2014年はAdWordsに数多くの変更が加えられた。当然だが、派手な機能には多くの注目が集まった。
しかし、ほとんど注目されなかった変更も多数行われている。その多くは、Google Display Network(Google ディスプレイネットワーク)のターゲティングに対するアップデートであり、規模が小さく、また、宣伝される機会も少なかった。
事実、今年、GDNに加えられた変更の中には「状況を一変させる」クラスの変更はない。しかし、すべての変更をじっくり検討していくと、大きな変化に気づく。2014年に入ってから、GDNは進化を続け、従来のディスプレイサービスが提供する機能(あるいは、わずかに異なる機能)のほとんどを提供する本格的なディスプレイ広告プラットフォームへと成長したのだ。
GDNは多数の機能を用意しており、リマーケティング以外にも顧客候補のユーザーに接触する強力な方法が生まれている。その一部はピンポイントでターゲットを絞り、検索レベルの精度で結果を出すことが出来る。その他の機能はトップファンネルに焦点を絞っており、認知を高める効果がある。
GDNで効果的にターゲティングを行うには、検索キャンペーンの方法と考え方を捨て去り、代わりにディスプレイメディアのバイヤーの考え方を受け入れる必要がある。
GDNはキーワードでもなければ、標準以下のプレースメントネットワークでもない。GDNは複数のタイプのターゲティング、動的な広告の作成機能、そして、リアルタイムのバイイングを行う能力を持ち、適切に使えば、アドエクスチェンジ、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)として活躍する。
適切なターゲット、適切な広告、そして、最新のレポート & 最適化ツールを使えば、どんな広告主でも「検索タイプ」のパフォーマンスを実現することが可能だ。
ペルソナ(ユーザー属性)は従来型のディスプレイキャンペーンにおいて重要度が高い。ペルソナは、ユーザー層、そして、ターゲットの顧客を特定する行動の特徴によって構成される。Googleは以前からGDNにおいて年齢と性別のターゲティング機能を提供しているが、2014年に「子供の有無」(新たなユーザー層の重要な目安)が新たに加わった。
また、第三四半期にはユーザー属性のレポート機能がアップデートされ、より魅力的で、より見やすくなっただけでなく、年齢、性別、そして、子供の有無に関する総合的なスタッツが表示されるようになった。その結果、より効率良くターゲティングを行い、個人的なレベルでパフォーマンスを確認することが可能になった。
上のデータは、ユーザー属性ベースの結果を表しており、子供を持つ中年のユーザーはクリックしやすく、CPA(コストパーアクション)を下げることが判明している。最適化の観点で、誰が重要なペルソナなのかは分かるはずであり、その他のターゲット等を試すことを薦める。その際は、期待したパフォーマンスに満たないユーザー層のグループは大胆に見限り、満たすグループに力を入れるべきだ。
キーワード、トピック、そして、プレースメントターゲットを介したコンテクストベースのターゲティングは、今でも提供されているが、Googleは2014年に新たなタイプのオーディエンスターゲティングをリリースし、コンテキストベースのターゲティングから距離を置きつつある。
閲覧しているコンテンツのタイプに関わらず、話題のコンテンツを追い、売買を行う準備ができたオーディエンスが見てくれることを願うよりも、適切なユーザーにターゲットを絞る方が顧客に接触するアプローチとして遥かに有効だ。
今年の早い時期には「Search with Display Select」キャンペーンが展開され、そして、暮れが近づく中、今度はDisplay Select限定のターゲティングが導入された。このターゲティングは、キーワードによるコンテクスト主体のターゲティングに行動のシグナルを加え、パフォーマンスの結果が遥かに高い少数精鋭のオーディエンスをもたらす。
Googleは「その他」の曖昧なインタレストカテゴリのターゲティング(最初にGDNに導入された行動主体のターゲティング)を引退させようとしている。その代わりに、「カスタムアフィニティ」カテゴリと呼ばれる新しいターゲティングのタイプを加えた。
