三部作の第二部
Engage!(エンゲージ!)の中で、私は「音楽」を、ソーシャル化したプログラムを完璧に実行するために欠かせない事業のアプローチに例えた。現在、多くの企業が即興で音楽を奏でるジャズミュージシャンのようなスタイルでニューメディアにアプローチしている。彼らは、一人で、そして、他のミュージシャンと共にジャムセッションを行うことが可能な飛びぬけたスキルを持っているが、時折、豪快で、素晴らしいソロを行い、オーディエンスをブランドの意図および使命に導くこともあれば、迷子にしてしまうこともある。このようなタイプの演奏ではなく、私はそれぞれの専門の役割をこなし、オーディエンスと交流し、彼らを刺激する、組織的で強力な演奏に貢献することが出来る優秀な演奏家を集めることを勧める。
ソーシャルな能力および事業に精通した指揮者は、全体的なソーシャルメディアプログラムを作成し、管理するためには絶対に欠かせない存在である。このプログラムは、トップダウン、中心から外側、ボトムアップ、さらに、外側から内側へと広がっていく。指揮者、そして、オーケストラのメンバーを探す冒険は、ソーシャルメディアの所有者に関する議論を再燃させる。しかし、音楽理論、楽器の編成、リーダーシップ、芸術性、そして、表現力を見事にマスターした人物のみが効果的にリーダーで構成される集団を導き、刺激を与えることが出来るのだ。要するに、ソーシャルプログラムをリードする人物およびチームは、その資格を持っていることが前提である。
繰り返すが、ハイブリッドなアプローチが不可欠だ。少なくとも、消費者の接点、影響のチャンネル、マーケットの活力、消費者が直面する難問および機会、そして、交流およびソーシャルオブジェクトの作成が利益に影響を与える測定可能なリアクションを促す仕組みを理解していなければならない。
広告、そして、あらゆる形式のマーケティング、コミュニケーション、そして、サービスは、ほかならぬ事業および文化の完全な変革を産む、急激な変化の免疫を持っていない。私は創造力に溢れ、新進気鋭な考えを持つ広告代理業者と仕事をしたことがあるが、ソーシャルメディアが想像力を刺激し、実験を促している点を身をもって体験した。しかし、ワシントン・ポストに掲載されていた非常に批判的な記事のなかで、広告業界は自己満足集団と位置づけられ、イノベーションを実現することが出来ないと描写されていた。記事の冒頭では、アドバイスではなく、手厳しい総括が展開されているが、いずれにせよ、台頭するコンテンツの民主化時代においては、あらゆる業界がこの問題を抱えている気がする。「広告は、終わることのないデジタルな「TSUNAMI」の次の犠牲者なのだろうか?現在、広告業界は、無症状の癌が発症しており、本人は気づいていない患者のような状態である。」
この考え方は極端だが、それぐらい緊急の事態だと言えるだろう。しかし、目下のソーシャルは、全体的なマーケットの成長に影響を与えるチャンネルの一つでしかない。印刷、放送、掲示板、そして、デジタルは、今でも重要性が高く、様々な効果がある。360度の全体的なマーケティングの時代において、人々はマーケットに大きな影響力を持っており、そのため、ソーシャルは、点と点を結ぶ「ラストマイル」と姿を変えている。
「枠組みにとらわれずに考える」や「人と異なる考え方をする」のようなお馴染みの決まり文句を体現することが、難関の一つであり、また、チャンスでもある。クリス・ホイヤー氏が理解しているように、私たちは「枠組みなど存在しない」と考える必要がある。ソーシャルメディアは、広告、マーケティング、そして、コミュニケーションのベストプラクティスを巧みに組み立てる新しい考え方を促す。しかし、効果的なマーケィングおよび交流は、戦略、メディア、方法、プロセス、そして、業界全体の改革がカギを握っている。キャンペーンの策定および展開、そして、継続的な関連および反響を介して結びつく関係の統合について、再考することからすべてが始まるのだ。
