ウェブサイトを売却する際に必ず読みたい注意事項

公開日:2010/04/12

最終更新日:2024/03/21

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日本でもサイト売買のマーケットプレースが幾つかありますが、米国では昔からドメイン売買やサイト売買がごく普通に行われてきました。とは言え人と人との取り引き、時にトラブルが起こることもあるでしょう。SEO Bookのアーロン・ウォールが正しくサイトを売るためのアドバイスを教えてくれました。 — SEO Japan

透明性が重要な時

不要で、どうでもいいサイトを売ろうとしているなら、隠し事をせずにオークション等のサイトで出来るだけ高額で売りつけようとしても構わない。しかし、成長著しいサイトを持ち、入札戦争を引き起こすために投資業者に連絡を取るならば、何もかもさらけ出すのではなく、透明性を多少制限したほうがよいだろう。成長著しい分野の成長著しいサイトを運営し、サイトを買おうとしている企業が1社しかないのなら、透明性はネガティブな効果をもたらし、不利に働く。

ウェブサイトの購入オファーを偽装: その仕組み

ここ数日間、ある企業が私たちが運営する4つのウェブサイトの1つに妥当な金額のオファーを出してきた。この会社は、現金が私の口座に振り込まれるまでは私が分析データを提供しない点、そして、検索結果から多くのデータを推測することが出来る点をよく心得ていた。彼らがこのウェブサイトを購入しようとするのはこれで5回目であり、毎回、上述のポイントを私たちは説いてきた。

この企業のスタッフが“この金額に納得できるなら、同意書を送りましょう”と言ったので、私は了承した。すると彼は“分かりました。それでは適正評価書を作成し、同意書に記入するため、すべてのスタッツにアクセスさせてください”と言ってきた。

ここが苦しいポイントであり、問題でもある。

なぜだろうか?

データは貴重

データは貴重である。成績のよいサイトを買えるだけの資金を持ち、そのウェブサイトの詳細を調べさせ、購入オファーを持ちかけてくる企業/人物は必ずと言っていいほど、他にも同じようなサイトを持っている。すべてのデータを“売るために”与えてしまうと、サイトは弱体化し、誰も買い手がつくなくなってしまう可能性がある。

既に同じ分野で他のサイトを運営していることが分かっているなら、ろくでもないオファーのためにわざわざ自分の会社の蓄えを減らす必要はない。

ミルクを無料で手に入れられるのになぜ牛を買うのか?

すべてのビジネスのデータを欲しがる人々は、独占的な取引を望み、分析データを奪おうと試みる一方で、あれこれ考えたり、議論したり、価格を変えたりする。しかし、“君は世間知らずの間抜けだ、もっと自分自身に敬意を払ったほうがいいよ”、これが彼らの本音だ。

さらに彼らのセリフは続く。“あなたのサイトを$xxで買いましょう。どうですか?それではデータをすべて渡してください。そうしたら、驚くぐらい低い金額でオファーを出し、もっと間抜けな売り手から同じようなサイトを買います。私たちは市場価格よりも遥かに低い価格で買うんですよ!心配しないでください。頂いたデータはあなたに不利になるように使わせてもらいます!”

彼らがオファーを出すと言えば、オファーを出すだろう。彼らがデータを盗むことを望めば、彼らはデータを盗むだろう。しかし、調査を行ったうえでオファーを出しているなら、データを手に入れてオファー価格をつけ直す必要はない。 – 要するにこれは詐欺である。

ビジネスの相互関係 : 入門編

卑屈な業者は他人を信頼しない。なぜなら、すべての人間が同じように卑屈だと考えているからだ。そこで、このようなオファーに利用することが出来るテストを紹介しよう。“あなたの分析データをすべてもらえるなら、すぐにでも私の分析データをあげましょう”と伝えてみよう。もし彼らが不当だと主張するなら、それはこっちのセリフだと言ってあげよう。

私たちはページタイトルを変更するべきだとクライアントに伝え、その結果、瞬く間に数百万ドルが事業に転がり込んできたことがある(そして、コンサルタントとして私たちは僅かの報酬を得た)。しかし、皆さんのサイトを購入しようとしている競合者がいるなら、彼らは皆さんのサイトの良い点を探し出し、単純に真似するはずだ。彼らのドメインが遥かに知名度が高い場合、トラフィックを大幅に奪われてしまう。無償で提供してしまうのだ。

私たちの競合者の中にもある分野で私たちの戦略をそっくりそのまま真似ていたサイトがあった。しかし、彼らは何度となく誤ったキーワードのバリエーションや修飾語句を選んでいた。無料でデータをあげてしまえば、推測する必要はなくなる。そうなると、彼らは軍資金を投入し、息の根を止めに来るはずだ。

NDA契約が紙くずにすぎない理由

このような企業の中にはプロを自負する組織もあり、彼らの守秘義務契約書にはある程度の価値があると言えるだろう。しかし、実際にはどうだろうか?皆さんは、自分の会社のスタッフ全員合わせた人数よりも多くの社内弁護士を抱えている大企業と法廷バトルを繰り広げられるだけの資金を持ち合わせているだろうか?このようなバトルに買ったところで、ROIはあまり期待できないのではないだろうか?そもそも勝てる見込みはあるのだろうか?実際に自分のデータが使われた点を証明することが出来るのだろうか?どれだけの時間、労力、そして、ストレスをその法廷バトルに投入することになるのだろうか?

