スマートフォンのマーケットが引き続き拡大する中、大勢のフィーチャーフォンのユーザーがより強力で、よりインターネットへの接続に適した高度なデバイスに切り替える傾向が見られており、モバイルアプリケーションへの需要が急激に増している。
多くのユーザーが多数のアプリをスマートフォンにダウンロードしているが、頻繁に利用するインストールされたアプリの平均の個数は1つのデバイスにつき23個前後であり、iOSデバイスのオーナーはアンドロイドデバイスのオーナーよりも多くのアプリをダウンロードする。IDCの予測によると、アプリのダウンロードは3年以内に1830億回にまで増えるようだ。
10億人近くが2015年までにスマートフォンを使い、平均で20個以上のアプリをダウンロードおよび利用することになると、既に急成長しているアプリマーケットは、新しいハードウェアのテクノロジーが、スマートフォンやタブレットのデバイスで達成可能な取り組みを実現していき、間違いなく爆発的に拡大するはずである。多くの開発者(規模の大小に関わらず)が既にアップストアの力を実感しており、インスタグラム、アングリーバーズ、そして、シャザムの成功に続けてとばかりにアプリを調整している。
しかし、その他の製品と同じように、アプリも他のアプリとの違いがハッキリしていなければ売れない。現在、スマートフォンで成功しているアプリの大半は、新しいアイデアを導入しているわけではなく、ただ単に他社より巧みに同じアイデアを実装しているだけだ。この点を考慮し、モバイルアプリのストアで成功するために、何がグッドなアプリをグレイトなアプリにするのか、そして、あるフォトアプリと別のフォトアプリを差別化するのは何かを検討していきたいと思う。
アプリケーションの見た目と動作はアプリの成功を左右する。アプリがダウンロードされると、ユーザーはアプリを開き、その瞬間に第一印象を形成する。特に無料アプリの場合、ライバルが非常に多いため、- アプリがライバルのアプリよりも見た目が劣り、ナビゲーションが流動的ではない場合、ユーザーは機能を知ろうともしないだろう。
素晴らしいアプリは、大半の場合、ユーザーが小さな画面のデバイスを利用している点を考慮している。ユーザーインターフェースは、出来るだけ控えめにデザインし、アプリに用途または機能をもたらさないデザインの要素は省く必要がある。あまりにも多くのデザインの要素を含めると、ユーザーは重いと感じ、直観性に欠けると思われてしまうだろう。
アップルのユーザーインターフェースガイドラインは、ユーザーに気に入ってもらえるアプリを作成するには、例えば、開発者は主要なタスクに焦点を絞り、ユーザーが関心を持つレベルにまで内容を高め、スマートフォンの画面が異なる環境でどのように表示されるのかを考えて、ユーザーに論理的な道筋を示して、利用方法を簡単且つ分かりやすいものにするべきだと提案している。
写真アプリケーションは、アップルのアイデアを全面的に受け入れ、写真の共有に関連するプロセスにユーザーが関心を持つようにユーザーエクスペリエンスを形成している。Path(パス)を例にとって考えてみよう。iPhoneでこのアプリは友達が撮影した写真をすぐに読み込み(ユーザーが関心を持つレベルにまで内容を高める)、自分の写真を共有する機会をユーザーに与える緑色のカメラアイコンに焦点を絞り(主要なタスクに焦点を絞る)、また、ツールバーのすべてのオプションに注釈を付け(利用方法を簡単且つ分かりやすいものにする)、アプリのその他のパーツを紹介している。
パスの開発メーカーは、ユーザーが1度に1つの画面しか見ることが出来ない点を理解し、コンテンツを分けるためにカテゴリーを巧みに利用している。ユーザー達はコンテンツに同時にアクセスしようとは思わないため、開発者達は、アプリの異なるパーツに連続してアクセスできるように工夫する必要があり、それぞれの機能を十分にケアし、ユーザーが、何が求められているのかを理解することが出来るように心掛け、アプリが実際に提供することが可能なツールを強調している。
一部のアプリは、優秀なデザイナーであっても、一部のユーザーに混乱を与えることなく適切に導入することが出来ない機能を数多く提供している。パスでは、人物、場所、そして、物事をタグ付けし、ムードを導入し、フィルターを加え、さらに、ユーザーの写真に他のユーザーがコメントを残したり、気に入った旨を意思表示をすることが出来る – 写真の撮影プロセスからあまり距離を置かずにこのような機能を強調する必要がある。
流れるようなナビゲーションを支えるため、パスの開発者達は、ユーザーがその他のアプリで慣れ親しんでいる標準的なアイコンとボタンを維持しつつ、オンスクリーンのヘルプを最小限のサイズにとどめて、ユーザーにすぐにアプリの使い方を分かってもらえるように工夫した。例えば、アプリ内の戻るボタン、キャンセルボタン、そして、ホームボタンを利用することで、手順を遡り、理想の場所を見つける上で役に立つことは誰でも知っているはずだ。