ソーシャルネットワークは、創造性および貢献を導く有料および無料のプラットフォームを提供する新しいメディアのチャンネルを表す。ソーシャルネットワークとその他のメディアの違いは、消費者がそれぞれのメディアで権限を与えられている点だ。ソーシャルネットワークは、とても個人的な思惑であり、人々は構築する関係、共有するコンテンツ、消費者、そして、交流するために用いるデバイスを通して、経験を定義している。ソーシャルネットワークにとっては、意図が何よりも重要である。プログラムは、ただ単にイノベーション、仕掛け、または芸術性にたけているからと言って見返りを得るのではない。消費者は、共感、願望、そして、感情を基にプログラムを受け入れるのだ。このようなプログラムは、多くのユーザーに気に入ってもらうことを考慮して策定されるが、閲覧者を夢中にさせる経験に引っ張り込むための、個人に特化したコミュニケーションとして効果的なイニシアチブが隠されている。交流と反応を呼ぶのは感情的および野心的なつながりであり、共有と忠誠を促すのは関連性と少しの権限である。
ニューメディアでは、広告およびクリエイティブなビジネスは、キャンペーンの構図を介してソーシャルメディアにアプローチしているとして非難されている。このような取り組みは確かにブランド認知、アクティビティ、交流を活性化しているが、本質的にコミュニティと関係の構築に制約を課している。キャンペーンが始まり、アクティビティを促し、止まり、姿を消しては、時間、予算、そしてイベントの調整が済むと全く異なる取り組みとして再び現れる。
キャンペーンは、会話と行動のきっかけを作る。しかし、ソーシャルメディアにおいては、クリエイティブなキャンペーンを行い、関連する目的、メッセージ、そして、ストーリーの展開が継続的な参加を通して強化される、一連の流れを導入する必要がある。ブランドが活性化する会話とつながりを通して、キャンペーンを1列に並べなければならない。
消費者の注目は徐々に薄れつつあり、その結果、私達は自分のことを覚えてもらうために「現在」を巡って競い合う。しかし、同様に、「未来」のために戦う必要もあり、広告は、現時点に対して適切に働きかける、一連のクリエイティブなイニシアチブを通して、長期的なスタンスでマーケティングに協力しなければならない。
広告は、マーケティングに新たに猶予を与えており、個人およびオーディエンスとつながりを持つ権利が価値を通して継続的に延長されている。有料のメディアが相互のメリットを提供しているなら、クリエティブなマイクロプログラムを導入するペースは倍に加速しているはずだ。なぜなら、このようなプログラムは、大企業の間の橋として作用しているからだ。
マインドシェアを巡って積極的に競わなければ、心、精神、そして、消費者および消費者の行動に影響を与える人々の決定において、存在感を無くしてしまうだろう。
創造力は、意図する機能を実行したり、求めるリアクションを誘い出すために役立つが、ソーシャルネットワーク、そして、潜在的なオーディエンス、および最終的な参加者をむすびつける、有力な案内役の人物が、接触の範囲を拡大し、メディアのプラットフォーム全域のあらゆるキャンペーンに影響を与える信号反応器を作り出すのだ。そして、リサーチおよび分析を実行することで、私たちは、このようなソーシャルグラフで、理想的なニッチワークを構築する特定の人物を識別することが出来るようになる。そして、このニッチワークで、ロングテールが視覚化され、明らかにされる。ニッチワーク、または、ツイッターが「インタレストグラフ」と呼ぶ用語は、マーケティングおよびビジネス全体における、次のトレンドと言えるだろう。ソーシャルネットワークでは、意義深いコンテンツを凌ぐのは、関連性のみだ。そのため、関連のあるネットワークの構築は、ソーシャルネットワーク全体における、期待であり、見返りである。人々は知識の共有および有益な関係に投資する。その結果、共通の関心ごとおよびテーマを基に、知っている可能性がある、もしくは知り合いになることを望む個人とのつながりを確立するのだ。