ウェブサイトを購入する理由

誰かがサイトを買うために近付いてきたら、何か理由があるはずだ。戦略的な価値なのかもしれないし、現状に価値を加えることが出来ると感じ、相乗効果を期待しているのかもしれない。例えば、ヤフー!、イーベイ、アマゾン、グーグル、バンクレイト、モンスタードットコム、ウェブMD等の大手企業の場合、彼らは…

  • 購入したウェブサイトを強化するため、PRを実施する機会に利用する
  • 自らのネットワークに統合し、マーケットのシェア率を上げ、価格をコントロールする
  • 自らのネットワークでクロスプロモーションを実施する
  • 当該のサイトのオーディエンスに対して他の選択肢をクロスプロモーションする
  • コアのブランドと関連付けたくない方法でマーケットに影響力を及ぼすきっかけとして使う
  • ブランドを弱めることなくマーケットの幅を広げる
  • などなど

今まで通り運営するつもりで新たに企業を買収する人はほとんどいない。収益を基にドメイン名を購入する人も滅多にいない…そのドメインの展開のポテンシャル、そして、マーケットの成長 + チャンスをベースにドメインを購入するのだ。

成長におけるリスクはあるのだろうか?もちろんだ。投資に失敗しない投資家はどんなことを気にしているのだろうか?そのリスクはサイトの購入価格の値引き対象となる…結局、将来のマーケットの成長およびサイトの成長は、サイトが売却された後に買い手に委ねられるわけではないのだ。

私自身、ウェブサイトの購入で損をしたことはある。当然だ。しかし、平均すると得をしている。価値を加える方法について優れたアイデアを持っているなら、完璧なデータがなくてもウェブサイトを購入することが出来る。何度か損をしても、優れたサイトを幾つか手に入れ、そのサイトを乗りこなすことが出来れば、最終的には利益を上げることが出来るだろう。

ディスカウント: 過去の収益

ウェブサイトの的確な収入とキーワードのデータを無料で得る試みは、搾取以外の何ものでもない。これらの情報を与えてしまうと、買い手にはレバレッジを与え、売り手を弱い立場に追い込む。こうなると購入は、戦略的な価値よりも、売値を収入の何倍にするかに焦点が集まるが、売値が購入の“理由”になることは滅多にない。

防衛目的の購入なのだろうか?すぐにシナジー効果が期待でき、戦略的な価値が加わる購入なのだろうか?彼らは自分よりも多くのデータを持ち、近い将来マーケットの成長を見込んでいるのだろうか?

例えばユーチューブのような戦略的な購入の場合、「過去の収益額を2倍にした金額、10億ドルで売却しましょう」と言うことにはならない。企業が重要なウェブサイトを購入する際は、1年、2年、3年、4年、5年程度の収益の倍の額を提示し、オーナーを侮辱するようなことはなしない。S&P 500の企業では、15倍もしくは16倍で取引することが常識になっている。サイトのオーナーから見れば、オーガニックな検索トラフィックを増やし、新たな収益システムを構築して、コンバージョン率を改善することが出来る強固な戦略を持っているなら、6年、7年、8年、9年、10年の倍では不十分である。

仮に、株価収益率の30倍で取引している企業が、6倍でサイトを購入したいとオファーを出してきたとしよう。すると、彼らは、ディスカウントを求め、結局3倍の価格…つまりマーケットによる当該の企業に対する1/10の金額でサイトを購入する。そのため、マーケットでのポジションが急激に変化し、収入の削減率が高くなる。

もし、彼らが支払いの一部を一年間出し惜しみしたら、サイトの一部を将来の収入で支払うことになり、実際に支払われる倍数はさらに低下し、 – たった2倍になる!!!!

