目次
・アヤット・シューケイリー氏について
米国で2番目のCROベンダーであるInvespの共同創業者。代表著書として、オライリーの「Conversion Optimization」がある。
Netflix・・・年間1200以上のテストを実施
Booking.com・・・1000テスト以上が現在行われている
Facebook・・・99%の確率で10個のテストに巻き込まれている
Amazon・・・2011年には、7000テストが実施されている
Google・・・昨年は10万のテストが行われた
CROを実施する過程をScrutinize(調査)、Hypothesize(仮説設計)、Implement(実行)、Propagate(展開)に分類。Invespが提唱するCROメソッド。
調査の過程で発見された課題点は、以下の4つのカテゴリに分類される
誰をターゲットにするかは明確にしなければならない。
なぜなら、我々はこうあって欲しいという姿を顧客に求めてしまうからだ。あなたはあなた自身の顧客ではないのだ。
ぺルソナの設計(例:スーザン)
ユニークな贈り物を友達にするためにウェブサイトを見ている
年齢、仕事、家族構成、年収、居住地域、パーソナリティ
生い立ち、贈り物をする背景
トリガーとなる言葉、目的、懸念事項、オンラインショッピングでの行動、モチベーション
調査の流れ
調査手法の種類
1体1インタビュー | グループインタビュー | ユーザビリティテスト | 市場調査 | |
---|---|---|---|---|
収集できる情報の種類 | 深いペルソナに関する情報 | 市場に関するおおまかな見解 | マーケットの情報は得られない | 限られた市場の情報 |
市場に関するおおまかな情報 | 〇 | 〇 | × | △ |
ウェブサイトの機能に関する情報 | 〇 | × | 〇 | △ |
参加者への関与 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
調査事項
質問:購入を阻害しているものは何か?
これらの質問の回答に対して、対応方法を分類していく。
対応方法
回答 | テスト | すぐ直す | 調査 | 実行 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
必要な情報が見つからない | 何が情報として不足しているのか? | ||||
自分のスマホのサイズに合うか分からない | 表記の仕方を変更する | ||||
他の色が欲しい | バリエーションはあるが、適切に表記されていない | ||||
送料の表記が見つからない | どうしたら視認してもらえるか | ||||
価格を比較したい |
理由
調査の回答には往々にして、「顕在化している意識」や、
「考えたり感じたりすることはできるが、口には出したくないこと」などが現れる。
しかし行動を左右していた考えなどは、潜在的な意識に落ちている可能性は現実にあり得る。
「感じることはできるが言葉には言い表せない」
「まだ気づいていないが、言われれば気づくことが出来る」
「認識はしていないが、自分の行動や感情に確実に影響している」
ことなどがそれにあたる。
1950年代ニューヨークで、エレベーターの待ち時間が長いことが問題となっていたが、
これを解決したのが「鏡」を設置することであった。
これは人々が抱える潜在的な課題を解決した良い例である。
ページ階層ごとに、3つの指標をウェイト付け。
※ホームページ、チェックアウトフォーム、商品ページに対して3つの指標からスコアリング。上記の例では、PIEスコアが最も高いのはホームページであった。
ここから各問題点毎に、優先度付けを行っていく。Invespでも独自の優先度付けモデルを使用している。
問題点の要素
テストアイディア
優先度付けを行い、最終的には以下の形に集約する。
※各サイト内の課題点毎にグルーピングを行い、右列のPriorityで優先度をまとめている。
仮説設計が完了したら、テストを通して検証を行う。しかしABテストを行う際は、統計的に適切なサンプルサイズを対象としなければ、誤った帰結を得てしまう可能性がある。
テストを行い、誤った帰結を得てしまうパターンには、大きく分けてFalse Positive(偽陽性)、False Negative(偽陰性)の2種類がある
AB test size calculatorより試算を行うことが出来る。
テストページからのコンバージョン率を入力
キーとなる指標の予測改善率を入力
該当ページのユニークユーザー数を入力
検出力(Power)と有意(significance≒confidence)を選択
以上の手順から、ABテストに必要な期間を試算することが出来る。
常にデバイスでのセグメントは行う
セグメントをしすぎる前に、トラフィックの量を考慮する
トラフィックが十分だったか
反復には様々なアプローチの方法がある。
反復のサイクル
※(上から順に)改善するコンバージョンを決める ⇒ 仮説の変更 ⇒ 変数を特定し生成する ⇒ テストを実施する ⇒ 結果を測定する
妥当でない仮説が得られてしまった場合、どこが誤っていたかを調べる。
テスト結果を解析し、ユーザーに影響を与えているというデータが十分に集まっているのならば、ABテストやユーザビリティテストなどでの調査可能範囲(Research Opportunity)として扱う。
エントリーフォームの例
このページにおける離脱率が高く、カスタマーインタビュー等でこのページの情報には懸念があることを表していたので、
我々はページをより読みやすくシンプルにし、インセンティブを含むことで、離脱率を低下させ、コンバージョン率を10%上げることが出来ると考えた。
そして、この仮説を基にテストを実施した。
しかしテストの結果、コンバージョン率が10%低下してしまった。
そこで、計算式の箇所の情報がユーザーの認識を低下させていると仮説を変更し、計算式の箇所のシンプル化を行った。
「実験の数を100から1000に増やすことが出来たならば、生み出すイノベーションの数も劇的に増えるであろう。」― Amazon CEO ジェフ・ベソス氏
「Facebookのフロントのメンバーは、上司の許可なく1~10万規模のユーザーに自身で考えたテストをして良いことになっている。実際、Facebook上では常に何万もの実験が行われている。この仕組みは官僚的な階級制度や、無駄なミーティング、政治を排除している。」― Facebook CEO マーク・ザッカーバーグ氏
コンバージョン最適化はリニアではなく、顧客ドリブンなものである。
世界のトップレベルCROストラテジストと話す絶好の機会という事で、ご本人に直接インタビューをしてきました。
SEO Japan:早速ですが、13年間アメリカでCROの推進をしてきた中で、どのような障害に直面しましたか?日本ではSEOとCROの管轄部署の違いなどが課題になっています。
アヤット氏:私がCROを始めたころは、責任者に話をしても「CRO?何の略?SEOじゃないの」という感じだったわ。だからまずはこういうカンファレンスでCROのイントロダクションなどを通して彼らを教育して、興味を持ってくれるような会社に対してはなぜCROが重要なのかを伝えるところから始めたわ。
でも彼らからマーケティングの予算をとる時は、オンラインでのデータ等を見せるようにしていたわね。
SEO Japan:では、そのデータをベンチマークとして企業に提示していたんですね?
