前回のエントリ、「SEOを会社のワークフローと社風に組み込む方法」のなかで、私達は社内のSEO担当者が直面する問題を取り上げた。これらの問題の多くは、SEOが作業プロセスに変化をもたらすために発生する。そして、変化 – あらゆる変化 – は抵抗を受ける。
前回のエントリの反響がよかったので、さらにこの件を掘り下げて調査することに決めた。
変化をもたらすマネージャーはあらゆる変化のプロセスにおいて重要な3つの要素を挙げている:
「大きな変化は“人間の問題”を引き起こす。新しいリーダーは事業の強化を求められる。そして、仕事は変化するため、新たなスキルと能力を養わなくてはならない。そして、従業員は不安を感じ、抵抗するようになる。これらの問題に受け身で、ケースバイケースで対処していると、スピード、モラル、そして、結果を危険にさらしてしまう。変化を管理するための秩序だったアプローチ ? リーダーシップのチームから始まって、重要な関係者およびリーダーを巻き込む ? を早い段階で策定し、変化が組織内にもたらされる度に適応させる必要がある。そのためには、戦略、システム、あるいはプロセスの再設計と同じように、データの収拾、分析、計画、訓練を出来るだけ実施する必要がある。
それではこの類のアイデアに着目し、プロのSEOの世界に当てはめてみよう。
トップから始める。
経営陣の賛同は最も重要な要素である。彼らのサポートなくして、下位のレベルで仕事を成し遂げることは出来ないだろう。だからこそ、変革のプロセスはトップから始まるのだ。それでは、経営陣を味方につけるにはどうすればいいのだろうか?
まずは、既存のウェブサイトおよびウェブ戦略を徹底的に監査して、変える必要のある問題の分野をリストアップする。 このリストを重要度によって優先順位をつけていく(例えば、絶対に必要な変更、出来れば行いたい変更、第一段階、第二段階等)。また、それぞれの変更の実装の難易度に関する注釈をつけよう。提案ととらえる必要がある。実際に提案そのものである。この類の分析を行うことで、どれだけ真剣であるか、どれだけ用意周到であるか、そして、どれだけ徹底しているのかが伝わる。
経営陣は、メリットを手にするために支払うコストよりも多くのメリットを求める。この希望を満たすことが出来る点を実証すれば、目標は半分達成されたようなものだ。
競争上の利点や不利な点等のファクターを利用しよう。競合者 – 特にSEOを得意とする競合者 – のランキングを見せるのだ。そして、競合者にもたらされる検索エンジンのトラフィックのレベルを予測しよう。
価値のある提案をしよう。それぞれのビジターに価値を与える場所に経営陣を導くのだ。顧客の目に触れる機会の価値とは何だろうか?ダイレクトマーケティング、印刷媒体、ラジオ、または、テレビの広告等の既存のチャンネルを介して得られる注目と同じ注目を得るためにどれぐらいのコストがかかるのだろうか?このコストを戦略を実装するために必要なコストと比較しよう。どれだけの資金を節約することが出来るか、そして、どれだけ多くの見返りを得ることが出来るかを示すのだ。
また、マネージャー達は以下のファクターに関する情報を求めている:
このような質問に答えられる準備をしておこう。
ケーススタディを利用しよう。SEOを実施することで得られる目覚ましい違いを説明する必要がある。試したことがあり、証明されている戦略は、新しく、異なる戦略よりもリスクが少ない。SEOが大半のウェブに精通している企業を除けば、新しく、今までの戦略とは異なる点を肝に銘じておこう。
経営陣を逐一戦略に本気で関わってもらおう。この戦略が実行されなければ成果は期待できない点を主張する必要がある。そして、要素を取り除くリスクを説明しよう。
こうすることで2つのことが達成される。1)一連の行動に経営陣を巻き込むことが出来る。すると、デザイナー、開発者、そして、ライターから抵抗を受けた際に支えてもらえる。2) 言い訳する権利が生じる。例えば他の人達から抵抗を受けた等、戦略のすべてを実行することが出来なかったためにKPIの達成に失敗した場合、その理由を説明することが出来る。
会議に参加することになる。
SEO部門の代表者、数名のデザイナー、そして、SEOを必要だと考えるものの、そのために何が必要かは理解していないマネージャーが会議に参加する。それでは、どのようにして彼らの戦略が誤っている点を伝え、何でもフラッシュで作ることをやめさせ、自分の戦略に従ってもらうことが出来るのだろうか?
