実際にトラフィックが減少した事例を見る限り、そこには特定の原因が存在することに気がつく。リダイレクト、ページの損失、プロトコルやドメインの問題などであるが、それらを修正することでSEOを正常な状態に戻すことは十分に可能である。
新しいWebサイトを構築する際、検索結果の順位とトラフィックを維持、または改善することは、目指すべきゴールと言える。これには、SEOとWebサイトの設計が互いに影響し合うということや、サイト移行のためには丁寧な計画が必要だということを深く理解することが求められる。
実際には、これらが十分に理解されていないケースも多い。Webサイトがローンチされ、トラフィックが減少し、パニックが起こる。不幸にも、私はこのような話を毎週のように聞かされるのだ。その多くがスモールビジネスの経営者からによるものであるが、彼らにとって、トラフィックの減少はリードやセールスの減少を意味し、彼らのビジネスを危機的状況に貶めるのだ。
しかし、全てが失われたわけではないこと、また、トラフィックの減少の原因が存在することはしっかりと理解すべきだ。この記事では、Webサイトの設計が原因によるトラフィックの減少と順位の下落について、その診断方法と改善方法を明らかにしたいと思う。
目次
すべての情報が集められることは少ないにせよ、次の情報は取得すべき情報と言える。
次に、GoogleアナリティクスとGoogleサーチコンソールのデータを分析し、トラフィックの減少を確認しよう。ここでは、Webサイトのリニューアルの日付とトラフィックの減少が開始した日付が、どのくらい離れているか(近いか)を明らかにする。トラフィックの減少は、ゆっくりと安定的に減少する場合もあれば、一気に大きく減少する場合もある。
一例ではあるが、次の画像はトラフィックが90%も減少したサイトのグラフである。このWebサイトのオーナーから連絡を受けた後、我々は改善に向けての作業を着手した。私が経験した中でも最悪のケースではあるが、事態はこれほど悪くなる可能性があるということを示すために、例として挙げている。
まずはGoogleアナリティクスを見てみよう。
Googleアナリティクス:集客>すべてのトラフィック>チャネル
トラフィックの減少を調査するためには、自然流入以外にも、複数のチャネルを調べる必要がある。仮に、自然流入が減少しているが他のチャネルからの流入が減少していない場合、Webサイトのリニューアルが原因である可能性は高くなるだろう。
Googleサーチコンソールでキーワードの順位を確認すれば、トラフィックの減少が開始した日付も特定できるはずだ。
改善の余地があるかどうかを判断する前に、損失がどの程度であるかを理解しよう。まずは、キーワードの順位と最も影響を受けたページを特定するのだ。
過去の順位データがある場合は、現在の順位と比較し、影響を受けた範囲を特定しよう。過去の順位データがない場合は、サードパーティ製のSEOツールを使用してデータを取得することが可能だ。または、Webサイトのオーナーが過去の順位を記憶している場合もある。もちろん、これは全く科学的ではないのだが、我々に重要な気づきを与えてくれるし、Googleサーチコンソールを使用すれば、裏付けも可能であるのだ。
リニューアル前後のトラフィックを比較してみよう。
Googleアナリティクス:行動>すべてのサイトコンテンツ>ランディングページ
Webサイトのリニューアルから数週間経過しているのであれば、リニューアル前の期間と比較し、どのページが最もトラフィックを得ていたかを明らかにする。
リニューアルの際、ページの名前が変更されている場合もあるので注意しよう。リニューアル前に上位表示され、最もトラフィックを得ていたページを特定し、新しいWebサイトにおけるそのページの代替となるページとを比較することが目的だ。
リニューアル以前ではそのページは存在していたが、リニューアル後ではそのページが存在しない、といった最悪のケースも起こりうる。ページがない。つまり、トラフィックも存在しない。リニューアル後のWebサイトでもページが存在し、単純にトラフィックを獲得できていないということであれば、技術的な問題が要因である可能性が高いだろう。
大規模なWebサイトの場合は、こうした情報をスプレッドシートにまとめると比較が容易になる。
この調査をする場合、Wayback Machineが非常に便利だ。このツールを使用することで、リニューアル前に上位表示されていたページとリニューアル後のページを比較し、その違いを調査することができる。ここでは、ページ内容の物理的な差異を確認することになる。
