ミニマリストデザインは、20世紀と21世紀初頭の最も顕著なデザインムーブメントの1つだ。それは最も派手なものでも最も人気のあるものでもないが、ほぼ間違いなく、他のアートトレンドもしくはデザイントレンドのどれよりも多くの分野に浸透してきた。ユーザーインターフェースから、ハードウェアデザイン、自動車、映画、ゲーム、ウェブ、そして今日のビジュアルデザインまで、全てだ。これら全ての分野がミニマリズムに影響された。
(Image by Jason Garber)
あなたの友人は、ミニマリズムが何であるか知らないかもしれないが、彼らがミニマリストデザインを使ったり見たりしている可能性は高い。モダンな電話、こぎれいなウェブ、アプリケーションのインターフェースや、ツルツルしたパンフレットやグラフィックで示された情報を見たり、シンプルなリビングルームで流線型のソファに座っている、などなど。
ミニマリズムがこんなにも多くの分野に浸透しているにも関わらず、ポップアートや他のアートより知られていない理由は、それがビジュアルスタイルというよりはむしろ原理だからだ。それがデザインの原理と方向性であるため、建築とインダストリアルデザイン以外のデザイナーも採用してデザインを向上することができるのだ―それには今日の数多くのウェブデザイナーやビジュアルデザイナーが含まれる。
OK、確かに、ミニマリズムは素晴らしいし重要だ。華やかではないが、影響力があって広く受け入れられた。分かった。では、一体ミニマリストデザインとは何なのか?そのルーツと重要人物と共に明らかにしていこう。この記事はミニマリズムデザインの簡単な歴史を伝え、その後で、あなたのウェブやビジュアルデザインで使用するためのいくつかの実践的アドバイスを提供し、それからミニマリストウェブデザインの例をいくつか紹介する。
目次
ミニマリズムとは、20世紀に始まり、Appleのような企業や様々なグラフィックデザイナーやビジュアルデザイナーを通じて今も続いているデザイントレンドだ。ミニマリストデザインとは、必要不可欠な要素まで全てをはぎ取られたデザインである。
ミニマリストデザインの非公式の使命記述書が、建築家のLudwig Mies van der Rohe(ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)によってもたらされた:
Less is more(少ない方が豊かである)
もう一つのモットーはデザイナーのBuckminster Fuller(バックミンスター・フラー)の言葉:
Doing more with less(少しで多くのことをすること)
ミニマリストデザインはビジュアルデザインというよりも原理であると繰り返し言う以外には、それに付け加えるものは他にない。あなたがウェブサイト、フライヤー、ユーザーインターフェース、ハードウェアの部品、家、その他何をデザインしているとしても関係ない―不必要なものを取り除いて(例:それなしでもそのデザインは100%機能するか?)必要不可欠な要素だけを残すのだ。
生活の中のあらゆることと同じように、ミニマリストデザインはその前からあった特定のことから影響を受けた。具体的に言うと、ミニマリストデザインに影響を与えたのは:
I. デ・ステイル
(Image by Tom Rolfe)
デ・ステイルは、1917年にオランダで始まった芸術運動で、1930年代初頭ごろまで続いた。“デ・ステイル”とは、オランダ語で“ザ・スタイル(様式)”を意味する。この運動には、画家、彫刻家、建築家、デザイナーが参加した。
デ・ステイルは、必要不可欠な形と色にデザインを削減し、さらに以下のことにこだわることによって質素と抽象を強く求めた::
それに加えて、多くの要素やレイヤーが交わることはなく、それぞれが独立していて他の要素を覆ったり妨げたりしない。
デ・ステイルがいかにしてミニマリストデザインに影響を与えたのかを理解するのに想像力を膨らませる必要はない。
II. Van Der Rohe
(Image by seier+seier)
Ludwig Mies van der Rohe(ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)は、現代建築の先駆者と言われているドイツの建築家で、第一次世界大戦後の彼の建築スタイルがミニマリストデザインの基盤を築いた。彼は、シカゴのCrown HallやニューヨークのSeagram Buildingをはじめとする数多くのランドマークビルディングをデザインした。
Van der Roheは、以下のことによって自らの建築デザインの中に簡素さと明確さを得ようと努力した:
彼は、先述したように、ミニマリストデザインの非公式の使命記述書の1つである“Less is more”という言葉を有名にした人物だ。
デ・ステイルと同じように、Van Der Roheとミニマリストデザインの関連性は明白である。
III. 伝統的な日本のデザイン
(Image by Tanaka Juuyoh)
必要なものだけを追加して残りは取り除くことは、伝統的な日本のデザインの中で常に注目されてきた。昔の日本の建築やインテリアデザインを見れば、華美な装飾がほとんどなく、シンプルな色とデザインの選択、きれいな線と形があることが分かる。
日本のデザインと日本文化には関連性がある。日本文化は、禅と簡素さに満ちている。食事の準備の仕方から、その提供の仕方、食べ方、さらには茶道や石庭に至るまで全てだ―全て簡素さに焦点を置き、手元の活動に集中する。その活動に必要とされないことは含まれていない。着物のような伝統的な日本の服さえ簡素さを十分に表している。実際、華美な装飾はない。衣服の全ての要素は、動きの自由、自然な冷却、快適性、耐久性、着脱のし易さといった必要な機能を持ってデザインされている。
必然的に、ミニマリストデザイナーは伝統的な日本のデザインに影響されているだろう。ゴシックやビクトリアンのような伝統的な西欧デザインの多くよりもずっと多く。