新たなオーディエンスに対して、キーワードを手動で自由に入力してモデルを作るか、あるいは、顧客が関心を持つ別のウェブサイトを使ってモデルを作ることが出来る。(ヒント: 競合者のサイトを盛り込むと良い)
すると、広告主の提案、そして、広告主が追い求めるGDNのオーディエンスをより細かく、そして、より柔軟に一致させることが可能になる。最低でも自分が求めるオーディエンスに「近い」カテゴリをGoogleが既に特定していることを願うのではなく、自分でターゲットの特徴を細かく決めることが出来るため、検索キャンペーンのような結果が得られる可能性が高い。
今年の前半に投入されたアフィニティオーディエンスは、最も範囲が広いターゲティングであり、広範なユーザーの行動をベースにしたトップレベルのカテゴリに該当する。
(他のカテゴリを重ねずに)アフィニティオーディエンスを個別で利用する場合は、通常、ある種の調査キャンペーンやアウェアネスキャンペーンを強化するために行われる。例えば、ハイテクが好きな人達にガジェットのことを知ってもらいたいなら、このターゲティングのタイプを利用すると良いだろう。しかし、直接的な反応に力を入れるなら、このターゲティングは適役とは言い難い。
ブロードキャスト(テレビとラジオ)広告に資金を投じている大企業の場合、アフィリエイトオーディエンスを使えば、同様の接触を可能にするだけでなく、遥かに優れた追跡およびパフォーマンスのスタッツを利用することが出来る。
また、同じく今年の早い時期に、「購買意向の強いユーザー層」も導入されていた。これは、検索広告のスポンサーが通常求めるファネル下部の意図を持つオーディエンスに当たる。 成功する確率がより高いGDNのターゲティングを利用したいなら、購買意向の強いユーザー層、そして、既存の類似ユーザーのオーディエンスは、検索キャンペーンと同様の働きをするので検討してもらいたい。
ディスプレイ広告の成功は、美しく、高度な広告作品とメッセージに大きく依存する。検索テキスト広告では、通常、オファーを明確に伝え、コールトゥアクションにキーワードを反映させ、詰め込もうと試みる。しかし、残念な結果に終わることが多い。
ディスプレイにおいては、成功の鍵を握るのは広告そのものである。利用する広告は、広告において達成したい目標に左右される。今年、Googleは、広告の目標を達成するための、新たなタイプの広告ユニットを多数GDNに投入し、さらなる進歩を遂げていた。
今年に入って、フラッシュ、および、HTML5のディスプレイ広告を簡単に作ることが可能なディスプレイ広告ビルダーが改善された。高度な広告とは言い難いが、以前の広告ビルダーツールよりも遥かに魅力があり、柔軟性の面でも優れている。多少時間と労力を注ぎ、そして、オリジナルのコンテンツを加えれば、他のカスタムデザインのユニットに匹敵する底力を発揮してくれる。
2014年、新たに「広告ギャラリー」も追加され、Googleが導入した複数の新しい広告のタイプに容易にアクセスし、作成することが可能になった — G+のプロモーション(ソーシャル)広告、エンゲージメント広告、フィードベースの動的な広告ユニット、動画広告。
さらに、12月10日には、広告ギャラリーにライトボックス広告を加えたとGoogleは告知していた。これは反応型の動的な形式の広告であり、YouTube、Google マップを含むソースからコンテンツを収集する。Google ショッピングのフィードとの統合も間もなく行われるようだ。
2014年はコンバージョンの要素にも多くのアップデートが行われていた。ディスプレイ広告に限定すると、ビュースルーコンバージョンの期間を管理することが出来るようになった点は最も重要度が高い。以前、ビュースルーコンバージョンは常に30日の期間で計測されていた。
直接的なクリックベースのアトリビューションを信条とする検索マーケッターの間では、ビュースルーコンバージョンの人気は低い。しかし、ディスプレイのマーケッターは、以前からビュースルーコンバージョンの良さを理解していた。ディスプレイキャンペーンで適切に用いれば、ビュースルーコンバージョンは役に立つ。
