ソーシャルメディアが中心の新しい世界は、頻繁に分析され、誤解され、そして、今日の企業に影響を与えるメディアとして称賛されている。少なくとも、創造力および慣習に挑み、人間のつながりを鼓舞する新たな活気を私達にもたらしていると言えるだろう。また、ソーシャルメディアは、売り上げ、サービス、そして、マーケティングを活性化し、計測する新しいチャンネルおよびメソッドを与える。そのため、洞察力の鋭い企業の重役は、ニューメディアに関連する機会費用を評価する指標、また、フェイスブック、ツイッター、そして、ユーチューブ等の人気の高いネットワークで交流を行うROIを証明するための指標を求めている。
ソーシャルメディアが企業にとって変革の力を持っているなら、会話に参加し、関係を構築する素晴らしさについて耳を傾け、パフォーマンスおよびROIに関する効力、ニーズ、もしくは標準について議論はするものの、行動しないのはなぜだろうか?
私の経験では、参加することばかりがもてはやされ、ROIは目立たない立場に追いやられてしまっている。すべての疑問に対する答えを用意することなくソーシャルネットワークに乗り込む願望がまん延しているようだ。2009年にMジンガとバブソン・エグゼクティブ・エデュケーションが実施した調査はこの考えを実証していた。このレポートによると、各種の業界を代表する専門家の84%がROIを計測していないと答えていた。
長期におよぶビジョンおよびゴールを持つ事業にとって、メトリクスを調査する取り組みは絶対に欠かせない。
ソーシャルネットワーク、そして、ソーシャルネットワークを定義するつながりと会話は、消費者の印象、接点、そして、影響の価値と定義を見直すきっかけとなる。事業全体がソーシャル化およびオープンリーダーシップを通して繁栄する時代を私たちは迎えているのだ。そのため、ROIを計測するニーズは、ソーシャルメディア内で現れる機会が見つけにくく、適切な質問を投げかけ、答える推進派が内部にいない場合、確立しにくい。
一般的なアドバイス、経験、そして、ケーススタディが組み合わされ、ブログ、カンファレンス、how to 動画、ポッドキャスト、そして、次から次へと出版される数々の書籍の中でソーシャルメディアの黄金律が築き上げられていく。しかし、大半の企業がROIを計測していないなら、私たちが目にする例はプログラミング、デザイン、もしくは求める結果において、意図があるとは言えないだろう。「成功」するための基準と紹介されているものの多くが、実行または結論の前に成功を定義することなく実践された既存の理論の例でしかない。事実、繰り返し話題に上がる現在利用可能な事業の実例の多くは、私たちのユニークなマーケットのチャレンジおよび原動力とはかけ離れている。このような教訓の本当の価値は、私たちの努力および機会と反響し、響き渡る要素からインスピレーションを引き出す力に隠されている。しかし、ゴールに近づくための特効薬を定義するのは私たち次第である。
私たちはニューメディアの学生である。そのため、事業の計測を回避している感のある“既存”のサンプルと理論を介して助言を求めるのではなく、私たち自身の疑問に答える必要がある。
ソーシャルメディアの機会、そして、ソーシャルメディアを組織全体で支えるために必要なインフラを理解するには、適性を認め、そして、定量化する必要がある。事業のパフォーマンスのメトリクスおよび投資収益率の計算を行うプロセスを立証するのは避けては通れない道である。評価するのは難しいが、組織内で既存のプログラムが機能する理由と仕組みを理解する取り組みは大事な一歩であり、基本である。
この荒れ狂う経済では、声を増幅することで共有し、マーケットおよびマインドシェアを拡大する取り組みに貢献していないプログラムは価値を落としてしまう。価値を提供しているプログラムを把握することで、投資を続ける場所を特定するのだ。
ニーズ、方法、もしくはメトリクスについて同意しているかどうかは別として、明確にすることが出来れば、実りのある議論だと言えるだろう。
先日、マーケティング・エグゼクティブズ・ネットワーク・グループ(MENG)とアンダーソン・アナリティクスが、マーケッターが今年焦点を絞る分野を調査した「マーケティング・トレンド 2010」と言うレポートをリリースしていた。今年のレポートの中では、ROIを計測する重要性が取り上げられ、興味をそそられた。
マーケティングのROIは、58%でリストのトップに君臨し、調査に参加したマーケッターは全体における利益を計測することを重要視していた。ソーシャルメディアもまた48%でトップ10入りしており、ソーシャルメディアのROIは総合リストでブログ、口コミ、そして、コミュニティ構築の次に続いてランクインしていた。しかし、この調査でさえ、ソーシャルメディアとROIの及ぶ範囲を正確に捉えていなかった。マーケッター達が時間、労力、そして、予算を集中させる2010年のトレンドのリストを私が精査するなら、ソーシャルメディアは本質的にリスト上のすべてのアイテムに影響を与え、補足し、そして、拡大すると答えるだろう。
ソーシャルネットワークに参入する障壁は、企業が利用可能な大半のコミュニケーションのチャンネルおよびブランディングのチャンネルと比べると、とても低い。大半の場合、無料でネットワークで存在を確立することが可能だ。しかし、甘い話には裏があり、これはソーシャルメディアにも同じことが言える。時間は無料ではなく、また、リソースを形に変えるのもコストがかかる。私たちはソーシャルメディアでの存在、交流、そして、デジタルな関係を確立および開拓するために費やす時間とリソースを調査することで、すぐに投資の費用を割り出すことが出来る。しかし、ROIの「I」は、「R」を確立することが出来なければ意味はない。ソーシャルメディアを反応するデバイスと見なすのはやめよう。しかし、ソーシャルメディアへの参加が、特定のタスクを実行するために策定されている場合、または、求める結果を手に入れる行動をもたらす特定のクリックを提供するために考案されている場合、大きなポテンシャルを秘めていると言えるだろう。