WMWに掲載されていたマキシミリアノス氏のコメントには、「すべてのデータを渡せ、そうしたら最低の倍数を提案するよ」 アプローチが買い手候補にとって不利な理由が説明されている:

私はサイトを維持することにし、ほぼ放置状態で自動運営モードにした。9年前のことだ。現在、このサイトは当時売却しかけた金額以上の収入を1ヶ月で稼ぎ出している。売却がうまくいかなかったことが、逆にプラスに働いたのだ。

検索マーケットでは、ランクを少し上げるだけで、トラフィックが莫大に増加する。

数ヶ月ごとに100%増加しているサイトを、過去の*たった*数倍の金額で売却するなど、もってのほかである。売ってしまう人はバカとしか言いようがない。30x P/E率の企業が、30x倍で取引することなど考えられない。投資家たちは過去のデータを見ているからだ。

サイトを売却するときは、自分よりも買い手の方がマーケットのデータを豊富に持っていると仮定する必要がある。恐らく、資金も多く持っているだろう。彼らにサイトの具体的なデータをすべて与えてしまえば、サイトの価値を低下させてしまうだけでなく、交渉を優位に進めることは出来なくなるだろう。

過去の失敗から学ぶ

しかし、とても多くの人々が愚かにもデータを渡してしまう。私もその一人だった。業界内での友人だと思っていた人物が、あるプロジェクトの提携に対する価格をオファーし、集められるだけデータを集めた揚句、*指定した金額*で取引を辞退したのだ!彼らは流動資本が足りなかったと主張したが、同時期に私たちが所有する他のサイトにもオファーを出していたのだ(私たちが所有している点に気づかず)。この人物の名前を出すことなく、上述した内容を掲載しただけで、私たちのフォーラムの別のメンバーがこの人物が誰だか見破っていた。*なぜなら、この詐欺師はまったく同じことを彼に対しても行っていたからだ*。

この人物は私の友人のサイトも数年前にコソコソとかぎまわっていた。そこで私はこの人物の友人に彼の怪しい行動について尋ねてみた。すると、“彼は僕の友達だけど、信頼しない方がいいよ”という返事が返ってきた。もっと早く知っておきたかった。しかし、このエントリを投稿することによって、実はサイトにまったく関心を持っていない、インチキの投資家や怪しい企業がもらたす被害状況に歯止めがかかることを願う。

自分のドッグフードを食べるのか?

もし誰かが、データを略奪するのは適正評価もしくは購入プロセスの一環だと言ってきたら、このエントリのリンクをその人物に送り、私が話したがっていると伝えてもらいたい。

そして、私の主張が間違えているかどうか尋ねてほしい。間違えていないと言ったら、先に彼らの企業データをすべて提供してもらおう。交渉はフェアでなくてはならない。

彼らが情報を共有してくれなかったら、私に連絡を入れてほしい。正しいことをさせてもらう

アップデート

これ以上ウェブマスターが利用されるのは見たくない。残念ながら、状況は予想以上に悪化しているようだ。このエントリを投稿した後、ありとあらゆる分析データを手渡すことなく、サイトを売却するためのアドバイスを求める電子メールが幾つか送られてきた。私たちに連絡を取りたいなら、「seobook@gmail.com」宛てにメールを送ってもらいたい。状況を確認した後、私たちに何が出来るか考えてみよう 🙂


この記事は、SEO Bookに掲載された「A Few Warnings When Selling Online Business Websites」を翻訳した内容です。

確かに通常ビジネスを売却する場合は、上でアーロンが説明しているような査定が行われる訳ですが、ウェブサイトの場合は、売る側がその種の知識に疎いこともあったり、逆に買う側は詳しくともできるだけ安く買おうと考えますから、他のビジネスと比較してウェブサイトの売却金額が低すぎるケースも多々あるのでしょうね。

日本の場合は、こういった話になる前に、そもそも売りに出されているサイトの質が米国と比較しても低いケースが多い気はしますけども。実際のビジネスでもそうと思いますが、米国程、自分で、自分たちで立ち上げたサイトを簡単に人に売る、言ってみれば「売り抜ける」こと自体余りしませんよね。特にサイトが一定の収益を上げていたり成長過程にある場合は。結果的に、売上げも無くどうしようもなくなったサイトが多く売りに出ておりそもそも魅力的なマーケットプレースができてない気はします。もしくは逆に適当に作ったサイトを短期的なスパム手法で検索順位を上げて素人を騙して売り抜けようとする詐欺的なパターンか。これは日米問わず常にいますけど。

サイトの売買行為を推奨する訳ではないですが、ウェブサイトやウェブビジネスの1つのゴールとして、ある程度成長した時点で、よりそのビジネスの可能性を引き出してくれそうな相手に適正な価格(=上記でアーロンが話しているようなビジネスとしてまっとうに査定された価格)で売り抜ける、と言う選択肢はあるとは思います。最近で言えばTwitter関連のプチサービスが大手に買収されるケースが米国では増えていると思いますし。そういう環境が出来上がることで、より多くの新しいチャレンジに取り組む人が日本でも増えてくるのではないでしょうか。

ちなみに最後の犬の写真は多少グロ入ってますが、
入れないと見出しとの整合性が取れないので(「自分のドッグフードを食べるのか?」あえて残しました。。。m(_ _)m — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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