直接的なアプローチを採用することも可能だ。「皆さん聞いて下さい。その戦略は完全に間違えています。何でもフラッシュで作るのはやめてましょう。そして、私の言った通りに作業して下さい!」これは難しいが、自分の父親が会社を経営しているなら – 試す価値はあるだろう 🙂
しかし、デザインチームはSEOよりも権力があるはずだ。SEOの担当者が新参者なら尚更だ。
この件に対する適切な表現がイギリスにある。「Softly Softly, Catchee Monkey」
これは、求める成果を達成するためには、優しく、そして、慎重に行動すると言う意味だ。
すべての決定に自分の意見を反映させる権力がないなら、大きな組織の内部で仕事をするSEOのスタッフの大半が直面しているように、とことん慎重にアプローチすることで、「俺のやり方が気に入らないならメンバーから外れてくれ」と言わんばかりのアプローチよりも良い結果をもたらすことが出来る。
人々がどのように変化に応じるのか考えよう。変化に強制的に適応しなければいけない場合どのように感じるだろうか?思いやりが大いに役立つ。
例えば、デザイナーの気持ちになって考えてみよう。
デザイナーならグラフィックデザインのコースを修了しているだろう。学校ではSEOを教わらなかった。そして、ウェブデザイナーとして数年働き、ウェブデザインが印刷媒体のデザインと比べて、制限が多いことを痛いほど分かっている。印刷媒体では、デザイナーは自由にスキルを発揮し、自分の思い通りの仕事が出来る。配色、サイズ、フォント、そして、ルック & フィール。
しかし、ウェブにおいては、デザインが異なるスクリーンのサイズで表示される点、各種のモニターでの色の見栄えが異なる点、そして、ブラウザによってレイアウトの読み込みが大きく異なる点を考慮しなければならない。また、開発者が作成したウィジェットやフォームを組み込む必要もある。数週間で経営陣にデザインを見せなければならない。デザイナーの給料を決める上級のマネージャーは、見た目の素晴らしい、流行の最先端を行くデザインを好む傾向がある。デザイナーはグラフィックのビジョンの妨げとなる常軌を逸した命令に従わなければならない。
そして、SEOと言う新参者が現れ、検索エンジンのスパイダーがサイトを見ることが出来るようにサイトを一新してくれと言いだしたのだ。
オフィスに扇風機があるなら、武器として使われ、凄惨な光景が視界に飛び込んでくるだろう。
何もしないのも手である。
すべての戦いに勝つ価値があるわけではない。例えば、業者の社内で、外部の顧客のために仕事をしていると仮定しよう。クライアントは最高のサイトを求める。なぜならクライアントは自分の同僚や上司を驚かせたいからだ。デザイナーは快くデザインを引き受けてくれるだろう。なぜなら、賞を得る可能性があるからだ。クライアントは、SEOを納品の条件には指定していない。クライアントの顧客は検索エンジンではなく、口コミで伝わることが多いからだ。このような状況下でも、SEOは重要なのだろうか?
重要ではない。
SEOを途中で組み込む際のアプローチとしては、納品を任されているマネージャーに当該のサイトがこのままでは検索エンジンからトラフィックをあまり獲得することが出来ない可能性が高いことを伝える方法が適切だ。変更点を明確に指定することも出来るが、他の人々が関心を示すだろうか?コスト/メリットはこの途中の段階で基準に達しているのだろうか?
権力を持つ人物に主張すれば、重要な決断を下すことが出来る。クライアントが後になってサイトが検索エンジンに表示されていない理由を知りたがったら、ミーティングを再び招集しよう。大半の知的な人は、プロセスに変化が必要だと言う結論に達するだろう。
しかし、クライアントがSEOを望むものの、現在のウェブ戦略ではSEOを達成することが出来ない点を分かっていない場合はどうすれないいのだろうか?
抵抗が激しい場合、作業を段階に分けてみよう。一つ一つの段階のインパクトを小さく抑えるためだ。フラッシュのサイトを運営しているなら、もしくはその他のSEOの問題を抱えているなら、ホームページからリンクを張って印刷に適したバージョンのページを加える提案を行ってみてはどうだろうか?
