【シリーズ連載その1】Android 6 “Marshmallow”とSEO。Googleのプライベート・インデックスとスクリーン・クローリングとは。

公開日:2015/12/01

最終更新日:2024/02/16

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去る10月にAndroid 6がリリースされ、11月にNow On Tapの提供が日本でも開始されました。様々な機能の追加や進化が行われましたが、それらがSEOにどのような影響を与えるのか、非常に気になるところです。今回の記事は、PubconやSMXでも登壇されている、シンディー・クラム氏の記事になります。3回シリーズの初回となりますが、続編記事も順次アップしていく予定です。– SEO Japan

*記事内のリンク先は全て英語となっています。

Googleの最新OSのAndroid6、別名”Marshmallow”(マシュマロ)。その機能と可能性が今後のモバイル検索に与える影響を、これから3回に渡って考察していく。この記事では、寄稿者のシンディー・クラム氏が、Googleのプライベート・インデックスとスクリーン・クローリングについての解説をしてくれている。

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Android 6、通称、”Marshmallow”のアップデートが一部のNexusのデバイスに解禁された。大勢のSEOの関係者が、この大々的に宣伝されたアップデートが、モバイルユーザーの行動と検索にどのような影響を与えるのかを考えている。Googleの高度な予想検索ツール、Now on TapがブラウザとOSに深く統合されているからだ。

私もアップデートしてみたが、今のところは、期待に沿っているとは言いがたい状況だ。しかし、モバイル検索が向かう先と未来に大きな影響を与える可能性は否定出来ない。

より統合された予測検索が与える影響を予測するために、まずは、Marshmallowのローンチが始まる前に実施された、モバイルChrome、モバイル検索、Google Nowのアップデートを確認し、ローンチ後の現状と比較してみよう。

過去6ヶ月の間に、小規模な変更と大規模な変更が多数行われていた。今回の3部作の記事では、そのうちの一部を振り返り、モバイルSEO戦略に与える影響を考察していく。ディープリンクとApp Indexingはこれらのアップデートにおける非常に重要な項目ではあるが、この一連の記事では、Webを基本とした変化に焦点をあてたいと思う。

このシリーズで取り上げるトピックは3つあり、それぞれ、”Googleのプライベート・インデックス”、”スポンサー付きのGoogle Nowカード”(注)、そして、”「Click-to-Search」のモバイル検索行動と検索結果”となっている。

注:原文では”sponsored Google Now cards”と記載されているため、そのまま和訳しています。しかし、GoogleはGoogle Nowカードには”スポンサー付き”のコンテンツを全く含めていないとアナウンスしたようです。そのため、第2弾の記事では、”商業データを用いたGoogle Nowカード(Google Now Cards Featuring Merchant Data)”という表記に改めています。

Googleのプライベート・インデックス

まずは、Googleのプライベート・インデックスの検索結果を徹底的に検証していこう。Googleは、パーソナライズを行うため、クエリや閲覧とクリックの履歴などのユーザーデータを集めているが、現在、Googleは検索可能なプライベート・インデックスも保有している。

“Phone”(日本語では”携帯端末”)は、新しい検索オプション(インデックス)であり、Marshmallowの有無にかかわらず、すべてのユーザーが利用できる。このオプションは、”あなたの端末”を検索する機能であるが、Google Nowのインデックスに隠されており、上部のナビゲーションを右方向にスクロールしていくと見つかる。

Search My Phone - Google Private Index

これは、Googleによる初のプライベート・インデックスの利用である。プライベートなモバイルの行動情報が保存され、OSとのやり取りですぐに結果を返す、Apple iOS9のプライベート・インデックスによく似ているものだ。

しかし、iOS 9のプライベート・インデックスとは異なり、Googleは全てのデバイスから、ユーザー行動のデータを全力で集めている。また、Googleのプライベート・インデックスの情報は、少なくとも部分的には、クラウド内に提供される。(iOS 9では、全て端末にローカルで提供される。)

注記: Google Now、または、Now on Tapの検索機能、もしくは、スマートフォンのホームスクリーンで検索を開始することが前提だ。検索を実行し、ブラウザが起動したら、ナビゲーションを右端までスクロールする。”phone”のオプションは、スクロールしなければ見えない位置に配置されているためだ。ChromeとGoogle Nowでは、検索結果のナビゲーションの設定が若干異なる。Chromeのブラウザで検索した場合、異なるナビゲーションが表示される。

プライベート・インデックスには何が含まれているのか?