トラフィックの減少が起きた場合、よくある原因というものが存在し、これらを修復することで、事態は元通りになることも多い。
リダイレクトにおいては、「損失」と「設定ミス」がよくある原因だ。新しいWebサイトをローンチする場合、次のいずれかの施策を、すべての重要なページに実施したい。
リニューアル前のサイトで最もトラフィックを得ていたURLを10個ほど用意し(GoogleアナリティクスやWayback Machineで特定する)、それらのURLをブラウザで閲覧してみよう。リダイレクトされなければ、設定ミスであると言える。
リダイレクトが設定されているのであれば、ScreamingFrogや他のツール(多くが無料で使用できる)を使用し、意図したページへ正確に301リダイレクトが設置されているかを確認しよう。
この確認について、実際にあった最近の例を紹介する。SEOの基本的な知識のあるWebサイトのオーナーがリダイレクトの確認を行ったところ、彼にとっては問題ないように見えていた。しかし、私が確認したところ、301ではなく302が設定されていたことがわかった。301リダイレクトに設定し直した後、リニューアル前の水準にトラフィックが回復したのだ。
もう一つ別の例を紹介する。とあるインハウスのマーケティングチームがリダイレクトの確認をしたところ、301リダイレクトが適切に設定されていた。しかし、彼らはリダイレクト先のページの確認を怠っており、リダイレクト先のページが全て404になっていることに気が付いていなかった。
リダイレクトの確認は端から端まで行うべきだ。ブラウザで閲覧し、Webサイトのクローリングツールを使用し、全ての旧ページを対象に。重要なページはもれなく設定されていることを確認しよう。
よくある別の要因として、リニューアル前はパフォーマンスが好調だったページが、リニューアル後のサイトに存在していない、ということが挙げられる。ページが存在しない限り、上位表示されることはない。高パフォーマンスのページが全て存在し、適切にリダイレクトが設定されていることを確認しよう。
この確認にはどうしても手作業が発生してしまうが、STEP3で特定した高トラフィックを獲得しているページを対処することで、現状を把握するための有益な情報を得られるだろう。こうしたページが404になっていたり、一般的なページ(Webサイトのトップページなど)にリダイレクトされている場合は、ページの損失がトラフィックの減少の大きな要因となっている可能性が高い。
コンテンツの変更もトラフィックの減少の一因となりえる。ページ自体は存在しているが、コンテンツの内容が変更されている場合は、定性的な調査が必要となるだろう。新しいページの品質は、古いページの品質と比べて、高くなっているか、低くなっているか。変更を加えた箇所はどこか。この調査においても、Wayback Machineは有効なツールとなる。
リニューアル前のサイトが「https://example.com」であったとしよう。リニューアルと同時に、プロトコル(例:https)、サブドメイン(例:www)、ドメイン自体の変更も行った場合、リダイレクトの設置を考慮する必要がある。「https://www.example-2.com」は「https://example.com」と同一ではない。ここでは、リダイレクトの設置が適切にされているかを確認しよう。対象は、ドメイン、サブドメイン、プロトコルなど、変更を加えた箇所となる。
プロトコル、ドメイン、サブドメインの過去に行った変更が影響する場合もある。一見したところ、サイトの移行は適切に行われているが、トラフィックは減少しているというケースがある。これらは、過去に行われた変更が、今回のリニューアルにおいて考慮されていなかったことが要因となる場合もあるのだ。
2008年–2016年 「www.example.com」としてサイトを運営
2016年–2017年 「www.example-2.com」としてサイトを運営。「www.example.com」には301リダイレクトを設置
新しいWebサイトが2018年にローンチされた際、旧サイトから新サイトの移行は正しくされていた。しかし、開発者は過去のドメイン変更についての情報がなく、リダイレクトは考慮に入れていなかった。そのため、10年にも渡って運用されてきた歴史が失われたことになってしまったのだ。
この例から学べることは、直近で行われる変更よりも以前に、ドメインの変更やリダイレクトの設定があったかを確認することは、非常に重要であると言えることだ。
