Web広告の分野では、サードパーティクッキーに対する規制の進展が大きな波紋を広げ、これまでの広告戦略やトラッキング手法を変更せざるを得なくなっています。サードパーティクッキーは、異なるドメインから発行されるクッキーであり、おもに広告バナーやリターゲティング広告において利用されてきました。しかし、AppleやGoogleをはじめとする主要プラットフォームがサードパーティクッキーの使用を制限・廃止する方針を打ち出しました。これによりWeb広告業界は新たな課題に直面しています。
本記事では、サードパーティクッキーの役割やこれに代わる新たな技術、手法に焦点を当て、Web広告の未来について解説します。
目次
サードパーティクッキー(3rd party cookie)は、Webサイト上でユーザーの行動を追跡するために使用されるクッキーの一種であり、ユーザーが訪れたWebサイトとは異なるドメイン(ホスト)から発行されます。これは、異なるWebサイト間でデータやトラッキング情報を共有するための仕組みです。
ユーザーが複数のWebサイトを訪れた際に、それらのサイト間での行動や嗜好を追跡し、広告のターゲティングやパーソナライズに利用されます。一方、ファーストパーティクッキーは、ユーザーが直接訪れたWebサイトから発行されるクッキーです。発行元サイトのドメインに紐づいていて、ユーザーエクスペリエンス向上やサイト内のパーソナライズに利用されます。
サードパーティクッキーは、異なるドメインから発行されるWebクッキーで、おもにリターゲティング広告に利用されます。サードパーティクッキーにより、ユーザーの行動履歴を異なるWebサイトで共有し、興味に基づいた広告の提供が可能になっています。しかし、プライバシー懸念から多くのブラウザが制限やブロックを強化しており、ユーザーがこれを制御できるようになりました。広告主にとっては有益な手段である一方で、ユーザーエクスペリエンスとプライバシー保護のバランスが求められます。
サードパーティクッキーに関する規制について詳しく解説します。
Appleは、Safariブラウザにおいてサードパーティクッキーを完全にブロックする方針を採用しています。これは、Intelligent Tracking Prevention(ITP)と呼ばれる機能を導入することで実現されました。ITPは、ユーザープライバシーの保護を強化するため、広告主やWebサイトがユーザーの行動を追跡するのを制限します。また、コンバージョントラッキングに用いられる「ローカルストレージ」も削除され、これにより広告やトラッキングにおいて影響を受けることになったのです。
Googleは、Chromeブラウザにおいてサードパーティクッキーを段階的に廃止する計画を策定しています。2024年後半までにこの取り組みが進行する予定で、その一環としてPrivacy Sandboxが提案されています。この提案は、広告のターゲティング精度を向上させることを目的としており、ユーザープライバシーの保護に焦点を当てています。企業はこれに順応する必要があり、代替技術の導入やリターゲティング広告の見直しを検討することが急務です。
現在、世界中でプライバシー保護に関する法的な規制が進展しています。とくに注目すべきなのは、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)およびEUのデータ保護規制(GDPR)です。また、日本でも2022年4月1日に改正個人情報保護法が施行され、プライバシー保護に関する規定が強化されました。
これらの法規制に共通するポイントは、クッキーの利用に関してはユーザーの許可を必須とするという点です。法的な規制の存在にもかかわらず、クッキーの使用が禁止されているわけではなく、今後ますます厳格になる可能性があります。プライバシー保護の観点から、企業やWebサイトはユーザーの同意を得つつ、クッキーの利用に対する透明性を確保する必要があります。
サードパーティクッキーは個人情報や閲覧履歴を保存し、プライバシーに関わる情報を第三者に漏らす可能性があり、欧米諸国を中心に規制が進んでいます。日本でも電気通信事業法の改正によりサードパーティクッキーが規制対象となり、影響が懸念されています。その影響について詳しく見ていきましょう。
