私達は失敗した。
半年間にわたって、モバイルアプリのコードの質をじっくり調べ、デザインを調整した後、パートナーと私は、ついにApp Storeにアプリをリリースした。すると、徐々にダウンロードの回数は増えていった。
その数日後、辛い現実が私達を待ち受けていた。ユーザーがアプリを利用しないのだ。アプリのアイデアを紹介した人達の多くは、絶賛してくれたこともあり、大きなショックであった。私達が開発したアプリは、写真を撮り、撮影した対象に関する質問をすることが出来る。このアプリは、その年、世間を賑わせたスタートアップのトレンドを全て網羅していた: モバイル、ソーシャル & ローカル。2011年の年始のことだ。
フラストレーションを抱えた私は、誰もアプリを使わない理由を突き止めるため、写真をたくさん撮影するiPhoneのユーザーをインタビューした。写真に関する疑問を持っているかどうかを調査するためだ。何度かインタビューを重ねていき、写真を見せてもらったところ、決定的な、誤った仮説 — ユーザーが撮影した写真に関して疑問を持っているはずだ — を基に私が製品を構築していた点が明らかになった。インタビューを数名に行った結果、ユーザーが、好奇心をくすぐられるものが全くない親しみのある環境で、よく写真を撮影していることが分かった。興味を引く被写体を撮影した時であっても、さらに詳しい情報を学ぶために必要な余分な作業を行う気にはならないのだ。失敗の原因をようやく私は理解した。デザインの問題ではなく、単純に私達のアプリは、ユーザーが持つニーズを満たしていなかったのだ。正当性を実証しなかった仮説を基に、私はアプリを構築してしまった。
存在しない問題に対する解決策を編み出していることに、なぜ気づかなかったのだろうか?起業家を悩ます様々な確証バイアス(先入観をもって、自分の考えの正しさを証明するデータばかりを重視する)だけに注意していれば良いわけではない。早い段階でこのような落とし穴の存在に気づくことが出来ないのは、構築するスリルを味わう前に、時間を割いて、リスキーな仮説をテストする取り組みを行っていないためだ。
製品の価値、そして、その他の仮説を、製品開発プロセス全体を通してテストすると、早い段階で没頭する顧客のグループを獲得する確率を高めることが出来るようになる。
仮説は様々なアイテムに該当する — ユーザーの行動、ユーザーの心理、ソリューションを実行可能な状態にする上で正確性が求められるアクション。最もリスキーな仮説は、事業の実現性にとって、最も重要でもあり、最も知名度が高い。しかも、仮説の正当性を裏付けるデータが、ほとんど、もしくは、全くない。プロジェクトの最初の段階で、最もリスキーな仮説をテストすると、アイデアにおいて最も大きな欠陥を見つけ出すまでの時間、そして、より優れた、より実行の可能性が高い代案を見つけるまでの時間を短縮することが出来る。
私の場合、早い段階にテストするべきであった仮説は「写真に関する質問をユーザーが持っている」であった。報酬を諦め、そして、数ヶ月分の努力をつぎ込んだ後に、最終的にこの仮説をテストすることになった。最もリスキーな仮説のテストは、多くのスタートアップが苦労する取り組みである。また、多くのスタートアップが、後になって分かるバイアス、そして、主観的な主張に屈してしまう。この問題を軽減するために、新しいアイデアに対する仮説をリストアップし、効果的な実験を実施し、仮説とテストを結果に反映させる手段が必要だ。
スタートアップが、事前にテストする対象を絞り込み、意見をまとめることが出来る方法は多数ある。Javelinでの失敗を教訓に、私と共同設立者のトレバー・オーウェンズは、Experiment Board(実験掲示板)を作成した。これは、体形的にこの取り組みを実施するためのツールである。 最もリスキーな仮説を記録すると、最初にビジネスにとって最も重要な領域をテストすることに集中しやすくなる。最もリスキーな仮説の正しさを裏付けたら、その次にリスキーな仮説のテストに移ることが出来る。
起業家、そして、スタートアップのチームが、いきなりソリューションに手をつけるのではなく、顧客の問題と仮説に力を入れることが可能な点は、Experiment Boardを利用する大きなメリットの一つである。ユーザーが踏む手順は、起業家が新たなビジネスのアイデアを考案した際に踏む手順と同じである:
Lean Startup Machineを制したことがあるSeen.coを設立したタリク・コルーラが、動画の中でケーススタディを紹介している
解決するべき問題が存在することを裏付けたら、顧客にとって、ソリューションにどれだけ価値があるのかテストしていく。そのサービスを利用するために料金を払うか、先行予約するか、それとも、何かしらの価値を手放すだろうか?需要の計測は、ピッチの実験を通じて、容易に行うことが出来る。 シンプルなランディングページ、そして、Googleの広告を使って、試すことが可能だ(この取り組みに役立つツール、QuickMVPを弊社は提供している)。
スタートアップを構築する際は、仮説を特定し、テストするプロセスを継続して実施する必要がある。近郊で開催される次回のLean Startup Machineに参加し、このプロセスを学んで、人々が望んでもいない製品を作るために時間と資金を無駄遣いする状況を避けてもらいたい。身をもって体験した私が言うのだから、間違いはない。
この記事は、OnStartupsに掲載された「The Most Important Thing to Do Before Building Your Startup」を翻訳した内容です。
筆者が現在再チャレンジ中のスタートアップ向けスタートアップ(?)のPR的な記事でしたが、書かれていることは至極全うなので紹介させていただきました。スタートアップをする位ですから自分の元々のアイデアに自信がある場合が多いだけに、立ち上げては見たものの、思ったように上手くいかない状況にすぐめげてしまう人も多いと思います。思った通りに行くことの方が難しいスタートアップですし、立ち上げ時のアイデアが間違い過ぎていないことも大事ですが、その後の継続的な検証と改善が勝負を決めると思います。余り盲目的になりすぎず、同時に自信を情熱を持って、事業に取り組み成功させたいものです。 — SEO Japan
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