新しいサイトの設計が不十分であり、技術的な最適化が図られていないことが要因である場合もある。クロール、カノニカル、インデックス。これらが事態を悪化させている場合もある。このような場合は、いわゆる「SEO監査」を行うことが重要だ。SEOにおける技術的な最適化が、100%されていることを確認しよう。
技術的な問題と同様、リニューアル前のサイトからリニューアル後のサイトへ、最適化がされていない場合もある。全てのページのタイトルが同一になっているなど、基本的な設定が不十分なケースも目にする。リニューアル後のサイトをクロールし、基本的な最適化が十分にされているか、確認しよう。
Webサイトの移行が与える影響についても検討しておこう。我々は、「混乱」と表現しているが、Webサイトの規模が大きく、複雑であるほど、「混乱」を目にする機会も多い。ここで重要なことは、「忍耐」である。全ての項目を、確認しよう。全ての項目を、二重確認しよう。それでも、全てが適切に設定されているにもかかわらず、トラフィックが数週間に渡って落ち着かないこともある。その際は、新しいページがインデックスされ、古いページがインデックスから外されることを、じっくりと待つことが重要となる。
新しいサイトがローンチされる。移行計画もしっかりと立てた。あらゆる項目を調査し、問題がないことを確認している。しかし、トラフィックが減少する場合もある。そんなときはどうすればよいのか?
Googleアナリティクスは適切にセットアップされているだろうか?AMPページのような直近で変更を加えたページは特にではあるが、全てのページにタグが付与され、レポートに反映されていることを確認しよう。
リニューアルのタイミングとアルゴリズムの変更のタイミングが同時ではないか?Panguin Toolを使えばGoogleの更新のタイミングを知ることができる。トラフィックの減少のタイミングが、Googleのアルゴリズムの変更と重なっていないか、確認しよう。
特定の期間において、トラフィックが減少するということはないだろうか?Googleアナリティクスで過去数年分のデータを確認し、Googleトレンドでこのような減少が自然に起こるものなのか、確認しよう。
検索結果画面の変化がトラフィック減少の要因となっていないだろうか?フィーチャードスニペットや広告の表示枠の変化などがクリック率に影響することもある。こうした変化が要因でないか、確認しよう。
常に清廉潔白なSEOをしていたわけではない、ということであれば、手動アクションを受けてはないだろうか?Googleサーチコンソールにログインし、「手動による対策」のセクションを確認しよう。
セキュリティやハッキングが要因となってはいないだろうか?あなたのWebサイトがハッキングされている場合、Googleサーチコンソールにメッセージが届いているはずだ。また、検索結果画面にも「このサイトは第三者によってハッキングされている可能性があります」や「このサイトはコンピュータに損害を与える可能性があります」と表示されてしまう。「site:」を使用し、インデックスされているページにこのようなメッセージが表示されていないか、確認しよう。
今回の記事で紹介したような事態が起こってほしくないことが本音である。そのためには、SEOとWebサイトの設計が互いに影響し合うということや、サイト移行のためには丁寧な計画が必要だということの理解が必要だ。
望ましくない状況に自身が陥った場合、この記事で紹介した手順を参考にしてほしい。特に、スモールビジネスのSEOにおいて、あるべき状態に戻ることを願っている。
この記事は、Search Engine Landに掲載された「Recovering SEO traffic and rankings after a website redesign」を翻訳した内容です。
大きなリソースを投入して行ったリニューアルがSEOにおいてはマイナスの施策となってしまった、というのは不幸なお話です。簡単な設定ミスや基本的な対処の怠りが大きな影響となる場合もあるので、記事中で紹介された項目は必ず確認したいですね。特に、大規模サイトの場合は確認する項目や説明すべき関係者も多くなることかと思います。リニューアル後の効果測定も含め、しっかりとした計画を立てたいものです。改めてとなりますが、2019年もSEOについての有益な情報を発信してまいりますので、今年もSEO Japanをよろしくお願いいたします!
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