サードパーティクッキーの廃止は、コンバージョン計測に悪影響をもたらす可能性があります。これにより、商品やサービスの広告からのサイトアクセス経路や成果を正確に計測することが難しくなり、コンバージョン計測の精度が低下する可能性が懸念されています。たとえば、ユーザーが広告をクリックしてサイトに訪れ、その後商品を購入する場合、サードパーティクッキーがなくなると、正確な経路の追跡が難しくなります。これにより、広告のパフォーマンスやマーケティング戦略の評価が制約され、企業はより創意工夫を凝らしたアプローチや代替手段の導入を模索する必要が生じるでしょう。
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サードパーティクッキーの規制により、リターゲティング広告の配信が難しくなります。従来、サードパーティクッキーはユーザーの行動履歴を追跡し、これに基づいて興味に合った広告を提供するのに活用されていました。しかし、これが規制されると、リターゲティングの精度が低下し、ユーザーに対するターゲティング広告のパーソナライズが難しくなります。たとえば、特定の商品ページを訪れたユーザーに対してその商品の広告を再度提示するなどが制約されるため、企業は効果的なリターゲティング広告戦略の再構築や新たなアプローチの模索が必要です。
サードパーティクッキーの規制に伴い、同一ドメイン内で完結するファーストパーティクッキーの利用が増加しています。ファーストパーティクッキーは、訪れたサイト自体が発行するものであり、ユーザーの行動情報をトラッキングします。これにより、同一サイト内での利用者の行動を理解し、パーソナライズされたサービスやコンテンツを提供することが可能です。重要な点として、ファーストパーティクッキーは個人情報保護の対象外であるため、プライバシーの面での懸念が相対的に軽減されています。企業はこれを利用して、ユーザーエクスペリエンスの向上やターゲティングの最適化を図る代替手段として、ファーストパーティクッキーに注目しています。
サードパーティCookieの廃止に備え、企業が代替的に使用しているおもな選択肢は以下の4つです。
サードパーティクッキーに代わる技術や手法の1つとして、「ファーストパーティ・データの活用」が挙げられます。これは、Webサイト自体が保有するユーザーデータを利用して広告戦略を展開する方法です。既存のユーザーデータや新しいデータを収集し、それに基づいてターゲティングを行います。ただし、この手法は既に知っている顧客層に焦点を当てるため、新規顧客へのアプローチが制限される可能性があります。
サードパーティクッキーの代替手法として「コンテキスト・ターゲティング」が挙げられます。この手法では、サードパーティクッキーに頼らず、コンテンツの文脈やコンテキストに基づいて広告を配信します。ただし、この方法ではユーザーの購買ライフサイクルやデモグラフィック情報がわからないため、精度に一定の制約が生じる可能性があります。
サードパーティクッキーの代替手法として「ウォールドガーデン」を活用する方法もあります。これは、GoogleやFacebookなどのプラットフォームが提供するウォールドガーデン内でファーストパーティ・データにアクセスすることを指します。ただし、この手法ではプラットフォームにログイン中のユーザーに限定され、効果測定において乖離が生じる可能性があることに留意が必要です。
ツールを活用することで、同意管理と高精度なターゲティングを実現ができます。たとえば、クリムタンの「consenTag」や「ActiveID」を利用すれば、サードパーティCookieを使用せずに広告を展開し、同時にユーザーのプライバシーを保護することが可能です。
サードパーティクッキーに対する規制の進展や廃止に伴い、デジタル広告の分野では新たな展開が迫られています。主要プラットフォームの政策変更により、コンバージョン計測やリターゲティング広告において課題が生じつつあり、これに対処するための選択肢が模索されています。
法的な規制が進む中、企業はユーザーのプライバシー尊重と透明性を重視しつつ、広告戦略の効果を最大化する方法を模索しています。サードパーティクッキーの代替手段として注目を浴びるのは、ファーストパーティ・データ、コンテキスト・ターゲティング、ウォールドガーデン、そして新しいテクノロジーであるconsenTagやActiveIDなどです。
今後ますます広告環境は変化し、企業は柔軟な戦略を立てることが求められるでしょう。この変革に適応するためにも、専門家への相談が不可欠です。
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