パスの素晴らしさは、見た目が良いだけでなく、提供する数多くの選択肢が巧みにラベリングされ、まとめられており、ユーザーが圧倒されないように心掛けている点である。このアプリは、ライバルのインスタグラムほどユーザーが多いわけではないが、独自のパス(道のり)を歩むために製品を継続的に改善し、大勢のユーザー達を楽しませている。
ニック・ワット氏はプレゼンで、優れたアプリは“モバイルの力を利用”していると示唆していた。同氏の見解では、モバイルの力は、コミュニケーション、自発性、ジオセンシティブ、短時間の利用、そして、焦点が絞られたアクティビティの5つで構成されている。
シャザムは、楽曲を発見するアプリケーションであり、スマートフォンのマイクを活用して、周囲の音楽を聞き取り、正確に特定する。このアプリケーションは、2010年の12月にユーザーが1億人に達し、毎日無料と有料のアプリを数千人規模のユーザーがダウンロードしている。
このアプリは、ワット氏が解説している原則を活用している良い例であり、独自の方法で5つの要素をアプリに包み込んでいる。
シャザムの素晴らしい点は、定期的に利用されるアプリではないものの、ユーザーのスマートフォンにダウンロードされたその他の多くのアプリよりも遥かに重要な目的を果たす点である。
シャザムを立ち上げると、巨大なシャザムのロゴが表示され、ユーザーにスクリーンをタップさせて、利用が始まる。楽曲がラジオで流れている場合、ユーザーはいつ違う歌に切り替わってしまうか、もしくはいつDJが楽曲をかけながら話し始めるのか分からないため、急を要する。シャザムは1秒たりとも無駄にしない。不要な機能はなく、このアプリのメインの機能はど真ん中に用意されており、非常にシンプル且つ効果的なコール・トゥ・アクションを伝えている。
このアプリは正確に認識した楽曲のログを維持し、ユーザーが楽曲を特定した時点ですぐにアプリを閉じることが出来る。しかし、購入、視聴、またはフェイスブックもしくはツイッターでの共有のオプションが用意されており、アプリのインタラクションの時間を増やし、ユーザーがアプリを再び使い、特定してから数日後/数週間後/数ヶ月後に曲の名前を確認するために戻ってくる可能性を高めている。
シャザムは、スマートフォンが登場するずっと前から楽曲を特定するテキスト送信サービスを始めていた。同社はサービスを提供する方法を変えずに、ユーザーが利用する方法を採用してきた。シャザムアプリはシンプルなデザインを用いている – 余計な要素は楽曲を特定するユーザーの試みを妨げかねないからだ。
旅行アプリもまたシンプルなデザインを重要視しており、ユーザーの位置を把握し、事前に設定した目的地への最善のルートを提案する。ロンドンの地下鉄やニューヨークの地下鉄の地図を示すアプリは、十分に役割を果たしてくれる。ユーザーが単純に今いる駅とこれから向かう駅を述べると、アプリはローカルでデータを処理して、インターネットのコネクションやロケーションの入力なしでルートを提案する。
アプリを開発して成功することと、その成功を維持することは別物であり、後者が開発者にとって本当の難問である。
アプリのダウンロードは、アップデートがつきものである。開発者はアップデートを介してアプリを修正し、新しい機能を導入し、動作を簡素化するのだ。例えば、アプリのユーザーはアプリを購入するために59セントを既に支払ったとしても、開発者が自社のブランドまたは特定のアプリをユーザーに引き続き愛用してもらうためには、尽きることのないユーザーの欲求に合わせてサポートおよび機能を繰り返し提供していかなければならない。
アングリー・バーズは、あらゆるプラットフォームで大きな成功を上げ、先日2億5000回目のダウンロードを達成し、現在も毎日100万回以上ダウンロードされている。この作品がヒットしたのは、非常に楽しいゲームであるためだが、それだけではなく、開発メーカーのRovioはひっきりなしにゲームにアップデートを加え、無料制を貫き、顧客を常に満足させているためだ。
現在、アップストアには5つのアングリー・バーズのアプリが存在する盛況ぶりだが、当初、Rovioはアプリに戻ってきてもらう方法を探さなければならなかった。Rovioは、ユーザー達がレベルをクリアするために使った鳥の数の少なさに応じて見返りを与える得点システムを採用するアイデアを考案した。最終的に、星を活用し、予想よりも少ない鳥で豚を倒すと、最も多くの星が与えられるシステムになった。
ユーザーがそれぞれのレベルで3つの星を獲得することなくゲームをクリアした場合、大勢のユーザーが再びゲームに戻り、達成するまで遊ぶ。
一方、ゲーマー達が各レベルで3つの星を獲得し、完璧にゲームをクリアした場合、Rovioは、テレビゲームのゲーマー達が古いゲームで再び遊ぶように、再びアングリーバーズに戻り、遊んでもらえると期待することも出来たはずだった。しかし、フィンランドを基盤とするRovioは既存の顧客にレベルのアップデートを展開し、気分を一新して無料でアングリーバーズで遊んでもらい、ゲーマーが友達や家族にゲームを勧める可能性を高めたのだ。