ツイッター初の開発者向けカンファレンスで、広告への初めての進出劇の詳細が明らかにされた。カンファレンスで、コミュニティに支持してもらえるような広告のプラットフォームを作成するツイッターの取り組みを強調するため、何度も繰り返し使われていた言葉が2つあった。それが、反響、そして、関連性だ。ツイッターのCOO、ディック・コストロ氏が話していたように、「ユーザーの心に響かないプロモーティド・ツイートは消滅する」。同じことが、あらゆるソーシャルオブジェクト、そして、ソーシャルネットワークに導入される補助的なキャンペーンにも当てはまる。
ツイッター、フェイスブック、フォースクエア、そして、同様のサービスは、ユーザーエクスペリエンスが、ソーシャルメディアの未来の源だと真剣に考えている。そのため、ツイッターは、広告キャンペーンの効果を計測する新たなメトリクスを導入している。これは、ハイブリッドセオリーのアプローチを補強するだろう。まず、広告はCPMベース(1000インプレッションごとのコスト、または、ツイートを見た1000人の正規のユーザー)で計測される。しかし、ツイッターがパフォーマンス、精度、そして、それぞれのプログラムに対してコミュニティが反応を見せる仕組みを理解するようになると、CPMモデルから、ROI、つまり投資収益率に移行する。
反響をメトリクス、そして、インスピレーションとして用いることで、複数の交流の軸を把握し、キャンペーンに反響を組み込むことが出来るようになる。そうすることで、長期に渡る存在、知名度、そして、交流を確実に実現することが可能になる。広告主は、クリエティブな広告を作成するだけでなく、キャンペーンおよびソーシャルオブジェクトが魅力的で、利用可能且つ共有可能であり、価値が高いことを証明する必要がある。これに失敗すると、コストロ氏も述べているように、ユーザーの心に響かないキャンペーンは“消滅する”。そのため、ツイッターは、有料のソーシャルオブジェクトの寿命を特定する、反響スコアに関するアイデアを導入したのだ。プロモーティド・ツイートを定義する交流の複数の軸には、例えば以下のアイテムが含まれる:
– リツイートの数
– @リプライの数
– #タグのクリック数
– アバターのクリック数
– リンクのクリック数
– RT後の閲覧数
ツイッターによる「反響」と言う言葉の利用は、ポジティブな反応、そして、最終的に口コミおよび測定可能なアクティビティを促すためには、関連性をキャンペーンに組み込まなければならないことを意味している。そして、ここに、ハイブリッドセオリーの機会が隠されているのだ。ソーシャルネットワーク内でマーケティングを行う際に鍵となるのは、可能性、人々、そして、現在およびその後ストリームでソーシャルオブジェクトが存在する期間を長引かせるつながりを発見することだ。関連性を引き出すためには、まずは情報を手に入れる必要がある。
反響は、ソーシャルオブジェクトの補強、もしくは延長である。この例では、有料か無料かに関わらず、ツイートは、ソーシャルオブジェクトであり、導入され、露出すると、会話の口火を切る力がある。しかし、その程度および量は、ソーシャルオブジェクトの関連性、そして、共有することが出来るかどうかで決まる。同じことが、ソーシャルネットワークに導入されるあらゆるキャンペーンに当てはまる。
ツイッターの反響度のメトリクスは、あらゆる形態のソーシャルメディアに利用することが出来るだろう。ツイッターは、人々の間のコミュニケーションを変えつつあるだけでなく、ブランドと人々が交流する仕組みも変えている。反響は、広告をリアルタイムで状況に当てはめ、人間味をもたせる推進力と言える。人々をむすびつけ、そして、鼓舞する能力がないのなら、そのキャンペーンはぶざまに失敗するだろう。消費者の感情と興味に訴えかけるキャンペーンは、オンライン全体、そして、最終的には現実の世界にソーシャルグラフに鳴り響くソーシャルエフェクトをもたらす。
R.R.S. – 関連性なくして、反響を引き起こすことは出来ず、反響なくして、ソーシャルメディアで意義を確立することは出来ない。