このインデックスのアイテムには、連絡先、Eメール、アプリ、過去の検索、音楽などが該当する。Googleのクラウド内に提供されているアイテムであれば、AndroidとiOSの両方で利用できる。Googleを立ち上げ、「フライト」や「犬の写真」などのクエリを入力し、プライベート・インデックスを検索することが可能だ。

Android OSのGoogle Nowでは、基本的に常にユーザーをログインの状態にしているが、Chromeは異なるアプローチを採用している。Android OS/Google NowとGoogle Chromeで同じアカウントにログインしている場合、プライベート・インデックスの結果はほぼ同様であるようだ。もし、Chromeにログインしていなかったり、別のGoogleアカウントでログインしている場合は、下記のように、プライベート・インデックスの結果は非常に異なるものとなっている。

My Pictures of Dogs

すべてのAndroidのデバイスは、デフォルトで、スマートフォン上の写真をGoogle Photosのアカウントにバックアップする設定になっている。ユーザーのプライベートな写真は、一旦クラウド内に保存されると、そのユーザーのプライベート・インデックスの一部となる。

同じように、Google Music(Androidのスマートフォンにデフォルトで搭載されているミュージックプレイヤー)は、ユーザーの音楽をクラウド内に提供し、保管され、ユーザーのスマートフォン、もしくは、別のデバイスに好きな曲をダウンロードすることができるようになっている。

注記: 現段階では、Googleによるコンテキストの理解や画像認識は完璧ではない。上の例のように、Googleが、どの写真が犬の写真であるかは理解しているが、私の飼い犬のジンガーを選ぶことは、画像ファイルの名前や説明に犬の名前が掲載されているGoogle+の写真が選ばれた時のみである。また、Googleは、オーディオファイルの場合も、曲名やアーティスト名が少しだけ異なっている重複する曲を削除する機能は提供していない。是非、このような機能を加えてもらいたいものだ。

プライベート・インデックスには様々な種類のコンテンツが含まれている。そして、Googleは、可能であればいつでも、プライベートなコンテンツをクラウドに提供し、Googleアカウントからそのデータへアクセスできる状況を作り上げようとしている。

複数のGoogleアカウントにコンテンツがある場合、大きな問題が生じる可能性がある。なぜなら、特定のアイテムを検索するために、あるアカウントから、別のアカウントにサインインし直さなければならないからだ。ローカルに保存してあるコンテンツがあり、ログインしていない状態でこのコンテンツを検索する場合、Googleはそのコンテンツを見つけ出すことができない。Googleの写真アプリの写真アシスタント機能でさえも、ローカルに保存されている写真を検索し、見つけるためには、オンラインの状態になっている必要がある。

スクリーン・クローリングと、SEOにとってNow on Tapが重要である理由。

プライベート・インデックスのコンテンツは、常に自然検索結果よりも上位にランクインするため、とても重要だ。プライベート・インデックスのコンテンツのランキングは、モバイル検索で1位を獲得するための新たな最強のSEO戦略だと言えるかもしれない。それでは、どうすればユーザーのプライベート・インデックスに入り込むことができるのだろうか?

プライベート・インデックスの情報の一部はAndroid OS、そして、連絡先のリスト、Eメール、ハングアウトなどのAndroidアプリからストックされる。その他の情報は、Googleにログインした状態で使用した別のデバイスでの行動、また、Googleのクラウドに提供されているあらゆるアイテムから抽出される。

Marshmallowでは、ディープリンクが張られたアプリからの情報も追加されているかもしれない。また、Googleの新しいスクリーン・クローラーによる情報も、プライベート・インデックスに追加されることもあるようだ。このスクリーン・クローラーは、スマートフォンでアクセスしたウェブやアプリの画面から情報(今のところはテキスト情報のみ)を読み取り、インデックスすることが可能であり、光学式文字認識(OCR)テクノロジーに似ている技術だ。