新しいゲームで遊べるようになると、ゲーマー達は“新しいレベル3つの星を獲得する欲求に駆られ”新しいゲームをすぐに手に入れ、若干異なるバージョンのゲームで全く同じサイクルを繰り返すことになる。
ロドリゴ・コウチーニョ氏は、アウトシステムズのブログで、アプリは“簡単に変更を加えることが出来るようにするべきだ”と綴っている:
素晴らしいアプリはいつまでも新鮮味がある。程度は小さいかもしれないが、常に改善を行い、ユーザーの新たな要求に応じている。最高のアプリを作るには、アプリにユーザーのニーズの変化に応じて変化することが可能な能力をもたらす必要がある。
Rovioはこのアプローチを統合した。しかし、その他の多くのアプリの開発者達もユーザーに譲歩してアプリを相次いでアップデートしている。 新しい機能を加える方針はある時点では道理にかなっているかもしれないが、ユーザーに気に入られなかった場合、開発者はすぐに適応し、アップデートして顧客と良好な関係を築く準備をしておくべきである。
この競争の激しいマーケットでは、スマートフォンのオーナーは、アプリをためらいなく削除し、ユーザーのニーズを理解しているライバルに乗り換えることが出来る。
アプリの開発者達は、自分が所属するマーケットのことをよく理解する必要がある。自分のアプリがアップストアで取り上げてもらえなかった人達のなかには、不運だとこぼす人もいる。
ツイートボットがローンチ時にベタ褒めされていたが、このアプリのメーカーはローンチを成功させるためには、無関心なユーザーにダウンロード、そして、インストールしてもらうためにインセンティブを与える必要があることを心得ていた。この点を考慮し、ツイートボットのメーカーは、アプリの価格を1ドル値下げし、特別価格として宣伝した。
その後、このメーカーはツイッターとブログを利用し、リリース予定のアップデートに関する進捗状況を逐一フォロワーに伝えた。時間をかけて、口コミを生む試みを行い、アップデートのニュースが各種のソーシャルネットワークで大量に報じられ、アプリをダウンロードしたことがないものの、機能に関する知識を持っている人達をも誘惑するため、アップストアに新しいリリースが登場する数時間前からユーザー達をじらす取り組みを行った。
最新のアップデートで、ツイートボットはついにプッシュ通知機能を導入した。この機能のニュースは、開発メーカーのツイッターのアカウントで伝えられ、1000人分の招待がものの数分間に売り切れていた。
ツイートボットがプッシュ通知機能を導入するまでに3ヶ月間を要したが、このアプリの価格は元の価格に戻り、その一方で、大勢の既存のユーザーから称賛の声が上がっている。
Rovioに話を戻そう。Rovioは、スマートフォンのオーナー達は、所有しているスマートフォンによってアプリへのアプローチが異なる点を心得ていた。例えば、iOSデバイスのオーナーは他のプラットフォームよりも多くのアプリをダウンロードするだけでなく、より多くの有料のアプリを購入する傾向が見られる。そこでRovioはリサーチを行い、アンドロイド版を無料で提供した。なぜなら、アンドロイドのハンドセットのオーナーは、iOSデバイスのオーナーよりもアプリの購入に消極的であり、広告モデルを導入する選択をしていた。このモデルは、一時期、同社に1ヶ月で100万ドルの収益をもたらしていた。
アプリをヒットさせる魔法のレシピは存在しない。“独特ではないなら”優れたアイデアを考案し、大勢のスマートフォンのオーナー達に気づいてもらう必要がある。しかし、最も重要なのは、ユーザーがアプリから何を期待するのかを十分に理解することである。間違えても、突然新しいメニューの構造を採用し、プラットフォームに合わないボタンを使ってもらえるなどとは思わない方がよい。
アプリのマーケットはまだ生まれたばかりだが、新しいテクノロジーが携帯電話と私達のポケットに続々と入り込んできている状況では、近い将来の機能の範囲などは、それほど重要ではない。
消費者は、何かを行う際に時間を短縮することが可能なアプリ、または暇なときに楽しむことが可能なアプリを求めている。アプリのマーケットで何が欠けているのかを評価し、アイデアを実現することが出来るか否かは開発者次第である。イノベーションは、様々なマーケットで成功を生むが、デジタルアプリの世界ではとりわけ多くの見返りを与えるだろう。
ソース:イメージ
マットはロンドン近郊で活動するザ・ネクストウェブのモバイル担当エディターである。ツイッターとフェイスブックでフォローすることが可能だ。また、eメールならmatt@thenextweb.comで連絡を取ることが出来る。
この記事は、The Next Webに掲載された「Mobile Apps: A look at what makes a good app great」を翻訳した内容です。
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