多くの進歩的な業者や内部のチームが、コミュニケーションのプロを採用し、メディアと注目の間の長く、曲がりくねった道でキャンペーンを導いている。事業の全体的なソーシャル化において、マーケティングは消費者に接触し、獲得するためには欠かせない手段の一つである。広告とマーケティングにおいて、ラストマイルを適切に実施するためには、情報が自らの推進サイクルを通して口コミ化すると予測するのではなく、メッセージと人々を結びつける必要がある。情報はあまりにも容易に手に入れられるため、無視されてしまう可能性がある。また、個人的に見識および関連性を意思決定者に提供する最前線に人々を送りこむで、知名度が一時的なもので終わるか、存在感を上げることが出来るかが決まる。ソーシャルメディアでは、存在は感じられ、そして、高く評価される。そして、これこそが、バイラルマーケティングを再定義する第一段階である…
数年前、私はデジタルオーディエンスを確立する分野で他社をリードしていたサンフランシスコのクリエイティブな企業、Mekanism(メカニズム)と仕事をする機会があった。同社のスタッフチームは才能に溢れ、私たちが協力したプロジェクトで、彼らは夢中になれる、そして、“バイラル”なオンラインの経験を生み出す任務を負っていた。この経験は、最も急進的な広告やブランディングの限界さえも広める効果があった。しかし、このようなキャンペーンを策定し、構築するのはさほど難しいことではない。本当に難しいのは、消費者を誘い、彼らの注目をつかみ、行動を起こし、共有してもらう部分であり、これは同時にソーシャル経済の機会とも言える。
注目は乏しい。交流は通貨の形態である。認識および見返りは、友好関係を確立し、ソーシャルキャピタルを獲得するための意図的な行為である。ソーシャルネットワークでキャンペーンを活性化するためには、新たなインフルエンサーと影響力の強い消費者を特定し、彼らと交流を行う、全体的且つハイレベルなソーシャル化したアプローチが、絶対に欠かせない。
この関係は、刺激として作用し、ハイブリッドセオリーの出番を演出した。そして、時間の経過とともに、デジタルな影響は、コンセプトからラストマイルへと、クリエイティブなキャンペーンは自然と進化していった。
現在、メカニズムは、5名のチームを採用し、デジタルPRと影響を融合している。広告が、刺激を与え、交流を望む人々にキャンペーンを結びつけようと試みることで、この取り組みはさらに成長していく。アドウィークによると、オンラインの販売サイトは無料のメディアを介して、認知度を広めるため、コミュニケーション部門の設立に徐々に投資しているようだ。
その良い例を挙げるなら、オンラインのインフルエンサーに対する特注の動画を作成することで広告キャンペーンを生き返らせたオールドスパイスガイを見てもらえば、他にあれこれ紹介する必要はないだろう。このキャンペーンは、ソーシャルグラフ全域で、点と点、そして、ストーリーを結びつける人々を採用することで、シンジケーションのプロセスを逆流させている。動画は当初ケビン・ローズ氏、アリッサ・ミラノ氏、ジャスティン・ベイトマン氏、ペレス・ヒルトン氏、スターバックス等をターゲットにしていた。また、オールドスパイスは、ツイッターのプロモーティド・トレンドのプラットフォームを使った実験でもあり、無料メディア(この動画に関するツイートやエントリ)、キャンペーン自体のメディア(オールドスパイスガイ)、そして、有料のメディア(プロモーティド・ツイート)を組み合わせて、交流を行い、ソーシャルウェブを活性化させている。この実験は、運営者が集まる合流点を作りだし、関心を高め、行動を引き起こす効果もある。また、しかるべく計画を立てて実施すれば、求める成果を導くことが出来る。
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創造力、意図、結果、そして、親近感を、無料メディアと有料メディアを通じてうまく結びつけるには、才能豊かなオーケストラを構成し、優れた指揮者を擁して、ソーシャルメディアに挑む必要がある。
この記事は、Brian Solisに掲載された「The Hybrid Theory Manifesto: The Future of Marketing, Advertising, and Communications Part Two」を翻訳した内容です。
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