下のスクリーンショットにあるように、スクリーン・クローリングは、Androidのスマートフォンで情報をやり取りする際に、いつでも行われるものと思われる。

My Private Index - Google

Marshmallowのドキュメントには、この技術はNow On Tapがコンテキストを理解し、オンデマンドで関連する情報を提供するための手段だと記載されている。また、Googleはこの技術を使用して、APIが設定されていなかったり、アクセスしにくいアプリのコンテンツをクロールし、インデックスすることを計画しているようだ。

コンテキストの認知は、Googleが強調しているNow on Tapの主要なメリットであり、スクリーン・クローリングがこれを可能とさせている。しかし、Android以外のデバイスでは、同じレベルで認知することはできないようだ。GoogleはAndroid OSを完全にコントロールしているため、遥かに多くの情報にアクセスし、OSを使って、スマートフォンでのすべての行動をOCR処理することが可能なのだ。

スクリーン・クローリングは、他のOSのデバイス(およびアプリ)では実施することができない領域の作業であるため、Now on Tapとプライベート・インデックスにおける、iOSでアクセスした際の大きな弱点だと言える。Google Nowは、ローカルに保存されたiOSの連絡先、写真、iOSアプリのディープリンクにかかわるデバイス上の行動、および、情報のやり取りをインデックスすることはできないのだ。

プライベート・インデックスの仕組み。

クエリが投稿される前に、Google Nowの検索サジェストの欄にプライベート・インデックスの結果が表示される。この点に関しては、iOS 9のApple検索の結果によく似ている。現在、連絡先、曲、過去に検索したキーワード、スマートフォンにインストールされているアプリ、そして、過去に訪問したことのあるウェブサイトが対象となっている。

今後、Eメールや、その他のアプリ内コンテンツも表示されるようになる可能性はある。これらのコンテンツは、現時点では、検索が実際にブラウザのウィンドウで実行された場合にのみ表示され、即時にプレビュー表示されるわけではない。ローカルに保存されているわけではなく、プライベート・インデックスのクラウド版の中にコンテンツが存在するためだ。しかし、スマートフォンにはインストールされておらず、また、ユーザーがアクセスしたことのない人気の高いアプリやウェブサイトが表示される可能性もある。

Googleはこのユーザー体験を改善している段階ではあるものの、下記の例から、その進歩を垣間見ることができる。

左側の画像は、ホームスクリーンから、Google Now/Now on Tapで”trip”を検索した画像である。過去に検索したキーワード、ウェブの結果、そして、アプリの結果が含まれている。一方、右側の画像は、同じ検索を完全に実行し、ブラウザウィンドウが開いた際の画像だ。ここでは、過去に訪問したウェブページにより多くのスペースが割かれ、アプリ、連絡先、そして、曲が表示されている。

Google Now Instant Results

プライベート・インデックスには、具体的なユーザー体験における困難は存在するのか?

プライベートの検索結果は、Googleの設定を変えると、有効/無効や一時的に停止することもできる。過去の閲覧履歴の削除から、別のアカウントへのエクスポートなど、色々と自由が利く。

ただし、”プライベート”な検索結果の設定が”off”になっていても、ウェブやアプリの履歴に応じて、パーソナライズされた結果が表示されることもある。つまり、プライベート・インデックスの”コンテンツ”は含まれない、ということだ。

Googleは、モバイルの検索ユーザーが早さを重要視していると考えており、モバイルのユーザー体験のスピードアップにつながることなら何でも実施している。この点を踏まえ、プライベート・インデックスから”インスタント”な検索結果を提供する上で、Google Nowにおけるローカルでのキャッシュの価値を考慮しなければならない。

プライベート・インデックスのコンテンツの大部分は、スマートフォンでローカルに保存されるため、データやWiFi接続がなくてもインスタントの結果をフェッチすることが可能であり、また、ウェブサーバーとの間を往復する必要もないため、速度が落ちることもない。クラウドベースやウェブの影響を受ける検索結果は、検索が実施され、ブラウザウィンドウが開いたときのみ表示される(インスタントの結果に表示されるコンテンツと検索が実行された時のみ表示されるコンテンツを比較すれば、ローカルに保存されているアイテムの内容を知ることができる。)