ミニマリストは、20世紀初め、1920年代頃に建築で始まった。第一次世界大戦後の建築家のVan der Roheは、自らのデザインの中で原理を使ってミニマリストを体現するようになった最初の著名な建築家の1人だった。ミニマリスト建築が増え始めた理由は、ガラス、コンクリート、スチールといったモダンな素材の力だった。さらに、建築の標準化された方法が形作られ、より効果的にミニマリストビルディングをデザインして建てるのに役立った。このトレンドは20世紀中頃まで続き、著名なデザイナー兼建築家のBuckminster Fuller(彼については後で詳しく述べる)が、今日もモダンなたたずまいを見せるシンプルな幾何学的な形を使ってドームをデザインしている。
簡素さへの注目は、絵画、インテリアデザイン、ファッション、音楽へと広まった。そうやって、ミニマルペインティング、ミニマルミュージック、ミニマリズムの植字学校などが形作られ、今は当たり前となっている。画家のFrank Stellaは、“What you see is what you see(あなたが目にするものが全てだ)”と言ったと伝えられている。特にミニマルアートは1960年代にアメリカで成長した。デ・ステイルと同じように、画家たちは抽象的表現主義に反発して、自らの作品の中に初歩的な幾何学的図形のみを使用して装飾やその他の要素を追加しなかった。
必然的に、簡素さへの注目は、デザイナーのDieter Rams(彼について詳しくは後で述べる)がBraunの商品にミニマリストデザインを使用したこともあって、消費者商品にも広まった。スウェーデンの家具の会社、Ikeaもミニマリストでデザインされた消費者商品の一例だ。この家具は、全ての人が簡単に組み立てることが出来るようにデザインされたとてもシンプルなものだ。見ればすぐに分かるために説明書が必要ないことさえある。
そしてもちろん、ミニマリストデザインは、バーチャルデザイナーやビジュアルデザイナーが自らのデザインやクライアントのためのデザインにミニマリズムの原理を採用したことによって、デジタルの分野にも伝わった。
ミニマリストデザインを実施している人はたくさんいたが、あらゆるトレンドやムーブメントと同じように、より目立ち影響力のある重要な人物が何人かいる。ミニマリストデザインの二人の重要人物は、Buckminster FullerとDieter Ramsだ。
Buckminster Fuller
(Image by mksfca)
Buckminster Fuller(バックミンスター・フラー)は、ジオデシックドームの建築デザインで有名なアメリカ人デザイナーだ。1895年生まれで、Fullerの未来主義の性質が、20世紀中頃に、自力で立つことができるミニマリストのジオデシックドームをデザインするのに役立った―そして、今もそれは立っている。
Dieter Rams
(Image by Ged Carroll)
デザイナーにとって、Dieter Rams(ディーター・ラムス)はもっと馴染みのある名前のはずだ。Ramsは、1932年生まれのドイツのインダストリアルデザイナーで、Braunという会社のヘッドデザイナーだった。そこで彼は、レコードプレイヤー、ラジオ、計算機、消費者家電のデザインを手助けした。
Ramsは、必要のないものでいっぱいにならないように製品の必要不可欠な側面だけを含めることに焦点を合わせて、ミニマリストデザインを強く追い求めた。その結果として誕生した製品は、シンプルで、可能な限り混じりけがない。Ramsが自ら認めるデザインアプローチは:
Less, but better(より少なく、しかしより良く)
Ramsは優れたデザインの10の原則も持っている:
ミニマリストデザインの歴史と重要人物を知ることは良いことだが、行動を伴わない知識は役に立たない(もちろん、エンターテイメント目的以外で)。そこで、ここでは、ミニマリストデザインに対する適切な実践アプローチに関するリソースをいくつか紹介しよう。
Principles of Minimalist Web Design – ミニマリストデザインの必要不可欠な原理をおさらいした事例とそれをウェブデザインに適用する方法を書いたSmashingの記事::
The Ins and Outs of Minimalist Design – ウェブデザインにおけるミニマリズムの重要な側面に目を向け、それを正しく理解しているデザイナーの例を紹介しているDesign Shackの記事。重要な側面には以下のことが含まれる:
ミニマリストデザインの歴史をいくらか知ったので、今度はそれをウェブデザイナーであるあなたに関連した相応しいものにする時だ。以下のリンクは、実際のミニマリストウェブデザインの例を紹介している。ミニマリストデザインの全ての原理がこれらのウェブサイトには適用されている。
今度はあなたの番だ。あなたは、ミニマリストデザインを実践しているだろうか?なぜそうするのか?もしくは、なぜそうしないのか?ミニマリズムが世界最高である、もしくはあなたなりの理由をコメント欄で共有しよう。
この記事は、spyrestudiosに掲載された「Minimalist Design: A Brief History and Practical Tips」を翻訳した内容です。
元々、美術史が好きな私ですが、ミニマルデザインの歴史を学んだのは初めてでしたが、面白くて参考になる内容で、これからもっとミニマルデザインを楽しめそうな気がします。確かにビジュアルスタイルより原理として考えると、その影響力の強さについて理解しやすいかもです。やはりというかいわれて納得というか、オランダやドイツの影響が強いものなんですね。
記事にもあるように日本もミニマリストな感性を持った国ではあるはずなんですが、電化製品からソフトウェアやウェブサービスのインターフェースまで、ミニマルデザインの導入と活用についてはAppleしかり最近ではサムソンまで若干遅れを取っているのが現状です。機能以上にデザインや使いやすさが重要といわれる今の時代、日本経済復活のためにはミニマリストデザインの復権がその鍵になるかもしれません?! — SEO Japan [G+]
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