アヤット氏:その通り。証拠を見せるのが最も簡単なコミュニケーションの方法だからね。特に「これだけ収益を逃しているのよ」というデータは効果的ね。「なんでみすみすこれだけのユーザーを見逃してしまっているの?」ってね。
SEO Japan:それは理解しがたいですね。
アヤット氏:そう。彼らには「今あなたたちはたしかにこれだけの収益を上げているけど、本来は○○ドル上げられるチャンスがあるのに見逃してしまっているの。」と言ったわ。日本なら、円(YEN)ね 笑。 彼らにとっては切実な問題だから、サイトに訪れた後のコンバージョンを改善してあげる必然性が生まれるのね。
SEO Japan:なるほど。
SEO Japan:もし提案先がSEO対策もしておらず、十分なトラフィックを得ていない小さな企業のような場合はCROサービスは提供していなかったのですか?
アヤット氏:もちろん流入のある大きな会社に対してもそうだけど、小規模な会社に対してもユーザビリティの改善等は行っていたわ。
たとえ規模が小さかったとしても、決定的な欠陥が無くユーザーが使えるようにするのはトラフィックを増やすのと同じようにやるべきことなのよ。
SEO Japan:(ワークショップで言及していた)「Fix it Right Away(すぐに直すべきこと)」を無くせってことですね?
アヤット氏:小さな会社ならば、大体がRight Away(すぐにやるべきこと)ね。
SEO Japan:CROの提案をするにはどれだけのトラフィックが必要と考えてましたか?
アヤット氏:私たちはコンバージョンに基づいて、提案するかを考えていたわ。ワークショップで見せたスライドで100~150CVくらいと見せたけど、統計的優位性を考えるとそれくらいね。
でももし、この水準に達していない会社に提案をすることになったとしましょう。それでもテストをしなければならないときは、ページ単位での遷移を見たわ。購入だけがコンバージョンではないの。
SEO Japan:つまりマイクロコンバージョンを設定したと?
アヤット氏:そうマイクロコンバージョン。だからゴールは「このボタンをクリックするか」というところになるわね。
SEO Japan:サブスクリプションに結び付くかなどもこれに入るわけですね。
SEO Japan:最近巷ではAIに関連する商品やサービスなどがあふれていると思いますが、AIとCROが組み合わさるとどのようなことが起きるでしょうか?
アヤット氏:実際、AIを使って次にテストすべきことを予想するようなテストエンジンなどはもう生まれているわよね。でも、私はこれに対しては少し懐疑的だわ。
なぜならCROで大事なのは顧客に「共感」することだと考えているからよ。これはロボットにできるかしら?
ロボットはデータをアウトプットすることには優れているかもしれないわね。でもCROではそのデータから意味を導き出して、顧客のインサイトを理解することが必要。その点においては人間の方が優れているから、AIにCROストラテジストの仕事をさせるのは難しいと思うわ。
それらの技術をどのように使うかをどう使うかを考えるべきだけど、少なくとも現状のAIには限界があると思う。でも、特に日本はエンジニアが優秀なエンジニアがいるから、優れたものが生まれると思うわ。
SEO Japan:Optimizely、VWO、Google Optimizeなど様々なCROツールがあると思いますが、アヤットさんから見て、最も有用なツールは何でしょうか?
アヤット氏:それぞれにプロコンがあって、費用も違うから一概に言うのは難しいわね。マーケティングのツールは市場に6000もあると言われていて、それぞれが必要なシチュエーションにおいて役割があると思うわ。
米国では名だたる企業が実践しているという事もあり、CROの重要性は日本以上に認識されているなと感じました。
アヤット氏は物腰が柔らかく、突然のインタビューにも関わらず快く応じてくださりました。また、Invespのブログ記事の紹介に関してもご快諾いただけたので、今後SEOJapanでも記事をご紹介して参りたいと思います。
— SEO Japan
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