Dropifiは、顧客のフィードバックを整備するサービスを提供する。ガーナ生まれのこのスタートアップは、問い合わせフォームに代わって、大半の消費者が、ウェブサイトで提供しそこなっている見解を、企業に伝えるウィジェットを開発した。
2011年にDropifiは設立された。設立後2年も経過しないうちに、アフリカで初めて500 Startupsから投資を受けるまで成長した。さらに、2013年の時点では、Dropifiは、30ヶ国に散らばる6000社を超えるクライアントを抱えていた。このサービスは、世界中の企業が持つ問題を解決する。たまたま、設立された場所がインターネットの浸透率が40%程度のガーナであっただけだ。
Dropifiの生い立ちを調べていた私は、500 Startupsを設立したデイブ・マクルーアと一緒に、先日、同社が敢行したGeeks On A Planeツアーで訪れた東南アジア諸国を思い出した。この旅で、私達は大勢の地元の起業家に出会い、多くのイベントに参加し、議論に明け暮れた。
議論を通じて、私は訪問した全ての国々に共通するトレンドを見出した: それは、シリコンバレー以外の地域で、スタートアップを運営すると、不利に働くのではないかと言う懸念だ。
とりわけ、東南アジアで作られていても、アプリをダウンロードしてもらえるのか、と言う問いには面食らった。
この考え方は根本的に間違えている。
製品と会社を構築するのは、とても大変だ。四六時中、創設者は、ただでさえ、多くの事柄を心配している。それにも関わらず、場所に関する懸念を加えてしまうと、失敗する確率は大幅に高くなってしまう。そもそも、ユーザーがダウンロードする価値のある製品を提供している自信がないなら、エンジェルインベスターやVCが資金を調達するはずがない。
2014年においては、場所は関係ない。そもそも、アメリカがオンライン世界を牽引していたのは、2012年までである。
ビジターが多いサイト Top 10(Google、Facebook、Yahoo!等)を利用するインターネットユーザーの87%は、海外(米国以外)のユーザーであり、また、ウェブ分析サービスのcomScoreは、アジア太平洋地域のインターネット成長率を、27%のヨーロッパを上回る42%と見積もっている。
オーディエンスの規模だけでなく、投資にも変化が現れている。先日、Ernst & Youngは、世界のテクノロジー企業の重役を対象とした調査を行い、M&Aの取り組みに来年力を入れるかどうか尋ねていた。その結果、参加者の3分の2が買収の予算を、台頭するマーケットに割り当てると答えていた — このトレンドは、最近、このサイトでも報じたように、東南アジアのテクノロジースタートアップに狙いを定めた投資額の増加にも反映されている。
まずは、シリコンバレー以外の地域で構築され、世界的に有名になったスタートアップを挙げていこう。
欧州発のSkype、Spotify、Soundcloudに、WeChat、LINE、Kakao、Viberall等のメッセージ送受信アプリ、ゲームメーカーのGreeとDeNA、そして、複合ウェブサイトのRocket Internet、Alibaba、Tencent、Baidu、Naver等々。
こういったスタートアップは例外だ、と反論する方もいるかもしれない。確かに、ヨーロッパ、中国、日本、そして、韓国には、豊富なリソースがあり、経済の規模も大きい。しかし、地域全体にサービスを拡大しつつある東南アジアの企業も存在する。
例えば、シンガポール発のEコマースのスタートアップ、Carousellは、他国に進出している。Uberのライバルと目されるGrabtaxiは、東南アジア諸国への拡大を試みている。
自分の「縄張り」に世界で有名な企業が存在するからと言って、スタートアップを作ることが出来ないわけではない。地域特有のソリューションを求める需要は多い。
例えば、Amazonは、東南アジア諸国では積極的に活動しているわけではない。そのため、RdemartやLuxoa等のEコマースが台頭している。また、Flipkart は、Amazonが進出する前に、インドのEコマース産業に参入していた。
