エンゲージメントマーケティングは、トラフィックをサイトにもたらす行為とは別物である。ビジターがサイトにやって来たら、どうすればサイトにエンゲージ(没頭)してもらえるのだろうか?
ペンギン/パンダアップデートが行われて以来、エンゲージメントのメトリクスは重要性を増しつつある。サイトを上位にランクインさせるためには、直帰 – すぐに“戻る”をクリック – は避けたい。ランキングが落ちてしまうためだ。ビジターをサイトの奥深くに導く必要がある。本当の意味でのエンゲージメントが求められているのだ。
エンゲージメントのメトリクスは直接ランキングに影響を与えないとしても、エンゲージメントに対する最適化は必ずプラスに働く。オーディエンスにより没頭してもらえると、影響力を高めることが出来るようになり、その結果、メリットを得ることが出来るようになる。
ビジターのエンゲージメント、そして、そのための最適化に関するアイデアを今回は幾つか提供したいと思う。
ビジターは多くの選択肢を持っているため、長時間没頭させることは至難の業である。あらゆるニーズを1つのサイトに収めることは出来ない。1回、または2回のクリックですべてのニーズに対応することは確実に不可能である。そのため、すべてのチャンスを最大限に活かすために、エンゲージメントの要因を最適化するべきである。
コンテンツベースのアプローチには問題がある。それは、トップダウンになる傾向が見られることである。ビジターは、配信されている情報を受動的に受けると推測されがちなのだ。しかし、エンゲージメントの中心は、双方向の会話である。エンゲージメントを促すためには、コンテンツを単純に提供するのではなく、参加を呼び掛けなければならない。
ウェブは、情報時代から関係時代に移行しつつある。ソーシャルメディアによって、情報が新たな方法で交差していることが証明されている。情報は薄切りにされ、角切りにされ、再利用され、リミックスされ、そして、再提供されており、事実上、受信者を作成者に変えている。情報を消化する行為が情報を変え、そして、新たな情報を作り出しているのだ。クルートレイン宣言でも取り上げられているように、対話はこの新たな経済において欠かせない要素である。
作者は、「歴史的に見て、市場は人々が集まり会話を持つ場所であった: 人々は手に入れることが可能な製品、価格、評価について話し合っていた。そうすることでつながりを持ったのだ」(2-5)と指摘していた。さらに、作者はインターネットに接続している人に対して、インターネットはこのようなバーチャルな市場に再び入り、同様のレベルのコミュニケーションを達成する手段を与えていると主張している。この環境は、インターネットが登場する以前のマスメディアの時代では、提供されていなかった(6)
そして、この対話は大部分においてビジターによって決定される。確実にマーケティングを変えるだろう。オフラインの例を挙げよう。テレビやラジオのマーケティングの問題点は何だろうか?私達はコンテンツを見たり聞いたりしているが、マーケティングが常に割り込んでくる。これは煩わしく、混乱をもたらすだけである。
エンゲージメントマーケティングは全く反対の試みを行う。マーケッターは、一歩身を引き、ビジターに求められた際にビジターと対話を行う。そのため、ビジターがエンゲージメントを始め、導くことが出来る方法を探す必要がある。
エンゲージメントを効果的に計測するにはどうすればいいのだろうか?
まずは、エンゲージメントの現在のレベルを示すベンチマークから決める。グーグルアナリティクスのエンゲージメントリンクを確認する手もある。サイトに滞在する時間、1度の訪問で見たページの数、被リンク、ツイッターでのメンション、再訪問した人の人数、期間の新たなユーザーの人数、関心のあるカテゴリー、ページの深さ等が用いられることが多い。
すべて役に立つ。このようなメトリクスを得られると、ビジターを魅了している気分になるはずだ。例えば、サイトを介して、ビジターの流れを精査することが出来る。障害 – エンゲージメントが決裂する場所 – を特定することが出来れば、この場所でのアプローチを調整して、障害を克服することが可能になる。
しかし、このエンゲージメントが実際に効果があることを確認しなければならない。こういったメトリクスは事業の目標と一致しているだろうか?ビジターはサイトで長時間に渡って滞在しているかもしえないが、迷子になっていることが原因かもしれない。フェイスブックやツイッターでよく言及されているかもしれないが、実際に何かを買ってもらえているだろうか?ツイッター & フェイスブック上のメンションはブランド戦略としては素晴らしいメトリクスになるかもしれないが、コンバージョン戦略においては、少なくとも短期間では、また、単独では、あまり効果は見込めないだろう。
エンゲージメントは、説明することが出来なければ意味がなく、また、事業の目標と一致している必要がある。計測するエンゲージメントのメトリクスを選ぶ際は、当該のエンゲージメントが目標を達成する上で役に立つのかどうか考えてみてもらいたい。また、目標を支援する上で、促進することが出来るその他のエンゲージメントのタイプがあるかどうかも自問してもらいたい。
この動画は、若干宣伝色が濃いものの、エンゲージメントの最適化における興味深い教訓が幾つか含まれている。