先ほども申し上げたとおり、プライベート・インデックスから有意義な結果を得るためには、ChromeでGoogleのアカウントにログインする必要がある。スマートフォンのOSでGoogleのアカウントにログインするだけでは不十分だ。下の左側の画像にあるように、Now on Tapのドキュメントでは、ChromeやNow On Tapからプライベート・インデックスの検索を実行することをユーザーに推奨している。検索の推奨として、”my bills”(私の請求書)、”my event”(私のイベント)、”my pictures”(私の写真)などを挙げている。

中央の画像は、”my past flights”(私の過去のフライト)の検索結果であり、現在のEメールの情報だけでなく、Googleが旅行に関した過去のEメールの情報までインデックスしていることを示すものだ。(ちなみに、フライト情報は、確認用のEメール内のマークアップを基にインデックスされており、以前から実施されている。また、ユーザーのフライトの履歴も保管していることは興味深い。別のチャンネルでの広告ターゲティングにおける利用が考えられる。)

右の画像は、”my events”で検索した画像であり、Googleカレンダーから情報を引き出している。複数のGoogleカレンダーを持っている場合、現在ログインしているカレンダーのイベントのみが表示される。ただし、イベント情報に関してはインデックスに必要とされるマークアップは少ない。なぜなら、関連する情報が既にGoogleカレンダーに埋め込まれているからだ。

Google Now Private Index Results

こうした検索は、Gmailを利用しているか、Gmailのアカウントに転送される場合に有効だが、主に使用しているEメールがGmail以外のEメールのプロバイダーを経由している場合は、有効ではない。同様に、EメールがGoogle Apps for Businessを経由するケースにも対応していない。(会社が料金を支払って利用するEメール、カレンダー、その他のツールなどが含まれるため、大きなミスだと思う)。

Googleはプライベート・インデックスの機能を大きくアピールしているわけではないが、存在することは確かであり、予測検索やモバイルSEOの未来に大きく関わる機能だろう。

プライベート・インデックスの結果は、常に検索結果のトップに表示される。そのため、SEOのエキスパートとして、ユーザーのプライベート・インデックスに入り込むための方法を今から探し始めるべきである。大半のSEOの関係者にとっては新しい領域になるだろうが、モバイルのランキングでトップを獲得する戦略として、十分に価値はあると言える。

これは、より深く、よりインタラクティブなオンラインでのエンゲージメントを伴うことで実現することができるものだ。ユーザーのアドレス帳に問い合わせ先をダウンロードしてもらう、キーワードとマークアップの最適化を施したEメールをユーザーに送る、ユーザーにキーワードの最適化を行ったイベントのリマインドをカレンダーに追加してもらう、そして、アプリを導入し、そのアプリにディープリンクを設定するなどの作業が必要となる。

Marshmallow、そして、Now on Tapが公開された。それらが進化するに連れ、プライベート・インデックスのコンテンツに大きく依存するようになるだろう。なぜなら、プライベート・インデックスは、他の何よりもコンテキストに沿った結果を提供し、ユーザーが探しているものを出来るだけ早く見つけられるように手を貸すことになるからである。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Android 6 “Marshmallow” & SEO Series: Google’s Private Index & Screen Crawling」を翻訳した内容です。

Googleが目指しているイメージの一つとして、”パーソナル・アシスタント”という言葉をよく聞きます。自分の秘書のように我々の生活をサポートし、先立って情報を与えてくれる”おもてなし”精神を個人的には感じています。より正確な予測のためには、より多くのデータの必要性があると思われますが、Googleはデータの収集と利用を積極的に行っているようです。かたや、iOSはユーザーのプライバシーを考慮した姿勢が伺えます。どちらが良いかは好みの問題となるでしょうか?個人的には非常に興味深い分野でありますが、続編記事もアップさせいただきますので、興味のある方はぜひご覧になっていただければと思います。– SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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