170億ドルの価値を持つUberは、東南アジアで順調に業績を伸ばしていると主張している — しかし、バンコク、シンガポール、そして、マニラでタクシーに乗ると、ほぼ毎回、メーターの近くの電話にはGrabtaxiのスクリーンが掲載されており、存在感を示していた。先日投稿されたThe Next Webの記事でも指摘されていたように、東南アジア諸国では、Uberは独り勝ちしているわけではないようだ。
投資がシンガポールに集中する点も大勢のスタートアップの設立者が指摘していた。
確かにシンガポールは、金融の中心地であり、当初、大勢の投資家の注目を集めていた。しかし、状況は変化した。例えば、この記事には、インドネシアで積極的に活動している10社のVCが紹介されている。また、Geeks on a Planeツアーの最中に米国の500 Startupsは2社のスタートアップに投資を行い、また、日本のIMJ Investment Partnersは、フィリピンのスタートアップと契約を結んでいる。この他にも様々な事例がある。
このような事例に対して、エンジェル投資の資金が十分ではない点が指摘されることもある。
確かに、米国や欧州と比べると、東南アジアにはエンジェルインベスターが少ないが、米国や欧州であっても、投資を受けられるスタートアップは限られている。例えば、アメリカのスタートアップでさえ、資金調達に苦戦している – 先日、Y Combinatorのサム・アルトマンは、シードラウンドが募集額に届かなくても、「心配する必要はない」と指摘している。
しかし、東南アジア諸国にもエンジェルインベスターは存在する。例えば、マレーシアを拠点に活動するカイリー・ヌグは、1000万ドルの資金を東南アジアで運営している。ヌグは、定期的にアジアを移動し、「資金を提供する会社」を探している。マレーシアの家にいるのは、月に5日程度のようだ。
東南アジアの国々を四六時中駆け回っている。資金調達を望むなら、この機会を活かし、カイリー・ヌグを見つけると良い。探し出し、スタートアップの宣伝を徹底的に行おう。タイのTaamkruは、実際にこの試みを行い、500 Startupsが参加したシード資金の調達に最近成功した。
シリコンバレーは、主に移住者で構成されている — スタートアップの創設者はシリコンバレーに移り、会社を作って、資金の調達を行う。近代的なシリコンバレーが生まれるまで、30年間かかった。しかし、インドネシア、日本、そして、シンガポールにも豊富な資金が集まっているにも関わらず、東南アジアのスタートアップの創設者が、わざわざ海を渡ってシリコンバレーに向かう必要はあるのだろうか?スタートアップを成功に導くためには、シリコンバレーにいる必要があると闇雲に信じているなら、この指摘は受け入れてもらえないだろう。しかし、現在、マニラにいようが、ジャカルタにいようが、あるいは、ブータンにいようが関係ない。インターネットベースの会社を作っているなら、場所が成功を左右するわけではない。インターネットを介して、世界とつながりを持つことが出来るからだ。
有名な起業家のペン・オンは次のように述べている: 「スタートアップの仕事は、金儲けではない。繰り返すことが可能で、拡大することが可能な儲ける方法を解明することだ。」 #goap pic.twitter.com/CszWxgp9dR ? デイブ・マクルーア(@davemcclure)2014年7月18日
マクルーアは: 「シリコンバレーのすごいところは、誰かが成功することを誰もが信じている点だ。この伝統を今後も続けるべきだ。」
この言葉を常に頭の片隅に置いておこう。印刷し、Tシャツにしても構わない。手の甲にタトゥーとして刻み込む手もある。どんなことをしても、自分自身、そして、スタートアップを立ち上げる場所を信じるべきだ。その後、製品を作ろう。自信を持って、作る必要がある。スタートアップに着手する上で、今ほど相応しい時代はない。
とは言ったものの、解決する必要のある問題がないわけではない — とりわけ、会社を拡大するためのリソース(安価で、安定したインターネットの接続環境、デバイス、エンジニア、その他の人材)へのアクセスは、東南アジアのスタートアップにとって大きな障害となる。次回の投稿で、このトピックを取り上げる予定だ。
この記事は、The Next Webに掲載された「Startup founders in Southeast Asia, it’s time to step up」を翻訳した内容です。
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