The Guardianに先日掲載された記事の中で、Unique Digital社のポール・マーズデン博士は次のように指摘している:
「バナー広告をクリックするよりも、雷が落ちる可能性の方が高い。バナー広告をクリックする確率は1/3333であり、雷に打たれる確率は1/3000である。」
マーズデン博士は、コンテンツの飽和に関しては、確かに的を射た指摘を行っている。ただし、これはディスプレイ広告にも当てはまる。アプリ内、あるいは、YouTube上でオーディエンスをターゲットにしているなら、「動画を視聴する時間」や「アプリを利用する時間」を中断したくないため、クリックしてもらえる確率はさらに低い。
ただし、広告に気づいてもらえなかった、もしくは、オファーに興味を持ってもらえていないわけではない。関心を持つユーザーは、別のタブを開き、直接、または、検索を介して興味を持ったオファーを確認する – その後、コンバートしたら、ビュースルーコンバージョンにカウントされる。
また、新しいGDNの広告ユニットの多くは、視覚的な情報を多く運び、スクリーン全体に拡大される — そのため、クリックせずに発生したコンバージョンに影響を与えていないとは言い難い。提供する広告のタイプ、そして、製品に対する検討期間を鑑みた際に、理にかなった期間を設定することが肝要である。
例えば、28日前にユーザーが見て、クリックしなかった靴下のバナーにセールスの原因を求めるのは無理がある。しかし、靴下に関する動的な広告ユニットをスクロールしたユーザーが翌日その靴下を購入したなら、当該のビュースルーに功績を認めるのは、大いに筋が通る。
検索マーケッターは、CPCに関して、入札をGoogleのアルゴリズムに任せるアプローチを怖がる。一方、ディスプレイマーケッターは、リアルタイムビディング(RTB)はディスプレイのパフォーマンスに大きな影響を与える点を心得ている。
認知を求める広告主に対して、今年、Googleはアクティブビュー CPMビディングをリリースした。このツールを用いると、広告主は見てもらえる可能性が最も高い広告スロットとインプレッションを追求し、CPMの投資が広告ビューを実際にもたらすことを裏付けられる。このビディングは新たなアクティブビューレポートのカラムによって支えられている。
パフォーマンスキャンペーンでは、CPA ビディングに頼るべきだ。コンバージョンオプティマイザーは今年新たに登場した機能ではないが、GDNキャンペーンの成功に大きく貢献するアップデートを行っている。
コンバージョンオプティマイザーを有効にするために、キャンペーンに15回のコンバージョンが必要とされていた時代があった。2014年の半ばを過ぎると、この制限は緩くなった。アカウント全体で十分なコンバージョンを獲得している場合、新しいキャンペーンを作成し、すぐにCPA ビディングを有効にすることが出来る。
そのカラクリを教えよう。Googleは、各ユーザー、そして、コンバートする確率を行動面において深く理解しており、同社にとって、適切なインプレッションを適切な人物に提示し、ターゲットのCPAをもたらすのは朝飯前なのだ。
2014年のGoogleの収益のうちGDNが占める割合はたった3割程度であった — そして、専門家の多くがこの3割の大半をリマーケティングキャンペーンが稼ぎ出していると指摘している。GDNはGoogleにとって収益を伸ばす大きなチャンスをもたらすため、同社が新しい、優れた機能に力を入れるのは当然である。
検索マーケッターは、検索の垣根を越え、ディスプレイマーケッターのように考え、ユーザーに接触し、成果を分析する上で異なる方法を受け入れることが出来るのだろうか?
その答えは時が経てば分かるはずだ。勇気を持って新しいGDNの機能を試すつもりなら、あと2つだけディスプレイマーケッターのアドバイスに目を通してもらいたい。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「2014, The Year Google Display Network Grew Up: Will SEMs Embrace It?」を翻訳した内容です。
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