。
最後に、TFとIDFを掛け合わせてTF-IDFを計算します。
【計算】0.09×0.22=0.019
よってTF-IDFは、0.019となり「猫」は文書1にとって重要で、他の文書では比較的珍しい単語であるといえます。
TF-IDFは、文書内の単語の重要度を評価するために用いられる手法です。しかし文書数が少ない場合は、効果的に機能しない可能性があります。たとえば、1つの文書のみでは、異なる文に分割してTF-IDFを計算します。一方で使用される単語がほとんど変わらない場合は、IDFの値がほぼ同一になります。そのため、期待した効果が得られないことも少なくありません。
また、文書の長さが短い場合にも注意が必要です。文が短いと、各単語の出現頻度は必然的に低くなり、TF値が有効に機能しなくなる可能性があります。
とくにSEO対策でTF-IDFを使用する際には、この点を理解しておくことが重要です。Word2Vec(Word to Vector)やワンホットエンコーディング(One-Hot Encoding)などの指標と使い分けながら、適切に計算しましょう。
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コンテンツ制作でTF-IDFを活用すると、SEO施策にとって有利に働きます。また、SEO施策以外にも利用される場面があります。マーケティングやWeb制作で、TF-IDFが活用されるケースについて見ていきましょう。
検索エンジンにおいて、単語の出現頻度は重要な評価ポイントです。対策するキーワードやコンテンツ内で使用される単語の出現頻度、希少性を分析し、文書内で組み込むことで、検索結果を向上させる可能性があります。また、分析から関連性の高い単語の使用に応用して、効率的に検索結果を向上させることも期待できます。
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自動要約システムにおいて、TF-IDFは重要な単語やフレーズを識別し、文書の主要な内容を抽出することに役立ちます。要約には最も重要な情報を含む文を選択し、これらの文を組み合わせて要約を生成します。TF-IDFスコアが高い単語を含む文は、文書の主題や重要なポイントを伝える可能性が高いため、要約に選択されやすくなるのです。
たとえば、ある文書に「経済」という単語が頻繁に登場し、他の多くの文書ではあまり使われていない場合、この単語のTF-IDFスコアは高くなります。つまり、この単語を含む文は文書全体の中で重要な情報を伝えている可能性が高く、自動要約の際に選択される可能性が高まります。そのため、自動要約では、読者にとって重要な情報だけを提示することが可能となるのです。
自動要約では、TF-IDF以外のアルゴリズムが使われています。たとえば、文章の構造・文脈・文の連続性なども含まれます。TF-IDFはあくまで文書内での単語の重要度を測るためのひとつの方法であり、高度な要約を生成するには追加の処理やアルゴリズムが必要です。
レコメンドシステムでは、ユーザーのさまざまな情報から、効果的な情報提供を可能にする仕組みです。仕組みとしては、文書内の各単語の重要度を数値化し、文書の特徴ベクトルを生成します。特徴ベクトルを利用して、異なる文書間の類似度を計算し、ユーザーが過去に興味を示したコンテンツを基に、関連性の高いコンテンツを提供します。
TF-IDFに基づくシステムは、テキストデータの内容を深く分析できる一方で、単語の出現頻度に依存しているため、文脈や意味のニュアンスを完全には捉えられません。また、新しいユーザーや十分な行動データがないユーザーに対するレコメンドは難しい場合があるため、注意が必要です。そのため、TF-IDFだけでなく、他の方法やアルゴリズムと組み合わせることが推奨されます。
メール内にある単語の出現頻度と希少性を分析して、迷惑メールと正規のメールを区別する際に、TF-IDFは有効です。迷惑メール特有のキーワードやフレーズ(たとえば「無料」、「当選」、「緊急」など)の重要度を数値化し、これらのキーワードが多く含まれるメールに高いスコアを付けることで、迷惑メールを特定します。これに基づいて作成されたフィルタリングルールにより、迷惑メールは自動的に分類され、ユーザーの受信トレイに入ることを防ぐのです。
迷惑メールの手口が変化しても新しいキーワードやフレーズに自動的に適応でき、効率的に迷惑メールを識別し続けられます。また、各ユーザーのメールの傾向を分析し、個々のニーズに合わせた迷惑メール対策を行うことも可能です。
ただし、正規のメールを誤って迷惑メールと判断する(誤検出)リスクもあります。迷惑メールの手口は常に進化しているため注意が必要です。
SEO(検索エンジン最適化)施策において、TF-IDFはWebページの内容を最適化し、検索エンジンランキングを高めるために使用されます。キーワードの重要性を計算し、ページが特定のトピックやクエリにどれだけ関連しているかを評価するのに役立つでしょう。
単語の出現割合を示す「共起語」や「サジェスト」「関連キーワード」と呼ばれる考え方もあり、単語における重要度の確認はSEO施策において大切な要素となります。
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モバイルエンジン最適化(MEO)においても、TF-IDFは重要です。TF-IDFで適切なキーワードを特定し、モバイルユーザー向けに最適化されたコンテンツを作成することで、モバイル検索エンジンのランキングを向上させることが期待できます。モバイル検索エンジンの向上は、最終的により良いユーザー体験につながり、満足度を高められるでしょう。
双方の大きな違いを簡単に説明すると、TF-IDFの上位版がOkapi BM25です。簡易的な計算式のTF-IDFとは計算式が異なり、Okapi BM25は以下のようになります。
TF-IDFでは、0除算を避けるために分母に+1が加えられた式が使用される場合があります。しかし、Okapi BM25の場合は、元々の定義式に+0.5が含まれているため、0除算を心配する必要はありません。より詳しい分析結果となるため、コンテンツへの導入も効果的に働くでしょう。
自動生成AIは近年、飛躍的に向上しており、業務効率の改善だけではなく、ライターなどのクリエイティブな職種にも影響があります。大切なことは、AIの進化と向き合い、業務の効率改善やクオリティを高めるための「サポート役」として活用していくことです。自動生成AIが持つ自動学習や追加学習機能などを考えると、今後もさらなる進化が期待でき、急速に加速するでしょう。
自動生成AIの進化は、社会やビジネスに多大な影響をもたらすと同時に、新たなチャンスを生み出します。重要なのは、AIの進化を理解し、共存していくことが大切だといえるでしょう。
TF-IDFは、文書の分析や情報検索において重要な役割があります。TF-IDFの基本原理を理解しておくと、SEO(検索エンジンの精度向上)・自動要約・レコメンドシステムなど、さまざまな分野で活用可能です。
また、TF-IDFの上位版でさらに高度なOkapi BM25というテキスト分析機能があります。調べたい内容に合わせて使い分けすると良いでしょう。
今後もTF-IDFは、テキスト分析の領域でさらなるバージョンアップが期待され、多くの業界に影響を与え続けることが予想されます。ただし、分析や対策には、非常に複雑な計算や分析を必要とするため、個人でコンテンツを作成するにもリソース不足や理解に悩むこともあるでしょう。そのようなときは、ぜひ弊社にご相談ください。長年にわたり培ってきたSEOのノウハウから、あなたにぴったりのサポートプランを提供します。
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