ソーシャルメディアが意図を持って考案されている際に成功する仕組みを堂々と公表している企業が存在する。
その一例を紹介しよう。スターバックスは、「お菓子を無料でプレゼント」プログラムをソーシャルネットワークで共有することで、全国の店舗のトラフィックを増加させる試みを行っている。同社はソーシャルメディアのおかけで100万人/日が地域の店舗を訪問したと述べている。スターバックスは、フェイスブックおよびツイッターで実施した口コミマーケティングで得た収益に関しては明らかにしていないが、収入およびROIにおける効果を把握していると仮定しても問題はないだろう。
Twitterを介したマーケティング
直接的な交流もまた測定可能である。コンバージョンは、パフォーマンスを実証するコンバージョン率を用いることで、成果をもたらす。ニューヨークのロジャースミスホテルは、ツイッターでニューヨークの観光に関する会話を追跡し、アドバイス、そして、ホテルへの潜在的なビジターを誘惑するため、クーポンを提供している。評価期間の間、2名で構成された小さなチームが、ツイッターを介して観光客に連絡を取った直接的な結果として$2万ドルの総収益を計上したと予測している。キャンペーンからこのチームが身を引くと、純利益とROIが実体化する。このプログラムは今も継続していることから、ポジティブなROIが算出されていることが予想できる。
次に、プログラム全体、もしくは、ビジネスの全体的な目標の進捗状況を記録する複数のKPI(主要業績評価指標)の1つを計測するメトリクスを以下に紹介する:
– ドミノピザは先日フォースクエアとの提携に起因する税引前利益が29%上昇したと報告した
– デルはツイッターの@DellOutletアカウントによる売り上げが$300万ドル増加したと報告した
– また、デルはシステムの障害やエラーに関する会話に耳を傾け、公になってパニックに発展する前に、すぐに修正版を作成し、配布することで、顕著な節約を実現している
– ヒューストンを本拠地として営業するコーヒー・グラウンズは、売り上げおよびマーケットシェアがツイッター上での交流により、20~30%上がったと報告している
– ザッポスは、ソーシャルメディアを使って同社の文化を積極的に共有する行為が、売り上げを増加する効果があると主張している
– ジェットブルーおよびユナイテッド航空は、ソーシャルネットワークで展開した特売プログラムで得た収益を正確に把握している
– コムキャストは、各顧客の生涯価値対ソーシャルネットワークでの顧客との交流にかかるコストを計測している
投資に対する利益は、無知に対する利益(return on ignorance)よりも高い。例えば、顧客との交流にかかる費用は、会話による取引の成果に加え、PRおよびブランディングのメリットもある。また、ソーシャルネットワークでのユーザーの募る不満に対処しない場合も費用がかさむ。
資金とリソースには限りがあるが、ソーシャルメディアを無視することは出来ない。唯一分からない点は、ソーシャルメディアが、その他のマーケティング、サービス、販売、ブランディング、PR等の形態よりも、どの程度価値がある、もしくは価値がないのかだ。事前に節目を決めておくか、もしくは目標を念頭に置いた状態で試験的なプログラムを実施することで、キャンペーンレベルで、そして、その他のイニシアチブとパフォーマンスを比較および対比することが出来るだろう。ソーシャルメディアでは、まずは、私たちはすべてのレベルにおいて何を達成したいのか、そして、カンバセーション(会話)をコンバージョンに導く方法を定める必要がある。
インタラクティブなマーケティングのメリットは、手段を策定することではない。つまり、手掛かりを特定し、結びつけることで目的を達成するための手段を作り上げることではない。そうではなく、目的地に達するために必要な停止駅を分析するか、もしくは少なくとも道筋を確認する取り組みを私たちに促す“目的”を特定することがメリットである。そして、この旅路における計測可能な節目が私たちに自信、見識、そして、見返りを与えてくれるのだ。
事業のパフォーマンスの重要なメトリクスを導入する取り組みは、教育および実験に対する焦点としての役割を果たすはずである。この焦点を介して、私たちが豊かで、実りある、効果的な経験および交流を生み出し、もたらすことが可能になる。
そして、私たちが変えようとしていること、もしくは私たちが望む呼応するリアクションや行動を把握することが、目的とパフォーマンスを結びつけるソーシャルなアクティビティを作り上げる上で役に立つのだ。
これは、ビジネスウィークに先日掲載されたエントリの完全版である。
この記事は、Brian Solisに掲載された「ROI Doesn’t Mean ‘Return on Ignorance’」を翻訳した内容です。
この記事、元々ビジネスウィークに掲載されていたんですね。流石、ビジネス誌の視点でしょうか。計測対象が多岐に渡ることもあり、なかなか正確なROIを計測することは難しいとは思いますが、できる範囲でやっていくことが大事なのでしょう。最後の”「目的」を手段より先に定義」する”というフレーズはなるほどそうだよな、とテクノロジーやトレンドに踊らされがちなネット業界の人間としては改めて響きました。 — SEO Japan
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