デザイナーはGoサインを出すだろう。なぜなら、印刷バージョンをを見る人達は、既にフラッシュのバージョンを見た人に限られると考えるからだ。彼らは単純に印刷することを選ぶ。SEOを担当するスタッフなら分かっているはずだ。検索エンジン経由のビジターはこのバージョンを閲覧することになる点を。これらのページがトラフィックを集め始めたら、2段階目以降に役に立つアイテムを得たことになる。SEOの力を見せつけることに成功したのだ。彼らが要請に応じてくれれば、さらに検索ビジターがページにやってくるだろう。
これが狙いだ。
コンセプトを実証することが出来れば、戦いを有利に進めることが出来るようになる。
過去の記事で、私は自然な相乗効果に気を配るよう求めた。ありがたいことに、すべてのデザイナーがフラッシュを愛しているわけではない。ウェブデザインのトレンドは、嬉しいことに、グラフィックに傾倒するアプローチから、利便性と実用性を考慮するアプローチに移り始めているのだ。
デザインの要素でもあるSEOフレンドリーな要素の導入を提案してみよう。例えば、ブレッドクラムのナビゲーション、サイトの組織および階層、最も重要なページをフロントページに近づける取り組み、メインのナビゲーションがクロール不可能なら、別のナビゲーションを加える取り組み、そして、グーグルのサイトマップの利用等が考えられる。上述の要素はルック & フィールのあまり邪魔にならない。
彼らがサイトの構造を綿密に計画するミーティングに出席しよう。SEOを考慮した構造がデザインされているなら、その他の多くの要素も自然に正しい場所に落ち着いているはずだ。サイトのデザインの決定に関して、手遅れるなる前に、早い段階で参加したい旨を強調する必要がある。
ウェブ業界では、コンテンツのライターは2つの分野の流派のいずれかに属している可能性が高い。
一つはジャーナリズムだ。ジャーナリズムの世界はトップダウンのアプローチ、もしくは、逆ピラミッドで構成されていることが多い。
「“ピラミッド”を三角形で表すことも出来る。三角形の上部の幅広い面は、ライターが伝えようとする、最も有力で、最も興味深く、そして、最も重要な情報を意味する。三角形の位置づけは、この種のマテリアルが記事を率先し、先端は重要性の低いその他のマテリアルが続くべきだと言う点を示している。」
2つ目の流派はコピーライティングだ。コピーライティングは、単に情報を伝えるのではなく、読者から特定の反応を引き出すために記事が作成される点が、ジャーナリズムのアプローチと異なる。コピーライターが達成する必要がある目標が設定されていることがあり、すべての単語が慎重に慎重を重ねて選択されている可能性が高い。
法律と言う厄介な側面がある。弁護士はリスクを回避する傾向がある。この状況下の彼らの仕事は、名誉棄損、中傷、もしくは信用できないコピーを配信させないことである。このような問題は企業に財務リスクを背負わせる可能性がある。
残念ながら、違法性を回避する方法について私が提供できるシンプルなアドバイスはない。これは重要度が非常に高い。法律面での要件を意識しよう。以前考案した“積極的なリンクベイトの手法”がすべての企業で適切な戦略と見なされるわけではない点を覚えておこう 😉
ジャーナリストの方が切り崩しやすい。彼は、「誰が」、「どこで」、「何を」、そして、「どのように」を用いた質問に答えようと努力する。SEOの要請をこの文章に当てはめよう。
例えば、キーワードの用語が「buy house in San Francisco」だとする。ジャーナリストなら、「what is happening?」 に主語を入れ、「何を」クエッションを尋ねることで、この情報に取り組む。例えば、「最近、サンフランシスコで家を購入しようとしている人達が苦労していることは…」のようなコピーが考えられる。
これは継続的な学習プロセスではあるが、彼らの言葉を使って話をしているなら、とても役に立つはずだ。彼らにキーワードのリストを渡し、そのキーワードを彼らが既に利用している記事のフォーマットに組み込む方法を教えよう。ライター達は記事やストーリーのネタを与えてくれることに感謝するかもしれない。最初の仕事が少し楽になるからだ。キーワードリサーチを記事のトピックの提案、または記事のリサーチに当てはめることが出来るか検討してみよう。
構造に関しては、SEOフレンドリーなフォーマットを促進するようなテンプレートを考案する必要がある。例えば、箇条書きを採用し、コピーを分割する。また、こうすることで読みやすさおよび使いやすさが改善されると主張する手もある。
デザイナーと開発者には、関連する記事が自動的に提示されるようにコーディングしてもらおう。関連する記事のセクションを設ける必要がある。記事の構造にSEOを直接導入するのだ。こうすることで、ライターを心配させることなく、数多くのSEOが自然に行われるようになる。
開発者はガイドラインおよび仕様書に基づいて作業を行うことに慣れているので、この文書のなかにSEOの要件を組み込んでみよう。
以下にガイドラインのサンプルを挙げていく。デザイン部門と重複するところがあるので、適宜に分割して頂きたい:
他にもルールはたくさんあるはずだ。開発者の協力のレベルに応じて、さらに細かくルールを指定することも可能だ。チェックリストの項目が少なければ少ないほど、開発者は必要な変更を実施する可能性が高い。項目の多いリストは悩みの種になるため、無視されることが多い。
彼らが重要な作業に取り組み、少なくとも、初めの週に関しては、些細なことを気にせずに仕事をしてもらおう。
実際の現場では、ここまで簡単にことが運びはしないだろう。
人間は厄介で複雑な生き物であり、確かなルールもなければ、絶対的な指示も存在しない。そのため、柔軟に対応する必要がある。コミュニケーションを十分にとろう。上述のアイデアがアプローチを編成する際に役立つことを願う。
皆さんはひとりではない。大半のSEOのプロが、皆さんが体験していることを身をもって学んでいるのだ 🙂
この記事は、SEO Bookに掲載された「SEO as a Change Process」を翻訳した内容です。
SEO担当者の方なら「今の自分だ!」と思いたくなるような内容が満載でしたね。はい、苦労しているのはあなただけではありません。これを読んで参考にしつつ、皆もそうなんだ、と少し元気をもらって、諦めないで頑張りましょう 🙂 — SEO Japan
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