この動画では、オバマ大統領の選挙事務局に加わる前にはグーグルに務めていたオプティマイザーのダン・シロカー氏は、エンジーメントを高めるためにメトリクスを用いた方法を明かしている。オバマ大統領の2度の選挙戦で、デジタルエンゲージメントおよび計測を効果的に利用したことが、良い結果につながった同氏は明かしている。選挙では基準値を確立する取り組みが用いられていた – 例えば、既に実施している行動を見て、調整や調節を加えてパフォーマンスを高め、結果を計測する。
シロカー氏は、通常、エンゲージメントを最適化する上で次のようなルールが適用されることを学んだ:
成功を定義することから始める – エンゲージメントの最適化の効果をどのように把握するのだろうか?望む行動をビジターが取ったかに関して、幾つかの定量化可能な計測を基に決定する必要がある。そして、こういった行動を事業の見返りに関連付ける。
少ないと、多くなる – 選択肢を減らすと、ビジターはより没頭するようになる。この例では、欲しい情報を全て要求するのではなく、記入する必要があるフィールドを実際に必要なものだけに減らしている。 エンゲージメントを簡素化し、それによってエンゲージメントを強化する方法を考えてもらいたい。
言葉は重要 – コール・トゥ・アクションに力を入れること。コール・トゥ・アクションは、ビジターにするべきことをそのまま伝えると最も効果が高い。明確に表現する必要がある。この例では、「無料のトライアル」と「無料で試そう」を比較した。すると、後者は14.6%改善したことが判明したようだ。明確なコール・トゥ・アクションであったことが改善された理由と思われる。しかし、“理由”はあまり重要ではない。重要なのは、あるコール・トゥ・アクションに対して別のコール・トゥ・アクションを比較し、良い方を確認することである。
さっさと失敗する – そして、安く失敗する。反復することが非常に重要である。柔軟に対応しよう。積極的に試すのだ。これは、多くの取り組みは、どれだけ利に適っていても、そして、考案したときはどれだけ合理的に思えても失敗すると言う推測に基づいている。
そのため、失敗する可能性があるため、変更を加えることを躊躇するのではなく、チャンスを掴んで変更を行い、失敗するならさっさと失敗してしまおう。うまくいかないなら、早い段階で見切りをつけ、うまくいくまで別の何かを試すべきである。失敗したら、すぐに諦め、次に進もう。
今すぐ始める – エンゲージメントについて語ることは簡単だが、さらに没頭してもらえるように行動を起こす方がよっぽど重要である。サイトを今以上に魅力的にするために今日できることがあるとしたら、それは何だろうか?その取り組みをすぐに実施しよう。テストしよう。そして、明日は別の何かを実施しよう 🙂
この動画では、ダン・シロカー氏は、プロセスの変更点を中心に話を進めている。その他のトピックとして取り上げられていたのは、やはりウェブデザインであった。
この記事は、あるデザインよりも好まれるデザインに関する意見を基に、デザインのエンゲージメントへの影響を説明している。
エンゲージメントの原則に話を戻すと、テストが重要な取り組みに当たる。デザインを別のデザインに対して試し、望まれるビジターのアクションをベースにどちらのデザインがビジターを没頭させているのか確認してもらいたい。その際は、例えば、「ウェブサイトを介して、注文を50%増やしたい」等、事業の目的に沿ったエンゲージメントの計測を行う必要がある。
ブログ、ツイッター、フェイスブックはエンゲージメントの目標を達成する上で貢献するのだろうか?
投稿した記事を読んでいる人はいるのだろうか?いるなら、読者は記事を読んだ後何をしているだろうか?何もしていないだろうか?この分野で忙しなく行動を起こしている人達は多いが、大抵の場合、投資に対する利益はほとんどゼロなのが現状である。エンゲージメントにおいては、アクティビを計測するのと、そのアクティビティが何か意味があるのかを計測するのは異なる。
問題の原因の一部は、ROIに焦点を絞っていないことだ。事業の目標を決め、次に目標を達成するためのソーシャルメディアのアプローチを考案する必要がある。例えば、「ツイッターのトラフィックが、慈善事業への寄付金になる」ことを目標として掲げ、ツイッターのトラフィックを計測し、良好な寄付に結びつける手が考えられる。
これはメトリクスが紛らわしくなる良い例である。ツイッターのトラフィック、サイト上で過ごした時間、そして、アクティビティの深さを計測し、その結果がエンゲージメントの面では良くみえても、事業の目的に合っていないなら、実施する価値はあるのだろうか?サイトで過ごす時間が長いのは、良い兆候なのだろうか?ビジターに登録して欲しいものの、していないなら評価することは出来ない。
レリバンス(関連/適切)の代わりは存在しない。まずはレリバンスを実現しなければならない。ビジターを集め、貢献してもららい、戻ってきてもらうのはその次だ。
MIT(マサチューセッツ工科大学)でコンペラティブ・メディア・スタディーズプログラムのディレクターを務めるアラン・ムーア氏は、この点を分かりやすく説明している:
エンゲージメントマーケティングは、透明性 – 双方向性 – 即時性 – 円滑化 – エンゲージメント – 共同作成 – コラボレーション – 経験 – 信頼の上に成り立つ。こういったキーワードは、マスメディアからソーシャルメディアへの移行を決定づける要素である。マイスペース、ユーチューブ、セカンドライフ、その他のネットゲーム、市民ジャーナリズム、ウィキペディア、ポップアイドルやジャイミー・オリバーのスクールディナー等のテレビ番組の形式、ブログ、ソーシャル検索、ダブリンのギネスビジターセンターやコーンウォールのエデンプロジェクト(UK)、スーパーステイブルやツインズ等の携帯ゲーム、Spreashirt.com等の新たなビジネスプラットフォームは、すべてエンゲージメントを中心に据えた新しい社会経済モデルを実証している。
効果的なメディアの例および戦略に従う上で、- 透明性 – 双方向性 – 即時性 – 円滑化 – エンゲージメント – 共同作成 – コラボレーション – 経験 – 信頼 – のうち、出来るだけ多くの要素を持っている必要がある。誰もが大手メディアの記事に対して投稿するコメントが極度に管理され、反映されまでに時間がかかり、イライラした経験があるはずだ。このような行為は、対話の即時性および信頼を損なってしまう。そのため、比較的オープンで迅速な市民メディアおよび報道に大手マスコミのビジネスモデルが苦戦を強いられるのは当然である。
質の高いコンテンツ戦略を実施すると、ビジターはコンテンツを読み続け、ブックマークを行い、そして、戻ってくる可能性が高い。質とはもちろんのレリバンスのことだ。ライバルのコンテンツと自分のコンテンツと比較してみよう。当然ながら、ライバルのコンテンツよりも優れたコンテンツを提供する必要がある。ビジターが自分のサイトを去ったとしても、ライバルのサイトを訪れ、質が欠けていることに気づけば戻って来てもらえるだろう。
動画とオーディオは同じ線上に存在するため、ビジターは一度サイトに没頭すれば、メディアが続く限り、没頭するだろう。同様に、ウェブ配信イベントは、ビジターが望むなら参加することが出来ると言うボーナスが加わるため、やはり没頭してもらえる可能性が高い。サイトで過ごす時間を伸ばすことが事業の目標に合っているなら、動画とオーディオは試してみる価値があるかもしれない。
意見を述べる行為が好きな人達が大勢いる。そのため、意見を述べる機会を与えてあげよう。ブログのコメント、フォーラムがすぐに思いつく。ツイート、そして、それぞれのお気に入りのソーシャルメディアチャンネルでの共有を呼び掛ける手もある。チャットアプリを用意して、必要に応じて、直接フィードバックを求めることも可能だ。アマゾンの価値は、- 顧客に声を上げる機会を与えている(ネガティブであれ、ポジティブであれ)レビューシステムが支えていると言っても過言ではない。
メーリングリストを活用しよう。メーリングリストは、購入後のアップセルおよびクロスセルに効果的である。アップセルとは、顧客にさらに高価な製品を買ってもらうことであり、クロスセルとは、既存の顧客にさらに別の製品を買ってもらうことである。例えば、私のもとには過去の購入履歴に基づき定期的に服の小売店から特別なディスカウントを知らせるメールが届く。こうすることで、私がサイトを去った後でもエンゲージメントは続く。なぜなら、この取り組みは私にとって適切であり、メリットがあり、押しつけがましくもない。既に獲得している顧客に気を配るよりも、新たな顧客を獲得するには遥かに大きな投資が必要とされる。従って、この価値を既存の顧客にもたらす方法を探し出してもらいたい。既存の顧客は受け入れる気持ちが強く、また、既に一度説得して関心を持ってらえているため、自ら関心を持とうとするだろう。
ブランド。とてつもなく大きなトピックだが、エンゲージメントに関して、ブランドに少し注目してみよう。ブランドにとって最も重要なのは経験である。消費者は感情と考えをブランドに関連付けようとする。アップルのブランドは、テクノロジーであるだけでなく、ファッションであり、品質、そして、個性でもある。アップルは様々なレベルでエンゲージメントを作り出しているが、最も効果的なのは、アップルの製品を購入すると“仲間”になれた気持ちになる点ではないだろうか。賢明に作り出された「アップル vs その他のメーカー」の構造の中で、アップルに所属する感覚、そして、製品の購入を擁護する感覚および正しさを主張する感覚は、奥深いエンゲージメントを生む。
仲間意識を育てる試みを行ってもらいたい。人間は心の奥深くでコミュニティを求めている。かつては地域でコミュニティの感覚を得ていたが、現在は、主に自分が所属するグループによって仲間意識が育まれている。
この記事は、SEO Bookに掲載された「Engagement Marketing 101」を翻訳した内容です。
エンゲージメントレベルが高いサイトはGoogleのアルゴリズム的にも今後はSEOにも有利になりそうですし(って話を小さくしてはいけないのですが)、エンゲージメント・マーケティングと新たなバズワードを目指さずとも、エンゲージメントを意識したSEOやコンテンツマーケティングに取り組んでいきたいものです。 — SEO Japan [G+]
SEO最新情報やセミナー開催のお知らせなど、お役立ち情報を無料でお届けします。